あらすじ
信州小布施の豪商、高井家の惣領息子・三九郎は、かの有名な絵師の葛飾北斎に会うために江戸へやって来た。浅草の住まいを訪ねてみると、応対してくれたのは娘のお栄。弟子入りを志願するもまともには取り合ってもらえず、当の北斎はどこかへ出かける始末。美人画で有名な絵師の渓斎英泉こと善次郎にはかまってもらえるが、火事見物につき合わされたり、枕絵のモデルをやらされたりで、弟子入りの話はうやむやのまま。そんな折、北斎の放蕩な孫・重太郎が奥州から江戸に戻ってきたことが伝わる。同じころ、北斎の枕絵や鍾馗の画の贋作が出回る事件が出来し、重太郎に疑いの目が向けられるが……。
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Posted by ブクログ
天才絵師葛飾北斎を中心に、娘のお栄(応為)、美人画絵師渓斎英泉、そして本作の主人公である高井三九郎(後の高井鴻山)ら浮世絵師たちの人間関係を仏教絵画の曼荼羅のように描いた作品。
絵師としては北斎を光とすると影のような存在のお栄は奔放極まりなく、ムードメーカーの英泉との絡みが話を盛り上げる。三九郎はちょっと頼りなげな地方の豪商の惣領息子で、京での絵の修行を終え北斎の門下となるべく北斎のもとを尋ねるがまともに相手にされない。そんな中でジワジワと出てくるのが北斎の贋作話が出てくる。中々のストーリー展開。
昨年から、北斎と応為をテーマにした小説や美術書、漫画に積極的に触れてきているが、これまでとは一味違った時代小説としての楽しみを感じた。
Posted by ブクログ
信州小布施の豪商の総領息子・高井三九郎が葛飾北斎の元へ弟子入り志願にやってくるところから話は始まる。描くことしか頭にない北斎、その北斎を支える出戻り娘・お栄、弟子・渓斎英泉こと善次郎、そして問題児の孫・重太郎らが織りなす人間模様…タイトル通りの北斎を中心とした人間曼荼羅。北斎とお栄、お栄と善次郎、北斎と善次郎の江戸言葉の掛け合いも面白い。終始賑やかな感じだが、最後は互いに思いやる気持ちにじーんと来ました。