藤田宜永のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
▼藤田宜永さん、という小説家さんの本を初めて読みます。「ふじたよしなが」さんなんだそうです。ちょっと人に薦められて気軽に読みました。この「女系の総督」は、執筆当時(2000年くらいか)の現代劇。大家族と東京で暮らす超エリート&資産家の50台後半と思しき男性(数年前に妻を病で亡くした)が、家族(姉・母・娘など)や知人(恋人っぽくなる女性)などとにかく女性たちを相手に翻弄されたり恋したりする四季折々の日々を軽いタッチでつづった、<都会風俗恋愛&ホームドラマ、軽いコメディ>というところ。
もうちょっと踏み込んで備忘録的に書くと、
・超一流大手じゃないけど多分それなりの知名度のある出版社の文芸部門担当の重役、が主人公。
(これだけで、なんだかんだとエリートレースを超勝ち抜いてきた人ということになるんですけれどね)
・親というか祖父が?下町で材木屋をやっていた(店員じゃなくて”旦那”)だから、都内に不動産がある。つまりはマンションを経営している。つまり、金持ちである。金持ちでエリートで大会社の重役(笑)。
・と言う訳で舞台は都内で、江東区とか。
・で、美人作家さんとか、イケてる医療コーディネーターとか、バツイチだったり、の、40台くらいの女性と恋愛する。
・同時に、自分に心開かない長女(競艇の選手をやっている)と、なんとか打ち解けたいという悩みを抱えている。(大まかこれがメイン題材で、これがちょっとイイ感じになるあたりで終わる)
・ほか、母や姉や妹や、次女三女にもそれぞれ悩みがある。
▼意外とありそうでこの手のものは少ないです。難しいからでしょう。獅子文六さんがすぐに思い浮かびます。丸谷才一さんもちょっと似てますけれど、丸谷さんはもうちょっと<思想的理屈から逆算された物語>であることが多い。小津安二郎さんの晩年のカラー映画たちや、ウディ・アレンさんの一連の都会恋愛モノ、一部トリュフォーやロメールの映画にもそういうタッチがあります。なかなか難しいのは、「軽いコメディな味わい」ってあたりかと思います。その代わりこの手のものは、ある切り口で見れば、
・金に不自由しない、勝ち組の連中が
・結局惚れたりはれたり人間関係をぐにぐにやるだけで
・俺の私のタマシイにはなんにもこんなの、刺さって来ない。
・・・・という感想もあり得ます。だってまあ、それはその通りですから(笑)。
▼フジタヨシナガさんという作家さんは、1950-2020(享年69)なんだそうで、日本からフランスに渡り、ミステリの翻訳をやったりあちこちで働いたりされたそう。そして1980年代~1990年代とミステリ・冒険小説などで作家になられ、2000年代くらいはどっちかっていうと恋愛小説のほうが多いかなみたいな活動をされた方だそうです。ナルホド、ふらんす映画、トリュフォーやロメールや、あるいはシムノン的な気の利いた都会の人間関係の機微、みたいなところが親和性ありそうですね。
▼本全体に僕としては実は楽しかったんです。するすると読み終えてしまいました。なんだけど、まあこれは自分自身が50台の男性で都会生活しているからかしらん、とちょっと思ったり。全般に、作者さんは僕よりも上の世代、言ってみれば団塊というジェネレーションなので、実は細かいところに見え隠れする価値観がナチュラルに昭和(笑)。どこかで男性中心主義的。そこのところは、ちょっとざらついた感じはします。するけれど、読むこっちがオジサン年代なので、「まあ、許せる(男性には都合の良い方向だから)」 という読後感。
▼職人技の都会小説なのだけど、人間関係や家族関係の、「ツボ」の押し方と、価値論的底意地の悪さみたいなものが、やや甘口。・・・だから、向田邦子さんの創作したいくつかの物語や文章が残るほどには、こっちは残らないんだろうなあ・・・とちょっとしみじみ。愉しく読んだ小説でした。 -
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ネタバレしのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで
美しい題名の『樹下の想い』を読み終え、最初に心に浮かんだうた(百人一首)です。
そして、愛する・浮気はしないと、心に決めて貫いた、三浦友和さんを想った。
格好いい男性はいつの世もいらっしゃいます。
嬉しいことに!
華道家元の娘・絹子を愛する、花材職人の平賀誠吉の儚い恋。
あれから二十六年の月日を経ても、忍ぶ想いは、くすぶり続ける。 忍ぶには、あまりに一途で、甘く、苦く、誠吉にまとわり付く。
それは過去のこと、秘めたはずなのに・・・絹子の夫や誠吉の妻さえも苦しめる。
誠吉の娘・百合子と良介の若い恋とは、対照的に、『山桜が控え目に花を咲かせ』るころ、絹子と誠吉のそれは、終焉へと向かう。
しっとりと・・・そして、美しく、震えながら。
二十六年前の過去と現在が、小刻みに行き交う。回想として誠吉の心理を描いている。
その巧みさに、酔いしれる。
今どき(1997年刊当時でも)珍しい、一途な美しい美しい恋の物語。
華やかな花材の花々、懐かしいジャズのナンバーが、更に、彩りを。艶を。
『生け花が美しいのは、咲き誇る花のうちに死滅の予感が秘められているからだということを、誠吉は身をもって知ったのである。』
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ネタバレ村山由佳さんが解説していたように、読み初めと読後では印象の違う物語になっていました。
作中に出てくる、女性は男性の持つ少年と言うか子供の部分を感覚として理解してしまう。というのはよくわかります。
男性というのはどこかしら母性を求めている部分があるようで、心を許している、または許してもいいと思える相手に対して、内側を素直に晒してしまった時、その少年が現れるのだと思います。
奈緒という女性は、現代において本当に居るのかどうかわからない感覚を持っていますが。
全てにおいて理解できないというわけでもありません。
自分の中にある母性を相手に対して現すことで、自らの存在意義を見出しているのでしょう。
ただ、彼女が翔大くんの父親と、この先本当にうまくやっていけるのかが疑問です・・・。
翔大くんはいつまでも子供のままではありませんから、子供が成長していくにつれ、二人の関係が変化していく事は否めないでしょう。
そういった中で、彼女の男性に対する想いがどう変化するかで、二人の関係が終わるか続くか決まる気がします。 -
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このミス2016年版9位。面白かった。自分的にはツボにはいった小説で、久々にのめり込んで一気に読んだ。強盗殺人犯が主人公で事件の真相をあばこうと暗躍する裏世界の人や刑事と対峙しながら、まっとうな事業を成功させ幸せな家庭を築いていく話。主役視点での緊迫した話が進んでいく。本人の立身物語や共犯者や女性との絡み、家庭を築いていく話はそれ自体面白く、周りの人たちが事件の真相に迫ってくるところはとてもドキドキする。リアリティがハンパなくアンモラルだけど主人公に感情移入してしてしまい、逃げ切って欲しいと思いながら読んでた。結末が予想できなくて息苦しさが続き、サスペンスとしての意外性はあるものの、比較的あっさりと終わる。やっぱりそうなのねと若干物足りないがとても現実的な結末だと思う。小説の進行とともに1966年ごろから1980年ごろまでの実際の事件や東京の歓楽街の状況など時代背景が克明に記されれて自分自身の記憶と重なり興味が継続する。自分はもう少し後の世代だけど、この時代の話は若いころ大藪春彦や黒岩重吾などの本を読み漁ったのでとても懐かしかった。