高橋源一郎のレビュー一覧
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マイノリティは同情を得やすい。マイノリティを責めることは批判されやすい。「イジメられる方にも責任がある」と、声高に叫ぶことは憚られるが、それだってマイノリティを責める結果になってしまうからだろう。「イジメられっ子」は同情されているわけだ。
「悪」とはなにか。本書の中には明確な答えは書かれていない。「解説」の中で中森さんも述べているが、本書で語られているのは「悪」であって、悪ではない。「そもそも」のところで、「悪」とは何なのか、答えは明確ではないのである。その答えは読者それぞれが出すことを求められている。
考えてみると、「悪」とはマイノリティではないか。たとえば『アンパンマン』という作 -
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Posted by ブクログ
吉本隆明は『言語にとって美とは何か』と『共同幻想論』を読んで、それで終わってしまった。あまり熱心な読者であったわけではない。『言語にとって~』の方はさっぱり分からなかった印象がある。
この本は、高橋源一郎が語っているということで購入。タカハシさんが吉本隆明にそれほど心酔していたとは知らなかった。どちらかというと批判的かと思っていたのだが。
この本は、共著で講演を文字に起こしたもの+対談をまとめた形になっているが、やはりこの点のテーマでは対談ものは避けた方がいい。自分が吉本のことをあまり知らないこともあるが、何かの意図が成功しているようにもやはり思えなかった。
タカハシさんは吉本を語るにして -
Posted by ブクログ
よい文章とは何かという問いに、この本ははじめから答えを言っている。綺語を弄した文章ではなくて、誰かに伝えたいと思って腹の底から出た言葉だ。
技術論というよりも心構えの書。「文章教室」と銘打っているが文章読本にありがちな必読リストは無く、あまり美文という訳ではない文章が範として引かれる。文字を知らなかった老婆が必死に学んで残した文章であったり、はちゃめちゃなパロディ小説であったり、労働の中で書く文章であったり、ぼけつつある人が書き残した文章であったり、美しいと言うよりも、どちらかといえば重点が置かれているのはもの凄い文章の方だ。中にはジョブスのスピーチもある。
書き口は語り口調で馴染みやすく、 -
Posted by ブクログ
書店でみかけて、その場で買った本はひさしぶりだ。あの災害のあとにのぞいたものを、圧倒的な新しい日常の力に流されてしまう前に、考えておきたという気持ちが私にもあったからだ。
その意味ではたしかに役にたった。加藤典洋の「死神に突き飛ばされる」や、ジュネの「シャティーラの4時間」など、貴重なテキストを知ることができたし、それらをつなぐ著者の言葉が、読者にいろんな脱線を許す感じなのもいい。
しかし、最後まで読み終えて、何かが足りないという感じがする。最後の章で著者が語っていること、「自分」から出発しないこと、言葉をもたない存在を起点において語ることは、とても大事なことだと私も思う。しかしこの結論に -