高橋源一郎のレビュー一覧
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ネタバレ高橋源一郎さんといえば私にとっては何と言っても『さようらなら、ギャングたち』で、その後の数作も読んでいたが、以降はエッセイ類の著作が多くなり、しばらく読んでなかった。この長編小説は私にとって久々の、高橋源一郎の本である。
『さようなら、ギャングたち』で駆使されていた現代詩の書法は、ここでは極めて平易な物語へと置換されている。これは氏の書法の経年の進歩による変化なのか、単に本書が宮沢賢治の童話的物語のパロディだからなのか、私は知らない。
さて平易ではあるが、冒頭から書かれていく内容はなかなかに深い。事象とは何か、人間とは何か、といった哲学命題が明確に打ち立てられている。「この身の回りに見える世 -
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ネタバレこれからを生きていく人へ贈るメッセージ。
日本の現状に危機感を抱いた内田樹が,中高生へとメッセージを送るために様々な人へ文章を書いてくれるよう依頼をした。統一感はあるような,ないような。しかし,皆,日本の現状に(というか,現政権に)危機感を覚えている人たちである。出版されたのは2016年7月なので,書かれたのはその少し前とすると,その後,イギリスEU離脱が国民投票で決まり,トランプ大統領が誕生し,また日本は重要法案を急いで通そうとしている。危機は加速しているのでは。
戦後の,戦後すぐの平和主義がそろそろ機能しなくなっている,そう感じる。軍隊を持たない,平和を守る国でありたい,でも,他国に攻 -
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いつの時代にも言われてきたのだろうが、大学生ってこんな幼かったっけ、と年増はつい思ってしまう。
こんなゼミだったら今の学生も楽しいだろうなとは思うけれど、そして、戦前戦後の世代のように岩波新書に知の権威の幻想も持ってはいないつもりだが、このくらいの感想文で岩波新書にしてもらえるのはどう考えても高橋源一郎の人徳?ネームバリュー?だよね。。。ゼミの報告レポートのようなもので岩波新書にする必要があったのか、という一抹の疑問は拭い切れない。
伊藤比呂美が私は好きではなかったのだが、ここでの「人生相談教室」は面白かった。
奥付のそのまたあとにおまけとは、画期的。 -
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SEALDsの主張にあまり共感はしないし、デモに参加しようともまったく思わないが、同世代の子たちがやっているSEALDsのような活動に敬意は表したいし、その意気は買いたいと思う。第一部のSEALDsメンバーの生い立ちやSEALDsの来歴について語られている部分はなかなか興味深かった。第二部の民主主義論については、民主主義という概念が多義的だということはわかったが、全体的にふわふわした議論がされている気がして、あまりピンとこなかった。あと、議論のまとめ役(?)の高橋源一郎氏は、たまに若者言葉を使うなど、変にSEALDsの若者たちに阿っているような雰囲気を感じ、ちょっとうさんくささを感じた。
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目もくらむようなスーパー秀才エリートだった人たちが、声をそろえてもはや反対することができない空気があったと言っている。ドイツ語で日記を書けるような、言葉を自由自在にあやつることができるエリートたちが、一億人の運命を左右するような決めごとを、最後には言葉でなく空気を読んで身を委ねたと語っている。
福島の原発事故直後の危機を回避するための政府首脳の重大会議、40年以上も続いた政府の憲法解釈を内閣の形式的合議だけで大きく変えてしまった経緯、いずれも議事録が残っていない。それが僕たちの国の致命的な欠陥だ。これはもう病気と呼んでもさしつかえないと思う。かつて有名な政治学者はこれを壮大なる無責任体制と呼 -
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これは、あとがきに書いてあるように「あなたの生きた時代ではなにがあったのですか」と尋ねられたら「こんなことがあったんだよ」と答えたいと思ったことを朝日新聞に連載したものを一冊にまとめたものである。
とりあげられたテーマは多岐にわたります。
その中でも、「心の中では気にかけていながら、結局、何もしなかった。そのツケが若い世代に回される」という一文には、頷かざるをえない。
じゃ、どうすれば・・・
お上に任せちゃいられない。自分たちの社会は自分で作るさという「エンパワーメント」
これは、国や公の組織ではなく、個人やある特定の目的のために自発的に生まれた集団が、公正で公平な世界を実現しようとして、 -
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当時の文壇という観点から見れば、新しい精鋭の一人がまた登場したといった具合か。大学紛争を境に、ジャズが学生の間では流行り、アメリカ文化なんかの影響を受け、旧来には無かった前衛的な作風の作家が多く輩出された(村上春樹や笙野頼子や島田雅彦あたりがそうだろうか)。
高橋源一郎もその一人で、突飛した内容が酷評され、吉本隆明の鶴の一声もあり、刊行され、ポストモダンの第一人者と呼ばれるまでになった――。という前評判を聞き、未だに読んだことが無かったため、手に取った運び。強烈な一冊。
発想がどこから来ているのか、滅茶苦茶な世界、理解出来ない構造、詩として綴られる文体。絶版になったのも仕方ないと思えてしまう -
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おじさん二人の対談集。東日本大震災が起きる前と、起きたあと。日本は何が変わって何が変わらないのか。
この中で、原発に30年反対し続ける瀬戸内海の小島、祝島の話がよかった。
毎日デモやっているといっても、ほとんど世間話しながら島の決まった場所を歩きつつ、たまに思い出したかのように「原発反対」と声を上げる。
それに、飯を作ってたからとか、飯作りにとかで途中参加したり離脱したりして、それを30年間続けている。
高齢化率が高止まりして限界集落になり、やがて人がいなくなるのが確実になっているのに、老人たちはやめない。
そういう地域の繋がりというもの、今は日本のどこにあるだろう。