藤田宜永のレビュー一覧

  • 愛の領分

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    直木賞の本を読んだなぁと思える素晴らしい作品だと思った。終盤にかけて物語が展開していく中で紡がれる愛についての視点、そしてそれがもたらすクライマックスが途轍もないなという印象だ。恋愛小説は「ほかならぬ人」が一番だったが、それに近づいてくるような素晴らしく重厚で、濃厚な昨比だった。重厚とは言いつつも、言葉がすっと入ってくるので読んでいられる。書き手の技術には舌を巻く。

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    2025年10月27日
  • 愛さずにはいられない(新潮文庫)

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    作者の自伝? 田舎から東京に出て下宿して、ひたすら飲んでナンパして…という自堕落な高校3年生。あるとき出会った由美子という女の子にのめり込み、一緒に暮らすようになるが…
    さすがに高3でこれはすごいなあ。60年代くらいの青春だろうか。
    作者も由美子も別々の形で気持ちが欠損しているようで、互いの気持ちを埋めあっている間はよかったんだけど、やがてたがいに傷つけ合うようになる。どちらかというと由美子の方がエキセントリックな感じ。
    かなりの長編のなか、ほとんどが由美子との世界。これが2年足らずの出来事? と考えると濃密な日々だなあ。

    文庫、778ページ。

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    2024年02月11日
  • 大雪物語

    購入済み

    非日常で紡がれる物語

    人は非日常に遭遇した時、本音が出るというか、自分を見つめ直して正直になれるのだろうか。雪で閉じ込められた時をコロナ禍で閉じ込められた時と重ねて読んでいた。どうなるか分からない日常だからこそ、素直に生きれたら素晴らしいと思った。物語の中では、雨だれのプレリュードが好きです。

    #癒やされる #切ない #共感する

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    2024年01月15日
  • 彼女の恐喝

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    前半ミステリアスさがありつつもあっさり事が上手く進んでからの中盤の心理的に揺さぶられる面白さ、終盤たたみかけるように展開していく流れ。残りページ少なくなってくなかでどう終焉するのかとても楽しかった。

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    2023年05月06日
  • 愛の領分

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    ネタバレ

     20年くらい前に担当編集者にいただいて、中年の恋愛小説はちょっとなあと気が重くて読まずにいたのだけど、自分自身が立派な中年どころか初老に至り、ようやく読み始めるととてもよかった。その編集者さんには3冊の本をいただいて、これまで読んだ2冊もすごく面白くて、これも素晴らしかったので、いただいた直後に読んで感想を伝えたらきっともっといい関係が築けただろうに、本当に失礼した。しかし、やっぱりこの小説だけは若い時に読んでもピンとこなかったかもしれない。主人公と大体同じ年になっているのだけど、全然インポじゃなく、精力があってすごい。今更、ちんちんが元気でもしょうがないのだけど羨ましい。サスペンス調のとこ

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    2021年04月28日
  • わかって下さい(新潮文庫)

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    65歳ぐらいの男性が主人公の短編集。

    コンサートに行くと、昔交際していた女性が隣の席に。しかも失明していた・・・「わかって下さい」
    妻に先立たれた。残されたのは彼女の連れ子。ずっと一人で血のつながらない娘を育てた。彼女が結婚すると言う・・・「白いシャクナゲ」
    たまたま困った老女を助けた。昔好きだたった男性を探してると言う。一緒に探しているうちに、偶然が・・・「恋ものがたり」
    マンションに突然知らない女が来て、困ったらここに来るように、安田先咲に言われたそうだ。安田のことは知らないが、女は有名女優らしい。そして安田は昔付き合った女性の娘だと言う・・・「観覧車」
    画家は描く気力がなくなくなった。

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    2021年04月16日
  • 樹下の想い

    購入済み

    久し振りです

    久し振りに読み終えて余韻を楽しめました。高橋治の「風の盆恋」は今も心に残る一冊ですが、きっとこの本も心に残る一冊にプラスされるでしょう。主人公の花材屋という職業も興味深く生き方にも心引かれるが、思われる相手の女性の身になると「言ってくれれば人生変わったかも知れません」ということなのでしょう。

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    2021年01月24日
  • 悪徒

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    ネタバレ

    読み応え抜群!!
    元弁護士の藤立、殺し屋の榎波のドラマを観ている様な見後なW主演。
    元刑事の干場、元殺し屋の花井が仲間に加わり重い所は重く、軽い所は軽く·····みたいなプロットが素晴らしかった。

    藤立の悪度さがカッコイイし、相棒になりたい干場は可愛いし
    ドロドロ血生臭いだけではないのが良かった。
    ちょっと腕の立つ殺し屋、榎波が呆気無かった気はするものの、歪んだ人間性も物悲しく描かれていて最後は胸が締め付けられました。

    続きはないのだな·····と思うと残念で仕方ないです。

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    2020年10月04日
  • わかって下さい(新潮文庫)

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    今でもたまに聴く、因幡晃氏の「わかって下さい」。リンクした内容の短編。想像だにしない展開と結末に、さわやかなな方の涙が少し流れてきた。

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    2020年08月30日
  • 影の探偵 〈新装版〉

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    探偵小説大好き人間としては、大変に楽しめました。
    どちらと言うと軽めのタッチかな。
    影乃のハードボイルドだけどユーモアセンス溢れるセリフが、抜群に良かったです。
    藤田宜永さんは、数々の探偵ものがシリーズであるみたいだけど
    まだ読んだことがないので、他作品はどんなタッチの探偵なのか、非常に興味が湧きます!!
    もう、今はどの作品の続編が読めない淋しさはありますが·····一作一作、味わって読んで行こうと思います。

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    2020年05月06日
  • 激動 東京五輪 1964

    購入済み

    蘇る昭和の世界、味わいある七編

    東京オリンピックを背景に、著名なミステリー作家七人によるアンソロジー。あの頃は今よりもみんなが前向きで、街にも活気があふれていたような気がする。初めて読む作家もいて、それぞれの持ち味が楽しめてよかった。個人的には月村さんが面白かったかな。

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    2020年04月26日
  • 激動 東京五輪 1964

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    大沢在昌、藤田宜永、堂場瞬一、井上夢人 今野敏、月村了衛、東山彰良『激動 東京五輪 1964』講談社文庫。

    昭和39年。東京オリンピック開催に沸く東京を舞台にした7人の作家によるミステリー・アンソロジー。古き善き時代の香りの中に描かれる様々な形のミステリーとピカレスクはいずれも秀逸。

    2020年の東京オリンピック開催を記念しての刊行かと思うが、新型コロナウイルス感染拡大の非常事態により東京オリンピックは2021年に延期されてしまった。延期ならまだしも、2021年に開催できるかどうかすら怪しい状況である。自分は中止になると見ているが……『アンダーコントロール』『復興五輪』という日本の総理大臣

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    2020年04月20日
  • 悪徒

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    いやあ好きでした、面白かった。中弛みしなかった、長さを感じなかった。藤田宜永氏は恋愛ものも書かれているのでそこら辺が凄く上手いですね...本当に上手くミックスされていて高度な技術だなと...解説を読んで改めて凄さを実感しました。それと、登場人物全員が興味深く良い味出してたなあ。

    でもとにかく私は榎波、最高に好きにですね。なんだろうなあ、多分藤田氏の世界観が自分にはツボなんだと。

    最初描写が細かくてうお...と思いましたが、それが良いんですね。読んでいると当然ですけど気にならなくなる、でもそれがこれの面白さに繋がっていますねうん。本当に面白かったです。

    まあまあなハードボイルドなので、好み

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    2018年09月19日
  • 敗者復活

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    老朽化したバッティングセンターが舞台のちょっと変わった人情物語。
    主人公は当時から人気もなく、老朽化も進行していたバッティングセンターを購入した、経済犯罪者
    しかし彼には心がある。世の中からも身内からも悪と思われても誰にも語らず自分の生き方を貫き通す姿に惚れました。
    いい作品だと思います

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    2017年05月26日
  • 女系の総督

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    ひとつ屋根の下で沢山の家族が生活する、近所に親戚(一族郎党)が暮らしている・・・、昭和ではめずらしくなかったし、地方では今でもそうかもしれません。藤田宜永さんの家族小説「女系の総督」、2014.5刊行、2017.3文庫化、683頁の大作です。森川崇徳59歳、母、姉と妹、姪、(病死した妻)3人の娘、孫娘、更には猫の姉妹といった女系家族の中で孤軍奮闘しています。ハイテク機器に優るとも劣らない女性たちのネットワークに翻弄されながらも、家族ひとりひとりが抱える諸問題を根気よく解決していきます!いい物語でした!

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    2017年04月09日
  • 喝采

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    70年代の和風ハードボイルドを堪能。
    かなりの文量だが、次へ次へと読み進むのが楽しかった。
    結末はなんとなく読めてはいたものの、若き浜崎の躍動感がそれを感じさせなかった。
    続編が生まれるか、楽しみである。

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    2014年10月09日
  • 老猿

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    ネタバレ

    物凄く生々しく、グロテスクに感じる小説でした。いや、別にそういう内容でもそういう表現が出てくる訳でもないです。
    ただ、人間の純真と諦念、男女の必然と打算、生きる希望と惰性、そういったものがまるで匂ってくるかのような。
    勿論、舞台についてさしたる知識もないからこそフィクションを素直に楽しめただけってのも大きいんでしょうけど。
     
     登場人物に嫌な奴がいなかったんですよ。かといって善人って事でもない。「ああ、人間らしいな」と感じたのは大きいです。
    男と女の関係についてもそう。惹かれあうのは偶然なのかもしれませんけど、どこかで結末は分かってたりするもんですよね。
    無理をしたり駆け引きをするんじゃなく

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    2013年06月23日
  • 愛の領分

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    年代が全然違うのにー。
    これでハマってしまい、他の作品もたくさん読みました。
    他のも同じ雰囲気で期待を裏切らないです。

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    2011年08月01日
  • 敗者復活

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    さすが藤田さんだ。
    長編であっても飽きず、めくるめく展開があるわけでもないのにしみじみと感じ入る。
    別れた妻へのなんともいえない想い、交わることのない息子との関係、安らぎを与えてくれる女性の存在、、、
    主人公は大人の男性で、その目線からくっきりと浮かび上がる回りの人間関係。
    金持ちで、名誉があって、そんな人生はうらやましいけど、それだけが幸福ではない。
    地に足をつけて、食べるだけのカネを稼ぎ、愛する人間が居ることが、どれだけ羨ましいことか!!

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    2009年12月27日
  • 子宮の記憶 ここにあなたがいる

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    初っ端から熱く始まる描写に驚いたけど

    昨日読み始めた時のアタシの気持ちと とても似ていて

    スンナリと 面白く 最後まで愉しく読めた。

    なんの伏線もなしに

    「俺さ、赤ん坊のときにさらわれたことがあるんだ」のセリフには

    ココで終りか。と些かガッカリきたけども 

    長い物語の中では たった1つの失点という事でノープロブレム。

    あ!!美佳の部屋に携帯を落としていった理由も説明おかしいから失点2ポイント。

    主人公は男の子で高校生で 全くアタシとは違うけど

    親は金持ちでいい家に住んでいて 全くアタシの親とも違うけど

    アタシの親に対する気持ちは 非常に全くといっていい程似ていた。



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    2009年10月04日