藤田宜永のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私は大阪の生まれだから銀座は知らない。
だが似ていた。亡くなった父に連れられて
何度も歩いた…大阪のキタ。梅田や北新地。
荘重なビルヂングやダンスホール。
百貨店や老舗の書店。銀行。
今では失われた街並だが
キタはそのままキタとして息づいている。
上質の大人の物語が、どれも心地よかった。
男たちも女たちも、がっついていない。
齢を重ねてこその
後ろを振り返り懐かしむ余裕と
さばさばした諦念が
一人ひとりを美しく映えさせて
いまの銀座も昔の銀座もあるべき姿で
そこに確かに在り続けている。
「夜のサクランボ」と「ありがとう」
この二編をお薦めします。
変わっても変わらない銀座というところ -
Posted by ブクログ
新宿で私立探偵でハードボイルドです。わたくしが愛してやまない「探偵沢崎シリーズ」が寡作すぎて作者に死亡説が流れるレベルなのでしょんぼりしていたら「よかったらこれ」と紹介してもらいました。
なるほど、たしかにハードボイルド。個人的には自身の女性関係に思いをはせないで探偵はもっと超然としていて欲しいんですが、これはまあ好みの問題ですかね。
舞台が70年代ということで・・・微妙に読んでて違和感。そうか、携帯がないからか。たしかに私立探偵ものというかハードボイルドと携帯は相容れないかもな。その不在がハードボイルドを成立させてるのかもしれない。なるほどなあ。そのうち携帯もってるハードボイルド探偵の名作も -
Posted by ブクログ
ボクが二十代前半頃の夢は、古本屋とバッティングセンターの経営でしたが、当時、ボクが理想のモデルとしたバッティングセンターには既にマンションが建って久しくなりました。
結局、古本屋にしてもバッティングセンターにしても、そこが当時のボクの好きな場所でしかなく、代わりの場所は今でもありません。
本書のバッティングセンターはボクが好きかもしれないバッティングセンターでした。
バッティングセンターでのバッティングの極意は、当たるか当たらないかとか、機械に勝ったとかという次元ではなく、バッティングそのものの感触を味わい、自分自身の最高のスイングを追求する修練でもあり、また、その時代遅れな建物や雰囲気 -
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれてブクオフで購入。
ミステリではないけど、しみじみと味のあるいい小説でした。
フランス在住の日本人修復師アベと、彼とつかの間の接点を持つ人々のお話。
アベの落ち着いたキャラクターや、登場する人々の心のうち、その土地の風景などを繊細な表現で情緒豊かに描写していて、いつのまにか世界に入り込んでいました。
どの作品にも余韻があり、大人の小説だなぁと思いました。
フランスが舞台ということで、ワイン好きな私としてはそこかしこに知っている地名や美味しそうお酒やお料理の名前がでてきて、そこも魅力の一つでした。
この作者の他の本も読んでみたくなりました。