坂本龍一のレビュー一覧
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音楽家 坂本龍一の自伝。2009年の自伝「音楽を自由にする」以降の活動を口述筆記したもの。
若い頃は、気力体力に自信があって、健康も問題なく活動していた彼が、2014年に最初の癌に犯され、その後寛解して復帰したものの、2021年に転移再発して2023年3月に亡くなってしまう。前回の自伝上梓後の音楽活動とこれまでの節目となった出来事、地震や原発反対活動及び自身のルーツ、癌との闘病生活など、これまで語られてこなかったエピソードや思想を綴る。
テレビで見る彼の姿は、いつもすごく冷静で頭脳明晰な芸術家のイメージがあったけれど、実際は熱い心の持ち主だったようだ。様々な出来事に対する喜怒哀楽の感情が文章から伝わってくる。2011年の東日本大震災以降は政治的な活動も行ったようだが、これは怒りの感情が原動力になっている。また感情が高ぶってよく号泣することもあったようで、それは自分にとっては意外だった。自身の作品、演奏や共演した人達に対する彼の本音も語られていて、とても興味深かった。素晴らしい作品を発表し、良い友人知人や出会いもあって、自分にとっては羨ましくなるような充実した人生に見えるけれど、本人には道半ばでやり残したことも多かったのだろう。ただ仕事一途で人生を全うできたことは、幸せだったかもしれない。日本の偉大な作曲家の一人だったと思う。 -
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幼少期の頃からの自身を振り返る前著「音楽は自由にする」はまさしく自叙伝という感じだったが、前著に引き続き2009年から亡くなる直前までを振りかえる本書は自叙伝というよりはむしろ日記のようだ。読書家でもあった教授が、仕事のこと、友人や仲間のこと、アートのこと、環境問題、反原発、東日本震災、ウクライナ侵攻など社会問題のこと、闘病のこと、生と死のこと、について語る一つ一つに一家言があり、坂本龍一自身が一冊の本であるようだった。死を間近にしているからか、書かれているすべての対象へ去りがたい愛着があるように、その向けられている眼差しの優しさ、慈しみのようなものに溢れていて、読んでいて気持ちよく、いつまでも教授の話を聞いていたいという気持ちになった。その対象の中でもやはり音に対しての強い愛着が印象に残る。作曲理論と時間芸術である音楽から脱して、自然発生する音そのもので表現しようとする晩年の取り組みのことが多く語られているが、教授の音に対するそれはまさに愛や恋のような感情を感じた。いつまでの教授の話を聞いていたいと先述したが、教授こそこれからももっともっといろいろな物を見聞きしたかったろうにと思う。
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ネタバレ
p49
「おまえ、ビートルズ知ってる?」って訊くんです。知ってるやつとは仲良くする。知らないやつは、あまり相手にしないことにする。
p229
ファシズムは何か崇高な美に対する強い憧れのようなものがあります。彼らは、ただ野蛮なだけではなく、高貴な教養があって、洗練されている者もいた。
p233
ベルトリッチ監督は、放っておくと半年でも編集を続けて全然違う映画にしてしまうような人なんです。
p287
戦車を買うわけにはいかないので、レンジローバー。
p291
その一方で、音楽的にも文化的にも、ぼくが得てきたものはほとんどアメリカ経由なんです。ロックはもちろん、東洋思想だって、禅だってそうです。
p316-317
人間が自然にかける負荷と、自然が許容できる限界とが折り合わなくなるとき、当然敗者になるのは人間です。困るのは人間で、自然は困らない。自然の大きさ、強さから見れば、人間というのは本当に取るに足らない、小さな存在だということを、氷と水の世界で過ごす間、絶えず感じさせられ続けた。そして、人間はもういなくてもいいのかも知れない、とも思った。
自問と自省、丁寧な語り口、本当に不思議な人。
直撃世代ではないけど、音源出たらたまに聴いていた、くらいの距離感。でも、最近どういう人だったのだろうかと興味がわき、購読。
思う、とか、かもしれない、とか、あくまで自身の感想と推量が多く、慎重である意味では素直(本人は天邪鬼だと思っていそうだけど)な人だったのだろうなと思いました。
本人は否定するけど、モリコーネを引き合いに出される日本人なんて、坂本龍一以外にいないでしょう。創作における原動力として、怒り、憤り、フラストレーションを糧に。見た目からは想像しにくいけど、そういう感情が見え隠れするのが彼の魅力の一つ。
これからも数多くある映画音楽とYMOやソロの音源など、長らく私の生活のそばにあるのだと思う。 -
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自伝『音楽は自由にする』の続編。
2009年以降の活動を振り返り、自身の語りからは2023年1月17日の71歳の誕生日にリリースされたアルバム『12』の話を最後に、聞き手の鈴木正文氏によるあとがきでは、坂本龍一氏が亡くなる少し前のエピソードも書かれている。
亡くなるほんの数日前まで精力的に仕事をこなされていて、頭が下がる思いがした。
楽曲の制作活動だけでなく、震災復興関連、脱原発や環境問題、明治神宮外苑地区の再開発問題など、活動の幅の広さ。ガンの闘病→療養を余儀なくされながらもなおこんなに活動できるなんて、凄すぎる。
本当に濃密すぎる71年の生涯だなと思う。
まだどこかで、いろんな活動を変わらず続けていらっしゃるのでは、と時々思ってしまう。
数々の素晴らしい作品たちをありがとうございました。 -
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『音楽は自由にする』と『skmt 坂本龍一とは誰か』を読んだあとに本書を読んだ。会って話したことは一度もないが、この本には坂本龍一が宿っている。読者一人ひとりに時間と空間を超えて語りかけるようとする坂本龍一がいた。読み終えると悲しみや感情ではなく、感謝と尊敬の念が溢れた。
「Ars longa, vita brevis」
ある日を境に何度も何度も目にしたこの言葉が、あの日と同じように突然目に飛び込んできたとき、胸にぽっかりと穴が空いたような不思議な感覚に陥った。どうして?まだ早すぎる——そんなことをまた思った。残されたものがあまりに多い。そして、追悼は終わることはない。 -
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坂本龍一 死後1年が経とうとしている。坂本の業績、「音楽は自由にする」2009年の以降亡くなる月の3月8日までを口述筆記したエッセイ。優しい語り口で書いているが、反戦、反原発の姿勢で音楽、芸術を縦横に表現し語っている。常に新しい音を模索して僕たちに提示している。発表した作品の制作過程など詳らかに教えてくれている。彼の業績は音楽だけでも多方面にわたり映画音楽でも実際に深く鑑賞して作り上げていることが書かれている。子供の時から多くの映画を見て映画に傾倒している。父の影響でと書いているが読書量も半端でなく博識で、人間に寄り添うダイバーシティ(多様性)を尊重するリベラルな芸術家であることがわかる。
私たちに寄り添い語り掛けるような控えめな口調ながら、安保法案や神宮外苑の伐採には最後までノーを発信した人でした。本人はもっと生きたかった、もっと表現したかったであろうことが伝わる本でした。
編集者の鈴木正文氏のあとがきは、熱いタッチで書かれていて、本当に神様は残念なことをしてくれたと思わせる追悼文でした。 -
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自分のタイムリミットがわかったときに、どう生きるか。
残された時間とエネルギーの不可逆性を芸術に巻き込み、音楽家として生きる姿に感動させられた。
「郷愁の感覚こそ、芸術の最大のインスピレーションのひとつ」という言葉が強く残っている。
そして、YCAMが坂本さんにとって思い入れのある場所だったなんて。世界中をまわる中で、ピンポイントであそこが選ばれるとは。自分にとっては庭のような場所なので、なんだか嬉しかった。
巻末には闘病中の日記が収められている。
2021年12月24日は、ただ一文だけ。
“今、何が聴きたい?”
本のタイトルと章の構成も美しい。
「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」
「ガンと生きる」
「母へのレクイエム」
「自然には敵わない」
「旅とクリエイション」
「初めての挫折」
「さらなる大きな山へ」
「新たな才能との出会い」
「未来に遺すもの」
改めて、人間国宝だなと思った。
...と思ったら、ダウンタウンの番組でアホアホマンになっていて、しっかり笑わせてもらった。ずるいぞ、いろいろ。 -
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『ガンと生きる』からはじまり『未来に遺すもの』で終わる。
その部分は昔聴いていたラジオ番組を聴いているような感覚で読んでいました。
私は中学2年の頃にYMOを知り、坂本さんのFMのラジオを聴き、戦メリや胸キュンの時代からラストエンペラーまで追いかけていました。
新しい音楽がどんどん生まれてくるような時代で、そこから先は少し離れていました。
この本を読み始めると、ラジオのあの口調のまま、癌と向き合いながら存在している坂本さんの言葉の束がとても懐かしくも思えました。
音楽に向ける思い、拘り、胸に響きました。
オンラインのコンサートやテレビのドキュメンタリーも含めて、この本で更に補完されて私の中で坂本龍一という人が、また一つ大きな存在になった気がしました。
鈴木正文氏のあとがきも、胸に迫るものがありました。
『音楽は自由にする』は、まだ読んでいないのでこれから読みたいと思います。
坂本さんが亡くなったニュースのあとぐらいから、デヴィッド・シルヴィアンの『Orpheus』をよく聴いていたのですが、フューネラル・プレイリストに入っていたのでびっくりしました。どこかでリンクしたのか、なんとなくそのような雰囲気の曲でもありますが。
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2026年最初に読んだ本。
とてもよかった。
2023年に亡くなった坂本龍一さんの語り下ろしの自伝。
雑誌『エンジン』に連載されたインタビュー記事がもとになっているとのこと。
単行本となったのは2009年初め。
インタビュー自体はそれより前。
坂本さんはまだ50代?
震災の後の活動などは含まれていない。
タイトルのことで、戸惑う。
「音楽は自由にする」ってどういうこと?
自由に音楽をするのか、音楽が人を自由にするのか?
タイトルをよく見たら「Musik Macht Frei」とある。
後者か。
しかし、複数の意味に開かれているところが、この人の生き方にふさわしい気がする。
幼稚園時代、ピアノと出会ったころのことから語り起される。
ピアノのレッスンは嫌い、パッと弾けない曲はいつまでたっても弾けるようにならないから、という。
小学校の頃からバッハが好き、ドビュッシーに衝撃を受け、ビートルズもストーンズにも親しむ。
もっと印象的なエピソードは、「将来何になりたい?」という質問に、「ない」と答えていたこと。
小さい時から、個性がはっきりしている。
しかも、それがつぶされることがなかったことがすごい。
そういう時代だったんだ、と思うのが、学生運動との関わり。
絶対不合格と言われ発奮して受けた新宿高校に合格。
高校時代はジャズ喫茶めぐりと学生運動に明け暮れる。
体制への批判、反抗といった硬派な一面がありながら、モテたい気持ちや、カッコよさは重視。
坂本さんの人柄の魅力が伝わってくる。
松本民之助さんの下で作曲の勉強は続け、高1の時、高校のOBである池辺普一郎さんに相談に行くと、「今の段階で藝大に受かるよ」とのお墨付きを得る。
一方で西洋音楽に絶望し、「解体するために進学する」。
ご本人いわく、「巻きこまれ体質」。
YMOも、映画出演も、環境運動も。
しかし、それはやはり坂本さんの吸引力と、関わったものは放っておけない気質(「妙な男気」とでも言えばいいのか…?)によるものと思われた。
矢野顕子さんとの結婚も、彼女のような天才を不幸な結婚から救うため、だったとは。
「巻きこまれ体質」という消極的な言い方にそぐわないほど、エネルギッシュで濃い人生。
71年間、お疲れさまでした。 -
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ネタバレ坂本龍一氏が雑誌の連載でインタビューに答えながら来歴を語ったものを集めた本。
出版のタイミングの関係で、亡くなるまでではなく2000年代の初頭くらいまで。
小生の父親世代ではないけれど、20年以上歳上なので、なかなか違う時代である。
ご存知の向きも多いが、坂本氏はかなり学生運動に傾倒していた方で、その周辺の登場人物とか、時代の雰囲気とか、読んでいても、なんとかついていけるかどうか、という感じである。
それくらい、独特な世界観の時代だったわけだが、娘が読んでも肌感覚としては伝わらないだろうなぁ、という印象。
個人的に面白かったのは、幼少期に経験した「点」と「点」がつながっていく様だったり、同じく映画に関わるようになっていった流れ。
あぁそこで作曲をやって、それがこうなって・・・というのが非常に興味深かった。
ガリガリピアノをやっていたわけではないけれど、勉強もそんなに頑張っていたふうではないけれど、それでもやっぱり芸大一発合格なんだなぁ。
そんなことも考える。
もちろん娘の進路も頭の片隅におきながら・・・。
あんまり有名な本でもないけれど、興味のある方は読んでみては。