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奉行所内に「橋廻掛」がある
北町奉行所定橋掛同心、立花平七郎は日々江戸市中の川に架かる橋を検査し、傷んでいるところがないかを確認するのが役目である。元々は定町廻同心だったが、何か不手際なことをして、降格されて奉行所内では一番格下の橋廻を務めている。この小説は、平七郎が橋を巡りながら江戸の街を歩く間に起こる事件などの物語である。
「恋椿」の巻には四編の物語が収められているが、三編目の「闇の風」が味わい深く良い物語だ。
今日、検査が終わったばかりの紀伊野国橋を淫靡な雰囲気を醸して橋を渡る女を見かけた。平七郎が三年前の定町廻りの頃に捕えて島送りにした男、仙吉の女房・おまつだと気づいた。
仙吉は腕のいい鬼瓦職人だった。そして女房のおまつと仲睦まじく平穏に暮らしていた。ある時、仙吉は親方から、女房について卑猥な言葉を言われ、喧嘩になり相手の腕に深手を負わせてしまった。奉行所に捕まり、島送りの刑を言い渡された。おまつは、普段はおとなしい仙吉がいとおしく、島送り船が出る時は見送りにも来るほどで、非常に悲しんだ。そんなおまつに更に不幸が重なり続ける。
仙吉が傷つけた親方から体を求められて、申し訳ない気持ちもあり許してしまったり、島送り船の船頭に騙されて、仙吉の御赦免のためには米や役人にお金を送るようにと言われ、花街の料亭に勤めて金を稼ぐのである。そして、その通いの時ちょうど平七郎の目に付いたのである。平七郎の活躍が始まる。
おまつは元々貞淑な女房である。普段の生活も質素でしっかりしていて、稼いだ金は貯まれば船頭に渡して仙吉の御赦免を願い続けていた。そして、島流しから三年経ち、三月前に仙吉は赦免されて江戸に戻ってきた。しかし船頭がおまつの金を目当てに仙吉は殺されてしまうのである。
平七郎により犯罪の全てが証されて、おまつは同じ幼馴染みの幸吉と一緒になり幸せで平穏な暮らしに戻った。
人情の機微に触れる良い物語ある。
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小説・文芸
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