垣谷美雨のレビュー一覧
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高齢者ドライバーによる事故多発を受けて、猪狩雅志は田舎住まいの老父に運転免許の返納を促す。だが里帰りして見たのは、車なしでは日常生活に支障をきたすまでに過疎化し高齢化している郷里だった。
ニュースでも取り上げられる「高齢者ドライバーの事故」では、誰もが免許返納を口にする。ワタクシ自身、本書を読むまで安易にそう思っていた。しかし、交通手段が次々と打ち切られ、買い物、通院、些細な娯楽すら困難になっていく地方の現実を提示されて考えさせれた。
本文中で「誰もがいつかは高齢者になる」という息子の言葉に雅志がハッとしたように、高齢化社会を考える全ての人がそのことに気づき、自分事として考えられるようになれ -
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作家のエッセイは、その人の人柄がにじみ出るので好きです。特に自分と同じ価値観だったりすると俄然、親近感がわきます。
編集者の断定的な態度になかなか落ち込みから這い上がれない垣谷さん。
買ったコートの袖詰めを頼んだのに針が持てない店員に不安になり、その場から逃げ出してしまった垣谷さん。
一人暮らしの高齢女性に送った和菓子を、「数が多すぎたかもしれない」「 糖分取り過ぎになって体を壊すかもしれない」と、くよくよ悩んでしまう垣谷さん。
なんだか自分を見ているようで驚き、また嬉しくなりました。
『疲れ果て、 子供を理不尽に叱った日々』のお話では「私もです‥」と頷き、『娘が大きくなってから謝った -
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これまでに起きた日本での震災をベースに書かれたフィクションだけどノンフィクションのような小説。
ここに描かれたこと、津波からの生還、別れ、古い田舎町ゆえに残る家父長制やモラハラ、正義や善意の皮を被った独裁、女性=時と場合によってはまだまだ弱者であること、なんかは少しずつ形を変えても実際にあったことなのではないか、と容易に想像することができる。
また、政府支援や義援金、救援物資の対応の鈍さや、実際に欲しいものが行き渡らないジレンマなどは、経験した人にしかわからないことで、テレビ越しに知ることには限界があるよなぁとまざまざと感じた。
主な登場人物である三人の女性は年齢も背景も当然異なるが、それぞ -
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ネタバレうちの義父も運転をやめません。
少し違う部分ですが、
「今までずっと将来のためにと考えて、やりたいことを我慢して生きてきた」
この一文が今の自分に刺さりました。
受験に始まり、できるだけ前に進む道から逸れないようにとなんの疑問も抱かずに、今の今まできていますが、やりたいことをやれるのはいつ?と問われると、体が動きにくくなったあと、なのかもしれない…どうしよう。
免許に関しては、ある程度の年齢になると、必要性や個人の差など関係なく、返納する制度にしてもいいのではないか、それが理想な気がしてますが、現実的にはそうさせて、その穴をカバーでききれるもの、そういうものがない。
若いときには考えもし -
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東日本大震災で被災した宮城県の某市(架空都市)。
そこで暮らしていた、パート主婦の福子、小さな飲食店を経営する渚、赤ん坊を抱える遠乃。
三人の女性の視点から、物語は進む。
福子が被災してから命が助かるまでの描写が壮絶だった。
以前、東日本大震災を題材としたドラマを見たとき、福子のように泥水の洪水の中、浮いているものや樹木にしがみついて男性が生き延びるシーンがあったことを思い出した。
遠乃は赤ん坊を抱えいるものの、20代で若く、福子が「白雪姫」と称するような美人だ。そんな遠乃が被災で夫を亡くし、義理家族や避難所の男性たちから性的被害になんども遭いそうになる。
夫が生きている間は遠乃を守ってく -
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柿谷さんの作品を読んだ頃がなかったのですが、
簡単ではないテーマ、取材されて書かれているんだなーと思った。
フィクションである意味が、ここ本だと分かる気がした。
この本は、3人の女性の視点から、被災地の避難所とその後の避難生活の具体的な経験を伝える。
主流で語り継がれる震災の物語じゃない震災の物語。
絆、和、叫ばれたディスコースは、当時も批判はされてはいたけれど、個々人の体験として、想像させられた。
女性の居場所が、本当になかった。
でも確かにこれは、普通の都会の家庭でも起こっていることだと思う。
被災地が、日本社会の縮図であるように感じた、といったことがあとがきで書かれていた。