高橋克彦のレビュー一覧
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なんだこれ!めっちゃおもしろいじゃないか!
というのが率直な感想。こんなおもしろい小説に出会えてラッキーだ。
この小説を見つけたのは些細なきっかけだった。
古文の授業で『奥の細道』をやった。
この紀行文の中に、作者の松尾芭蕉が、奥州藤原氏の跡を訪ねて涙を流す「平泉」という箇所がある。
説明しながら、「そういえば奥州藤原氏についてはおれもちゃんと知らないなあ」と思い、奥州藤原氏を描いた小説はないものか、と探してこの小説を見つけた。
読んでみてとてもおもしろいのでびっくり。
全5巻でこれが1冊目。とにかく面白い。展開が熱い。歴史もよくわかるし、登場人物たちがみんなキャラが立っていて魅 -
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【ねじれた記憶】
『空耳だろうか。こっそりと忍び寄る足音が聞こえる。あれは私の足音なのだ。
振り返って確かめたい欲望にかられた。
ひたひたひた。
どちらの私も息を潜めていた。
【膚の記憶】
『体の関係ができたのは半年前のことだ。ママは三十八。私の生活に割り込んでくるような野暮な女ではない。五十にもなって妙な言い方だが、私たちは文字通り大人の付き合いをしている。』
【霧の記憶】
『だが、すべてはロンドンの霧のようにぼやけている。記憶にも時効があるのだろうか。
私はひたすらそれを願った。
でなければ生きていけないような気がした。
咲子を殺したのは私かも知れない。』 -
購入済み
日本古代史から続く歴史SF
半村良、石の血脈以来のお気に入り歴史SFで楽しんでます。前者も長編で一気読み出来ませんでしたがこれはもっと無理。膨大な史料調査がベースにあってもあくまで小説、というのについ引き込まれます。まだ読み終わってませんが長い歴史を持つ日本を見つめ直し故事巡礼の旅に出たくなります。但し日本の地理と歴史に興味が無いと??かも知れません。ディスカウント合本冊で一気に入手出来て嬉しいです。
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本書の舞台である平安京遷都前の東北地方について、数十年前に読んだ教科書には確か「坂上田村麻呂が初代 征夷大将軍として東北を平定」のようにすごくあっさりとだけ記述されていたような記憶があります。
途中まで面白いように策が的中し無敵とも思える蝦夷軍が何故、どのように敗れてしまったのかと思いながら読み進めましたが、このように描いてくれた高橋氏に感謝すら覚えるほどの素晴らしい結末でした。
本書を読んでいなければ生涯知ることがなかった可能性もある蝦夷の歴史は、非常に誇り高く、有能で、かつ魅力的な男たちの物語です。
陸奥三部作を読んで東北地方に対するイメージがすっかり変わりました。まだ平泉に一度訪れただけ -
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故郷を舞台とした物語でありながらきちんと知らなかった事を後悔している。と言っても、阿弖流為については記録にはほとんど残っていないようなので、本当の所はわからない。
獣と蔑まれても誇りを貫く蝦夷の姿が美しい。坂上田村麻呂と阿弖流為の敵味方を超えた信頼関係も、読んでいて嬉しいものがある。
この作品で描かれている、政治権力・多数派から少数派・自分達とは異なるものに対する無知と侮蔑は、時代や場所が変わっても存在し続けているものだと思う。公民権運動やプライド・パレードなども連想した。千年経って技術や政治システムが進歩しても、人間そのものは千年前から大して変わっていないんだろう。例外なく人は死んで、経験も -
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世界遺産 平泉へ訪れるなら、この作品は必読です。何も知らずに金色堂と密集したお寺を眺めるだけではなく、「浄土を作る」というコンセプトがどんな背景からできたのか想像しながら歩くと、感動の大きさは歴然の差があると思います。
それほどこの作品は私のような初心者にも、陸奥の歴史を鮮やかに想像させてくれました。著者の歴史への知識に裏打ちされたストーリーと、「武士」としての人間関係や判断に引き込まれます。
お気に入りは「そうきたか」と呟いてしまうほど良い意味で期待を裏切るクライマックス。当時の武将の取る選択肢としては考えられない視野の広い人道的な感覚です。歴史的な真偽は知らないのですが、小説として大変楽 -
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奈良時代、陸奥の鮮麻呂は、蝦夷の誇りを懸けてついに決起を覚悟する。朝廷と蝦夷の戦乱を描く歴史大河ロマン最終巻。
シリーズ最終巻の主人公は、今までの嶋足から鮮麻呂に引き継がれ、舞台は陸奥に移り、蝦夷がどれだけ朝廷からさげすまれていたのかが、描かれています。
これまでの嶋足や天鈴の権謀術数も通じず、戦いを避けては通れなくなった鮮麻呂の苦悩がとてもよく伝わってきました。
戦うことで蝦夷の思いを若い世代に伝えていこうとする鮮麻呂の生き方は、一人の人間として価値あるものだと感じました。
自分が子供たちや次の世代にどんなことを伝えていくことができるのかそんなことも考えさせられました。 -
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奈良時代、道鏡の権力を巡る新たな野望と暗闘に、若き蝦夷たちが立ち向かう、大河歴史ロマン第4弾。
皇位を狙った道鏡の野望を阻止しようと嶋足と天鈴は、もてる限りの知恵と力で立ち向かっていく姿はこの巻でも健在で二人のあきらめない強さが伝わってきました。
また、今までは舞台は都が中心でしたが、この巻では、陸奥の方にも舞台が移され、二人の活躍や葛藤の様子がさらに広げられ、物語が深まっていく感じでした。
権力に振り回されていく人、その権力に敢然と立ち向かう人、その時代に自分はどの立場で生きていくことができるのか、とても考えさせられます。
次巻がいよいよ最終巻、早く読みたいと気持ちと終わっ -
Posted by ブクログ
奈良時代、蝦夷の存亡と誇りを懸けた、新たなる闘いを描く大河ロマン第3弾。
この巻の大きな敵は、前巻まで共闘していたあの道鏡、嶋足と天鈴の二人が道鏡を倒すため、様々な策略を図っていくところが歴史を動かしていく醍醐味を感じさせ、読みごたえがありました。
歴史上の人物も次々に登場し、今まであまり縁のなかった奈良時代の歴史を身近に感じることができました。
大義を貫くため、犠牲を払わさざるを得ない苦しさに悩む嶋足の人間性にもとても魅力を感じました。
次巻でついに道鏡が最高の権力を手にしてしまうのか、まだまだ読ませる力が止まらない感じで、とても楽しみです。