【感想・ネタバレ】シフォン・リボン・シフォンのレビュー

あらすじ

さびれた商店街にオープンしたランジェリーショップ。乳がんの手術後、東京から故郷に戻ってきたオーナーのかなえと、そこに出入りする人々の人生模様。繊細で美しい下着が、行き詰まった人間関係をやさしくほどいていく。解説・瀧井朝世。

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Posted by ブクログ

人を大切に、とは日々思うことだけど、自分を大切に、とはそんなにいつもは思わない。
この小説を読んで、自分を大切にしなきゃ、と思えた。

乳がんの手術後、東京から故郷の地方都市に戻ってランジェリーショップを開いたオーナーのかなえ。地方にはなじまない輸入ものの下着が並ぶショップは、ネット販売があるから成り立つと言えるほど、訪れる客は少なかった。
しかしその数少ない客は皆それぞれの屈託を抱えていて、レースやリボンで飾られた美しい下着に、優しく心をほぐされていく。

綺麗な下着をつけていると、自分を大切に扱っているような気持ちになる。
この小説の登場人物の1人が語った言葉について、しばし考えた。私も綺麗な下着は好きだけど、そんな風に考えたことがあっただろうか、と。
女性の美しい下着は、何も誰かに見せるためだけにあるわけじゃない。つけているだけで気分が上がったり、自意識を満たすためにも存在するものだ。

顔は綺麗じゃないのに胸だけが大きすぎるというちぐはぐさをコンプレックスに思う女性や、男として産まれながらその性に違和感を抱える男性などが、かなえの開いたランジェリーショップの客として登場する。
とくに濃密な接客をするわけではないけれど、彼らはその店の存在に癒されていく。抱えてきたものを、解き放ってもいいのだ、という安心感に。

当のかなえは30代の頃に乳がんで片方の乳房を失っている。再建手術はしたものの完全ではなく、この先恋愛をすることも半ば諦めている。
そんなかなえだからこそ、乳房を失ってしまった人用の下着に着目していち早くそれを取り入れたり、経験者だから分かることを人々に分け与えるような働きをする。

個人的なことで言えば私の母も乳がんで片方を部分摘出している。母は既に60代だったから「別に今さら胸なんて無くてもいい」くらいの潔さだったけれど、若ければ若いほどこだわりや執着はあるだろうし、そこまですぱっと割り切れるものではない。
他人はそこまで気にしていないと分かっていても、自分は気になるという事実は変えられない。
そんな時にかなえのような人に出逢えたら、きっと心強くなれる。

女のこだわり、女の幸せ、女だから分かる執着。複雑さと温かさが詰まった物語。
自分をもっと大切にしよう。前向きにそんなことを思った。

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2017年05月06日

Posted by ブクログ

近藤史恵のシフォン・リボン・シフォンを読みました。

きれいな下着を身に着けていると、自分がとても大切に扱われているような気がする。
あなたが、あなた自身を大事に扱っているのだから。

水橋かなえは東京で開いていたランジェリーショップを他人に任せて、自分は田舎の町に帰ってきました。
田舎の町できれいなランジェリーショップを開いたかなえとその町に住む人たちの物語でした。

かなえは乳がんにかかって手術を受けていたり、彼女が帰ってきた理由は母親が介護を必要とするようになったためだったり。
力まずに生きているかなえの行動がとても魅力的に感じました。

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2016年05月12日

Posted by ブクログ

どうしても介護の問題に目が行くのは仕方ないんでしょね。
親の面倒を見る人間は、親の人生の一部も引き受けるということになるんでしょうね。

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2015年08月25日

Posted by ブクログ

タイトル、装丁の雰囲気とは異なる印象の1冊。
ほっこりする短編集かと思っていたら、完全に裏切られた。

めちゃくちゃに腹が立ったり、涙が出たり、人間くさい物語だった。

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

レースや刺繍で飾られた美しい下着。
身に着けるとテンションが上がる。
ただ眺めているだけでも楽しい。
これほど“自分だけのため”に着飾れるものは、他に無いだろうなあ。
だから下着に触れることで傷ついた心が癒されたり、抑えていた気持ちが解き放たれる物語には共感しかない。

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2022年09月28日

Posted by ブクログ

美しいランジェリーとは対照的な、地方都市に住む人々の苦悩と強さを描いた短篇集。
共感できる部分も多く、ほろ苦いストーリーに惹き込まれた。一話の〝手を貸さなかった人間が逃げるのは簡単だ〟という言葉が刺さった、当事者としてリアルに自分も感じたことだったからだろう。

残念なのは、既読感があるなと…。
者もタイトルも違うけれど、ランジェリーを扱う物語にはインポートランジェリー贔屓なことや、乳がん、LGBTなどの共通点があるように思う。

ランジェリー好きとして、日本製の良さも伝えて欲しい。また、違う発想のランジェリーストーリーをもっと読めたら嬉しい。





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2021年10月08日

Posted by ブクログ

母親の介護や自身の身体のことなどが重なり東京のお店を任せ田舎に戻り商店街でランジェリーショップを営む女性が主人公
タイトル通りの柔らかで穏やかな話
になるわけないのが近藤史恵さんの好きなところ
1話目から毒親登場
毒親が抱える恐怖や娘の理不尽への従順さ
それらにこちらのメンタルすらやられそうになる
そんな娘の心を救うのが心躍る素敵なランジェリー
下着って本当に不思議
上下セットで千円なんてものでも十分事足りる
でも自分の身体に合う素敵なランジェリーは 自身を奮い立たせる鎧になったり 心を支えるお守りにもなる
身体の為のものが心に効いてくる
心と身体を守るランジェリーは偉大だ

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2021年05月24日

Posted by ブクログ

何の気なしに読み始めたのだけど
とても良かった。

じんわり。じんわり。

自分を大切にするためだけの下着を買いに行きたくなる。

親子と時代の流れ。

お上手でした。

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2018年06月08日

Posted by ブクログ

近藤さんの書く本に出てくる「母」や「介護」っていう存在っていうのは、すっごく身近で、逃げたいけど逃げられない。関係を切ったら、自分もその傷口がふさがらない。だけど、、、すごく、悩ましい存在として描かれていて、そんな中でも自分の人生を生きていく人のお話がちりばめられている。ほっとするな。
こういう下着。ほしいな。それとパジャマもね。

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2016年10月15日

Posted by ブクログ

自分を大切にすることは人に大切にされることとは訳が違う。
自分の体に合った素敵な下着を着けるとき、外の世界でも私自身を失わず私でいられると言ったら大袈裟だろうか。
特別な日を生むのは自分だ、そう思うと自分を大切に名一杯可愛がってあげたい気分になる。

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2016年08月24日

Posted by ブクログ

栄えてない町にできる、下着店の話。
誰にでも悩みはあるし、それをわかってくれる人がいたり、いなかったり・・・。
少し避けたがる、”下着”をモチーフにして展開される話が新鮮だった。
自分に合った下着を見つけるように、その人に合った人生があるはず・・・・

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2016年07月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルがなんだか甘い優しい物語を予想させるけれど
近藤史恵さんの小説だもの、そうはいかない。
胸の奥が痛くなるような現実を抱えながら
自分では気がつかない闇に蝕まれていたりもしながらも
いつもと違う、美しい下着で気持ちが癒され
一歩、前に進むことで、思ってもいない前が開ける
つらい現実も、明るい未来も、ドンとこいな気分になれる
すてきな小説でした

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2015年09月04日

Posted by ブクログ

さびれた商店街に開店したランジェリーショップ。訪れる人達の心が少しずつほどけていく。見えないところを着飾るのは自分を大事にすること。可愛い下着も時には良いかも

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2015年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「きれいな下着を身に付ける…それは
あなたがあなたを大事に扱ってあげている…」
なんか良いなぁ~わかる、すんごいわかる
異性に媚びるとか性的なことではなく
誰のためでもなく、自分のために選ぶ下着
これ、結構大事だよな~
ただ買うのではなくて、自分のために「選んで」買う
高い安いではなく、自分を考え思って選んでいるか
たまーにでも、そういうことは大事
微妙な差なんだけれど…
下降気味なときに
時折でもそれが出来てたか出来ないかで
凹みに実は大きな差が出る気がする

重いものから楽しいもの
ホントに多彩に書く人
そして心理的にジワジワ来る人
まぁ、だからたまに気持ち的に読むのが
辛いときもあるけれど(^_^;)
でもやはり好きな作家さんだ

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2017年02月07日

Posted by ブクログ

田舎町にできた下着屋さんの話。

女ならではの生きづらさが苦しかった。
下着でコンプレックスが解消されたらと思うけど
そんな素敵なショップはウチの田舎にはないんだな。

しかし最近田舎の話をよく読むな。

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2015年08月10日

Posted by ブクログ

ランジェリーショップに纏わるお話。
介護やセクシャルな面でのお話で、中々切ない感じになっていた。けれどやはり新しい下着を身につけると気分が上がるというのはわかる。

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2022年12月01日

Posted by ブクログ

「下着は自分を大切に扱うために纏う」という感覚はとてもしっくりきます。お話はシビアでしたがそのまま終わらないのでちょっと良い気持ちで読み終わりました。
前半2話はお客さんのお話、後半2話は店長さんのお話。
第一話の、所謂毒親から開放される女性のお話がとても好きでした。性的なのはいやらしいこと、と娘を罪悪感で抑えつけておいて、支配して家庭を切り盛りさせているのに、「結婚も出来ないのは恥ずかしい」って臆面もなく言えるのは娘を舐めきってるよな。佐菜子さんには幸せになってほしいです。
親と子どもの確執もテーマのひとつなのかも。自分の思い通りに生きなかったからと、乳癌になった娘に「罰が当たった」って言葉を吐ける親もどうかしてる。。
私事ですがわたしの親もここに描かれるような固さを持ってるので、少し心が軽くなりました。綺麗な下着を着けると気分が上がります。

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2021年12月27日

Posted by ブクログ

1章と3章の毒親の言葉が酷すぎて辛い。

4章に登場する女性の、店にとっては迷惑な、可哀想な行動も今の時代によくある悲しさか

「きれいな下着を身につけると、自分がとても大切にして扱われているような気がするの」

「だって、あなたがあなたを大事に扱ってあげているんだから」

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2021年02月24日

Posted by ブクログ

ランジェリーショップのオーナーが主人公。最初の1話は客、次は客の父、そして、その後の2話はオーナーの一人称で描かれている。どの話も近藤さんらしい毒がありながらも、前向きに終わっているのがいい。

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2020年12月02日

Posted by ブクログ

話が心に響きすぎる程強烈で、私には合いませんでした。痛くてその先にいけない、そんな本です。
ただ、繋がりのある短編集みたいなものなので、他の話は読むことが出来ました。

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2017年08月25日

Posted by ブクログ

フリフリヒラヒラを連想させるタイトルだったけど、読み始めてみたら思ったより現実的。乳ガンの話も知らないことばかりで色んな発見があったけど、どちらかというと、周りに(無意識に)虐げられて苦しんでいる人たちの話だった。

最初の話で、娘をコントロールするために、お前の胸は大きすぎてみっともない。だらしない。慎みがない。と責める親がいた。
でも字面にするとわかるけど、それって性格に関係なくないか?
因果関係が全くないこじつけだ…。

赤い下着を着たくらいで、そんないやらしいもの!と目くじら立てるほどかなぁ。
確かに下着を外に堂々と干してたら怒るかもしれないけど。
解説に、素敵な下着を身に付けると、自分が大事にされている気がする。とあって、確かに。と思う。
下着→性的アピール→おおっぴらは慎みがない
ではなく
下着→魅力のひとつ→恥じらいが大事
と考えたい。

男友達が、ショーツにリボンを着けることを考えた人は神だ!と熱く語っていたことがあったが、
確かに、人目に触れさせるでもなく、実用性皆無なのに、可愛い素敵なデザインのもので、かつフィットするとスタイルも良くなって、本当に気分が上がる。

高ければ良い訳じゃないけど、自分のためにかけるお金の使いどころは自分が魅力的になれるために使うべきだと思った。

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2017年05月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2017/2/2
1話目が最も揺さぶられた。
毒親に腹が立って腹が立ってそれにいいように使われてる娘にも。
最後に洗脳が解けてよかったけど。
少し自分と重なるんだよね。
だから叫びだしたくなるような感情が沸いてきて困惑する。
私はここまでじゃないと思うし、それぐらいはどこの家でもあるだろうとも思う。
現実は捨てるほどじゃないと思うからフィクションでは捨てて欲しかった気もする。
いい下着とパジャマが欲しい。

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2017年02月04日

Posted by ブクログ

ある下着店にまつわるお客さんや店主の家族の話。
美しい下着を身に纏い、「うふふあはは」なふわふわのお話。ではなく。
介護の話、親子関係の話。心を抉られるような表現がいくつも出てきて共感してしまいます。

家族は、決してきれいなものだけではできていない。お互いに棘を刺し、刺されている。それは、意識的なこともあれば、無意識のうちにやっていることもある。
それでも、最初で最後の関係だから、うまくやっていかなくっちゃね。たとえ、きれいでなくっても。

すぐに理想化してしまう私には、よかったかもしれません。

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2015年11月23日

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