あらすじ
神学校を足がかりに、ジュリヤンの野心はさらに燃え上がる。パリの貴族ラ・モール侯爵の秘書となり、社交界の華である侯爵令嬢マチルドの心をも手に入れる。しかし野望が達成されようとしたそのとき、レナール夫人から届いた一通の手紙で、物語は衝撃の結末を迎える! 抑圧的な社会で激しく苦悩する魂の葛藤を描いた「情熱の文学」、ついに完結!
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Posted by ブクログ
ちょっと待って名作が過ぎる
うーん、書きたいことが3つくらいあるんだけど、めんどくさいから1つに絞ろうw
それはね人間の想像力ってすごくない?ってことです
今さらそれ言うか?って感じかもですが、そんなすごい想像力から生み出された物語の力ですよ
珍しくがっつり
ネタバレであらすじとか書いちゃいますよ!
古典の名作なんて結末知ってたって問題ないと個人的には思うけど、一応フタしときます
ってここまでですでにあらすじめんどくさいとか思いはじめてますが、頑張ります
上巻でそのとんでもない記憶力と明晰さ(プラス見た目の良さ)で、市長のおうちの家庭教師となった製材店の三男坊ジュリヤン
どのくらい記憶力がいいかって言うと聖書まるまる暗記してます
しかもラテン語で
えげつない
だってみんなもホテルとかに泊まった時に聖書読んだことあると思うけど、恐ろしく分厚いからね
とんでもない頭の良さです
そう言えばアパホテルだけ、なんか変な本置いてあるよね
で、そこでまぁ色々ありまして、下巻でも色々ありまして(横道にそれた結果心折れたあらすじ無理)
結局さジュリヤンは死刑になっちゃうのね
で、その死刑になる前の最期の数日間で色々気付くわけ
そうね真実の愛とはとか、自分がいかに不誠実で小さな人間だったかとか
後悔しまくるわけ
でさ、たぶんまぁきっと死刑とかなったら自分も色々振り返って、もしかしたらジュリヤンと同じように、素直に自分ってものを見つめ直すことができるのかもしれないな〜って
でもそんなん手遅れもいいとこやん
つか死刑になってる時点でそうとうなことしでかしてるわけやん
今の日本だったらその時点で二人以上殺してるわけやから
でも物語を読むことで、実際に死刑になる前に、そんな心持ちに近付くことができるわけ(いや死刑前提かよ)
もちろん綺麗事もいいとこだけどさ
そこになんか物語の力ってものを感じずにいられないフランス文学の名作でした!
Posted by ブクログ
(訳者解説から抜粋)
この本の表題、『赤と黒』の意味は様々な説がある。この2色に政治的、歴史的な意味があるという解釈が多くなされ、代表的なのは、「赤が軍服を、黒が僧服を表す」という説。そのほかにも、「共和主義・自由主義と宗教」の対比だとか、「情熱と死」の対比だとかいう説もあるが、いまだに真意は明確ではないのだそう。
また、上巻・下巻どちらの巻末にも英語で「To the happy few」というフレーズはスタンダールから読者へのメッセージであり、「最後まで付き合ってくださったあなたは幸福なる少数者なのですよ」という自負がみられる。
(感想)
我々の恋心、「こんな恋愛をしてみたい」という気持ちを刺激してくれる。
Posted by ブクログ
19世紀フランスの小説家・スタンダールの代表作の後半である。パリを代表する大貴族の知遇を得ることに成功し、社交界でそれなりに名前を知られるようになり、さらにはその大貴族の娘に求婚され、立身出世の会談を順調に歩んでいたジュリアン。ところがそんなある日、以前愛し合っていた夫人から届いた手紙がきっかけで、彼の運命は大きく狂い始める…。
この巻の読みどころは、ジュリアンに執拗に求婚する大貴族の娘である。ジュリアン相手に繰り広げられる恋愛の駆け引きは、ハラハラドキドキの展開でほほえましい。だがジュリアンが事件を起こして投獄されてからの彼女の動きは、はっきり言って狂気じみている。こんな行動をとられては、ジュリアンでなくてもひいてしまうだろう。最後の場面は、明らかに「サロメ」からヒントを得たに違いない。彼女は狂っているのか?イヤ、本当に狂ったのかも知れない。
Posted by ブクログ
面白いけれども、恋愛が主題であり、ちょっと物足りなさもある。
後半の流れが支離滅裂だとサマセットモームは指摘していたけど、言われてみればそうかも。
Posted by ブクログ
主人公のジュリアン・ソレルは、あらすじを読む限り、自らの出世のために女を利用した冷徹で計算高い男というイメージがあったが、確かにそういう部分はあるものの、非常に人間味があり印象的で魅力的なキャラクターであると感じた。
筋書きは実際に起きた事件からスタンダールが着想して書いたもので、当時の宗教・階級対立などの時代背景も面白いと思う。
Posted by ブクログ
順調に、山を登るように少しずつ、成功に向かって前進するジュリアンだが、後半のあの2ページの急展開で全てが切り落とされる。作者の鮮やかな技を見た。そのあとの穏やかな空気も、それまでとはうって変って、静かに心にしみるようだった。
さすが名作…恐れ入りました。
Posted by ブクログ
スタンダールの容貌はよろしくないらしいが、年譜ほどの恋愛をしていれば、赤と黒も容易く書けただろうと思う。恋愛経験の浅い男の妄想話かと思っていたが、実際は自身の恋愛経験と時事、新聞を織り交ぜた著者本人の姿が透けて見える作品だった。主人公ジュリヤンは容貌と記憶力こそ良いが、地頭はそれほどよろしくない片田舎の息子だ。彼なりに努力し神学校に入り、家庭教師など仕事をしていたが、やることなすこと悲劇の主人公気取りで他人に与える迷惑などまるで考えない。むしろ、迷惑をかけている自分に陶酔していた。彼は家庭内暴力の中で育ち、ナポレオンを生きるよすがにしたことで、英雄ナポレオンを崇拝するしか脳のない男に育つ。戦争のない世の中で英雄のような生き方に焦がれる性格になった。ただ彼が人間関係においてみせる自己中心さや他人への無関心は、環境のせいだけではないと思う。彼が時折見せる無責任な行動や感情的な言動は、彼の稚拙な性格の表れだった。要するに、彼は若さゆえに感情的と周りから見られていたが、もともとそちらが本性なのである。理性的で知的な美貌の青年は見せかけで、美しく無垢な町長夫人も移り気な侯爵令嬢も見せかけに騙されて恋していたが、彼は自分だけを一番に思っていたろくでなしである。子供ができたなら父親として責任を取り生きるべきなのに、迷わず死を選ぶのが卑怯者な彼らしい。
Posted by ブクログ
下巻中盤はマチルドとジュリヤンの双方向でのツンデレが延々と続く。恋愛に多少の駆け引きはあるにせよ、流石にやり過ぎ、長過ぎではないかしらん。
ジュリヤンが一気に出世の階段を駆け上がるかと思いきや、味方の筈のレナール夫人からラ・モール侯爵宛の手紙で、一気に物語は急展開し、まさかのような、あるいは、これしかないか、というような異様な結末を迎える。
昼ドラのようなドロドロしたお話だが、巻末の読書ガイドによると、事実に着想を得たらしく、肝となるイベントは大体実話のようだ。
Posted by ブクログ
ミュージカルを見たので、原作を。
ソレルの内面が複雑かつ、揺れ動く様は、原作が圧巻。
どうしても単純な印象になってしまう舞台。
これを原作の魅力を活かして舞台化するのは、かなり難しいと思った。
Posted by ブクログ
下巻の後半は凄かった。
読んでいて思わず「えーっ!?なんで?嘘やん」って声が出る事、数回。あまりに劇的な展開の為、読む速度が加速した。エンタメ小説では?と思うぐらいだ。
ジュリヤンが、レナール夫人と別れた後、出会ったのが侯爵令嬢マチルダ。サロンの男達を従え、革新的な考えの持ち主。
ジュリヤンとマチルダ、
自尊心の高い者同士の駆け引きが、理解不能である。
うーん、恋なのか…?
ジュリヤンはレナール夫人の時と同じく、マチルダを落とす事に意義を感じていそう。マチルダも初めての恋に混乱し、言動が支離滅裂。でも、ラストに彼女が取った驚くべき行動により、ジュリヤンを本当に愛していたのでは?と感じさせられたり、王妃マルグリッタに自己投影しただけかもしれない、とも捉えられ、解釈が分かる。
レナール夫人のその後については、短い文章で書かれているだけなのに、だからこそ余計に悲しみを誘い、彼女の愛は本物だったと確信できた。
正反対の2人の女性から愛されたジュリヤン。激しすぎる人間であるがゆえに、自ら破滅へと向かう事になる。
彼の人生は一体、何だったのだろうか。
製材職人の息子に生まれ、金持ちを蔑み、成り上がろうとする野心にまみれる。一方で、頭脳明晰、美青年、周りの人に恵まれ、貴族社会の中で重宝される運も持つ。もっと上手く立ち回る事ができれば、十分に富と名声を得られただろうに、あまりにも不器用過ぎた。
ジュリヤンの人生にも赤(栄光)と黒(影)がある。
題名の持つ意味を読後にもう一度考えてみるが、
いろいろな捉え方ができそうだ。
Posted by ブクログ
他の本を読むのも間に挟みながら、ようやく、ようやっと読み終わった…。読み切った自分を褒めたい笑。
子どもの時に「漫画で読む名作文学」的な本で読んだことあったが、その時は、ジュリアンの恋愛と出世の物語…というものだと思っていた。
それは物語の軸ではあるものの、小説で読んでみると、風刺画的な当時のフランスの情勢や貴族、市民の文化風俗がリアルに書かれていて、そっちが主題かなと思うほどだった。
上巻でもそうだったけど、そのせいで、ストーリーとして大事なところは簡単に書かれて、それ以外の時代の説明文やジュリアンの内心が長々と…。
この小説の価値は、表面的なストーリー(野心深く出世を目指したジュリアンが、レナール夫人とマチルドと恋愛をしながら、レナール夫人への殺人未遂により死刑を受ける…)というより、当時のフランスの政治や宗教を書き切ったことがすごいことなのだろうか。
それにしても、ジュリアンがレナール夫人を撃つところは、2行くらいだったか。
ジュリアンの死なんて、直接的記載はなかった。
事実の記載があっさりしすぎていて…。
ただ、マチルドがジュリアンの生首にキスするところは、漫画で読んだ強烈なグロテスクな印象よりも、さらっと書かれていて、むしろ爽やかで好感をもった。
キスも、口付けではなく額へのキスだったのね。
さらりと書かれた事実の中では、レナール夫人の最期が一番悲しかったかも。彼女こそ、どんなに苦しんで死んでいったのかと思うと、母として、同性として、悲しい気持ちになったのよ。
ジュリアンの女性に対する思いは、
レナール夫人に対する気持ちは「愛」。
マチルドに対する気持ちは「恋」だったのだろう。
マチルドの気まぐれに振り回されて苦しんで、でも美しい彼女から目が離せない…まさに恋の初期の感情だよね。
ジュリアンが貴族に教えられた通りに振る舞った結果、マチルドに不安や見捨てられる恐怖を感じさせ、マチルドの心を手に入れたところら、ジュリアンってすごく理性的な人なのね…と感心しました。
恋のさなかって、こういうこと言っては逆効果、こういうことやっては逆効果だと理解していても、感情や行動を抑えられない人が多いだろう。貴族からのアドバイスの通りに行動できるジュリアンは、理性的だし、それだけ出世のための行動が身についてしまっていたのか??
それにしては、ジュリアン突発的にかーっとなってレナール夫人殺しに行ったり、理性とはかけ離れたところもあるんだけどさ…。
マチルドとジュリアンは、生まれた家の格は全然違うけど、人間性は似てる。
ジュリアンもマチルドも、自分が周りからどう見られるか?どう評価されるか?ということを常に考えているんだよね。
レナール夫人のモデルは、著者のスタンダールの母とも言われているらしい。
スタンダールの母は、彼が7歳の時に33歳で亡くなっている。そういえばジュリアン自身の母も登場しなかったな。
ジュリアンがレナール夫人の手紙に激怒したのは、この手紙のせいで輝かしい将来が失われた!という思いもあるだろうけど、レナール夫人から裏切られた!という、絶対的に自分の味方であるはずの人からの裏切りに対する怒りだったのだと思う。
Posted by ブクログ
家族には恵まれなかったけど、神学校の先生や侯爵、友人関係ではかなり幸運な人だったと思える。現代フランスでも40代の女性が1番魅力的と言われるだけあって年上のレナール夫人(ただし当時30歳前後)の方が侯爵令嬢より大分魅力的に描かれている。
Posted by ブクログ
とにかくめんどくさいやつらばっかり。本来だったら数十ページかけてやるだろうめんどくさい恋愛のあれこれが2ページくらいにぎゅぎゅっと濃縮されてどのページを見てもめんどくさい。名誉や義務のために人を好きになろうとする主人公のクズっぷり。義務のはずだったのに本気で好きになってたり、相手が自分を愛してないんじゃないかと不安になったかと思うと相手のことを軽蔑したりと登場人物全員が非常にめんどくさい。世の中の人はみんなこんな山の天気みたいな恋愛してんのか?でも悔しいことに愛の文句はまたこれ以上 なく熱烈。
Posted by ブクログ
巻末の解説が充実しているので、フランス社会史的な部分もある小説を読み解く参考になった。
実際にあった事件をもとに小説を書くところは日本でいうと三島由紀夫さんのようなものか…。
自分のなかでは、赤は恋愛と血。
黒は社会的出世と死を意味しているように感じました。
前半がジュリアンが求めたもの。
後半がその結末。
ジュリアンのお相手として、前半は田舎の貴族である町長の奥さんであるレナール夫人、後半はパリの最高級貴族のマチルド嬢が登場するけれど、人間的に魅力的なのは断然キレっぷりが半端ないマチルド嬢だと思われます。
しかし、どちらも最終的にはジュリアンを通じて自分自身を愛しているように見え、若きジュリアンは彼女たちの人生の小道具でしかなかったように思いました。
ジュリアンにとっても同じでしょう。
結局は、自分自身がどう生きるか。
周りの環境、人物、社会のなかで、どう自分が満足できるのか、どう行動するのか、言葉は悪いけれど、どう利用していくのか、そこにどれだけのパワーを注げるかで人生は色々と変わっていくのだろうな…と思いました。
Posted by ブクログ
つわり中に読んだ。後半のお嬢ちゃんとの押し問答が若干メンドクセーって感じだったけど、最後さー主人公ないわ〜おじょうちゃんかわいそすぎるでしょ…お嬢ちゃんってあれね、お世話になった貴族の家のお嬢ちゃんね…名前忘れちゃった。さて今イギリスにおりますけど階級による差別の描写や会話内容の一部はかなり今に通じるものがある。この話フランスのではあるけど。
Posted by ブクログ
まさかの最後だった。
レナール夫人はあの手紙に書いたことを、真実として書いたのか、それとも・・・
主人公が穏やかな気分になれたことが、救いだと思った。
ナポレオン戦争に関する書物を読んで再読したい一冊。
Posted by ブクログ
19世紀フランス、主に復古王政期から七月王政期に活躍した作家スタンダール(1783-1842)の代表的長編小説、七月革命を挟んだ1830年に執筆・刊行。副題は当初は「一九世紀年代記」だったが、執筆中に七月革命が熾きたことから、作品とフランス社会史との同時代性をより強調するために「一八三〇年代記」と付け加えられたとされる。作家自身は、政治的である以上にロマン的であるが故に、共和主義者であったようだ。
フランス革命によって近代ブルジョア社会というものが本格的に立ち現れてしまった。如何な反動的な復古王政を以てしても、もはや旧体制へと時計の針を巻き戻すことはできない。人生は、個人のものとなった。それは支配階級/平民階級という身分=生まれによって決まってしまうのではなく、自己の才覚と行動次第によって階層間を上昇していくことができる社会だ。その象徴が一介の軍人から皇帝にまで上りつめたナポレオンだと云える。身分によって個人の生が固定されていた静的な社会から、能力によって階層移動が可能になった動的な社会へ。ロマン主義的な心性の持ち主であったスタンダールにとって、身分制によって惰眠が保証されているかの如き聖職者・貴族ら支配階級の俗物どもが跋扈する欺瞞と倦怠の裡に堕落した"社交界・サロン・上流社会"を軽蔑・嘲笑しながら自己の「立身出世」の踏み台にしていこうとする強かで情熱的なエネルギーを帯びた平民出の青年は、19世紀という新しい社会の英雄であったのだろう。作家は、そんな上昇への情熱と野心に憑かれた主人公ジュリヤン・ソレルを造形した。
然し、このジュリヤン・ソレルが志向したその上昇の先には何が在ったのか。彼は何処へ向かおうとしていたのか。それが物語を読んでいて全く判然としないのだ。彼の、現状からの脱却を目指す上昇志向には、現在の彼の生に対する彼自身が抱いている不全感があるのは間違いない。卑しい平民出身であることに対する強烈な劣等意識が貴族階級への憎悪となって、憑かれたように彼は上へ上へと走り続ける。上昇の為なら、信仰心など持ち合わせていなくても聖職者になろうとするのが彼である。まさに偽善者そのものと云っていい。彼はかのタルチュフを師と仰いでいる。目的達成の為には手段の道徳性を問わないマキャヴェリスト。初めから価値基準などというものを彼は持っていなかった。「利益」と「力」という即物的な無-価値観が、彼だけでなく、社会全体を支配するようになっていた、それが当時の時代状況である。ニヒリズムの到来だ。彼は「走る」。その行動それ自体に、スタンダールは英雄を視た。しかしジュリヤン・ソレルが上へ上へと向かうその「上」に終わりは無い、絶対的終結は無い、他者との比較に於いて相対的に位置が変位し続けるばかりだ。「上」の彼方のその無限遠にあるのは、虚無だ。何も無いところへ向かって彼は走っているのだ。内実無き上昇志向、即物的無思想。スタンダールとその時代は、幸いにもまだそのことに対する幻滅には到っていないであろうと、この作品からは読める。
19世紀という近代市民社会勃興期には時代を卓越する者で在り得たジュリヤン・ソレルこそ、新自由主義によって世界が覆い尽されてしまっている現代にあっては、最も凡庸な俗物だ。それが、21世紀に於けるこの物語のつまらなさとなるのであろう。何故なら、ニヒリズムの自覚と、その帰結としての即物への頽落が、現代という問題の始まりであるのだから。
□
「ヴェリエールの町ですべてを握る決定的文句はこれである――「利益をもたらす」」
「ぼくの役割が終わるそのときまで、世の中はこういうものなんだろう。まわりは本物の敵ばかり。それにしてもつねに装いつづけなくてはいけないとは、何と大変なことなんだ」
「ああ、いったい何という違いだろう! ここにあるのは何だ? ぎすぎすした、高慢な虚栄心、あらゆる色合いのうぬぼれ、それだけじゃないか」
「凡々たる人生の焼けつく砂漠を、苦労して横断する身としては、渇きをいやしてくれる清冽な泉に出会ったようなものだ! ・・・。人生というエゴイズムの砂漠では、だれだって自分が大事なんだ」
「そういう法律ができる以前には、自然なものといったらライオンの力か、それとも腹がへったり寒かったりする人間の欲求があるばかり。つまり一言でいって欲求だ・・・・・・」
「ぼくは真実を愛したはずだが……真実はどこにある?・・・・・・どこもかしこも偽善ばかり、そうでなければいかさまか。・・・。だめだ、人間には人間が信用できない」
「死の間際になって、自分相手に話している時でさえ、僕はあいかわらず偽善者のままなんだ・・・・・・。ああ、十九世紀よ!」
Posted by ブクログ
登場人物が極端な人が多すぎるけど、人間の社会と感情をえぐり出した小説としてとても面白く読んだ。ジュリアンの中身のない暗さ、マチルドの狂気、レナール夫人の優しさ、それぞれがしかるべき道を通って破滅に導かれる。ジュリアンの恋愛の駆け引きは陰険だけどそれなりに今でも通用するだろう。
To the happy few
Posted by ブクログ
上巻であれだけ読むのに苦労したので、下巻はその分厚さに、読む前から尻込みしていた。
ところがである。面白い。下巻に入った途端、私のこの本への評価が一変してしまった。
舞台は、地方都市から大都会・パリの社交界へ。すると、それまでまどろっこしかったスタンダールの筆が、人が変わったように生き生きと感じられた。躍動感に溢れ、個性的で、したたか。フランスの歴史や当時の時代背景は全くわからないけれど、人間模様の面白さで惹きつけられる。
そして、侯爵令嬢マチルドとの、あまりに熾烈で、同時に凍りつくような恋。
主人公・ジュリヤンのあまりにも「感じやすい」激情と、マチルドの「高慢すぎる」退屈が、とんとん拍子に進むわけがない。駆け引きと打算、プライドと欲求、読んでいるこちらの方がひやひやする危なっかしさだ。
二人はお互いの中に恋を求めながらも、その中に自分しか見ていないのだと思う。だから恐ろしく計算的でありながら、同時に主観的だ。その相反する感情に引き裂かれながらも、ただただ自らの身を焼き尽くそうとするかのような二人の恋に、私はひどく同情してしまった。彼らを哀れだと思ったのである。
・・・というわけで、私はこの本は下巻の前半三分の二くらいをとても面白く読み、その評価を☆5にしたいくらいなのだが・・・
最後の最後の終わり方が意外にもあっさりしたものであったこと、レナール夫人の魅力がどうにも最後までしっくり来ず、いまいちその部分が納得できないこと、などを考えると、やっぱり☆4かなぁ、と思う。
けれど、前半であれほどげんなりしたのに下巻でこんなにスリリングな読書ができたので、途中で放り投げないでよかったなあ、とも思った。
Posted by ブクログ
ジュリアンがついにパリへ。
ジュリアンはもはや、線の細い男の子ではなく、パリに出してもおかしくない、深い考えとか世渡り術とか恋愛経験を吸収した美青年になっている。
私は古典とか歴史とか、趣味とするほど好きなわけじゃないので、心理とか恋愛テクニック方面の視点から読んでました。フランスの革命期の政治の所とかはすっとばし気味笑
ラ・モール嬢の感じた、「私は本当はあの人に恋などしていなかったのかしら?」という当惑が本当によくわかってしまった、21の秋!
その過去形の文体も。
ラ・モール嬢はその美貌と高貴な身分のせいか、自尊心が高まりすぎて、感情やら、イベントやらをまるで義務のようにこなす。はい、これもした!みたいな。うれしいのに、気持ちと正反対の態度や表情になってしまう…まさにだれかさんそっくり。
そう考えると、古典といえど悩みは全くもって現代的で、てか本当に現在進行形で、タイムマシンのよう。
1830年に書店に並んだ本だからね!!
にしてもすべては妊娠させてしまったことから始まったと思うな。
ラストは、それまで2.5人称で語られていたのにちょっと不思議な展開だった。
Posted by ブクログ
誤訳と騒がれた本書だが、ジュリヤン・ソレルの未熟な面が「僕」というおとなしめの語り口とものすごく調和している。新潮文庫の「おれ」だとすごく違和感がある。野崎訳を読んだ後に他の翻訳を読むのは、今のところ抵抗がある。
上巻の疾走感に比べ、下巻のなかばは、なかなか話が進まず中だるみしているように思えた。
けど、ラストに向けての展開は秀逸。
マチルドの異常さも際立っていて物語に引き込まれた。
七月革命前のフランスの雰囲気は、きっとこんなんだったろうと味わい深く楽しめた。
この時期のフランス小説は面白い。
Posted by ブクログ
ジュリアンとラ・モール嬢との恋の駆け引きは、まるで小学生同士の小競り合いのように滑稽でおもしろかった。身分の違いは人の心に思いがけない光を宿らせる。
Posted by ブクログ
心理描写があまりに素晴らしく、魅了され、ぐいぐいと引き込まれる様に読んでしまった。「性にまつわる描写が1行もないのに、なんというエロチズムの香りか・・・」と亀山郁夫さんが書いていたけれど、正にその通りだった。自分の頭で描いたジュリアンとレナール夫人を、現実の画像―映画の二人と比べてみたくて、写真を探した。1枚だけ、私の描く繊細なジュリアンに近いのを見付けた。赤は軍人、黒は聖職者を指しているのではないか、と言われているが、その時代背景と共に生きることの難しさ、それはいつの時代でも共通するものだと思った。淡く、甘く、優しく、悲しかった。
Posted by ブクログ
ジュリヤン・ソレルの野心と恋が、ついに破滅へと向かう下巻。
貴族令嬢マチルドとの駆け引き、そしてレナール夫人との再会が、彼の運命を大きく揺るがします。
激情と冷静さが交錯する展開に、最後まで目が離せませんでした。
「赤=栄光」「黒=破滅」とも読めるタイトルの意味を、読後に深く考えさせられる一冊です。
結末は、サロメを連想しました。
Posted by ブクログ
物語はいいけれども、この本
残念ながら誤訳が多いのです。
(しかも残念なことにこのレーベル
やたら誤訳が頻出します)
なので、読み直す本になっています。
野望に燃えた男、ジュリヤンの
栄光と挫折、そして死。
たといどんなに燃えるような情熱「赤」があったとしても、
やはり彼が抱く闇「黒」は消えはしなく
結局、死ぬまで彼を苦しめ続けました。
彼は確かに、自己中心的
人嫌い、何もいいところはないでしょう。
ただし、情熱だけは
取り柄だったでしょう。
しかし身分が卑しいゆえに
それがあらぬ方向に向ってしまったのです。
悲しむべくこと。
深いお話でした。