あらすじ
感性豊かな人気作家の読書日記とエッセイ。文学とは、楽しみの一つの形式である、という警句そのまま、表現・言葉の知的遊びの世界を好む著者から、本を読む人々への、ユーモアと優しさにみちた呼びかけ――徹底的に、断固として、非妥協的に本を読む。文学が芸術であるように、読書もまた創造的芸術である、と考える著者の、読書への愛着。作品の中から美しさを引き出す、感受性と能力を持つ読み手となるための、数々の工夫。現代人の密かな思いをとらえて選ばれた本の、楽しい読書法と、身辺を語るエッセイ。
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Posted by ブクログ
〜人がある「流行語」に到達する経路には二通りある。一つは、自らの意思と欲望でたまたまソコへ到りつくことであり、もう一つは、それが流行語であることを知って、わざわざやってくることである〜 紛れもなく本物は前者であるのだが、「流行語」という言葉自体は後者によって作られるという逆説が同時におこっている。
Posted by ブクログ
著者の比較的初期のエッセイなどを収録している本です。
本について書かれた文章が多いのですが、ときには音楽やマンガ、テレビCMにも触れられています。どこまで本気で書かれているのか判別しがたいエッセイですが、現代詩の直面している困難に触れたり、橋本治と吉本隆明の共通性を指摘したりと、ときおり示される鋭い著者の批評眼に目を開かされます。
「わからない方の現代詩が、世界と自分との関係のわかりにくさを表現していることがわかるのに、わかる方の俳句が、そんなにも直ぐわかってしまう作者の心像がわからない」という鋭い指摘に一瞬虚を突かれたようになってしまいますが、そのあとに「俳句を詠む人口が凄まじい勢いで増えているという話を聞く時(詩や小説などものの数ではなく)、ぼくが思いうかべるのは、無数の無名の作者たちによって清算される膨大な句の左側にある筈の(見えない)鑑賞文の存在である」と解説がなされているのを目にして、桑原武夫の「第二芸術論」以来の例の批判か、と安心させられたのもつかのま、「それはどこか、全ての軍人の魂が休むことになっている靖国神社を連想させる」という危険な言辞がつづけられるところなど、著者の面目躍如といった感じがします。