吉永南央のレビュー一覧
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ネタバレ和食器とコーヒー豆を扱う小蔵屋を営む杉浦草ことお草さん。
お店の近所で出会ったタケルという男の子との出会いときっかけに知り合った設計士の田沼という男。
芸術家という夢を叶えた病魔に犯されるナオミから頼まれた昔のこと。
評判の良くないつづらというお店の悪業の裏にあったもの。
お草さんの昔の見合い相手の呉服店マルフジの藤原と田沼の意外な関係。
ダイデン不動産とマルフジによって店も商売も取られ借金だけとなって泣く人たちの存在をお草さんは知ってしまい
自らのお店も少なからず正体不明な影が忍び寄るなか
お草さん直々にすべての元凶の藤原に会うまで。
お草さん、お久しぶりです!
すごい大冒険だ -
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シリーズの中で、私には最も合っているように思いました。一番面白く感じた、ということかな。
登場人物が動いていく中で、それぞれの人間性がこれまで以上にはっきりしてきたように思えたから、と自己分析しています。お草さんがなんだかとっても楽しんでいるようで、それが嬉しい。
もちろん、事件が起きるということはそこに悪意とか自分に対する過度の愛情とか、そういうものを持っている人がいるということになるのだろうけれど、それが最小限に抑えられて、あとは何とも言えない良い人がたくさん、あたたかな印象を残す人がたくさんいるということが、とてもうれしく感じました。
次作では、今回、課題(?)として残されたかに思えるこ -
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紅雲町シリーズも5冊目。
お草さんの人付き合いの積み重ねと推理が町内の思わぬ秘密を紐解いていきます。
北関東の小さな町・紅雲町で、コーヒー豆と和雑貨の店を開いている杉浦草は70代も後半。
今も着物を着ていて、丁寧に家事をする。身体がしんどいなど草の視点から語られる感慨はいかにもおばあさんだけど、芯が強く目も確か。
若い久実が店員となり、仲良く店を切り回しています。
亡き母が形見として友人に送るよう書き残していた着物をどうしようか迷うお草さん。
鰻屋の女主人・清子はかって母の親友だったが、なぜか仲違いし、草も鰻屋には行かないよう禁じられたまま年月が経っていました。
お祭りの山車の保管場所を巡 -
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ネタバレ*誰も本当の名前を思い出せない、ただFと呼ばれる彼。会社の不正を知った43歳の容子は、Fだったら、と自問する。解体業を営む43歳の悦史は、高校でリンチに遭わせたFの言葉に今も囚われている。41歳の有輔は25年前、淫蕩な母をナイフで刺し殺そうとしていた自分を止めたFの一言を反芻していた。目撃談のように語られるそれぞれのFの記憶。人生において喪失は再生の始まりであることを描いた一筋の光のような美しい物語*
最近お草さんシリーズが重過ぎる私には、丁度いいくらいの重量感でした。翳り、やるせなさ、諦め、もどかしさ、などの入り混じった人間模様の描写はさすが。一筋の光…とまでは感じなかったものの、救いの残 -
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ネタバレ*紅雲町では山車蔵の移転問題が持ち上がり、お草が営む小蔵屋の敷地が第一候補に。話し合いが必要だが、お草は母の言いつけで「うなぎの小川」とは絶縁状態で、話し合いができない。かつては親友だった女将と亡母の間に、なにがあったのか。紅雲町を歩き回るうち、お草は町全体に関わる重い事実にたどり着く。シリーズ第5弾*
安定の世界観に卓越した表現力、いつもながら素晴らしいです。ただ…回を追うごとに、心に刺さる内容の重さが少々辛いのも事実。出来れば目をそむけたい、そんな現実がつまびらかになっていく様が克明過ぎるせいかな。
秋冬の、心に余裕がある時に読みたいシリーズ。 -
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若さゆえといえるだろうか、悩み自分をもて余すような時期がある。そんな時期に目立たないはずなのに巣くったように今もときどきよみがえるFという同級生あるいは近所の青年。転機をつくってくれた彼のことを、いいトシになっても苦悩したり思うようにならなかったり不甲斐なさを感じるときに思い出す……そんな3人の物語と、最後にF自身の今が描かれる。
孤高のF。あざやかに規範を破ってみせるF。3人の物語からそんなF像を描いていたんだけど、最後のF自身の今の物語からは孤高が破られそうな感じが漂ってきた。「ブルータスよ、おまえもか」という感じ。
さながら、「人は一人では生きられない、誰かとともに生きているんだ」的な陳