野崎歓のレビュー一覧

  • 赤と黒(下)

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    順調に、山を登るように少しずつ、成功に向かって前進するジュリアンだが、後半のあの2ページの急展開で全てが切り落とされる。作者の鮮やかな技を見た。そのあとの穏やかな空気も、それまでとはうって変って、静かに心にしみるようだった。
    さすが名作…恐れ入りました。

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    2012年01月31日
  • ちいさな王子

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    KiKi の子供時代、とあるコマーシャルで「大きなことはいいことだ」というフレーズが使われたことがありました。  でもその後の価値観の変動の中で「大きけりゃいいってもんじゃない」という風潮が生まれてきて、今はその延長線上にあるように感じます。  でも、一度は大きい方に舵をとったこの社会はこの「大きい」と「小さい」のひずみの中で喘いでいる・・・・・そんな気もしないじゃないんですよね~。    

    でね、今回、この「小さな」「大きな」という対比の中に、KiKi は「大きな組織で動く効率的・合理的社会」というものを感じ取りました。  もちろんそれが「悪いこと」とは言い切れないんだけど(特に落ちこぼれ

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    2012年01月25日
  • 赤と黒(上)

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    恋愛小説の傑作でしょう。
    現代日本では見られないような野心満々・肉食男子のジュリアンもその恋人たちも、なぜか芝居がかって冷静に考えるとおかしいのですが、やっぱり読んでいて引き込まれてしまう駆け引きの様子とドキドキの心理状態。
    少女マンガのようなフランス文学です。

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    2010年05月08日
  • 素粒子

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    (記憶では)兄弟がいて、兄は不細工で性欲ありありで、機会に恵まれない人。弟は天才科学者で性欲無い人。この兄弟の性的遍歴と、一族の歴史に20世紀思想史の偉人たちが絡んで、加えて量子力学の発展史も絡んで・・・・・ポストモダン全否定して・・・・・ニューエイジ称揚して・・・・・みたいな。端折りすぎですが(笑
    なにせ凄い小説です。やばい文学です。
    なんせ、ひたすら性的描写と思想史エピソードがくんずほぐれつです!!頭悪い紹介ですみません(´_`ヽ)
    最近ちくま文庫に入ったみたいなんで、よろしければどうぞ。
    作者は、ラヴクラフト論でデビューしたという変人じゃなくてユニークな方。残念ながら、ラヴクラフト論翻訳

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    2009年10月04日
  • 井伏鱒二ベスト・エッセイ

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    やはり井伏鱒二はよい。『角帽の色(早稲田)』の味わいといったらない。みじかい『川』もよい。若いときから老成しているというか、作風に変化がないこともみてとれる

    じっくりじっくり読んだ

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    2026年07月15日
  • 素粒子

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    『素粒子』という題名から物理学者の物語かと思って読んだら現代社会の苦悩に苛まれる異父兄弟の物語。と思いきやまさかのSF!フランス文学ならではのエスプリの効いた難解で高尚で迂遠で下品な作品(褒めてます)。
    母親を同じくするノーベル賞候補の分子生物学者であるミシェルと小説家崩れである教師のブリュノ。幼き頃に無償の愛情に触れなれなかった二人の屈折した愛への渇望。中盤は特に幼少期の酷い虐めと非モテから性癖の歪んだブリュノの卑猥かつ詳細な性描写にひたすらページを割き、深読みすれば1960-70年代フランスのフリーセックスと個人主義が生み出した歪んだチルドレンたちの姿を描き出す愛国心に基づく自省や問題提起

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    2026年07月08日
  • 地図と領土

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    ネタバレ

    あるアーティストの一生と連帯及び喪失

    画家・写真家のジェド・マルタンは美を見出す目の持ち主。上空からの町の様子を切り取った地図写真や労働者のあり様に焦点を合わせて、美術製作を行う芸術家。
    彼のスターダム、作家ミシェル・ウェルベックとの出会いと別れ、父とのささやかな日々を描いた作品。

    人物の生い立ちや最近の様子の描き方がうまくて、物語だけでなく人にも面白味を持ちながら読める。やっぱ人の描き方って大事ねー

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    2026年04月24日
  • 地図と領土

    匿名

    購入済み

    『素粒子』や『ある島の可能性』にあったようなキツめの性描写や人生や社会に対する絶望感・倦怠感は本作ではそこまで強く描かれていなかった。美術やアートについては全くの門外漢なので少しついていけない部分もあった(出てくる作品や人物はウェルベックの創作だが、登場人物の語る創作論とかの前提知識が無いので難しかった)

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    2026年04月08日
  • 夜間飛行・人間の大地

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    操縦士と通信士。たったふたり、広すぎる夜の闇に惑い、人のいない砂の惑星をさまよう。帰還が約束されないパイロット兼作家の描写は詩的な豊かさと冷徹なまでのリアリティに満ちている。人間の営みから高く離れている飛行士の感覚はユニークで、それだけでも読む価値がある。

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    2026年03月05日
  • うたかたの日々

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    デューク・エリントンに出会った本。
    前情報無しで読みはじめた時、星新一みたいな世界観だな〜と思っていたらやはりSF要素万歳だった。表現がところどころコミカルながらも、切なく、美しい作品だった。

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    2026年01月23日
  • 素粒子

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    ネタバレ

    けったいなタイトルがついていると本を開いてみれば、セクシャルな話題が行き交う。
    性的格差のみじめさをひしひしと体感しながら、時折訪れる至福の瞬間に酔いしれる。
    寂しさと悲しさを煮詰めたような内容で、どんどん気持ちが内側で膨らむ。
    このような結末であるなら、もう一度再読してみよう

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    2026年01月17日
  • 滅ぼす 下

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    ミシェル・ウエルベックの二巻本の最新長編小説、ということでずいぶんと期待をもって読んだ。以下、おおいにネタバレがあるのでまだ読んでいない人は注意してほしい。

    小説の途中までは、経済・財務大臣の腹心の高級官僚である主人公ポールを中心に、フランス大統領選を控えた選挙戦略、政府へのサイバー攻撃、父親の脳卒中とケアの問題、妹弟とくに弟夫婦との関係とそれを発端としたスキャンダルと実弟の自死、妹のキリスト教と妻の新興宗教、年を経た夫婦の関係、と何本もの糸を張って物語を紡いでいった。小説の終盤にかけてこれらの仕掛けをどうやって回収していくのか、と楽しみにしていた矢先に、ポールの悪性の口腔癌が発覚する。その

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    2026年01月03日
  • 赤と黒(上)

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    ネタバレ

    展開が早くてメロドラマ的な筋立てなのでスルスル読み進めた。ジュリヤンが人妻の手を握ること一つについても「今日中き手を握れなければ僕の負けだ」とか、
    欲望でも恋でもない階級闘争としての不倫をしていて、もうちょっと色恋を楽しめよ、と思うなど。

    清純で箱入り娘なレナール夫人が、いざ危機となるとびっくりするほど気転がきいて勇気のある女性に変貌するあたり、ああだこうだと天秤にかけているジュリヤンと対比すると人間的に清々しい。

    19世紀初頭のフランスでの、王党派復権が盛んだったこと、ナポレオンの著作や肖像画を読むだけでも立場が危うくなるほど反ナポレオン志向が高まっていたこともこの作品を読むまで意識して

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    2025年12月30日
  • 人類の深奥に秘められた記憶

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    フランスの四大文学賞の一つ、ゴンクール賞を受賞した作品。史上二番目の若さで、セネガル出身者では初の快挙とのこと。
    1930年代に突如現れた謎の黒人作家、T.C.エリマンの痕跡を辿る物語。舞台も時間軸も様々入れ替わり、主要な人物もすこぶる多い。手に取った時から覚悟はしていたが、かなりの超大作だった。フランス文壇からアフリカの呪術師、二度の世界大戦から現代アフリカの政治情勢まで幅広く網羅して話は進んでいく。特に、第一、二次世界大戦中のパリの様子や、植民地支配と黒人社会について詳しく描かれていて、大変興味深かった。
    歴史物でもあり、ミステリーでもあり、ちょっとホラーでもある、盛りだくさんな作品。全て

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    2025年12月29日
  • 赤と黒(下)

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    ネタバレ

    スタンダールの容貌はよろしくないらしいが、年譜ほどの恋愛をしていれば、赤と黒も容易く書けただろうと思う。恋愛経験の浅い男の妄想話かと思っていたが、実際は自身の恋愛経験と時事、新聞を織り交ぜた著者本人の姿が透けて見える作品だった。主人公ジュリヤンは容貌と記憶力こそ良いが、地頭はそれほどよろしくない片田舎の息子だ。彼なりに努力し神学校に入り、家庭教師など仕事をしていたが、やることなすこと悲劇の主人公気取りで他人に与える迷惑などまるで考えない。むしろ、迷惑をかけている自分に陶酔していた。彼は家庭内暴力の中で育ち、ナポレオンを生きるよすがにしたことで、英雄ナポレオンを崇拝するしか脳のない男に育つ。戦争

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    2025年10月10日
  • 夜間飛行・人間の大地

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    星の王子さまの作者 サンテグジュペリが飛行機乗りであった事は何となく知っていたがこの本を読んで 生死の境を行ったり来たりしながら人間とは何かを身をもって感じた人だったということに衝撃を受けた 戦争の最中でも淡々と自分のやる事をする兵士達 今でも繰り返される戦争 星の王子さまを再読しようと思う

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    2025年08月03日
  • 夜間飛行・人間の大地

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    『人間の大地』はやはり「「精神」だけが、その息吹が粘土の土の上に通うならば「人間」を創造することができる。」という最後の一文がすごく肝になっていると思う。
    定期路線を飛行しているとき農夫を見て感じたこと、リビア砂漠で彷徨ったときのこと、戦時中フランスからパリに移送されるユダヤ人の人やその子供を見て感じたこと。どのエピソードも飛行機を通じて作者が体験し考えたものばかりで、大地に根付いた人間たちの物語なんだなと感じることができた。心に刺さる名言も多いし自分は『人間の大地』が好きだなあと改めて思いました。
    ちなみに表紙の写真は長年の夢だった新品飛行機を買ったときの写真で、この直後にリビア砂漠に墜落し

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    2025年07月20日
  • 夜間飛行・人間の大地

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    楽しみにしてたよ〜〜〜〜
    堀口大學訳で読んでから何年経ったかわからないけど
    この2作を新訳で読めることに喜びを感じる!

    当たり前だけど本当に読みやすくて、星の王子さましか読んだことがない方でも読めると思う。
    ただ星の王子さまと同じ感覚で読むとびっくりするかも!ハードボイルドじゃない!?と個人的には思います。

    郵便物を空路で運ぶよ〜な話。
    空から見える景色が逐一美しくて好きだ〜。あと夜間飛行は空と大地それぞれで戦う者たちの精神に根拠があって全てのことがすんなりと頭に入ってくる。自由とはとか。
    人間の大地もまぁ良かったんだけど、やっぱりなんか最初に読んだ堀口訳よりも魅力が減っている気がする〜〜

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    2025年07月08日
  • 赤と黒(下)

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    下巻中盤はマチルドとジュリヤンの双方向でのツンデレが延々と続く。恋愛に多少の駆け引きはあるにせよ、流石にやり過ぎ、長過ぎではないかしらん。

    ジュリヤンが一気に出世の階段を駆け上がるかと思いきや、味方の筈のレナール夫人からラ・モール侯爵宛の手紙で、一気に物語は急展開し、まさかのような、あるいは、これしかないか、というような異様な結末を迎える。

    昼ドラのようなドロドロしたお話だが、巻末の読書ガイドによると、事実に着想を得たらしく、肝となるイベントは大体実話のようだ。

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    2025年06月21日
  • 赤と黒(上)

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    モーム選の世界十大小説のひとつ。(読むのは、カラマーゾフの兄弟、戦争と平和、ゴリオ爺さん、に続いて四作品目)

    発表は、1830年七月革命直後、執筆は七月革命前の王政復古(シャルル十世)の時代。

    製材屋の息子(19歳)ジュリヤンが、町長宅の住み込み家庭教師からキャリアをスタートし、神学校勤務を経て、侯爵の秘書に内定するまで、が上巻。

    叙述の多くを占めるのが、ジュリヤンとレナール町長夫人(30歳くらい)との間の禁断の恋愛関係。

    巻末の「読書ガイド」によれば、史上初のサラリーマンを主人公とする小説、という説もあるらしく、すごろくものを読んでいるような独特の面白さだ。あらすじを全く知らずに読み

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    2025年06月01日