野崎歓のレビュー一覧
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『闘争領域の拡大』に次ぐウエルベックの二作目。フランスでベストセラーになったらしい。
ウエルベックは博識な作家だが、本書もごたぶんにもれず数学、分子生物学、はては哲学まで盛り込まれていた。ド文系な自分にはさっぱり理解できなかった箇所も多かった。難しすぎる小説ははっきり言って苦手だ。
性欲に囚われた国語教師の兄ブリュノと、天才分子生物学者である弟ミシェル。この異父兄弟を主人公としてその一生が描かれる。前半の幼少期の話は好きだったが、後半になるにつれわけがわからなくなり、あまり物語に入ってゆけなくなった。
ブリュノは性欲をこじらせたまま大人になり、ニューエイジ風のキャンプに参加したり、乱交専門のナイトクラブに参加したりと性欲を満たす機会を日夜探している。小説全体を通しても彼の異常な性欲が際立つ内容で、彼があの手この手を使って一物をしごく姿が印象的だった。ブリュノが描き出しているのは『闘争領域の拡大』でも描かれていたような、典型的なルーザー。ウエルベック的な主人公といえる。だけどそこまでの性に対する倒錯した欲望は私は持ち合わせないので、読んでてふーんそうですかというような感じになった。あと時折ミシェルとブリュノの会話があったが、これもなにかぎこちなく、風景描写も取って付けたような感じで、いかにも小説としての体を整えるためという感じがした。
弟ミシェルは兄ブリュノとは対照的で天才なのだが、無性欲、不感症で、そのこと自体についても本人は無関心だ。興味があるのは彼の学術分野のことだけ。ミシェルにもブリュノにも共通しているのは二人とも無目的に生きていることだろうか。誰にも生きる意味などわからないものだろうが、素粒子に登場する人物たちは皆さまよい、傷つき、他者を理解しようとするも満たされることがない。
それにしても作家によって小説ってこんなに違う顔を見せるんだなと感心する。村上春樹からは温かみ、ジョン・アーヴィングからは力強さを感じるが、ウエルベックに関して言えば、鋭いカミソリのような感じを受ける。時代を抉り取って描写する鋭さとでも言ったらいいだろうか。ウエルベックの小説は難しいが狙いがはっきりしているように感じた。 -
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なんとも珍妙な逸品。物語の筋は若者たちの恋愛と友情、そして悲劇の物語だが、表現がほぼナンセンスな表現で読み手の許容力を試される。
うまく物語に入り込めることができれば恋愛、仕事、お金、趣味と価値観(シックの収集)などに共感出来る。
クロエが亡くなり葬式を頼む場面以降がぶっ飛んでいる。悲しい場面のはずがかなりの可笑しみが伴う。最早悲しみに暮れるコラン目線は放棄され、貧乏人の出す葬式のパロディと化している。
物語の冒頭から時折登場するハツカネズミと猫の会話で終わるシーンがひたすらシュール。
なぜデュークエリントンが持ち上げられるのかと思えば、あとがきによると作者と知り合いだったんですね。 -
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バレエの演目として名前は知っていたけど、ほとんどストーリーを知らなかったので、新訳シリーズででたからこの機会に、と読みました。
星はつけたけど、ほとんど評価不能です。
マノン・レスコーのキャラクター(性格)の見えなさ。
放蕩をつくす悪女にはなりきれず、かといって性格の良い女とは全く思えず。
デ・クリュの恋に盲目な(愚かな)男っぷりも、いささか常軌を逸してる。(頭が良く、論理的てあるから余計に)
この本の書かれた時代背景。当時の文学のことも知らないと読みきれないのかもしれない。
椿姫がこの本のだいぶ後の時代に、この本の影響を受けて書かれたということにもただ驚く。 -
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有名な「星の王子さま」の新訳。
この作品ははじめて読んだ。
けれども、あまりピンとくるところがなかった。
少年少女はこの作品を読んでどう感じるのだろうか。
そういう部分がとっくに鈍麻してしまっている自分にはわからない。
私にとっては、サン=テグジュベリといえば、やはり「夜間飛行」や「人間の土地」のサン=テグジュベリだ。
たとえばこういう文章。
「リヴィエールには、自分が、長いあいだ、重い物体を差上げ続けてきたような気がする。いわば、休む間もなければ、果てる希望とてもないこれは努力なのだ。「僕は老いてきた……」行動自体のうちにかれが自分の糧を見いださないということは老いた証拠のように思われた。いまだかって、ただの一度も思ったこともないような、こんな問題に心を労している自分にふと気づいて、彼は驚いた。それにもかかわらず、彼がこれまで絶えず押し退けてきた、やさしいものの集まりが、目に見えない大洋のように、憂欝な響きを立てて、彼に向かって押寄せて来るのであった。「それらのものが、かくまでに身近に迫っているのか?……」彼は、今思い知った、自分が、すべて人間の生活を優しくしてくれるものを、老後の方へ、「やがて自分に余暇のできるとき」へと、少しずつ押しやってきていたのだと。なにか、実際に、やがていつの日か、自分に余暇ができ、一生の終りに近く、自分が想像しているような幸福な平和が得られでもするかのように。ところが、平和はいつになってもこないはずだった。勝利もないかもしれないのだ。なぜかというに、あらゆる郵便物が、ことごとく到着し尽くすということは絶対にないはずだから。」
(「夜間飛行」堀口大學=訳 新潮文庫p22) -
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もちろん、映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』を観たために再読しようと思って買い求めた本です。
王子の語るエピソードの1つひとつが何かの象徴のように感じられるし、また読者にとっては気付きを得るような内容になっています。
ただ、これがあまりにも、明示的で不条理だという印象を受けました。つまり、メッセージは直接的で分かりやすいのだけれど、ストーリーとして釈然としない。
そういう読み方は、あるいは王子に言わせると、忌むべきなにかに分類されてしまうのかもしれませんが。
決して、好きでない、ということはありません。挿絵も含めて、とても優しくて素敵な小説世界だと思います。けれども、この本で強調される(ようにみえる)教訓めいたものを切り出して、それを額縁に入れて壁に飾るような読み方は、私にとって心地よいものではない、ということです。 -
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『きれいな女の子との恋愛、それとニューオーリンズかデューク・エリントンの音楽。その他のものはみんな消えちまえばいい。なぜって、その他のものはみんな醜いからだ。』そんな著者のパンクな言葉から始まる本作。
青年コランは音楽と料理を楽しむ裕福な暮らしを愛し、労働とは無縁の生活をしていた。コランは恋人クロエと結婚するが、ある日彼女の身に異変が起きる。
コランの他にも恋人を持つ青年たちの恋模様も織り交ぜ、時に美しく、時に非現実的で、そしてそこそこグロテスクでカオスな描写もあり、ちょっと理解に苦しむところも。労働を嫌い、娯楽と恋に生きるコランの顛末とは。幻想的で残酷で、癖の強い作品です。
個人的には“肺に睡蓮が生える”という美しい奇病、ピアノの音符と長さとペダルの踏み方などの具合によって作られるカクテル製造マシーン“カクテルピアノ”の登場で、すでに満足の域に達しました。
『日々の泡』という邦題も同作。 -
Posted by ブクログ
物語はいいけれども、この本
残念ながら誤訳が多いのです。
(しかも残念なことにこのレーベル
やたら誤訳が頻出します)
なので、読み直す本になっています。
野望に燃えた男、ジュリヤンの
栄光と挫折、そして死。
たといどんなに燃えるような情熱「赤」があったとしても、
やはり彼が抱く闇「黒」は消えはしなく
結局、死ぬまで彼を苦しめ続けました。
彼は確かに、自己中心的
人嫌い、何もいいところはないでしょう。
ただし、情熱だけは
取り柄だったでしょう。
しかし身分が卑しいゆえに
それがあらぬ方向に向ってしまったのです。
悲しむべくこと。
深いお話でした。 -
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ネタバレマスターピースにはマスターピースとして語り継がれる理由があるとあると思うのですが、解説を読んで納得しました。きちんと時代背景とヴィアンの生涯を作品に昇華させていますね。
解説ではこのポップで独特な筆致を「言葉遊び」と「記号表現の遊び」と文学的な論理で詳しく解説していますが、要はファンタジックで絵本のような世界観を受け入れられるかどうかだと思います。僕も読み始めはどうかと思ったけど、意外と面白かった。
古典作品は難しい翻訳がつきものですが、これは訳者が頑張ったのか、結構サクサクと読めますね。一度目は予備知識なしで読んで、二度目は時代背景やヴィアンの生涯を理解した上で読みたくなります。
読むきっかけは映画化ですが、ポップでファンタジックな切り口監督のはミシェル・ゴンドリーと非常に相性が良かったと思います。コランとクロエの出会いのシーンなどは、原作と違って、映画的な別の味わいがありました。ただ一点不満点を言うとすると、コランとクロエの配役…ロマン・デュリスとオドレイ・トトゥはさすがにないかと。もうちょっと若くてカッコいい俳優いなかったんですかね?ってまぁ、この辺りは制作側のジャッジで色々あるんでしょうけど…。 -
Posted by ブクログ
どんなおとなだって、最初はこどもだった(それを覚えているおとなは、ほとんどいないけれど)
なにしろおとなには、いつだって説明が必要なんだから。
「まっすぐに歩いても、そんなに遠くまでは行けないんだよ……」
でも残念ながら、ぼくには箱のなかのヒツジを見てとる力はない。きっと、少しばかりおとなたちに似てきたのかもしれない。ぼくも年をとったんだ。
こどもたち!みんな、バオバブには気をつけるんだよ!
「あのころ、ぼく、なんにもわかっていなかったんだなあ!お花が何をしてくれたかで判断するべきで、何をいったかなんてどうでもよかったのに。お花はぼくをいい香りでつつんでくれたし、明るくしてくれた。ぼく、逃げ出したりしちゃいけなかったんだよ!いろいろずるいことはいってくるけど、でも、根はやさしいんだとわかってあげなくちゃならなかった。お花のいうことって、ほんとうにちぐはぐなんだもの!でもぼくはまだちいさすぎて、どうやってお花を愛したらいいかわからなかったんだ」
「そうだとも。ぼくにとってきみはまだ、たくさんいるほかの男の子たちとおなじ、ただの男の子でしかない。ぼくにとっては、きみがいなくたってかまわないし、きみだって、ぼくなんかいなくてもいいだろ。きみにとってぼくは、ほかのたくさんいるキツネとおなじ、ただのキツネでしかない。でも、もしきみがぼくをなつかせてくれるなら、ぼくらはお互いが必要になる。きみはぼくにとって、この世でたった一人のひとになるし、きみにとってぼくは、この世でたった一匹のキツネになるんだよ……」
心で見なくちゃ、ものはよく見えない。大切なものは、目には見えないんだよ。