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元治2年(1865)、清太郎の師匠・三代豊国の法要が営まれる。広重、国芳と並んで「歌川の三羽烏」と呼ばれた花形絵師だった。歌川の大看板・豊国が亡くなったいま、誰が歌川を率いるのか。弔問客たちの関心はそのことに集中した。清太郎には八十八という弟弟子がいる。粗野で童のような男だが、才能にあふれている。己が三代に褒められたのは、生真面目さしか覚えがないのに。──時代のうねりに、絵師たちはどう抗ったのか!
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Posted by ブクログ
幕末から明治の絵師、二代国貞、四代豊国。本名は清太郎。これが主役。 パッとしない絵師だと思う。 作中でもそう。師匠の三代豊国からも、面白味に欠けると言われていた。その代わり飲む打つ買うには無縁の堅実な人柄。 清太郎の弟弟子の八十八は画力に優れた天才肌で、宵越しの銭を持たず家に居着かず、何度となく女房...続きを読むも変える破天荒さ。 浮世絵を軸に幕末から明治初期の江戸を描いた作品といえる。 浮世絵は芸術かどうか。浮世絵師は芸術家か画工という職人か。その辺りも興味深く読めた。 幕末から明治といえば、江戸が東京と変わり、何でも西洋風を良しとする新政府のやり口で段々と古き良き文化が廃れていく時代。 画力の足りない絵師の清太郎がなぜ主役なのか。 清太郎は消えていく江戸の錦絵を守ろうとする。 三代歌川豊国の絵に惚れ込み、好きで好きで仕方ない。だから絵師になり、浮世絵が先細りになるとしても守りたいと力を尽くす。明治に入ってから四代豊国を襲名し、卒中でヨイヨイとなり筆が握れなくなっても、失われていく江戸を掬い上げようとする。 だからタイトルはヨイ豊。 清太郎が豊国の弟子として絵を描いていた時代、師匠の死後の幕末期辺りが、比較的分量が多い。 それでも、ヨイ豊というタイトルからして、1番重きを置かれたテーマは、浮世絵と江戸を愛し守らんとする清太郎の心なのでは、と思った。 明治に入って、西洋風の芸術が上で江戸の絵は下とと話す長州人が出てくる。(前原という人で、萩の乱を起こした前原一誠と関わりがあるのかどうか?少し気になった) が、西洋では日本人が下と見る浮世絵が芸術家に影響を与え、ジャポニズムの波が起きていた。なかなかの皮肉であり、旧江戸に肩入れして見れば大変に痛快に感じる。 元彰義隊の小林清親、八十八こと国周の弟子揚州周延といった名が出てきて、幕末ファンとしてとても嬉しくなった。 揚州周延は旧高田藩で箱館戦争にも行った神木隊に属していた。そのうち彼のことも掘り下げて小説にしていただけたら嬉しい。
幕末。絵師歌川一門の清太郎、そして師匠、弟子たち。 幕末の動乱から新政府の元、江戸から東京へ変わる世の中、必死に『江戸』を守り抜こうとする町人の姿は正直初めて知る維新の姿だった。 登場人物の名前がややこしくて読みにくかったが、次第にそれぞれの個性に惹かれるほど夢中になれた。 広くて深い浮世絵の文化...続きを読むに興味が湧いた。 『ヨイ豊』とはなんと切ないタイトルだろう…
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