野崎歓のレビュー一覧

  • うたかたの日々

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    ヴィアンはルイス・キャロルを読んでいたのだろうか。
    ふつうのラブストーリーを想像すると出鼻をくじかれる。
    原語も流行ったころのフランスの世相もわからないから理解できない。という考え方もあるけど。夢のように突拍子なく展開する物語を楽しんでしまえばいいとも思う。子どもの時に不思議の国のアリスを読んでいるような心持ちで。

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    2012年06月17日
  • 赤と黒(下)

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    ジュリアンがついにパリへ。
    ジュリアンはもはや、線の細い男の子ではなく、パリに出してもおかしくない、深い考えとか世渡り術とか恋愛経験を吸収した美青年になっている。

    私は古典とか歴史とか、趣味とするほど好きなわけじゃないので、心理とか恋愛テクニック方面の視点から読んでました。フランスの革命期の政治の所とかはすっとばし気味笑

    ラ・モール嬢の感じた、「私は本当はあの人に恋などしていなかったのかしら?」という当惑が本当によくわかってしまった、21の秋!
    その過去形の文体も。
    ラ・モール嬢はその美貌と高貴な身分のせいか、自尊心が高まりすぎて、感情やら、イベントやらをまるで義務のようにこなす

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    2012年04月21日
  • 赤と黒(上)

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    たぶん初めて、乗り物の中で読むことができた本です。
    今まで、乗り物で本読むと気持ち悪くなってたから。

    それだけ集中して読めた面白い作品だったってこと

    主人公のジュリアン、はじめはそこまで「美少年」じゃないんだと思ってた
    作者もそうだったのかな。書いてたら付け足したくなっていったみたいな。
    金がほしい、という強すぎる思いから、僧職につくため、乗り気じゃなかったのにかかわった貴族たち。
    いつぞや自分は貴族的な生まれながら泣く泣く神学校に入る、みたいな感じになっていくジュリアン。
    目的と手段と自分の心とを分けていたはずなのに
    もういっかあ、って

    古典新訳は、内容には親しみたい

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    2012年04月21日
  • 赤と黒(下)

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    誤訳と騒がれた本書だが、ジュリヤン・ソレルの未熟な面が「僕」というおとなしめの語り口とものすごく調和している。新潮文庫の「おれ」だとすごく違和感がある。野崎訳を読んだ後に他の翻訳を読むのは、今のところ抵抗がある。

    上巻の疾走感に比べ、下巻のなかばは、なかなか話が進まず中だるみしているように思えた。
    けど、ラストに向けての展開は秀逸。
    マチルドの異常さも際立っていて物語に引き込まれた。
    七月革命前のフランスの雰囲気は、きっとこんなんだったろうと味わい深く楽しめた。
    この時期のフランス小説は面白い。

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    2012年03月20日
  • うたかたの日々

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    幻想的でありながらも淡々の物語が進んでいく。
    お伽話のような感覚でありながら、音楽描写も表現豊かに描かれており、
    すごく切ない大人の童話。

    肺の中に睡蓮が育つ病気に侵されてしまうヒロイン。
    それを献身的に見守る主人公。

    にしても、悲しい物語であり、純愛。

    そして、最初のまえがきから、印象的。

    「大切なことは2つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオーリンズの音楽、つまり、デューク・エリントンの音楽。ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。」

    本当にそんなストーリー。こんな物語も憎いほど好きです。僕は。

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    2012年02月20日
  • 赤と黒(上)

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    上巻は読むのに苦労した。19世紀初頭のフランスの慣習や文化について知識がないからか。天気のように様々な面を見せるジュリアンの不安や憤りに共感することは多かった。冷静さと激しさなど、多くの正反対の性質を合わせ持つ彼だからこそ、多くの人の心に入り込めるのだろう。

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    2012年01月31日
  • 赤と黒(下)

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    ジュリアンとラ・モール嬢との恋の駆け引きは、まるで小学生同士の小競り合いのように滑稽でおもしろかった。身分の違いは人の心に思いがけない光を宿らせる。

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    2012年03月11日
  • 赤と黒(上)

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    ネタバレ

     『赤と黒』はナポレオン失脚後のフランスで片田舎の職人の息子ジュリアンが、立身出世を目論み上流階級の間隙を渡り歩くサクセス(?)ストーリーです。
     この時代で出世をするに当たってなによりも必要なものはお金、高い身分、そして縁故でした。その中でジュリアンに備わっていたものは縁故のみ。それも司祭様の教え子であった程度。彼はその一本の蜘蛛の糸から己の才能と美貌で、新たな糸に繋いで登っていくのです。
     上巻においてジュリアンを導いてくれた新たな糸はレナール夫人。
     司祭様つてでジュリアンの優秀さを知った町長に子供たちの家庭教師にと雇われて、出向いた家の奥様です。金や身分のことしか頭にない夫と対称的に、

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    2012年03月11日
  • ちいさな王子

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    「『...もしきみがぼくをなつかせてくれるなら、ぼくらはお互いが必要になる。きみはぼくにとって、この世でたった一人のひとになるし、きみにとってぼくは、この世でたった一匹のキツネになるんだよ……』」 「『さよなら。じゃあ、秘密を教えてあげよう。とてもかんたんだよ。心で見なくちゃ、ものはよく見えない。大切なものは、目には見えないんだよ』」

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    2011年12月29日
  • 赤と黒(上)

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    なんかもうダメだこいつら…
    他にすることなかったんかねフランスの貴族というものは?
    1830年頃のフランスの時勢をよく反映しているのはとっても面白かったです。各都市がいったいどのような印象を持たれていたのかや、教会内部の対立などについてが生き生きと描かれていると思います。

    誤訳がひどいということで大変叩かれていますが、すごく読みやすいのは確か。古典であるにもかかわらず(というとアレですが)、取っつきづらさはないと思います。
    別に私は仏文学者ではないので、あらすじが大体わかればいーやと思ってしまうのです。

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    2011年12月14日
  • 素粒子

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    難解な内容。終始ストーリーの方向性が見えない。全体的に叙事的かつ客観的描写が多い。感情論に頼らない文体は孤独な、あるいはシニカルなニュアンスを強めると同時に人類の本来の姿・性質(動物性)を想起させる。観念論や唯物論、更にはヒューマニズムの歴史に関する言及が多く、「今後人類の思想はどう展開してゆくか」といった壮大なテーマを含んでいるよう感じた。

    その答えは十人十色。

    いろんな読み方があります。とにかく近代西洋史や思想史に興味がある方はきっとインスパイアされるだろう問題作だと思います。物語として読むより思想本として読むことをおすすめします。

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    2011年12月13日
  • 赤と黒(上)

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    周りから見れば、ジュリヤンは翻弄する人。読者から見れば、翻弄しているようで、実はそれ以上に翻弄されている人。斜めに鋭く見るジュリヤンは、本音と建て前をうまく使い分ける。そこに大きなギャップがある。もしも()書きで心理描写が記されていなかったならば、ジュリヤンは恐ろしいほどミステリアスに見えただろうし、読者からしても「どうしてそうなったのか」と突っ込まずにはいられなかっただろう。

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    2011年11月07日
  • 赤と黒(上)

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    上下巻で1000ページというページ数だけで泣きそうですが、軽快なペースでサクサク読めます。ラストにびっくり。

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    2011年12月08日
  • うたかたの日々

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    日々の泡を高校生のときに読んで、いつかまた読み直したいと思っていた時にたまたま新訳を見つけて衝動買い。私の理解力が上がったこともあるかもしれないけど、日々の泡よりも読みやすかったし楽しかった。そしてやっぱりすごかった。ボリス・ヴィアンの才能を感じた。こんなに切なくて辛い話だったかと、読み直してみて驚きました。解説も訳者あとがきみたいなのも良かった。

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    2011年10月26日
  • うたかたの日々

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    ネタバレ

    表題どおり、この小説はなによりも美しく、なによりも儚いもの、つまり「きれいな女の子との恋愛」と「デューク・エリントンの音楽」に捧げられている。

    ひさしぶりに読み直して感じたのは、精緻に描かれたコントラストの妙。物語は、街から色彩の消える冬に始まり生命が躍動する新緑の季節に終わるのだが、登場人物たちの世界はそれとは反対に、徐々に色を、そして音楽を失ってゆく。彼らはいってみれば、彼らの住む世界との「同期」に失敗したのだ。その残酷さと不条理さ……。

    破天荒なファンタジーのような顔をもつこの小説をはたして「読める」かどうかは、ボリス・ヴィアンの「感性」にどこまで肉薄できるかにかかっているような気も

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    2011年10月19日
  • うたかたの日々

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    ネタバレ

    愛に全てを注ぎ込む二人の男のその行く末。
    一人は一人の女を愛した。女が元気な時には彼女を楽しませる為に、病気を得てからは治療の為に持てるものを全てを注ぎ込んだ。
    もう一人は思想を愛した。そしてその思想を生み出す思想家を絶対視するあまり、彼に関するもの全てを蒐集せずにいられなくなり、自分を愛してくれる女も捨て、破滅へと向かって一直線に進んでいく。
    淡々と進行していく物語。美しい黄昏のような小説。

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    2012年03月16日
  • ちいさな王子

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    別名「星の王子さま」でお馴染みの名作。

    いま、出会いと別れに至極敏感な時期だからなのか、
    やけに感動した。

    そぎ落とされ、洗練された文章で紡がれた物語が、
    却って愛らしさと切なさを同時に謳う。

    人は出会う。そして成長して別れる。
    そこら辺に転がっているありきたりの日常が
    実は奇蹟だったと気づかせてくれる。

    素晴らしい作品でした。

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    2010年10月17日
  • 赤と黒(上)

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    浦野所有。

    これは理屈抜きに楽しめる小説ですね。恋愛小説というより、痛快な冒険小説の色が濃くないともいえない内容です。時代背景がわからなくても、ストーリーだけで十分、読み進められると思います。

    『赤と黒』は『モンテ・クリスト伯』とならび、「これぞ小説のなかの小説」といわれることも多い作品。この世界を触れるためだけにパラッと読むのも悪くないです。

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    2010年06月02日
  • ちいさな王子

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    大学の授業で必要になったので購入しました。

    中学の時一回挫折して、高校の時に読みきったきりご無沙汰でした。

    昔読むのが苦痛だったのは、訳が古いものだったからかもしれません。この本はとても読みやすかったです。

    大学生になってから読み返して、高校時に読んだ時よりもこの本の良さを感じることが出来たと思います。
    あと私的にこれを児童書というのはどうかと思います。
    大人向けの童話といった方がいいような。

    今『人間の土地』を読もうと思っているのですが、同じ著者でもこちらは1955年に堀口大学という方が訳されたきりになっていて、旧漢字が使われています。読んだ方のレビューを読んでみると、最初のとっつき

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    2011年06月17日
  • 赤と黒(上)

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    あらすじを読むと青年ジュリアンの恋愛と出世の話のように思われるが、読んでみると副題の十九世紀年代記にふさわしく当時のフランスの社会情勢をよく反映していることに気づかされた。要所要所に派閥の対立やもっと漠然とした体制的な臨場感がかかれており、ジュリアンを通してその時代を感じるようであった。
    恋愛小説としては私たちの感覚とはすこし違うものを感じるのが正直なところだが、ジュリアンが恋愛によって支配しようとして逆にに翻弄される様はおもしろく、また悲劇的であった。

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    2010年04月07日