梶よう子のレビュー一覧
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山東京伝が吉原の女性を二人も妻に迎えたという話は知っていたが、京伝の詳しい人物像などは知らなかったので興味深かった。
二人目の妻・ゆり視点と京伝視点で描かれる物語。
現在放送中の大河ドラマでもすこし登場している京伝だが、本作の京伝もしなやかで、つかみどころがなさそうで、でも情が深い。
ドラマの方では今後どのように描かれるだろうか。
一人目の妻・菊との出会いから短い結婚生活の話
二人目の妻・ゆりの、今はいない菊に対する苦悩と京伝への想い、そして自身の生い立ちに関する物語
ゆりとの出会いのきっかけとなった若き侍の仇討ちエピソード、蔦重や歌麿、鶴屋などとの交流と享保の改革山東京伝が吉原の女性を -
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浮世絵師・歌川広重の一代記。
フォローしている方のレビューを見て「読みたい」に入れていた。
私が子どもの頃に初めて浮世絵を認識したのは、当時流行っていた切手収集のカタログの中だった。
国際文通週間に発行された「蒲原」や「箱根」、「日本橋」や「三条大橋」などの「東海道五十三次」の絵柄は記憶も鮮やか。「月に雁」は「見返り美人」と並んで手が届かないものの双璧だった。
いずれも安藤広重(当時はそう呼ばれていた)の作品で、以来、葛飾北斎とともに浮世絵の巨頭として認識する。
そんな広重だが、この本では、口は悪いが基本的には武家の出らしく真面目な人、という感じで描かれる。
その人柄ゆえ、要らぬ苦労もたく -
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「ことり屋おけい 探鳥双紙」の続編。
調べてみたら、前作を読んだのは2014年だった。
ボヤッとしか覚えていないが特に支障はなかった。
羽吉と離縁し、羽吉が残した飼鳥屋を一人守ってきたおけい。カナリヤの番(つがい)を買って行った武家らしき老夫婦が、しばらくして何故か番屋を通してカナリヤを返してきた。
不審に思い調べようとしたが、その直後大火事で焼け出されてしまう。
店の鳥たちをなんとか一緒に避難させ、逃げる途中で知り合いの定町廻り同心・永瀬からある理由で口が利けない娘・結衣を託されるが、火が収まっても永瀬の行方は分からないままで…。
ここ最近日本各地で様々な災害が起きている。そういう時に生 -
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初めての作家さん。
「文庫王国23」でも紹介されて、さらに敬愛する北上次郎さんが解説という事で期待して読み始めたが、うーん・・普通かな。
江戸時代の下町が舞台で、当時は下に見られていたとむらい屋稼業の面々が主人公。
いわゆる人情もので一遍一遍はいいお話で、特に颯太がとむらい屋になるきっかけを描いた六章は素晴らしい出来なのだが。
しかし全体として見ると、なんなんだろう少しうす味。オチがミエミエだったり悪者が類型的だったり、あまりに予定調和的だったりして興をそいでいるのが否めない。
やっぱりこの手のものは、周五郎だったり周平の方が一枚上手で私の肌に合うように感じた。 -
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北町奉行所諸色調係同心・澤本神人(じんにん)シリーズ第二作。
前作を10年以上前に読んだので詳細を忘れていたが、問題なく読めた。
『諸色調係』とは『市中に溢れる品物の値が適正かどうか調べ、あるいは無許可の出版物の差し止めなどを行うお役目』とのこと。
よくある切った張ったの類の事件を扱う『定町廻り同心』とは違った地味な役職ではあるが、物語の方はなかなかシリアスだった。
女易者に騙されたと男が暴れたり、南蛮の仕掛け鏡を巡って危険が迫ったり、偽の薬用人参が流通したり、雇われ中間が行方不明になったり、これは澤本の担当なのか?と思うような調べもあるが、そこは役人、上から頼まれれば嫌とは言えない。
今 -
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浮世絵師歌川広重の人生を描いた作品。
火消同心である安藤重右衛門は絵師歌川広重としての顔も持つ。だが肝心の絵はなかなか売れなかった。そんなままならない日々を送っていた重右衛門はある日絵の版元から東海道五拾三次を描いてみないかと誘われる。北斎の富嶽三十六景に触発された重右衛門はその誘いに乗って描くことにする。
己の絵の才を疑わない姿は鼻持ちならないが、絵に打ち込む様子はやはりすごい。特に北斎の富嶽三十六景で目にした藍色に心を奪われるのはさすが。異国から来たそのベロ藍と呼ばれる色を広重ぶるうとして絵に使うようになるがすぐには売れないのが残念に思われる。
少々長いけれどもそれを感じさせない力作。