梶よう子のレビュー一覧
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山東京伝が吉原の女性を二人も妻に迎えたという話は知っていたが、京伝の詳しい人物像などは知らなかったので興味深かった。
二人目の妻・ゆり視点と京伝視点で描かれる物語。
現在放送中の大河ドラマでもすこし登場している京伝だが、本作の京伝もしなやかで、つかみどころがなさそうで、でも情が深い。
ドラマの方では今後どのように描かれるだろうか。
一人目の妻・菊との出会いから短い結婚生活の話
二人目の妻・ゆりの、今はいない菊に対する苦悩と京伝への想い、そして自身の生い立ちに関する物語
ゆりとの出会いのきっかけとなった若き侍の仇討ちエピソード、蔦重や歌麿、鶴屋などとの交流と享保の改革山東京伝が吉原の女性を二人も妻に迎えたという話は知っていたが、京伝の詳しい人物像などは知らなかったので興味深かった。
二人目の妻・ゆり視点と京伝視点で描かれる物語。
現在放送中の大河ドラマでもすこし登場している京伝だが、本作の京伝もしなやかで、つかみどころがなさそうで、でも場が深い。
一人目の妻・菊との出会いから短い結婚生活の話
二人目の妻・ゆりの、今はいない菊に対する苦悩と京伝への想い、そして自身の生い立ちに関する物語
ゆりとの出会いのきっかけとなった若き侍の仇討ちエピソード、蔦重や歌麿、鶴屋、滝沢馬琴などとの交流と松平老中との闘いなどが描かれる。
戯作はあくまでも趣味だと言っていた京伝が、やがて人気作家となり戯作だけでも暮らしていけそうなのだが、彼の本業はあくまでも煙草入れ屋。だが本業が絶好調なのも京伝人気があってのこと。
一方の馬琴は戯作だけで生きているのは自分だけと大口を叩いて憚らない。
馬琴はどの作品を読んでも図々しく皮肉屋に描かれるところを見ると、本当にそういう人だったのだろうか。
だがゆりも菊も元吉原の女。馬琴の皮肉に頭に血を昇らせるようなへまはしない。
ゆりも菊も相当の苦労をしたはずなのに、スレたり陰気だったりというところがないのが良い。
きっと京伝も二人がそういう人だから妻に迎えたのだろう。
最後はちょっと出来すぎの感もあるが、史実なのだろうか。だが苦界の女性たちにこんな明るい希望もあったという話があっても良い。 -
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浮世絵師・歌川広重の一代記。
フォローしている方のレビューを見て「読みたい」に入れていた。
私が子どもの頃に初めて浮世絵を認識したのは、当時流行っていた切手収集のカタログの中だった。
国際文通週間に発行された「蒲原」や「箱根」、「日本橋」や「三条大橋」などの「東海道五十三次」の絵柄は記憶も鮮やか。「月に雁」は「見返り美人」と並んで手が届かないものの双璧だった。
いずれも安藤広重(当時はそう呼ばれていた)の作品で、以来、葛飾北斎とともに浮世絵の巨頭として認識する。
そんな広重だが、この本では、口は悪いが基本的には武家の出らしく真面目な人、という感じで描かれる。
その人柄ゆえ、要らぬ苦労もたくさんあって、そこはご苦労様だが、その割には最初から最後まであまり成熟が見られず、時折出てくる北斎のいくつになっても滾るエネルギーと生臭さに比べるとやや魅力に薄い印象。
景色を見ればスラスラと筆が走り、創作の呻吟があまり描かれないのもやや不満。
終盤は義弟の借金のかたに枕絵を描くはめになったり(ここで描くのに難儀する場面が描かれるのが皮肉)、安政の大地震が起こったりで物語に動きが出たが、そこまではやや平板な展開。
版元や摺師とのやり取りや自分が描きたい絵のために意に沿わない仕事もこなす絵師の仕事振りに加え、時代の世情や背景が細かに描かれたところには、興味深く読んだ。
ネットで絵を確かめながら読み進んだが、「名所江戸百景」をはじめとして知らなかった絵も多くあり、「日本橋」の変わり図のことや「木曾海道」「双筆五十三次」の合作の経緯などが知れたのは良かった。 -
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「ことり屋おけい 探鳥双紙」の続編。
調べてみたら、前作を読んだのは2014年だった。
ボヤッとしか覚えていないが特に支障はなかった。
羽吉と離縁し、羽吉が残した飼鳥屋を一人守ってきたおけい。カナリヤの番(つがい)を買って行った武家らしき老夫婦が、しばらくして何故か番屋を通してカナリヤを返してきた。
不審に思い調べようとしたが、その直後大火事で焼け出されてしまう。
店の鳥たちをなんとか一緒に避難させ、逃げる途中で知り合いの定町廻り同心・永瀬からある理由で口が利けない娘・結衣を託されるが、火が収まっても永瀬の行方は分からないままで…。
ここ最近日本各地で様々な災害が起きている。そういう時に生き物を生業として扱っている方々の苦悩を感じた。
自分の家族すら助けることが出来ず亡くしてしまったり行方知れずになってしまう方がいる中で、もちろん全ての生き物は大切な命なのだけれど、鳥たちすべてを避難させることの難しさ。
周囲の人たちと同じ立場なら、苛立っておけいに敵意を向けてしまうかもしれない。
かと言って焼け死ぬと分かって置いていけというのも酷い。何が正解なのかは分からない。
せめて九官鳥の力丸が周囲の人々を救い和ませてくれて良かった。
元夫の羽吉が現れ、どうなることかとハラハラした。おけいが一緒になったくらいだから良い男なのだろう。だが前作のレビューを読み返してみるに、やはり感情的な男のようだ。
だが一方でおけいも頑ななところがあるので似た者夫婦だったのかも知れない。
隣の籠屋の女将おとせや古着屋の八五郎と息子・長助、医者の沢渡に鳶の左之助、偏屈だが味方の曲亭馬琴などおけいを助けてくれる人たちがたくさんいる中で、茶屋時代の同僚・おしなが見せる厭らしさは、様々な不満や苦しさ切なさの表れのようで辛かった。
終盤は永瀬・結衣親子の抱える事情のその後、おけいを始めそれぞれの再出発、カナリヤを返してきた老夫婦の事情など盛りだくさん。一気に物語が動き出して忙しい。
苦しい話もあればほっとする部分もある。永瀬とおけいのその後は思った通り。まだまだ時間がかかりそう。
馬琴先生は怖いとか偏屈だとか言われているが、今回の作品の馬琴先生は優しかった。
また十年後くらいに続編が出るのかどうか。 -
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初めての作家さん。
「文庫王国23」でも紹介されて、さらに敬愛する北上次郎さんが解説という事で期待して読み始めたが、うーん・・普通かな。
江戸時代の下町が舞台で、当時は下に見られていたとむらい屋稼業の面々が主人公。
いわゆる人情もので一遍一遍はいいお話で、特に颯太がとむらい屋になるきっかけを描いた六章は素晴らしい出来なのだが。
しかし全体として見ると、なんなんだろう少しうす味。オチがミエミエだったり悪者が類型的だったり、あまりに予定調和的だったりして興をそいでいるのが否めない。
やっぱりこの手のものは、周五郎だったり周平の方が一枚上手で私の肌に合うように感じた。 -
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北町奉行所諸色調係同心・澤本神人(じんにん)シリーズ第二作。
前作を10年以上前に読んだので詳細を忘れていたが、問題なく読めた。
『諸色調係』とは『市中に溢れる品物の値が適正かどうか調べ、あるいは無許可の出版物の差し止めなどを行うお役目』とのこと。
よくある切った張ったの類の事件を扱う『定町廻り同心』とは違った地味な役職ではあるが、物語の方はなかなかシリアスだった。
女易者に騙されたと男が暴れたり、南蛮の仕掛け鏡を巡って危険が迫ったり、偽の薬用人参が流通したり、雇われ中間が行方不明になったり、これは澤本の担当なのか?と思うような調べもあるが、そこは役人、上から頼まれれば嫌とは言えない。
今回からは鍋島奉行のところにちょくちょく出入りしている小姓組版頭の跡部という人物がレギュラー入りしている。この跡部からの頼まれごとも多い。
澤本は鍋島奉行から『顔が濃い』という理由で定町廻りから諸色調係へ役替えとなったという経緯の持ち主だが、性格もなかなか。
跡部にやられっぱなしではなくて言い返したりしているし、調べを手伝っている庄太のまぜっかえしには頭を叩いて強気に出ている。
ただ亡き妹が残した娘・多代といい仲になりそうなお勢には柔らかい。
この跡部もアクの濃い人物ではあるが、悪徳役人と言い切れるわけでもないグレーゾーンなところが興味深い。
今後もシリーズが続くとすれば、彼と澤本との関係も気になるところ。
ただ個人的には主人公の澤本よりも庄太の方が魅力的に映った。
日頃は食いしん坊で惚れっぽくてだらしなさそうな男の子だが、計算は得意だし意外と知識が幅広い。
コロコロした体型だがフットワークは良い。ガサツなようできちんと物事を見ているところもある。
彼の存在があるから澤本のキャラでも読めるという感じだった。
シリーズ作品
①「商い同心 先客万来事件帖」レビュー登録なし -
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浮世絵師歌川広重の人生を描いた作品。
火消同心である安藤重右衛門は絵師歌川広重としての顔も持つ。だが肝心の絵はなかなか売れなかった。そんなままならない日々を送っていた重右衛門はある日絵の版元から東海道五拾三次を描いてみないかと誘われる。北斎の富嶽三十六景に触発された重右衛門はその誘いに乗って描くことにする。
己の絵の才を疑わない姿は鼻持ちならないが、絵に打ち込む様子はやはりすごい。特に北斎の富嶽三十六景で目にした藍色に心を奪われるのはさすが。異国から来たそのベロ藍と呼ばれる色を広重ぶるうとして絵に使うようになるがすぐには売れないのが残念に思われる。
少々長いけれどもそれを感じさせない力作。