辻村七子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
下手なBLよりドキドキした。お前ら早くくっついてしまえ!
宝石商リチャードシリーズ3巻。リチャードが自身の出自を少しずつ正義に話し、二人の間に甘い雰囲気が出てきている。超絶美人でストイックで完璧なリチャードが、正義にかかっては甘味大臣の可愛い人になる。正義もリチャードのために自家製プリンを切磋琢磨して作る。リチャードは正義には非常に優しく、他の人には見せない表情を見せる。二人のやり取りを周りの人が誤解してぎょっとするのは1巻からのお約束だが、あながち間違いでもない気がした。促して自身のほめ言葉を言わせ、それに応える方もどうかしている。そんなん恋人同士やないかーい!
幸せな人を見るとわーっ!ってなる気持ちとか、子供のためにあまり家にいない人と再婚したりとか、恋愛がよく分からない気持ちとか、すごく繊細で細やかで良い。ささやかで、幸せな人や世間一般から見ると正論を押しつけられそうな感じのことを、筆者は握りつぶしたりしないで、しみじみと、心に染み渡るように小さく抱えて大切にしてくれる。
顔と遺産のせいで普通の人には理解されない修羅場をくぐってきたリチャードに対し、まっすぐで感情一直線で、人との距離を保つ優しさもあって、ちょっとボケてて一生懸命で、優しくて落ち込むこともあって、そんな正義がそばにいてどうして好意をもたずにいられようか。リチャードの分かりにくい甘えと心を許している感じに甘さを感じる。二人の分かり合ってる感じがすごく、すごくいい。正義は誰かのために一直線で、正論を振りかざすだけじゃなくて、悪ややりきれないことに落ち込むし割り切ってるわけじゃないし、相手を尊重してくれるし、自身なりの気遣いはしてくれるし、ああもうリチャードからしたら惚れるしかないんじゃないか。
リチャードの本当の気持ちは分からないけど、リチャードはそんなこと認めないだろうけど、自分のそばにいたら不幸になるとか思ってるかもしれないし、好きな相手とうまくいって欲しいと思ってるのかもしれないけど、でもやっぱりリチャードと正義の繋がってる感じが好きで、軽口を言い合ったり細やかなところで分かり合ってるのも好きだし、なんだかんだ心の距離は近いし大切に思ってるし心配するししたいし、それがただの上司とバイトの関係だなんて言えないじゃないか!これがBLレーベルなら是非二人の恋を応援したいところなのだけれど、一般向けレーベルだからなぁ。本編はこの絶妙な距離感を続けて正義は谷本さんと付き合って欲しいし、リチャードは心の中でほのかに失礼しつつ正義のそばにいて欲しい。そして是非!同人誌でアナザーサイドを。二人の幸せを見たいです!
宝石がテーマの物語だが、このシリーズの魅力は何よりも細やかで繊細で優しい機微にある。正論を振りかざすような子供っぽいそれではなく、世間の波にさらされて、時には挫けたり泣いたりすることがあっても、それでも生きてきたというか。そんなゴツいものではないんだけど!くそぅ、うまく言えないな。年配のご夫婦が二人で宝石を買いに来るのを普通の幸せではない、と言うような幸福感です。正義達が生きているのは、結婚して子供が産まれて元気に育って老後を夫婦で暮らすような、そんなことが一般的であり当たり前とされるような世間なんだけど、正義達はそれが当たり前ではない。だからといってやさぐれているわけでも恨んでいるわけでもなく、背負った自身の境遇と共に生きていく。世間でいう一般的でないこと、少数派であること、良いこととされていることから外れている人を、ひねくれもせず描くことがうまい。一体筆者はどんな人生を歩んできたら、こんな優しい物語を描けるのだろう。 -
Posted by ブクログ
時間遡行機によって過去に遡れることになった世界
泥棒と呼ばれる職業が台頭し、
戦争で失われた美術品を過去から盗み出していた
主人公にある日任された仕事は
19世紀のパリで
ある卵を盗み出すことで……
過去も未来も現在として繰り返す
タイムループミステリ
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序盤は、なんだかよくわからなくて
マリーに小馬鹿にされて
主人公と一緒に「どういうことだよいい加減にしろ!!」と
カッカしていたけど
中盤以降の展開がとても良かった!
「仕事を成功するまで延々と繰り返すループ」
会社も、あきらめずに何度もチャレンジしてほしいと
社員の泥棒たちに指導している
けれどその繰り返しが単なる「やり直し」以上の意味を持って
ルフの中で行われていくことに
新鮮さというか悲壮というか、あぁ…と嘆息が出た
あんまり「泥棒」という名付けには馴染みはできなかったかも
違う呼び方でも良かったかも -
Posted by ブクログ
もう結構続いているシリーズだけど
まだ読んだことがなかったので
手を出してみました。
天才的な掏摸を祖母に持つ正義は
名前の通り正義感の強い青年に育ち
通りすがりで絡まれていた男を助ける。
その美貌の外国人が宝石商と知って
正義が鑑別を依頼したのは
祖母が遺したいわくつきの指輪だった。
へえ〜、ダイヤモンドは「鑑定」で
それ以外の宝石は「鑑別」なんですね。
そんな豆知識も交えつつ。
1話目の謎を解いたあと
リチャードの店で働くことになった正義が
持ち込まれる宝石がらみの事件に
関わるかたちで3話続く。
いい流れです。
会話のテンポもわりと好き。
できればまた続きも読もうかな。 -
Posted by ブクログ
SFと構えず、肩の力を抜いていい作品。チョコシューみたいに何も考えずにサクサクいけて、気づいたら手が空っぽの袋を探っている……、そんな読み心地。
難しい用語、漢字、医療や機械に関する詳しい説明はないので、中高生でも読みやすいかと思う。ページ数も優しめ。カバーの印象のまま入っても大丈夫。
実はSFマガジンでお見かけして、読もうと思っていた本の一つ。
連作短編の構成で5話、そのうち3話は独立したお話として読めるので、その点でも手に取りやすいかもしれない。SF要素は薄いので、苦手な人でも読める……と思う。
海面上昇で陸地が極端に減った世界が舞台。とはいえ海の描写は少なく、内容も表現も、基本的にそこまでハードなものはない。ディストピアではあるが、設定も複雑ではなく、割とふんわりめ。救いがなかったり、やたらと酷い目に遭う話はないので、安心して読んでいただける。むしろ童話的かも。
対象の年齢層が低めに設定されているのか、全体的に若い登場人物が多く、文章全体の密度は低い。特に3話目まではその傾向が強いかな? どの話も、人の執着や人間性が話の中心にある気がするが、アクの強い人物はいない感じ。
フラットな気持ちで読み進めてしまい、なにが自分に刺さらないのか……と考えて、突然気づいた。
この作品は、とても親切で、全て説明してくれる。それはゲームのマップが、敵の姿も含めて全て見えているようなものだ。見通しのいい、足元の安全性が保証された浜辺を歩いているような、ストレスのなさ。あまりに整備された道。これが私には刺さらなかったのだろうと思う。
ただ、短編と思えば、見通しがいいほうが小説としてはいいのかもしれない。処理する情報が少ない、読むのが楽、というのは結構重要だったりする。
特に、読み手が疲れている時は。
セルセおじさんが、かわいそ可愛い。
ほとんどの生き物にとって、死ねないことは可哀想なことでしかないのに、それを求める人は多いよね。
マリアの話は、彼女の性格が出ていて割と好きだ。なので後半の2話は、心地良い風がカーテンを揺らすのを眺めるような、穏やかな気持ちで読めた。
あとがきを読むと、この小説に漂う童話的な空気の理由が分かる。
何をもってそれを人と定義するか、という疑問がつきまとうのはSFの常だけど、この作品はそんなに深く考えず、さらっと読むのがいい気がする。
他者を人だと定義するのは人だし、幸せを定義するのも結局は人だ。窮屈な価値観を脱ぐ瞬間があってもいいだろう。
読後感は、まるで青空の下、無風の海の上をゴムボートで、なんの不安も衒いもなく、ぷかぷか浮かぶよう。