堂場瞬一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大友の一人息子・優斗がパーキングエリアから消えたことから、否応なく事件に巻き込まれていく大友。
幸いにも優斗は無事に戻ってはきたが、誰が、何のために優斗を拉致したのか。
優斗の精神的ダメージを気にかけながらも、大友はどうしても事件が気になってしかたがない。
企業が会社という組織を守るために隠蔽工作を行うことは、別に珍しいことではない。
最近ではそれでも以前よりも減ってきただろうけれど、隠蔽したことで新たな犠牲者が出るケースもこれまでにはあった。
横浜で起きたタイヤ脱落による母子が巻き込まれた死亡事故。
湯沸器の動作不良が原因となった一酸化炭素による死亡事故。
社会的に許されることではないし、すべてを公けにして事後原因を究明し、二度と同じような事故を早急に起こさないようにすること。
それこそが企業としての責任を果たすことになるのだと思う。
銃弾を受け、事件の現場からしばらく遠ざかっていた大友。
以前とはどこか違う自分を、捜査の過程で思い知ることになる。
前には感じることがなかったためらいがあったり、焦りがあったりと、事件に一歩踏み込んでいくことがなかなか出来なくなっている。
それでも、爆発物を発見したときに咄嗟に刑事としての行動を取る大友はすごい。
やはり根っからの刑事なのだと思わせる場面だった。
復讐の念に囚われた者は、その感情に呑みこまれて行く。
視野が極端に狭くなり、自分のしていることの意味すら見失っていく。
復讐者にもそれなりの理由があるだろうけれど、結末はけっして誰も幸せにはなれないのだと、あらためて思った。 -
購入済み
ソツが無い
やっぱり安定感がある。
事件と家庭問題のバランスや、主人公が 演劇をやっていたという設定の活かし方、などなどどれをとってもソツが無い。
ただ、シリーズの特徴だし、それが味にはなっているのだろうが、緊迫感には欠けてしまう。
まあ、そうは言っても、十分楽しめる1冊だ。
-
Posted by ブクログ
阿比留室長の失踪事件が一段落し、失踪課も何とか落ち着いてきたかと思ったら、今度は失踪課員六条舞の父親が失踪!
事件性はないかと思われたが、身代金要求が届き、高城たちは振り回される。
そんな最中に、明神愛美にお見合い話!
高城は、彼女が必要なことを痛感する。失踪課の戦力として?個人的に?高城は戸惑いを隠せない。
高城と愛美の関係、あるいは法月の娘・弁護士のはるかとの関係。事件の本筋よりも、こちらの方が気になる(笑)
さらに、失踪課の面々のそれぞれの今後も。
このシリーズは特に、失踪課各員が良く書き分けられており、それぞれのスピンオフ作品が出ないものかと期待しているのだが・・・
このシリーズも、あと三話。高城の娘の行方も気になり、今後どう展開するのだろうか。 -
Posted by ブクログ
コーチとなった今岡は小泉とコミュニケーションを何とかとろうとする。
だが小泉の他を遮断するような態度は変わらない。
その原因は何か?
今岡は小泉の過去をたどり始める。
リレーとは、競泳に限らず陸上競技でも駅伝でも次の人にレースを引き継ぐということが絶対条件だ。
バトンがない競泳のリレーでは息をあわせないと最高の状態で引き継ぐことは難しい。
チームがひとつにならないと。
その思いは今岡を、そして矢沢を動かしていく。
「FS-1」に翻弄される選手たちこそいい迷惑だろう。
メーカーにはメーカーの努力が必要で、物語では無能な上司ひとりの責任のように描かれていたが企業ならば二重三重に対策を考えておくべきでは?と思った。
熾烈な企業競争は仕方のないことかもしれないが、競技者である選手が巻き込まれるようなことは二度とあってはならないと感じた。
終盤に用意されていたオリンピックの本番。
やり直しはきかない一発勝負のメドレーリレー決勝。
すべてはこの感動のために長い物語があったのだと納得できるラストだった。
チームとはどんなものなのか?
ひとりひとりの選手に求められているものは何なのか?
それぞれの登場人物の描き方が丁寧で物語に深みを与えていた。
堂場さんの描くスポーツの世界は本当に素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
競泳選手としての限界が見えてきた今岡に「まだやるんですか?」と言い放つ小泉。
孤高の王者もいいだろうが、ここまで不遜な態度だと嫌われ度も半端ではない。
選手仲間からは孤立し、監督からは腫れ物扱い。
誰も小泉に手を差し伸べる者はいない。
それでも、好記録を叩きだす間は小泉を問題視する声がどこからもあがらない。
競泳というのは本来個人スポーツだ。
勝敗もタイムという誰が見てもわかる数字によって決定する。
リレーというのは競泳選手にとって特殊な競技なのだろう。
ロンドンオリンピック男子400mメドレーリレーでの銀メダル獲得が記憶に新しい。
入江・北島・松田・藤井の4名によるチームだった。
どんなに優秀な選手であってもいつかは現役を退かなければならない。
今岡の葛藤や迷いが読んでいて辛かった。
日本記録保持者だろうとメダリストだろうと、衰えを感じるときは必ずくるのだ。
対極にいるように見える今岡と小泉だが、実はそれほどの違いはないのでは?と感じた場面もある。
焦りや苛立ち、葛藤を感じているのは今岡だけではないように思えた。
そして実際のオリンピックでも話題になった水着問題がこの物語でも取り上げられている。
着用した者のほとんどが記録を更新していく水着は、メーカーとの契約問題とも絡んで選手たちを翻弄した。
物語でも「FS-1」を次々と他の選手が着用していく中、かたくなに所属会社の水着を着続ける矢沢がいる。
今岡は決断する。
現実を現実として受け止めた今岡はすごいなと思う。
現役の選手ではなくなっても、それでも成長することを止めない。
一歩先を見据える精神力があればこそのメダリストなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
引きこもりともいえないような状態で暮らしていた将。
突然現れた祖父・和馬によって拉致され母の実家に連れてこられた。
二人だけの奇妙な同居生活が始まり、将はこれまでの生活では考えられなかった出来事に遭遇していく。
老人介護がひとつの大きなポイントになっている。
将や健太の祖母への思いは、そのまま両親との希薄な関係のうえに成り立っている。
互いに理解することを諦めてしまったのか、それとも最初から寄り添う気持ちがなかったのか。
精神的にいっぱいいっぱいだとなかなか周囲にまで気が回らない。
それほどまでに介護とは大変なものなのだろう。
引きこもりっぽい生活を送りながら将は何を考えていたのだろう。
読み進んでいくと彼の思いが少しずつ見えてくる。
ひとつずつ前に進む、ひとつずつ自分が出来ることをこなしていく。
それによって自分が変わるだけではない。
確実に周りも変わっていくのだと物語は教えてくれる。
堂場さんには珍しい物語だなと最初は思った。
けれど読んでいくうちに「人は変われる。人は成長する」という堂場さんの思いが伝わってくる物語なのだと気づいた。
一歩踏み出す勇気、前に進む力。
そんなものを感じた物語だった。 -
Posted by ブクログ
都内と神奈川県内で同時期に起きていた連続婦女暴行殺人事件。
手口は非常に似かよっていたため、特捜班にいた神谷は当時から神奈川での事件に注目していた。
しかし、取調べの過程で不祥事をおこし伊豆大島に左遷。
何かを諦め、何かを誤魔化すように、大島での生活を送っていた。
突然に下された特命に戸惑う神谷。
北海道、本庁、大阪、福岡などからバラバラに召集された刑事たち。そして畑違いの管理官。
寄せ集めの検証チームが編成された。
彼らは徐々に予想も出来なかった真実に迫っていく。
勇気ある人間の残した遺書が突き刺さる。
一部は判別できないほどに乱れた字が伝えてくる怖れ・・・。
本人が書いたとわかるようにDNA鑑定用にわざとつけられた血痕。
監視の目をかいくぐって投函されただろう遺書に込められた思いは、あまりにも重い。
正義よりも真実よりも大切にされる警察という名の組織。
「こんな馬鹿なことが起きるわけがない」と笑い、「架空の物語の中だけの出来事だから」と言い切れたらどんなにいいだろう。
だが、現実に数々の警察の不祥事が発覚し、隠蔽工作に加担した警察官たちが何人も処分を受けている。
氷山の一角、表沙汰にならないものを含めればその数はもっと多いはずだ。
彼らが守るべきものは警察という組織ではない。
本当に守るべきものは、正義であり市民の安全だと思うのだけれど。
誰かに話すということで何かが変わることもある。
神谷も凛も自分を変えたいと願っている。乗り越えたいと思っている。
知らなくてもいい真実は、彼らの中にどう受け止められたのだろうか。 -
Posted by ブクログ
巻を追うごとに大友が刑事に戻っていく感じがする。
もしそうならば、福原の思う壺なのだけれど・・・。
罪を償った犯罪者のその後を気にかける刑事は、きっとものすごく良い刑事なのだろう。
でも、大友が言うようにすべてを知りうるわけではない。
中には信頼してくれている刑事を裏切る者だっているだろうし、悪事がバレないように上手く立ち回る者だっているだろう。
刑事だって人間だ。
裏切られれば心は傷つくし落ち込むのは当然だ。
感情的になったりするのも・・・。
大友が抑制の効いたキャラクターなので、余計に感情に走りがちな彼らに人間臭さを感じてしまう。
そこがこの物語の魅力のひとつでもある。
「阿呆のくせに、何でも知らないと怒り出すんだ」
知ってどうなるわけでもないのに、自分だけがつまはじきにされると怒り出すタイプは、確かにいる。
上司だったら、一番扱いにくいタイプだ。
いるいる、こういうタイプ。
「で、聞いてどうするわけ?」と逆に聞いてみたい気分になる。
こういうタイプに限って口は出すくせに責任は下に押しつけて、自分は知らん顔を決め込む。
プライドだけは天下一なのに自分のことが何も見えていない。
自分の技量も何もかも、ありのままを認めてしまうのが怖いのかもしれない。
仕事をしていくうえで会社が大事なのはわかる。
そのために犯罪者にまでなってしまうのは何か違う気もするけれど。
人生をかけて会社を守ったとして、それがいったい何だというのだろう。
「お前らには一生わからない!!」と叱られそうだが、組織としての会社よりも自分の人生の方が何倍も大切だ・・・と思ってしまう。 -
Posted by ブクログ
今回の事件の発端は、大学理事長の失踪(?)。
シリーズものを読むというのは、安心感と安定感で、まるで旧友と会うかのような感覚かもしれない。
一定のリピーターを確保でき、作家、出版社とも営業上欠かせない戦略ともいえる。
「訳アリの人間ばかり集まった」という失踪課シリーズも、主人公はじめそれぞれ魅力的な脇役がそろっており、また次の巻へと手が出てしまう。
高城の今回の相棒は、明神愛美。異動当初から比べ、大分たくましくなって、そういう成長の足跡を見られるのも、シリーズものの魅力。
7年前から行方不明になっているという、高城の娘綾奈の動向も気になり、最終巻まで付き合ってしまいそう。