梶よう子のレビュー一覧
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江戸随一の売れっ子戯作者であり、浮世絵師、そして煙草入れ屋〈京屋〉の主人でもあった山東京伝と、彼を支えた二人の妻の絆を描いた物語。
第一章と第五章、第六章は後妻・ゆりの視点で描かれ、
吉原の遊女から京伝の妻となるも「できた前妻」であった菊との比較に悩んでいたゆりが、徐々に自分の「居場所」を見つけていき、逞しく成長していく姿が良かったですね~。
第二章から第四章は京伝の視点で、前妻・菊との馴れ初めエピソードが描かれていて、京伝をはじめ、昨年の大河ドラマで注目されたの蔦屋重三郎や喜多川歌麿といった、江戸の粋人たちが生き生きと描写され、当時の江戸にタイムスリップしたかのような気分を味わいながら読みました。
印象的だったのは、幕府からの厳しい規制で思うような活動ができなくなり、戯作者や絵師達の心が折れそうになった時、
「江戸が潤うことを一番に考えていた。
読み物や画を楽しむことは、皆の心持ちが豊かになると信じていたんだよ。
庶民の知識欲も満たすことが出来るとね。
それに、錦絵に描かれた品物が売れる、役者の紋を入れた手拭いだって売れる。
まさに銭金が回るようになる。文化が広く行き渡ることは、すなわち江戸が栄えることに繋がる」
・・として、京伝たちクリエイターを支え続けた、江戸一番の版元、蔦屋重三郎の心意気ですね。
彼らのおかげで、今日の多彩な出版物を楽しめる恩恵にあずかれたのだなぁ・・と感謝の念が湧いてきた次第です。
ということで、江戸の粋が伝わってくる人情ストーリーを堪能させていただきました。
それにしても、滝沢馬琴はどの作品でも偏屈な描かれ方をしていますよね(本作でもめっちゃ嫌味なヤツやった)。実際クセツヨな人だったんかな~・・「八犬伝」は大好きなんですけどね。 -
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【万吉】日本橋の上で刃物を振り回した。おやすに恨みがあるらしい。
【おきぬ】万吉の人質になって怖い思いをした瀬戸物屋のお嬢様で庄太が一目ぼれした。
【おやす】よく当たると評判の女易者。
【跡部良弼】とある鏡探しを神人に依頼してきた小姓組番頭。今回の裏の主役。
【佐治】腕のいい鏡師。
【文吉】佐治の十一歳の弟子で魔鏡らしきものを懐に入れた。
【御種人参】薬用の高価な人参で庶民の手には届かない。
【和泉与四郎】北町奉行所の常町廻りで堅物。
【松島屋仁右衛門】大名や旗本の供回りを斡旋している口入屋。善人か悪人か。
【弥七】蔵の一種である穴蔵を造る〈桝屋〉の職人。
【松葉蘭】強盗が質屋〈一六屋〉に押し込み松葉蘭だけ盗んでいき、高価ではあるもののそこまで価値あるものでもない。
【澤本神人】権力にも媚びず民の暮らしのためにできることをする態度がよい。
【庄太】可笑しみ担当やけど雑学の知識が冴える。
■簡単な単語集
【跡部良弼:あとべ・よしすけ】将軍の近侍である小姓組番頭(ばんがしら)。前南町奉行。植物の育成が好きで鍋島直孝とは同好の士。失脚した水野忠邦の実弟。神人に珍しい仕掛け鏡探しを依頼してきた。
【阿部正弘】現在の老中。水野忠邦失脚後政の方針を変えた。絶滅しかけていた芝居小屋などの数も復活してきた。
【和泉与四郎:いずみ・よしろう】北町奉行所の常町廻り。神人のかつての同僚で仲が悪いわけではないが、いいわけでもない。皮肉屋でひねた性格。仕事はきっちりしているし袖の下も嫌うので信頼はできる。妻の美智江は身体が弱く子供の手がかからなくなって気が抜けたのか今は寝たきり。
【遠藤但馬守胤紀:えんどうたじまのかみたねのり】若年寄。近江三上藩藩主。小姓組番頭である跡部良弼はその配下となるが大塩平八郎の乱のとき何もできなかった跡部に対し彼は功をあげたのであまりよく思われてないようだ。
【大塩平八郎の乱】この話ではすでに起こった後。跡部良弼が大阪町奉行だった。彼が求めに応じ大阪も飢えていたのに江戸に米を送ったことが発端かもしれない。
【音吉】勢が女将だったももんじ屋〈湊屋〉の板前だった。
【鏡師】曇った鏡を磨く職人。柘榴の汁をつけた藁で磨くらしい。
【勘兵衛】丸屋勘兵衛。神人が懇意にしている町名主。庄太を紹介した。
【金次】和泉与四郎の小者。神人が常町廻りだった頃使っていた小者。
【くま】澤本家の愛犬。臆病なところがある。
【澤本神人:さわもと・じんにん】→神人
【芝居小屋】老中阿部正弘による政の変更により芝居小屋数が急速に復活し客の争奪戦が激しくなって抽選で高価な景品を出すところも増えてきた。その辺で神人の役目に絡み始めている。
【庄太】神人の使う小者で計算が得意で意外に頼りになるがいつも腹を空かせている。丸顔。勘兵衛が寄越しており雇い主も勘兵衛。雑学に詳しい。
【諸色】諸色とはここでは物価の意味ということで物品の価格が適正か調べる同心ということらしい。今で言う公正取引委員会みたいなもんかと。
【神人:じんにん】澤本神人。北町奉行所諸色調掛同心。座右の銘は「なるようにしかならない」。諦念ではなく、楽観。ただし、ただ見ているのというのではなく、なすべきことはなし最善をつくした上でということ。事務仕事は嫌い。常町廻りを務めた後隠密同心を拝命したが鍋島直孝が顔が濃いので向かないと言い現在の役目に就くことになった。二枚目ではあるそうなので、若い頃の阿部寛さんをイメージしながら読みました。
【勢:せい】悪い噂を流されて潰れたももんじ屋の〈湊屋〉の元女将。今は勘兵衛のところで女中をしており、気が利くので重用されている。
【多代:たよ】神人の姪(亡くなった妹初津:はつの娘)。初登場時七歳だがしっかりもの。
【鳥居耀蔵】元南町奉行。水野忠邦とともにすでに失脚している。
【鍋島直孝】現北町奉行。
【ふく】澤本家の飯炊き。
【松島屋仁右衛門:まつしまやにえもん】主に大名や旗本の供回りを斡旋している口入屋。
【水野忠邦】元老中。すでに失脚しており、老中は阿部正弘となっている。
【茂田井憲吉】神人の同役。二十二歳。がっしりした身体で厳つい顔。事務仕事は得意。物事に細かい。元は下馬廻り役。 -
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御薬園同心・水草様と千歳様の物語
ずっと続きが気になってはいたのですが
ようやく完結編を読みました!
今回も連作短編集になっていて
園丁頭の娘さんの
結婚話に関わる問題を解決したり
急に不仲になった嫁姑の謎を突き止めたり
千歳様や蘭方医の河島先生らと共に
大小さまざまな出来事があります。
中でも『接骨木(にわとこ)』は
診療所に発生した疫病の話で
やはりハラハラしました。
水草様には紀州に医学の勉強へ行くという
近い将来の目標があって
それまでに身を固めさせようと
ご母堂から見合い話ラッシュ(笑)
一方、蘭学を目の敵にする役人が
水草様と河島先生を陥れるべく
虎視眈々と狙っている。
このふたつの問題が、どう着地するのか。
見届けられてよかったです。 -
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御薬園同心という役職にある青年
水上草介を主人公にした連作短編集。
時代小説だけど、剣劇はほとんどなし!
こういうのが好きだなぁ。
幕府直轄の薬草園「御薬園」を管理する
優しい心根の「水草さま」は
その薬を求める患者たちや
そこで働く周囲の人々の
ちょっとした問題を解決して
心と体の病を治すのです。
草介の上役の娘で、男勝りの千歳が
ちょいちょい顔を出しては
問題を持ち込んだり、引っ掻き回したり。
でも、これが何だか可愛いのよね〜。
小石川養生所の蘭学医師との交流から
薬草を中心とした和漢の医療と
西洋医学の違いを知り
どちらも患者を救うためには
大切と考える草介に
長崎留学を勧める男があらわれて
物語はまだまだ続きそうです。