野崎歓のレビュー一覧

  • フランス組曲

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    フランスの「ルノードー賞」の歴史において初めての「死後受賞」作。

    1942年にフランス憲兵により捕縛され、同年のうちにアウシュビッツで無残な最期を遂げたイレーヌ・ネミロフスキーの遺作が、実に60年の月日を経て陽の目を見る”歴史的事件”があり、2004年に同賞が贈られたのだという。

    1942年の執筆時点で、ドイツ軍に占領されたフランスの運命は当然ながら誰も知らない。著者は、フランスの疎開地にいて戦争の行方を追いながら、5部作として構想した「フランス組曲」の執筆を進めるのだが、世界大戦の結末を見ることなく、ホロコーストの狂気に飲み込まれてしまう。(フランス組曲は2部まで書かれた未完の小説)

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    2022年08月15日
  • 赤と黒(上)

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    冒頭の舞台説明を耐えればあとは文章の勢いで最後まで連れていかれる。誤訳論争を抱えている翻訳ではあるが、このキレのある飲み口は正確性を犠牲にしてでも魅力的だ。フランス史やキリスト教に詳しくない場合は巻末の解説から読んだ方が物語の対立構造がよく理解できる。わたしも詳しくないため大いに助けられた。

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    2022年07月30日
  • ちいさな王子

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    「星の王子さま」を含めて、初読。
    聖書と資本論に次いで多くの翻訳がなされた本、とのことで、納得の名作。

    数多い印象的な場面の中で、お気に入りは、

    冒頭の、ヒツジの絵を書く場面で、なかなか王子のOKが出ないので、(一休さんのように)、箱の絵を描いて、「きみのほしがっているヒツジはこのなかに入ってる」と、やったら、王子が顔を輝かせて喜ぶ場面。

    あとは、(以下、抜粋)

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    「こんにちは」と小さな王子がいった。
    「こんにちは」と商人がいった。
    それはのどの渇きをしずめるという、あたらしい薬を売る商人だった。週に一粒、その薬を飲めば、それでもう何も飲みたくなくなるのだそうだ。
    「どうしてそんな

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    2022年07月02日
  • 素粒子

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    終焉に向かう人類。それぞに「愛」の意味を探して苦悩する二人の兄弟。
    ストーリーが面白いので、序盤はどんどん読み進められました。途中から哲学や物理の考察が多くなり、どっちも疎い僕は読むのがキツかったですが、最後で納得!めちゃくちゃ深い伏線。
    読み終えてみると、かなり面白い作品!

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    2022年06月12日
  • フランス文学と愛

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    なにかのTV番組で、寺島しのぶさんがパートナーのことを「アムールの国の人」と表現していたのをふと思い出して読んでみた。

    「愛」という言葉は難しい。日本では仏教や儒教の影響が強い文化である。仏教では強い執着と欲望の充足を示す言葉でもあるらしい。悟りを得るために乗り越えなければならない苦しみの一つとしても語られているようだ。儒教では「仁」もまた愛と説く。いずれにしても厳しい言葉だと感じる。

    まったく異なる背景、キリスト教や元々のフランスという土地ではぐくまれた「愛」はどのようなものなのか。

    その言葉の変遷を文学や当時の人の書簡から解き明かしている。

    以前読んで全く分からなかったので放り出し

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    2022年04月03日
  • フランス組曲

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    去年マリエンバードとか、デュラスの、アンニュイ系を想像して、手に取るのをためらっていたが、いい意味で違った。今までの作者のイメージが変わった。戦争が始まって、敵に侵略される話だが、暴力描写などはなく、国が、今までの生活が崩れて行く様子を、人間の精神的、物理的な枯渇をまざまざと書いていて、なんというか、いい意味で人間の俗っぽさが書かれ、でもあくまで上品に、感情の起伏は丁寧に描かれ、今までの私小説っぽい作品とは違う、歴史的な本だった。

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    2021年04月24日
  • 素粒子

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    フランス近代の変遷とともにあった異父兄弟の人生は背中合わせで、同じ光景を見ることはない。
    体を燃やす孤独、雪のように降り積もっていく孤独。欲望も快楽も幸福も愛も、個人主義がもたらした孤独を前にしては人はゆっくり狂いゆくばかり。
    人は滅んでいくのだろう、無抵抗に、音もなく。

    兄の人生は「これが延々と続くのか…」と思う描写ばっかりでそりゃ地獄だわと思うし弟の人生も自分では解決の術もわからない孤独に厚く包まれていてそれもまた内側から凍っていく絶望がただただ冷たい。エピローグのまとめ方はウェルベックの才能に唸るけれど、やっぱり何か怖いんだよねこの人は…

    明確に反出生主義の流れを汲んだ小説だと思う。

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    2021年02月06日
  • 素粒子

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    ミシェルウェルベック 「 素粒子 」 

    新しい人間学。形而上学(多数の人が共有する世界観)の変異から「人間とは何か」を考察している

    ショッキングなエピローグ。素粒子レベルまで物質化した人間像。性別と死がない新人類。未来の新人種が三人称的に語る構成。

    面白いけど 性描写がしつこい。

    祖母の遺骸や恋人との再会のシーンは、人間とは何か 考えさせられた

    人間とは何か
    *心の内に〜善と愛を信じることをやめない
    *生きることは 他人の眼差しがあって初めて可能になる〜遺骸となっても 生きていた頃を想像できる
    *お互い敬意と憐みを抱くのが人間らしい関係


    時代背景
    近代科学が キリスト教道徳を一

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    2020年10月20日
  • 地図と領土

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    ネタバレ

    ウエルベック2冊目は、芸術家(美術家)を主人公としたこの『地図と領土』。
    最初写真家として個展デビューし名声を博した後しばらく沈黙し、今度は古典的な油彩に戻って有名な職業家の肖像を手がける。すると2度目の個展で大ブレークする。
    やはり、芸術家小説というものは、このように成功談がいい。努力をしても最初から最後まで誰にも認められずに淋しく死んでいく芸術家のストーリーは、リアル(世界中で大多数)ではあるが、話としては退屈だし悲しすぎるのだろう。
    肖像画もまた止めて、主人公は晩年は動画作品を作るようになる。
    急激に変転する技法を通して、芸術家の世界観が徐々に成長していくことは読み取れるから、全編が芸術

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    2020年05月08日
  • 地図と領土

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    著者本人が登場して惨殺されるという突拍子もない設定だが物語は破綻することなく粛々と進んでいく。ユーモアと批評を散りばめた文体がクセになる。現代におけるアートのあり方をテーマに選んだこの作品がフランスで非常に高い評価を得たのは、そもそもアートに対する関心や批評性が高いからとも言えるだろう。肖像画を描く画家の心情は想像するしかないのだが、村上春樹による「騎士団長殺し」にも描かれていたように対象の姿からなにかを掘り起こすような内面的な闘争がそこにあるのだろうか。興味深い。

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    2020年05月04日
  • 素粒子

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    高校教師の兄と科学者の弟、異父兄弟がその身を滅ぼしていく過程が描かれています
    20世紀にかけて欧米で起こった社会制度、家族制度の変化、性の自由化の流れがわかり易く描写されています。
    下ネタだらけなので苦手な人は読まない方がいいです

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    2020年04月12日
  • 地図と領土

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    ネタバレ

    ミシェル・ウェルベック「地図と領土」

    今何かと話題のミシェル・ウェルベック、ついに手に取ってみた。結論、猛烈に面白い。以下、微妙にネタバレを含む。

    母親を自殺で亡くした内向的な青年が写真、さらには絵に打ち込む。その才能を見出すのは手練れの「芸術のプロフェッショナル」たち。ミシュランの広報という絵にかいたような業界エリートである美女との恋をきっかけに作品にはいつのまにかすさまじい高額がオファーされ、主人公は目もくらむような高みに導かれていく。

    テーマはずばり「芸術に値段をつけられるか」。著者のビジネス視点がいかにも正確で、通俗的な「金儲け悪徳論」とは一線を画す。そしてそれ故になおさら個人の

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    2019年01月02日
  • 赤と黒(下)

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    つわり中に読んだ。後半のお嬢ちゃんとの押し問答が若干メンドクセーって感じだったけど、最後さー主人公ないわ〜おじょうちゃんかわいそすぎるでしょ…お嬢ちゃんってあれね、お世話になった貴族の家のお嬢ちゃんね…名前忘れちゃった。さて今イギリスにおりますけど階級による差別の描写や会話内容の一部はかなり今に通じるものがある。この話フランスのではあるけど。

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    2018年11月24日
  • ちいさな王子

    ネタバレ

    深い

    ちいさな王子
    星の王子さま をファンタジーになりすぎず親しみやすく愛情をこめてあえて違う訳し方をした題名の本。とにかく深い…。最初は意味がわからなかったけど考えてみると一つ一つに意味がある。まず登場人物がみんな一人きりで過ごしていること。一人でいると自分だけのことを考えてしまいがちだけど誰かのために行動できることが巡り巡って自分のためになるんじゃないかなって思った。
    だって王様やビジネスマンより王子様や点灯を繰り返している人の方が楽しそうだもの。
    これが一期一会みたいなものの大切さをあらわしてるような気もした。
    出会ってなつかせること、これによって人は目には見えない絆を築くことができる

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    2018年06月13日
  • 素粒子

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    作者の掌の上できれいに転がされた感じがする。一本の小説の中で何回、不幸と一瞬届きそうになる幸福の間を行ったり来たりしただろうか。これでもかというくらい振り回され、同情を誘い、もはや「素粒子」というタイトルが匂わすSF的結末への期待をも忘れて、途方もなく哀愁漂うなけなしの性愛物語として十分満足だ、と観念しかけた頃、ついに結末がやってくる。そのカタルシスたるや、圧巻である。一切の苦悩から解放されたときのような浄福を自分は味わった。自由と進歩主義に対するにべもない唾棄には思わず笑ってしまったが、このとき、登場人物たちに対する自分の数々の共感と同情も一緒に笑い飛ばされてしまった。それがまた爽快。ウェル

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    2018年03月18日
  • 地図と領土

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    ネタバレ

    アーティストのジェドの一生の話。世界そのものを表現するために「工業製品の写真」→「ミシュランの地図の拡大写真」→「職業人の肖像画」と表現が変遷していくが、ジェドその人は、単なる鏡としての人なのか、空虚で、情熱のようなものがあまり伺えないように見えた。晩年の圧倒的な諦念・孤独の中で制作された作品群にようやくエモーション、想いのようなものが感じられたような気がする。とかいって、すべて芸術作品を文章で読まされているわけですが。エビローグの、寂寞さがすごいのと、ウェルベックのテーマがてんこ盛りなのが、なんだか微笑ましい気持ちにさせられた。でも、自分の人生における交友関係も先細りだし、最後はこんな状態に

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    2017年11月01日
  • 赤と黒(下)

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    ネタバレ

    まさかの最後だった。
    レナール夫人はあの手紙に書いたことを、真実として書いたのか、それとも・・・
    主人公が穏やかな気分になれたことが、救いだと思った。
    ナポレオン戦争に関する書物を読んで再読したい一冊。

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    2017年10月12日
  • 素粒子

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    ネタバレ

    人間存在の孤独についての物語が、どこまでも個人的なエピソードを通じて、しかし普遍的な確信をもって語られる。

    小説の主軸になるのはふたりの異父兄弟。兄は女にもてず、不惑を超えても性的な彷徨を続けている文学教師。弟は、相手が男であれ女であれ、他者と人間関係を築き難い天才科学者。
    西欧文明の終焉を背景に、兄弟と彼らを取り巻く人間たちを透かして、孤独の絶対性が描かれる。

    ラストで明かされる物語構造と人間存在への視点は超越的で、冷徹でありながら甘美だ。それはニーチェの超人思想を思い出させる。人間は生まれながらに重荷を背負ったものであり、人間の先に続いて現れるもの(があるとして)への架け橋でしかない、

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    2017年04月20日
  • フランス文学と愛

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    フランス文学を「アムール」を切り口として、男女、親子の間の「愛」、現代の「愛」という視点で読み解いていくもの。大変面白い本でした。

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    2014年11月17日
  • 赤と黒(上)

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    スタンダールは、大学時代に読んだ「パルムの僧院」以来で、初読というのが恥かしくなるほどのド古典だが、初読。

    訳者の野崎歓が言う通り、1830年代当時よりも、自らを偽って生きることの多い(そして恋愛のゲーム化がますます進む)現代において、なお共感されるところの大きな小説と言えるだろう。現代的なエンターテイメント小説と比較すると、構成に荒削りなところは多いが、それでも「近代小説の嚆矢」と言われるスタンダールの面目躍如といった作品で、ほとんど一気読みだった。

    野崎訳に対する批判は、すでにあちこちで論じられている通り、違和感のある文章がなかったと言えば嘘になる。しかし、そもそもこの問題は、翻訳自体

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    2014年06月27日