近藤史恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ内容も何も知らずに読みました。
仲の良かった家族に一体何が起きたのか、真実が明らかになって行く度に、胸がギュッと痛みました。
「愛する人が、もう生きたくないと思うほど絶望して死んでしまった。そんな世界で自分も生きていくなんてつらすぎる試練だ」
妹の美和が抱えた試練は、そんなレベルのものではなかった。
今別の著書も読んでおりますが、近藤史恵さんは、どの立場の人間に対しても、すごく気持ちに寄り添った書き方をされる方だと思った。
姉である遼子が、妹の美和の味方でいてくれて本当に良かった。
「母は明らかに動揺していた。自分のことばを信じていない。いや、それともこの期に及んで、まだ信じているのだろうか。美和には責められる理由があって、わたしにはないと。」
「祝福するのもしないのも、大人のさじ加減ひとつだ」
「父と母のことを優しい人だと思っていた。だが、その優しさは自分たちが認めるガイドラインを守った人だけに向けられるものだった。そのことがどうしようもなくつらかった。いまだにふたりは、自分たちが悪いとは思っていない」
私はこの最後の言葉に救われた。
でも、他の方の感想を読み、一部の人にはやはり伝えたいことを理解はしてもらえないのだと悲しくなりました。
どんな状況であれ、赤ちゃん個体の命の重みは同じはずなのに、"どこに宿ったか"で、もはや命としてすら扱われないのが現実なのだと。
自称「ちゃんとしている人」は、登場人物が浅はかで愚かで無責任な行動を繰り広げていることに、腹を立てるのでしょう。
でも、事実、こういう不幸を招いて繰り広げるのは、そういう「ちゃんとしている人」なのです。
想定外のことが起きた時、まともな判断ができなくなるのです。
私は美和そのものだった。
幼い頃からしっかりもので成績優秀で親からも信用されていた。
若くして妊娠なんて愚かだと思ったし、その結果中絶なんてもってのほかだと思ってた。
女性の身体のしくみをしっかり勉強し、16歳から基礎体温を毎朝計って自分の体を管理していた。
避妊だってしっかりしていたし、危険日前後は行為自体避けてた。
私の周りの友達に、私ほど徹底して避妊している子なんていなかった。
それなのにも関わらず、私は未成年で妊娠した。
この世の中には、100%完璧な避妊などないのだ。
その現実を知っている人間は、とてもとても少ない。
どんなにしっかり避妊していたとしても、結果的に「若いのに避妊もせず中出しして、なんて浅はかで無責任なんだ、当然の報いだ」とみなされてしまう。
妊娠が分かった時、私は心の底から「産みたい」と思った。
自分に宿った命が愛しくて愛しくて、とても堕胎なんて考えられなかったし、堕胎してまで守りたいものなんてなかった。
私は学生だったけれど、相手は社会人だったし、万が一妊娠した時は結婚して産むという話し合いまでして、そういう関係を持っていたし、親も理解してくれると思った。
だけど、理解あるはずの両親は、一気に態度を変えた。
"今ここにある命"や"娘の意志や選択"よりも、"自慢の娘像"や"世間体"を守りたいだけだった。
私は母親に連れられ、堕胎手術を受け、麻酔もしっかりかかってない状態で、搔爬され、手術中、医者から顔に暴力も受けた。
私はそれがきっかけで、子どもが産めない体になってしまった。
愛する命を犠牲にして立たされた、それからの人生は、重過ぎて本当に生きるのが辛かった。
身の回りには、誰一人として、私に寄り添ってくれる人などいなかった。
何も考えずにのほほんと遼子のような平和な人生を送っている人と会うと、身が引き裂かれるように辛かった。
私はどうしたら良かったのだろう。
これが私の招いた禍いに対する当然の報いだったのだろうか。
それから25年経つけれど、私と母親は完全に絶縁している。
それでも、親は今でも、自分が正しいと思ってる。
美和は更に、彼氏と親友を失っている。
3人の命の上に立たされた人生を生きることが、どれだけ過酷なのか。
なぜ一番側にいるはずの親が、美和を支えてあげることができないのか。
親が、自分の間違いに気付き、謝ってくれたのなら、少しは人生が救われるのに。 -
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小乃原笙子(おのはら しょうこ)は歌舞伎の家の娘。
母と兄を失い、大物歌舞伎役者の父とは折り合いが悪く、家を出ている。
笙子は、15年前に10歳で死亡した兄の音也(おとや)を絞め殺す夢を何度も見る。
ある日、子供の頃、音也とよく遊んだ、という若手歌舞伎役者・中村銀京(なかむら ぎんけい)が笙子の前に現れ、音也の死に疑問を抱いている、と言った。
“その子”が歌舞伎にかかわらなかったら、または歌舞伎の家に生まれなかったら、こんな悲劇は起こらなかったのかもしれない。
離婚をした母親に新しい恋人が出来た“その子”も、生物学的(?)医学的(?)に少し特殊なケースで生まれた“その子”も、話し合いや周囲の理解を得て、幸せに(あるいは普通に)成長して行くこともできたはずだが…
謎が解けて、意外な理由に驚いたが、笙子視点で読んできて、彼女に冷たく当たっていたように見えていた人たちの秘めてきた苦しみと戸惑いにも気づく。
笙子と京介が少しでも理解し合い、新しい関係を築けたらいいなと思う。 -
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主人公は女型の歌舞伎役者。親交の深かったとある歌舞伎役者が急逝したことにより彼の息子、秋司の後見人となり預かることになる。秋司の踊りを見た主人公は彼の才能に驚き、同い年の息子の初舞台もあることから一緒に稽古をさせる。そのことで今まで歌舞伎に向いていないと思っていた息子の意外な才能を発見したり、秋司の才能に改めて感心させられる。
しかし初日直前にトラブルが起き秋司が舞台に上がれなくなったため、秋司がやる予定だった役を息子が演じることに。これをきっかけに息子は歌舞伎の面白さに目覚め歌舞伎役者として精進していく一方、秋司は辞めてしまう。
時は流れ息子は大学生になり、期待の若手役者として注目を集めていたが、あるきっかけで秋司が踊りを続けていることを知る。居場所を探し出し主人公も一緒に秋司と会い、今までのことを聞き出すのだが、それは幼くして一世一代の役を演じる決意をせざるを得なかった事情があったのだった。
紹介文にサスペンスだとかミステリーだとか書いてあるが、個人的にはそんな感じはしなかった。テーマは親子の心の葛藤かな、と。そこまで深く書いているわけではないが、さわやかに読める。 -
購入済み
さらっと読めます
色々な各国のお菓子が出てくて、私も食べたくなりました。シナモンプッラもシナモンロールとは何となくちょっと違うんだよね。とか思いつつ読めました。
最後はちょっと重い話題なのですが、その後がどうなるかも気になるので続編を書いてくれると嬉しいです。 -
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両親と三人暮らしだった光介が、伯母(母の姉)とその娘と一緒に住むことになり、母方の祖父母の心中事件を改めて探る物語。
東京から戻ってきた伯母に、祖父母のどちらかがもう片方を殺したのだと聞かされた光介は、生活をともにする中で伯母と従姉妹に親しみを感じ始めると、祖父母が急に身近に感じられ、自分も真実を確かめようと決意します。
退屈だった生活に刺激が生まれ、いつもと違う風景を見たかったのかもしれません。
ところが、あるとき伯母が真相はもうどうでもいいと言い出し、納得いかない光介はさらに深みに嵌まっていきます。
私なら、真相を探ったりはしないでしょう。真実はかかわった人の数だけあると思っているので、探っても本当のことなどわからないと思うからです。
だからこそ、生きている人を傷つけてまで知りたいとは思わないという、伯母の言葉が胸に迫りました。最終的に光介も同じ結論に達したのでよかったです。
大切な人を大切に思い、日々を暮らしていくこと。それが何より優先されるべきで、そのほかのことは、伯母が言うようにどうでもいいのですから。 -
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ネタバレ歌舞伎役者の父が急逝し、残された7歳の少年・秋司の後見人になったのは中堅役者の萩太郎。
萩太郎にも同学年の息子・俊介がいたが、全く歌舞伎に興味が無い様子。
秋司の踊りを見てその才能に驚いた萩太郎は、俊介と秋司の初共演に秋司に難しい役をやらせることにする。
しかし、秋司の急病のため、彼の役を俊介に変更したことにより、秋司とその母親との関係がこじれていく…。
歌舞伎の子役に焦点を当てて描かれた長編物語。
梨園の特殊で独特な世界の仕組みがわかりやすく描かれているので、すんなりと作品世界に入っていけました。
歌舞伎を全く観たことのない方も興味のない方も問題なく読めると思います。
役者たちの日常や等身大の悩みも垣間見られるし、世襲制が基本の梨園で後見人の父を失うことがどれほどのことなのか、すべて読んでいるうちに理解できました。
役者同士の仲が良くても基本的にはライバルだし、中でも御曹司はスタートから異なり、配役にも差があるらしい。
人に見られる華やかな業界だけど、内実は一般社会とそんなに変わらないんですね。
同様に、親が子を、子が親を思いやる気持ちは誰でも一緒なんだと、読んでいてつくづく思います。
また、才能や運命とは何なのか、考えさせられました。
生まれつきの天才だけではなく、努力を重ねて芸を磨き続けることができるという才能もある。
才能が人を不幸にすることだってあるし、才能の有無が人の幸不幸を左右するわけではないのです。
秋司の運命は一見悲劇のようにも見えるが、歌舞伎から離れた十数年は彼にとって運命を甘受し、耐え忍ぶ雌伏の時だったかもしれない。
この離別は母を守るため、そして人生をより良く生きるための力を涵養していた、子どもなりの生存戦略だったのかも。
配られたカードで勝負するしかない人生の残酷さと、そのカードをうまく使って運命を乗り越えようとする意志の強さ。
案外、人間って強いものだし、前を向いていかざるを得ない本能を持った生き物なのかな、と思います。
これを悲劇とか運命とか、どう呼ぶかは他人が決めることじゃないよね。 -
Posted by ブクログ
1999年の近藤史恵作品。祥伝社から文庫書き下ろしで刊行。
患者さんの体の悩みを解消するだけでなく、心の悩みを見抜き、更にはその患者さんの巻き込まれている事件まで解決する整体師・合田力を探偵役としたシリーズ第1作目。
合田接骨院に患者として訪れた、心に闇を抱える女性を主人公役に、ロマンス成分多めサスペンス・ミステリーになっています。
このロマンス部分が、かなり都合のいい少女漫画的展開なんですが、全体的には男の自分にも楽しんで読めるものでした。
実はシリーズ第2作目『茨姫はたたかう』を、シリーズ物と知らずに先に読んでしまったのですが、そちらのほうが自分好みでした。