辻村七子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
今回の物語の舞台は、香港!
といっても、第二部が開始した頃から、各国各地域を回っているので、香港に止まらないのだが。
世界を飛び回る、それは甘い憧れだが言葉の壁、文化の壁という中で決して見た目よりも甘くはないことも知る。
だが、正義がぶつかったのは、日本だ。
彼の母国。彼が育った国。故郷。
日本人なら気づいているだろう、自分が生まれ育った国が、和を持って尊しと言いながらその和から外れるものには容赦しない国であることを。
それでも、そこに自分の根がある。
どこの国も内実は変わらない。
そこまで行かなくても、日々の暮らしの中で、私たちはぶつかる。
その時に、こんな言葉と出会えたら。
「あなたの胸に輝く宝石の存在は、あなたが知っていればいいと。」(41頁)
それから、リチャードと正義の間にも友情、愛情、尊敬、思慕、そんな複雑な感情を互いに相手に伝えるようになる。また、正義の淡い恋心の相手、谷本さんに対する思いの清算も。
男女のエロスだけが愛ではない。
けれども、アガペーと言われるとそれもまた違うような。
触れたいと願うのは、体だけではなくて、あなたの心なんだ、そんなこともあるが、それは変なことじゃないでしょう?
愛はグラデーション。
美しい宝石の物語は、心という見えない宝物に姿を変え、語り続ける。
次巻、物語は佳境へ!! -
Posted by ブクログ
本作ではリチャードの過去があらわになる。
師との出会い、母親や家庭教師など、実家の話など…優しさであったり、考えられないくらいの苦しみであったり、それらが今のリチャードを形作っていることがよくわかる。
人は皆過去を元に作られていく。
優しさも賢さもそしてそれを総括した「美しさ」も。
「挑むシトルリン」は叶わない恋の物語だ。
いうことは簡単だが言わないことはその何十倍も苦しく、自分を律しなければならない。
そして、自分が思うほど相手は自分を思ってはくれないこともある。
だが、相手が生きる世界を、相手が大切にしている世界を愛することはできる。
愛とは、人間とは、なんと複雑なのだろう!
「ジルコンの尊厳」では、「美とは『ある』ものではないのです。『見つける』ものなのですよ」(206頁)
「祝福のペリドット」では、
「自分が今まで何をしてきたのかと厳しく考える時には誰しも、己がうつろに思えるものだが、実際には自分で思っているよりもいろいろなものが入っているし、逆に考えれば、まだまだ詰め込む余地があるということでもあると。」(282~283頁)
とこの本は伝えてくる。
美の基準であったり、自分自身の評価であったり、そう言ったものはなかなか高くは評価できず、低い評価のままになりがちだ。
そんな苦しみを少し和らげてくれる。
少しずつ少しずつ、本は私を救ってくれる。
薄皮一枚ずつが積もって、以前よりずっと苦しまなくなった。
たくさんの言葉に触れること、それは必ず自分の救いになる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ僕幕2ですね。
学がないので、「オネーギン」がロシア作家の小説だと読むまで知りませんでした。タイトルに出てるのだから調べろって話なんですが。
しかし、このタイミングでロシアの小説を主軸に据えるとはチャレンジャーだなぁと思ったのですが、読み進めていったら、現実と同じ世界線だと気づきました。
そして、このタイミングだからこそ、先生は書いたのだなと。そのメッセージはしっかりと物語を通して伝わりました。
物語は残り続ける。忘れてはならないのだと問い続けるために。
重たいテーマを混ぜながらも、お話の筋道自体はいたって快活で、汗と忍耐と努力の青春バディものって感じですね。
今回から登場した未来哉くん、最初は勝くん視点で描かれていたから、ひねくれたわからない子という書き方だったけれど、
その後、どんどん、だだ漏れていく未来哉くんの内面がおもしろくて。
陰気で皮肉屋だとカイトとキャラがかぶっちゃうけれど、アホで可愛い後輩さがにじみ出てくるから、このあとの三人の活躍が楽しみになった。
私も劇場で観劇をするのが大好きなので
「感受性のスイッチを全開にしている」というフレーズがまさしく!と、劇場の幕が開いた瞬間の鳥肌が立つ感覚になった。