藤原緋沙子のレビュー一覧
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出世間違いなし、平七郎の働き
十五間川で久松という男の死体が上がった。奉行所定町廻りでは自殺として処理したのだが、一緒に暮らす女将が久松の死因に疑問を持っていたので、再調査の依頼が橋廻り同心立花平七郎に届いた。
平七郎が調べると、殺しが疑われた。更に、7月20日に起きた深川、油問屋浪速屋の押し込み強盗と放火事件に絡む重大な犯罪が浮かんだ。
火付け盗賊の頭領は、深川永代寺の側で骨董品を商う店の主、弥左衛門であった。そして一味の仲間5人が容疑者として浮かんだ。この盗賊一味は、6年前に盗みと放火で江戸市中を震撼させた仁左衛門事件と全く同じやり方であった。北町奉行は総力を挙げて捕り物活動を行う。そして一味全員を取り押さえたのであった。
一方、捕り物物語と並行するように、おこうと平七郎の結婚に関する話しが進むのである。平七郎とおこうは幼馴染みあり、今やともに立派な成人となりお互いを意識する間柄である。そして平七郎には旗本の娘との縁談が過去にあった。おこうには今、絵双紙屋の跡継ぎ息子、仙太郎との縁談話がある。おこうは仙太郎との見合いの場で、おこうの父親の代から保管し貯めてきた瓦版を本にしないかと打診される。更に、仙太郎はおこうが仕事を続けることも許すというのである。
最後に平七郎がおこうに告白するのだが、おこうは素直に喜べない。おこうの気持ちはすでに定まっているようだが、平七郎との結婚では、家庭を守ることが第一だろう。すなわち、今の仕事は辞めるという覚悟がいる。仙太郎に嫁いだとしても、父親の代から録り溜めてきた瓦版は、貴重なものであり、本などにして出したくないのだろう。悩むおこうだ。しかし、ここら辺で一つの区切りを引きたいと言うことだろうか?
橋廻り同心、立花平七郎の捕り物話しは非常に面白かった。そして平七郎とおこうの幸せをいつまでも祈りたい。 -
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友情に応えて事件を解決
第1話「彩雲」は、立花平七郎が青春時代に剣術修行に励んだ頃の友人に係わる事件である。
上村左馬助と瀬尾鹿之助がその友人だが、それぞれが成人になり、鹿之助は下野国に帰り、黒金藩で藩主のお側で仕えていた。
この鹿之助に幾つもの不幸が降りかかるのである。御前試合で藩主の遠縁の富山伊一郎からいかさま試合を強要されるが、それを断り、勝利したことから不幸が始まる。その時以降、鹿之助は伊一郎から手酷く苛められる。結局、藩士の資格を取り上げられてしまい、浪人となって江戸で甲州屋の用心棒で生計を立てている。甲州屋が屋根船で武家のお客を接待したある時、宴席で諍いが起き、主が殺される。
その犯人として鹿之助が捕らえられて、小伝馬町送りにされた。
平七郎は、鹿之助の妻の依頼受けて探索を始め、やがて殺しの現場の目撃者が現れた。更に、鹿之助を現場から引き離した男、徳次を捕らえて無事鹿之助の無実を証した。
国元で鹿之助といざこざを起こした伊一郎こと、江戸では丹羽弥左衛門が甲州屋主を殺害したのだが、その罪を鹿之助に擦り付けようとしたのである。そして、鹿之助の不幸は未だ続き、丹羽とその一味に殺害されてしまった。
この物語の結末を読んで、すっきりと納得できたわけでは無い。
当時陰間と呼ばれたおかまの化粧品の辻売りから物語が始まる。男は強い者という観念があるが、おかまとは女のような優しさを持ち、少し病的な性質の者を感じるのだが・・・。それと伊一郎という人物のひがみや負けず嫌い、妬み強さは異常な程で、これは男の強さを極端にした性格でやはり病的なものであろう。
どちらも普通の性格ではない。鹿之助がその犠牲になったことは気の毒な思いがする。
黒金藩の内部の事件として、これを処分するのも止む無しと思えるが、江戸で起きた事件を秘密裏に処理しているようで、納得できない部分も残るのだ。友情に応えるという美しい話しで、鹿之助を牢から出した平七郎の活躍の部分までが、物語の中で至誠な事として印象に残った。
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気構えも足りない大人の人生
第1話の「紙人形」は、困難に際しその対応を少しばかり間違えたことで、人生が大きく変ってしまった町人の物語である。
50両もの借金を抱えた小間物屋の吉兵衛は、その返済に窮してしまい、以前奉公していた小間物屋の「えびすや」を頼って金を借りるべく訪ねた。しかし、主からは相手にもされずに冷たく追い返される。
借金の返済にこだわり過ぎ、あるいは自分の商売の存続を考えるあまり、えびすやに頼るだけが返済の道であると短絡的に考え、他に考えを巡らすことが無かったこと、それが彼の落ち度であった。1軒の店を持つ大の所帯主であるにも拘わらず、いま少し考えを巡らせれば他の方法もあったのだろうに・・・
それにしても、その吉兵衛に魔が差したのは、えびすやからの夜の帰り道のことであった。
ある家の軒を借りて雨宿りをしていると、家から人が出て行くのが見えた。しかも戸は開けっぱなしだった。吉兵衛が覗いても人の気配が無い。中に入るとタンスに巾着があった。それを盗んで戸口に戻る途中に寝ていた女主が起きて来て、手に包丁を握り吉兵衛に迫ってきた。だが、その時女は着ていた着物の裾に足を取られて転び、自分で自分の胸元を刺して死んでしまった。
これが事件の全てである。
この女主は江戸の大店の隠居の妾をして、田舎にいる親思いの優しい女であった。隠居の子どもを身籠もったが、跡継ぎ問題を避けるために止む無く中絶をした。そうしたことで、心が荒んで酒に手を出すだらしない生活を送ってきた。当然、行儀作法を教えなければならい下女がいるにも拘わらず、逆に女は冷たくあたっていた。
下女は事件の目撃者である。
橋廻り同心、立花平七郎は、2ヶ月前に京橋で油がこぼれた事件があった際、この下女が足を滑らして転んだのを目にしている。
いつも明快で優秀な平七郎とその仲間たち、すなわち、秀太に加えて今回から町廻り同心から左遷された亀井市之進と工藤豊治郎の2名が加わった橋廻り同心たちが、手際よく事件を調べ上げて無事全容を解決する。吉兵衛への裁きは、「重所払い」であった。 -
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江戸の町人世界を知る
天下太平の世が長く続く江戸。特権階級の武士はたいした役目や仕事もなく無為に日々を過ごすだけだ。
反面、町人の世界は盛んになり繁栄するのだが、特に大店と呼ばれる町人の中に取り入る武士が現れる。そこには、金が全てという価値観の変化が見られる。
第二話は、奉行所の内輪の話である。南町奉行所で威勢を謳歌する楠田宗之進が、市中のお店から金を強請り取るという、悪事の物語である。お店の落ち度や弱みを見つけては取り入り、刑罰の免除をちらつかせ、金を強請るのである。
南町の岡っ引の伊勢蔵は、父伊助を殺害されたのだが、その犯人は楠田だという証拠を見つけるために、楠田の関係するお店を根気強く廻り調べる。そして、和泉屋で20両の盗みの事件が起こり、伊助はその犯人が伊助の知人であることが判り、金を和泉屋に返還することで事件の解決を計った。だが、楠田は約束を裏切り、その知人と伊助共々を殺害して事件を終わらせたのである。
立花平四郎、平塚秀太と瓦版屋おこうと辰吉、いつもの仲間が伊勢蔵を助けて、楠田は切腹お家取り潰しで見事に敵を取るのである。
市中の人たちの一生懸命に生きる様子、誠実な人間関係、商売に精を出す町人の姿などが際立ち、反面悪人の悪度さが酷く哀れで、不気味にさえ感じられる。読んでいて興味が湧く物語だった。 -
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幕府が巧みに江戸市中を守る
橋廻り同心、立花平七郎は江戸に沢山掛かる橋の検査の役目に就いている。これは奉行所の一つの役目なのだ。木槌で叩いて橋梁や橋板などの腐食、傷みを見つける。単純だが根気の要る仕事だ。もし落ち度があれば、橋の倒壊や流失などの重大な事故に繋がる。だから、たまに平七郎は仕事後には橋の袂の茶屋や居酒屋で相棒の秀太とその日の疲れを癒やすのだった。
江戸は広く大勢の人が橋と係わりがあるようだ。橋のある風景は、時に人を故郷で見た景色を思い出させて懐かしい気持ちにする。また、橋の袂に風雪に耐えてたたずむ老木を眺めては、自身の励みにすることもある。
第三話では、東堀留川に掛かる思案橋。近くに魚市場があり新鮮な魚が手に入りやすいので、蒲鉾屋「万亀堂」がある。一昔前まで兄弟二人で店を営んできたのだが、所帯を持つと、店は元祖万亀堂と本舗万亀堂に橋を挟んで別れてしまった。どちらの店が本店かを争う醜い兄弟喧嘩が始まった。腕の良い調理人を巻き込んだ二人のけんかは、その調理人の自殺を招いたのだった。自殺は自殺なのだが、しかしその後兄の万太郎が拐かされて身代金を要求される事件になった。自殺した調理人の息子新助がその事件に関与していた。しかし、新助が改心して、事件は未然に防がれた。犯人は捕らえられた。この時兄を救うために、弟亀二郎が金の工面したこともあり、その後万太郎と亀治郎の仲は戻り、新助は万太郎から店を任せられるようになった。
物語の筋は、瓦版屋のおこうの美しさや色気に平七郎が一瞬気を散らすことや、新助のすれた女が出てきたり、で二度逸れて元の筋に戻る面白い展開である。
しかし、話し自体は非常にリアルである。それは、兄弟喧嘩の仲裁依頼「公事願い」が奉行所から出てきたというところがあり、古文書を下書きとして書かれたのではないかと思われるからである。
当時の幕政が巧みにそしてきめ細やかに市中に行き渡り、犯罪事件や訴訟などの問題が法律により公平、丁寧に処理されていたことが判り、大変興味深い物語だと思う。 -
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大阪出の店者の人情ある幸せとは
第2話「秋茜」は、蝋燭問屋播磨屋の主の自殺に係る投げ文が奉行所にあり、榊原奉行から依頼された平七郎が探索を始めるのである。
橋廻り同心、立花平七郎は旗本で火付盗賊改方の市岡勘解由の不正を調べることになった。
市岡は、その屋敷で賭博を開いては市井の人々を餌にしていた。なかでも市岡家と取引のある商人を賭博に誘っては大金を巻き上げ、やがて借金地獄に陥れ、自殺させたり、お店の沽券を奪うという極めて悪くどい事実が判明する。
平七郎は読売屋のおこうと辰吉などの仲間の助けを借りて証拠をつかみ、榊原奉行を通じて市岡を大目付に訴え成敗する。
他方、平七郎の下役の秀太が小名木川に架かる万年橋の袂で川に浮かんで息も絶え絶えの花輪糖売り男を助けた。
そして医者で介抱していると、五歳ぐらいの男の子が自分の父親だと名乗りがあり、花輪糖売りの与太郎だと名前が判った。大阪の米問屋の息子で、店を継ぐのにその才能があるかどうかを試されて、100両を渡されて旅に出されて江戸にやってきた。半年の期間内にどうしても商売を広げるような妙案が出なかった。やがて彼は疲れ果て生きる自信を失う。彼は郭に入り浸るが、そこで子持ちのおしかと知り合いになる。
残った有り金全てを果たいておしかを身請けして、子どもも一緒に暮らし始めるのだが、おしかの方は派手な暮らしを忘れられず家を出てしまう。このおしかの奉公先が市岡の屋敷だったことで、おしかも市岡の悪事に加担していたのだが、平七郎の説得など、また最後は子どもと与太郎への情けに絆されて元の鞘に無事収まるのである。与太郎は女房子どもと花輪糖売りで地道な商売を続けて暮らすのである。
この物語は非常に淡々としかも丁寧に話されていて、良い話しである。しかし与太郎の大阪への想い、郷愁はないのかどうなんだろうと少々浮かぶと同時に、それに触れていないことに少し物足りなさを感じる物語でもある。
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奉行所内に「橋廻掛」がある
北町奉行所定橋掛同心、立花平七郎は日々江戸市中の川に架かる橋を検査し、傷んでいるところがないかを確認するのが役目である。元々は定町廻同心だったが、何か不手際なことをして、降格されて奉行所内では一番格下の橋廻を務めている。この小説は、平七郎が橋を巡りながら江戸の街を歩く間に起こる事件などの物語である。
「恋椿」の巻には四編の物語が収められているが、三編目の「闇の風」が味わい深く良い物語だ。
今日、検査が終わったばかりの紀伊野国橋を淫靡な雰囲気を醸して橋を渡る女を見かけた。平七郎が三年前の定町廻りの頃に捕えて島送りにした男、仙吉の女房・おまつだと気づいた。
仙吉は腕のいい鬼瓦職人だった。そして女房のおまつと仲睦まじく平穏に暮らしていた。ある時、仙吉は親方から、女房について卑猥な言葉を言われ、喧嘩になり相手の腕に深手を負わせてしまった。奉行所に捕まり、島送りの刑を言い渡された。おまつは、普段はおとなしい仙吉がいとおしく、島送り船が出る時は見送りにも来るほどで、非常に悲しんだ。そんなおまつに更に不幸が重なり続ける。
仙吉が傷つけた親方から体を求められて、申し訳ない気持ちもあり許してしまったり、島送り船の船頭に騙されて、仙吉の御赦免のためには米や役人にお金を送るようにと言われ、花街の料亭に勤めて金を稼ぐのである。そして、その通いの時ちょうど平七郎の目に付いたのである。平七郎の活躍が始まる。
おまつは元々貞淑な女房である。普段の生活も質素でしっかりしていて、稼いだ金は貯まれば船頭に渡して仙吉の御赦免を願い続けていた。そして、島流しから三年経ち、三月前に仙吉は赦免されて江戸に戻ってきた。しかし船頭がおまつの金を目当てに仙吉は殺されてしまうのである。
平七郎により犯罪の全てが証されて、おまつは同じ幼馴染みの幸吉と一緒になり幸せで平穏な暮らしに戻った。
人情の機微に触れる良い物語ある。 -
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読みやすい時代劇
千鶴先生のファンになったと言うのか、彼女のこれからが 気になって仕方がない。
患者さんや自分の周りののために 一生懸命になる所がとても良いと思います。
これから、どうなっていくんだろう。
次回作が楽しみです。 -
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流石に、読みでが有った。
8冊の合本版。流石に、読みでが有った。江戸の庶民の暮らしが、訥々と綴られていて、胸を打った。哀しい話が多かったような気がするけれど、それでも、世の中、捨てたもんじゃないねっていう話も、また有って、悲喜交々…。伊織は、やっぱり元の暮らしに戻って行った。だるま屋の見届け人をしていた事を胸に、上から目線ではない、下々の目線で判断できる善きお城務めを、して貰いたい。いや、してくれるはずだ。