野崎歓のレビュー一覧
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ネタバレ展開が早くてメロドラマ的な筋立てなのでスルスル読み進めた。ジュリヤンが人妻の手を握ること一つについても「今日中き手を握れなければ僕の負けだ」とか、
欲望でも恋でもない階級闘争としての不倫をしていて、もうちょっと色恋を楽しめよ、と思うなど。
清純で箱入り娘なレナール夫人が、いざ危機となるとびっくりするほど気転がきいて勇気のある女性に変貌するあたり、ああだこうだと天秤にかけているジュリヤンと対比すると人間的に清々しい。
19世紀初頭のフランスでの、王党派復権が盛んだったこと、ナポレオンの著作や肖像画を読むだけでも立場が危うくなるほど反ナポレオン志向が高まっていたこともこの作品を読むまで意識して -
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フランスの四大文学賞の一つ、ゴンクール賞を受賞した作品。史上二番目の若さで、セネガル出身者では初の快挙とのこと。
1930年代に突如現れた謎の黒人作家、T.C.エリマンの痕跡を辿る物語。舞台も時間軸も様々入れ替わり、主要な人物もすこぶる多い。手に取った時から覚悟はしていたが、かなりの超大作だった。フランス文壇からアフリカの呪術師、二度の世界大戦から現代アフリカの政治情勢まで幅広く網羅して話は進んでいく。特に、第一、二次世界大戦中のパリの様子や、植民地支配と黒人社会について詳しく描かれていて、大変興味深かった。
歴史物でもあり、ミステリーでもあり、ちょっとホラーでもある、盛りだくさんな作品。全て -
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ネタバレスタンダールの容貌はよろしくないらしいが、年譜ほどの恋愛をしていれば、赤と黒も容易く書けただろうと思う。恋愛経験の浅い男の妄想話かと思っていたが、実際は自身の恋愛経験と時事、新聞を織り交ぜた著者本人の姿が透けて見える作品だった。主人公ジュリヤンは容貌と記憶力こそ良いが、地頭はそれほどよろしくない片田舎の息子だ。彼なりに努力し神学校に入り、家庭教師など仕事をしていたが、やることなすこと悲劇の主人公気取りで他人に与える迷惑などまるで考えない。むしろ、迷惑をかけている自分に陶酔していた。彼は家庭内暴力の中で育ち、ナポレオンを生きるよすがにしたことで、英雄ナポレオンを崇拝するしか脳のない男に育つ。戦争
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『人間の大地』はやはり「「精神」だけが、その息吹が粘土の土の上に通うならば「人間」を創造することができる。」という最後の一文がすごく肝になっていると思う。
定期路線を飛行しているとき農夫を見て感じたこと、リビア砂漠で彷徨ったときのこと、戦時中フランスからパリに移送されるユダヤ人の人やその子供を見て感じたこと。どのエピソードも飛行機を通じて作者が体験し考えたものばかりで、大地に根付いた人間たちの物語なんだなと感じることができた。心に刺さる名言も多いし自分は『人間の大地』が好きだなあと改めて思いました。
ちなみに表紙の写真は長年の夢だった新品飛行機を買ったときの写真で、この直後にリビア砂漠に墜落し -
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楽しみにしてたよ〜〜〜〜
堀口大學訳で読んでから何年経ったかわからないけど
この2作を新訳で読めることに喜びを感じる!
当たり前だけど本当に読みやすくて、星の王子さましか読んだことがない方でも読めると思う。
ただ星の王子さまと同じ感覚で読むとびっくりするかも!ハードボイルドじゃない!?と個人的には思います。
郵便物を空路で運ぶよ〜な話。
空から見える景色が逐一美しくて好きだ〜。あと夜間飛行は空と大地それぞれで戦う者たちの精神に根拠があって全てのことがすんなりと頭に入ってくる。自由とはとか。
人間の大地もまぁ良かったんだけど、やっぱりなんか最初に読んだ堀口訳よりも魅力が減っている気がする〜〜 -
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モーム選の世界十大小説のひとつ。(読むのは、カラマーゾフの兄弟、戦争と平和、ゴリオ爺さん、に続いて四作品目)
発表は、1830年七月革命直後、執筆は七月革命前の王政復古(シャルル十世)の時代。
製材屋の息子(19歳)ジュリヤンが、町長宅の住み込み家庭教師からキャリアをスタートし、神学校勤務を経て、侯爵の秘書に内定するまで、が上巻。
叙述の多くを占めるのが、ジュリヤンとレナール町長夫人(30歳くらい)との間の禁断の恋愛関係。
巻末の「読書ガイド」によれば、史上初のサラリーマンを主人公とする小説、という説もあるらしく、すごろくものを読んでいるような独特の面白さだ。あらすじを全く知らずに読み -
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「大切なものは、目には見えないんだよ」
いや、わいには見える(やめとけ)
はい、世界的名作『星の王子さま』じゃなくて『小さな王子』を光文社古典新訳文庫で読みました
あー、こんな話だったっけ?
いやしかし翻訳超良かったんじゃね?
この訳でなんか色々気付いたことがあったな
そもそもさ、このお話ってサンテグジュペリは大人向けに書いてるのよ
だからこれまでのおとぎ話調の訳って作者の意図と離れたところにあるんよな
子どものこころを忘れてしまった大人たちの、だけどこころの奥の方に眠っている純真さに向けて書かれている本なのよ
なので訳者の野崎歓さんのあとがきに納得
そして、なぜ『星の王子さま -
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物語後半で展開されるのは人生の不条理劇。解明しようとしてたサイバーテロ攻撃も父が残した謎も大統領選もこれ以上進展がのぞめない。なぜならポールは口腔癌によって「滅ぼされる」から。
自分はまだ重い病気に罹ったことがないから、癌の告知、治療の選択、家族へ知らせる過程等をポールと共に追体験した。嘘つくまではいかないが言うべきことを妻に言わなかったりセカンドオピニオン受けて治療法を天秤にかけたりと、細部にリアリティがあってこんな感じなのかーとしみじみ思った。
やっぱり、妻であるプリュダンスとパートナー関係が修復できてるのが今までのウエルベック作品と異質だと思う。
知人とも話したけど、ウエルベック年々作風 -
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いつものウエルベック節を求めている人にとって期待以上に楽しめる本だと思う。
序盤から断頭台の図解が出てきて笑ってしまう。まだ上巻しか読んでないけど、ポールとプリュダンス夫妻の歩み寄り・関係の修復が見られそうなのがこれまでのウエルベック作品とは違う点かな。
ポールが人間嫌悪とテロリストへのシンパシィを独白するシーンは正直ドキッとさせられた。
一番印象的だったのはポールの妹セシルが得意の料理を武器に働きに出て、ブルジョワの家で作業をする中で社会的階層の違いを痛感するところ。「こんなの知りたくなかった」けど夫と合流する頃には「楽しかったわ」と表面上取り繕う。うーんしんどいな -
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ネタバレ悪女の話だというくらいの知識しかない状態で読み始めました。
もっと高尚な感じなのかなと思いきや、語り手のデ・グリュが正しく恋に狂っていてまったく落ち着いていないので(笑)そりゃ恋に堕ちたら冷静ではいられないよね……と勝手に納得。
マノンはもっと計算高い感じなのかと思っていましたが奔放で天真爛漫で自由でなんだか憎めない魅力があります。
弄んでやろうと思ってやっているのではなくてその時の自分の気持ちに正直なだけというか。
若さもあるんでしょうね。
計算高いという点ではデ・グリュの方が悪に染まっているような……
あなたが悪いんですよとか言いながら門番を撃ち殺したり。それに良心の呵責を感じるどこ -
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おとななので、長い夏休みもないけど、夏に何かしっかりした物語を読みたいと思って選んだ1冊。けっこう読み終わるまで時間がかかった。なんとか夏が終わる前に読み終われてよかった。
はじめ現実離れした表現が目立ち、ヴィアンの本がはじめましてだから、そういうものかとなんとか受け入れることができた。そして、読み進めるほど、ファンタジー感は薄れて、気づけばけっこう暗い結末に向かっていくという。。
でも不思議なことに、読後に重さや悲しみのような負の感情はそこまで残らないさっぱり感?。ある意味、物語として最後まで楽しめたので、傑作なんだと思う。
本編終了後に丁寧に、解説と作者の年表と訳者のあとがき付きでありが -
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ネタバレ"第一の書"と銘打たれた冒頭ブロックのみ取り出しても既に一つの物語として充分に完成しており、もしかしてオムニバス様の構成なのか? と勘違いしかけたほど。
以降、構築されてゆく世界は非常に重厚かつダイナミックであり、その舞台がアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカに渡っていることを含め、生半可な読者の覚悟では抱えきるのが困難と思われるぐらいのスケールを感じさせる。
地の語りの他に、ロードムーヴィー然とした描写や作中作に回想録、重要人物へのインタヴューに加え、そのインタヴュアーに対するインタヴュー等々、様々な形態のパーツが見事に組み上げられている全体はまるで大伽藍のようであり、作