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歌舞伎子役と親同士を巡る、心理サスペンス。
市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。花田屋の中村竜胆の急逝に伴い、その息子、秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演「重の井子別れ」で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司のおたふく風邪が発覚。急遽、三吉を俊介にやらせることに。そこから、秋司とその母親・由香利と、萩太郎の関係がこじれていく。そしてさらなる悲劇が……。サクリファイスシリーズから、ビストロ・パ・マルシリーズまで、幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、長年あたためてきた作品がいよいよ文庫に。歌舞伎に詳しくなくても存分にスリルと感動を味わえる。
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Posted by ブクログ
帯には「梨園を背負うふたりと親同士の、白熱心理サスペンス」。
裏表紙のあらすじにも「幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、子役と親の心の内を描く白熱心理サスペンス!」
「解説」でもこの作品がいかに「ミステリー」であるかが述べられている。
なんとゾクゾクすることか!
そのゾクゾクを感じながら、タイトル『胡蝶殺し』に思いを馳せれば、一体そこにどれほどのドロドロが待っているのか、楽しみで仕方がない。
思うに、ミステリーやサスペンスは、現実ではなかなかお目にかかれない(あるいは、目を背けている)ドロドロを味わうためにあるのではないか。
読み終わってみて、しかし、と思う。
本書は果たしてサスペンスなのだろうか。ミステリーなのだろうか。
たしかに、ドロドロはあった。ミステリーやサスペンスの文法に則った作品だという評価も嘘ではない。
しかし。
読後のこの爽やかな気持ちは何であろうか。
違う。求めていたのはこれではない。
しかし。今はこの心地よさにしばらく浸っていたい。
ジャンルというものの大切さを思い知った一冊。本書はサスペンスでもミステリーでもない。ドロドロを求めるのではなく、人間賛歌を求めて本書を手に取ってほしい。それでこそ、本書は真価を発揮する。
【目次】
胡蝶殺し
第一幕
第二幕
エピローグ
文庫版あとがき
解説 佐久間文子
Posted by ブクログ
主人公は女型の歌舞伎役者。親交の深かったとある歌舞伎役者が急逝したことにより彼の息子、秋司の後見人となり預かることになる。秋司の踊りを見た主人公は彼の才能に驚き、同い年の息子の初舞台もあることから一緒に稽古をさせる。そのことで今まで歌舞伎に向いていないと思っていた息子の意外な才能を発見したり、秋司の才能に改めて感心させられる。
しかし初日直前にトラブルが起き秋司が舞台に上がれなくなったため、秋司がやる予定だった役を息子が演じることに。これをきっかけに息子は歌舞伎の面白さに目覚め歌舞伎役者として精進していく一方、秋司は辞めてしまう。
時は流れ息子は大学生になり、期待の若手役者として注目を集めていたが、あるきっかけで秋司が踊りを続けていることを知る。居場所を探し出し主人公も一緒に秋司と会い、今までのことを聞き出すのだが、それは幼くして一世一代の役を演じる決意をせざるを得なかった事情があったのだった。
紹介文にサスペンスだとかミステリーだとか書いてあるが、個人的にはそんな感じはしなかった。テーマは親子の心の葛藤かな、と。そこまで深く書いているわけではないが、さわやかに読める。
Posted by ブクログ
歌舞伎役者・市川萩太郎は、急逝した先輩役者の息子、7才の少年の後見人を任される。
後見人と言っても世間一般のそれとは違い、名ばかりではなく、実際に歌舞伎役者として育て上げることも意味する。
萩太郎には、少年と同じ学年の息子がいた。
梨園という特殊な世界では、伝統芸能を後世に伝えていくために、男子は生まれた時から、役者として生きることを運命づけられ、幼児の頃から、必要な稽古をみっちり仕込まれる。
学校よりも家業が優先されるという、これも今時特殊である。
そこに生まれた男子に、芸能の才が無かったら?
向いていなかったら?
実の息子と、託された「義理の息子」を抱え、萩太郎はさまざまに悩むこととなる。
子育てが父親の視点で描かれるのは、現代物では珍しいだろう。
一般的な父親は、子育ては妻に任せきりだから。
義理の息子には、天才的な踊りの才と共に、子供を守りたい一心の病的なまでに神経質でヒステリックな母親という疫病神が付いて来る。
彼女の浅はかな行動が問題を起こす。
萩太郎の誠実な性格、少年たちに注ぐ真摯な視線が、ドロドロになりそうなストーリーを浄化している気がする。
やはり、近藤さんの伝統芸能物は好きだ。
少年たちの今後も見たい。
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小説・文芸
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