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Posted by ブクログ
タイトルの「非常時」であるが、直接的には大震災のことを指している。そして、非常時には「空気」に抗い、借りものでない自分自身のことばを必要とされると説く。その自分自身のことばを得るためには、そのことばの内容がどうであれ「考える」ことが必要になる。そこで、それまで「考え」てなどいなかったことに気が付くのだ。まずは非常時にあたって絶句してみるべきではないかというのだ。
実際のところ津波被害にせよ原発の問題にせよ、多くの人は自分自身の明確なことばを持ち合わせていない。これまでに何も向かい合ってきていないからだ。
そういうふうに言われるととてもレビューが書きづらいのである。
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本書の構成は次の通り。「あの日」以降のことばと「文章」についての本だ。
I. 非常時のことば
II. ことばを探して
III. 2011年の文章
いつもの高橋さんの文芸批評のようにいくつもの文章を選んでいる。『文章教室特別編』などという副題も付いている。それでもいつもと違ってより慎重にさらには必然性を持って選ばれているように感じる。ジャン・ジュネのパレスチナ難民キャンプでの虐殺現場を描写した「文章」や『苦界浄土』に書かれた「文章」は強い印象を与える。
もちろん、本書に書かれた文章は大震災の後に書かれている。そして、比喩的に取るべきなのか字義通りに取るべきなのか、やや不明であるがこう書かれている。
「「あの日」から読めなくなった文章があるということだ。
「あの日」までは、ふつうに、楽しく、読めたのに。時には、感動したり、たくさんのものを受け取ることができたのに、「あの日」から、読めなくなった文章がある。」(P.155)
それは、アドルノが「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」と書いたものと同じなのかもしれない。
そしてある種の文章が読めなくなった理由は、最後の方に書かれている。それは「死」と「死者」を突然思いだしたからだ。「あの日」のできごとは、自分が子どものとき、「死」に気が付いたときの感覚をもう一度呼び覚ますことであった。
「どの子どもたちも、ある時、「自分の死」というものを突然、理解する。いや、そのことを想像して、理解を拒む。子どもたちにとって、それが、初めて世界が不可解なものに見える瞬間であるといってもいい。その瞬間、世界はまったく理解不能なものに変貌してしまうのだ。
ぼくも、いまでも覚えている。
その「理解」は一瞬のうちにやって来た。
夜、布団の中で寝ているぼくに、その認識が、突然生まれた。ぼくは死ぬのだ。絶対的に、必然的に。そして、一度も味わったことのない、逃れることのできない恐怖が、ぼくを襲った。
朝になると、恐怖は、かき消すようになくなっていた。世界は、以前の優しさを取り戻していた。だが、夜になると、また恐怖がやって来た。そして、その度に、世界は、のっぺらぼうの怪物のように見えるのだった。」(P.189)
ああ、思い出した。
一方「考え」のないことば、あの日以降に顕在化された不自由さにとらわれ、そのことに気が付くことのないことばが溢れている。あからさまに「空気」を感じ取る機会も増えた。その中でできることは、一層「文章」と「死者」に対して真摯に対峙しようとすることだけなのかもしれない。それがことばを一時失うことになったとしても。
Posted by ブクログ
震災後、社会は変わった。社会というか、著作に書かれているように空気が変わった。
震災といえば、まだ311である。
あの衝撃は、以後の地震災害を未だ凌駕している。
音に出すのを慎重になった言葉、単語自体もいっぱいあった。言葉にならない、言葉が出てこない、まさに絶句した時間も長かった。
それは、死者やその身近にいる人びと、渦中にいる人の立場、心情を想像してだったと思う。
電力の大消費地である東京に住んでいる罪悪感も大きかった。加害者のような気持ちだった。
読後、この著作の内容を私は受け止められてない、ざわついた気持ちで、再度、ランダムに開いては読んでみた。
非常時、まずは自分を見つめる。足元を見つめる。
こだまのように、誰かの発言を周りに、次につないでいく。その結果、私も色んな文章を聞くことができているのだ。
考える。反射で答えない。
前を見る、上を見る。でも、その前に足元を見る。
Posted by ブクログ
誰が書いていたのか
思い出せないけれど
2001年のアメリカでの同時多発テロ事件の
後では「言葉」と「世界の見方」が
変わったと書いていた文章を思い出していた
まして
髙橋源一郎さんがこの一冊のタイトルになっている
2011年の3/11の時は
この日本という国で起きた出来事
まさしく「非常時のことば」である
この一冊の中で
紹介されていく
石牟礼道子さん
ジャン・ジュネさん
加藤典洋さん
川上弘美さん
内田裕也さん
ナオミ・クラインさん
太宰治さん
山之口獏さん
リンカーンさん
堀江敏幸さん
鶴見俊介さん
まどみちおさん
…
その言葉、文章の数々が
「絶句」してしまった人の心に
波紋が広がっていくように
沁みわたっていくように
思いました
答えが無いことを考え続ける
自主規制。空気を読む。考えることを放棄する。それが楽。でも。
イスラエルの戦闘地域で、ジュネが夥しい数の死体を、艶めかしく書いた。その意味。
考え続けること。答えは出ないけど。
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