梶よう子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
現代で言う百円ショップ、何でも三十八文で売る〈みとや〉を営むお瑛の物語第四作。
他の方のレビューにもあるように、お瑛がいつの間にか結婚して息子もいることに驚く。また間違えて一作飛ばしたのかと確認したが、そうではなく前作から八年後という設定らしい。
息子は兄と同じ長太郎という名前で、彼と同じく大らかでちょっと落ち着きがない。だが優しい子のようだ。
そして夫は成次郎、兄と同じく仕入れ担当。兄の友人・寛平の薦めで結婚したらしいが素性は明らかではない。何か訳ありらしい。だがこちらも優しい人であることは同じ。つまり息子・長太郎は父親似なのか。
前作から八年後ということでお瑛の周囲もいろいろ変化がある -
Posted by ブクログ
一途ってのか一本気ってのか、おけいさん、過ぎたるは猶及ばざるが如しと言います。小鳥たちへ愛情を注ぐ、生き物の命を等しく慈しむ、分かります。立派です。でもね、大火災に直面したあの場面で、あなたの周りには高齢者や幼い子、身体の不自由な人がいなくはなかったでしょう。小鳥と心中覚悟もなにも、いくらか弱い女の身であろうとも、お若いあなたは、手を差し伸べるべき「ヒト」がいらしたはずです。現にあなたが敬愛する永瀬さまは我が身を賭して「ヒト」の命を救われた。まして他人を巻き込んで小鳥の命を救うとは。私には理解できません。焼け野の雉も夜の鶴も梁の燕も、守るのは我が子であってほかの種の動物ではないんです。
-
Posted by ブクログ
梶さんの初期の頃の作品。
摺師が主人公で寡黙な職人。「いろあわせ」と言うタイトル通り、各章は摺りの技法がサブタイトルとなっている。かけあわせ、ぼかしずり、まききらら、、、。技法の説明は各章の冒頭に説明されているが、絵や写真が無いと分かりづらい。また、このサブタイトルに沿った人情物の内容だが、技法が分かりづらいので、なぜにそのような結末か、も考え込んでしまう。
出てくる登場人物は、みんなキャラがしっかりしていて生き生きしている。おっちょこちょいの弟弟子、うるさいが面倒を見てくれる長屋のお婆さん、凄腕だが人の良い長屋の浪人とか。とくに幼馴染の出戻り娘との続きを読みたいと思う。(書いた後に念のためと -
Posted by ブクログ
古本屋の傍ら『噂』を必要な人間に売っている由蔵が、あのシーボルト事件に巻き込まれていく。
由蔵の父は養蚕家だったが詐欺にあって病の蚕卵を買い、自身だけでなく集落の蚕まで死なせるという大変な事態を招く。そのせいで父は自害、母は心労死、由蔵は周囲の子どもたちから『うそっこき由蔵』と非難される。
長じても父親のしたことは消えず、江戸に来れば『うそっこき』ではなくなると心機一転働くが、そこでもまた大奥の『嘘』で大切な人が追い込まれ死に至る経験をする。
『噂に惑わされ踊らされ、果ては大勢が信じ込み噂が嘘でなくなっていく』
『嘘で固められた「真実」など、あっちゃいけねえんだ』
力も後ろ楯もない由蔵が -
Posted by ブクログ
ネタバレ202112/タイトルのお茶壺道中とは、幕府が将軍御用の宇治茶を茶壺に入れて江戸まで運ぶ行事とのこと。宇治茶を誇りに思いお茶壺道中が大好きで、お茶を淹れるのも上手な主人公・仁吉が、宇治から江戸の茶葉屋で奉公にあがり成長していく物語。梶よう子の史実(今回は生麦事件、和宮降嫁など)を物語に絡める手法が今回も効果的で、緊迫した空気と時勢の転換に戸惑う主人公の描写にいかされてる。主人公の人脈や商才で危機を乗りきっていく所、特に阿部様周りの出来事はラッキー要素多めな印象はあるけど面白かった。幕末の動乱や外国と交易している横浜の描写、お店のお内儀・本店の主人を始めとする商人達のしたたかさや、人間の多面性が