坂本龍一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
◯ でも細野さんは、そういう勉強をしてきたわけでもないのに、ちゃんとその核心をわがものにしている。(146p)
◯ もともと現実は虚構で、虚構も現実で、境い目はないんです。(228p)
◯ ドビュッシーの、あの人類史上最も洗練されていると言っていい音楽にも、フランスの帝国主義、植民地主義の犯罪性が宿っている。(292p)
◯ できるだけ手を加えず、操作したり組み立てたりせずに、ありのままの音をそっと並べて、じっくり眺めてみる。そんなふうにして、ぼくの新しい音楽はできあがりつつあります。(317p)
★ご自分の人生について、誠実に語られていて、とても面白かった。お父様が編集者をされていたこともあり、文芸や評論にも明るく、映画にもお詳しい。ご本人ははじめは積極的ではなかったと語られているが、バッハやドビュッシーといったクラシックから、ミニマル・ミュージックや、ジョン・ケージ等の現代音楽を辿り、芸大では民族音楽や電子音楽も勉強されて、なおかつポップの道に入った。そういう方は唯一無二だったのではないか。
★環境問題、社会問題に対する活動も、積極的にではなく、やむを得ずやっていると言われているが、きっと、自分のためではなく、他者のために動ける人なのだろう。 -
Posted by ブクログ
自分がいつ死ぬか知らないから、わたしたちは人生を、尽きせぬ泉であると思ってしまう。しかし、物事は無限回起きるわけではない。ごくわずかな回数しか起きないのが実際だ。子供のころのある午後をあと何回、思い起こすであろうか?それがなければ自分の人生がどうなっていたかわからないほどふかいところで、いまある自分の一部になっているそんな午後であってさえ、たぶん、あと4回か5回だろう。いや、もっと少ないかもしれない。満月がのぼるのを見ることは、あと何回あるだろうか?たぶん、20回か。そして、それなのに、無限回あるかのように思っている。
…坂本さんが音楽を担当した1990年の映画『シェルタリング・スカイ』(ベルナルド・ベルトルッチ監督)の最後に登場した原作者のポール・ボウルズが、モロッコの場末のカフェにまよいこんだ主人公のキットを演じたデブラ・ウィンガーに、「迷子になったのかね?」とたずね、「イエス」とこたえたかの女に、原作となった1949年の同名の小説中にある上記の部分を、棒読みするように語ったのだという。
この本の中には、こういうすごいセリフがあるかと思えば、坂本さんはその母に厳しく育てられたんだという村上龍の言葉もある。
本当にこの人は物理的には70数年の人生だろうけれど、一体何人分の人生を生きたのだろうと思うほど、この本に中心的に書かれている、8年余りの時間は濃密で刺激的で、語り口は淡々としているけれど実はヒリヒリするような2800日余の日々だったんだろうな…合掌。