佐々木譲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
フィデル・カストロの生い立ちから、1959年に32歳でキューバ革命を成し遂げ、1965年に盟友チェ・ゲバラと決別するまでを描いた半生記。「PLAYBOY日本版」に1999~2001年に連載され、2002年に単行本化、2005年に文庫化された。
フィデル・カストロは、学生時代から30余歳まで、いかなる妥協をすることも無く闘いを続け、客観的には不可能と思われたような革命を成功させたのであり、本書はカストロの闘いの記録として十分に読み応えのあるものである。しかし、私が本書を手に取ったのは、多分の例に漏れずチェ・ゲバラの伝記がきっかけであり、いやが上にもカストロとゲバラの違い、なぜ両雄は袂を分かったのかを意識しつつ読み進めることとなった。
そして、それは、著者は「はじめに」で、「チェ・ゲバラはその戦いの生涯の途上で悲劇的な死をとげて、それゆえに伝説となった」一方で、「カストロのほうは、革命後四十年以上もキューバの最高指導者の座にあって生き続けている。革命家としての人生よりも、すでに権力者としての人生のほうが長い。そして長く権力の座にあるということは、たとえば取り引きや妥協や方便という言葉を身にまとうことと同じだ」と書いているが、突き詰めれば、お互いの立場には決定的な違いがあり、それぞれが自らの運命・使命に誠実に生きた(カストロはまだ存命だが)ということであろう。それは、革命後カストロが、ソ連とは異なる共産主義を標榜していたにもかかわらず、米国の侵攻を防ぐために現実的な選択をせざるをえなかったことなど、本書に書かれた1965年の両者の決別までを見ても明らかである。よって、本書は1999年に著されたにもかかわらず、あえて1967年のゲバラ殺害に対するカストロのコメントの場面で完結させたように思われる。
ゲバラがカストロに宛てた最後の手紙の一節、「今、世界の他の国が、僕のささやかな力を求めている。君はキューバの責任者だからできないが、僕にはそれができる。別れの時がきてしまったのだ」(本書の訳よりも、他書のこちらの訳の方が美しい)を読めば、両雄が根本的な部分ではお互いの使命を理解しあっていたことがわかるだろう。
(2015年8月了) -
Posted by ブクログ
私は佐々木譲さんの物語の綴り方がきっと好きなんだな。
裏表紙を見ずに、作者名だけで手に取った作品。最初の数ページを開いてみれば、そこには東京・四谷の地図が…。そいう、舞台は四谷。そして、解決すべき事件は、15年前の殺人事件。
捜査としてはとても地味。昔を知る人から話を聞く。言葉の中からつながる糸を探していく。派手さもスリルもないのに、なぜかどんどん引き込まれる。人間と、人間関係と、そしてその中にある人情と…。
新シリーズなんですね。主人公である30代の刑事・水戸部は謹慎を解かれたばかり。無能キャリアに歯向かって謹慎処分になったという秘めた熱さを持つ男。派手さはないけど実直な魅力あり。シリーズ第2弾も読みたくなった。 -
Posted by ブクログ
北海道の小さな農村に配置された駐在警官が主人公。
派手な警察小説ではないけれど、平和に見える小さな農村での今までの見逃されてきたような小さな出来事。世の中が騒ぐような大事件では無いけれど、でも、被害を受けた人間の人生にとっては取り返しのつかない大きな事件に真摯に向き合う駐在。
彼は制服を着た村の駐在さんではあるけれど、村の中で起こる出来事を分析し調査して行く姿勢は刑事のもの。佐々木譲さんの警察小説に出てくる刑事・警官は、堅すぎず、でも地に足がついた行動をしてくれるから安心して読んでいられる。
イケメンという意味ではない、本当の男のカッコよさがにじみ出ているハードボイルド。いやー、いい小説でした。
佐々木譲さんの警察小説をずっと読んでいたい。