野崎歓のレビュー一覧
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SF、コメディ、恋愛、悲劇、全ての要素が合わさった新感覚の小説でした。SF要素が強くぶっ飛んだ世界観です。前半は恋愛コメディで、中盤から後半にかけては雰囲気が大きく変わって悲劇的で重たい雰囲気に。その作品内での大きな振れ幅も魅力的で、特に終盤はどうなっていくんだろうという展開で引き込まれていきました。始めのうちはあまりにも突拍子もない非現実的な出来事の連続で戸惑ったものの、慣れてくると他の小説では味わえない何とも言えない心地良さに変わっていきます。
言葉遊びも非常にユーモアです。例えばカクテルピアノという言葉はバーなどで会話の邪魔にならないピアノ音楽のことですが、この作品では音によって混ざるお -
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愛をテーマに書かれる異父兄弟の物語。美しい幼馴染と相互に惹かれながらも結局は愛への興味を持たず、研究に没頭する天才科学者の弟ミシェルと、学生時代に壮絶ないじめを受け、モテない青春時代を送ったことで、性愛に卑屈になりながら執着する文学教師の兄ブリュノ。
兄弟の物語がそれぞれ章ごとに語られ、時に交差する様な構成となっている。兄は性に振り回され人間性が壊れた様な人物像として描かれ、一方で弟は知的だが、奥手すぎてタイミングを逃しまくる。どちらも最終的には恋仲になりそうになった人を亡くす。愛に対して全く異なる向き合い方をする兄弟が、結末では同じ様な着地を迎える点が印象的だった。
エピローグの書き方が面白 -
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「100分で名著」を見て、「人間の大地」は読まなきゃと思って読んだ。
というわけで、今回は「人間の大地」だけの感想です。
「大変美しい文章で描かれる遭難体験」という、酷い感想を持ちつつも、サン=テグジュペリが「地球」だったり「人間」だったりを、まるで肉体から離脱したような高い目線で見ているのは、本当に凄いと思った。それにしても、冬山をろくな装備もなく帰ってくる人がいたり、砂漠で水なしで生き延びたりと、当時の人の丈夫さを思ったりもした。
そして何より、「愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである」は名言だなと思いました。 -
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ネタバレちょっと待って名作が過ぎる
うーん、書きたいことが3つくらいあるんだけど、めんどくさいから1つに絞ろうw
それはね人間の想像力ってすごくない?ってことです
今さらそれ言うか?って感じかもですが、そんなすごい想像力から生み出された物語の力ですよ
珍しくがっつり
ネタバレであらすじとか書いちゃいますよ!
古典の名作なんて結末知ってたって問題ないと個人的には思うけど、一応フタしときます
ってここまでですでにあらすじめんどくさいとか思いはじめてますが、頑張ります
上巻でそのとんでもない記憶力と明晰さ(プラス見た目の良さ)で、市長のおうちの家庭教師となった製材店の三男坊ジュリヤン
どのくらい記 -
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鬼スタンダール5です(鬼★5みたいな感じで言おうとしたけどめっちゃ字余り)
いやーエグいなスタンダール
やっぱすげーわスタタンダール
「タ」1個増やしたら急に面白くなったな
お遊びはここまでだ!
いや何がすごいってさ延々と続くわけよ、心理描写&情景描写が
ふつうそんなことされるとべちゃっとしちゃうんだけど、スタンダールはこうなんて言うの?スピードが落ちないんよ
めくるめく展開
ほとんど場面が動いてないんだけど、もちゃっとしてないんよ
それはやっぱりこの恋の駆け引きというかさ、あるやん?誰しも経験あると思うんだけど探り合いみたいなあの感じ
うわー絶対自分のこと好きだわー、これも -
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かつて曾根元吉訳(『日々の泡』)で読んだ。今回、野崎歓訳で再読。
原著は1947年刊。現代の文脈ではなく、どうしても当時のアクチュアルな文脈で読んでみたかった。大戦終結後、実存主義が抬頭し、アメリカナイズされるパリ、青年たちの熱気の充満するパリ、この作品はそうした状況のなかで生まれたのだから。野崎歓訳は、当時はだれでもわかったような固有名詞に訳注を添えてくれていて、助けになる。
シュールさ&ことば遊び、なんとなくレイモン・クノーに近い。ジャン゠ソール・パルトルを登場させるところも洒落がきいている。ハツカネズミもいい役回りをしている。肺の中の睡蓮の蕾も、肺結核のメタファーとして絶妙。
原題はL& -
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他の出版社(文庫本)は揃って「星の」なのに、あえて直訳で「ちいさな」にしているのが気になりすぎて読んだ。
「星の」の方もロマンチックな訳で好きだけどね。
内容はもちろん素晴らしい。
砂漠に不時着した「ぼく」が羊の絵を描いてと言ってくる王子と出会い、一緒に過ごしていくうち仲良くなり、大切なことを教えてもらう。
「砂漠の星が美しいのは、どこかに井戸を隠しているから」
「星がきれいなのは、見えないけれどどこかに花があるから」
「ぼくの星はたくさんの星の中に混じっている。だからきみはどの星のことも好きになる」
宮崎駿監督はこれらの言葉からインスピレーションを受け、ラピュタの主題歌を作った。
「あの -
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・全体を通して
サン=テグジュペリは、夜間郵便飛行まで手掛けた優秀な飛行士でありながら、そこで得た体験を詩的・幻想的な表現で民衆に伝えることが出来た稀有な作家であった。
ボクはなんだかんだこの著者の作品を読んだのは初めてだったけど、この2作でサン=テグジュペリのことが相当好きになった。緊迫感を硬質な筆致で描写しながらも、別人のような表現で当事者の感動を幻想的に描いていた。
人間の尊厳と、生きるという奇跡を、とてつもない感動と共に理解することが出来た
しばしば、自然の驚異/脅威や雄大さを描くためにラヴクラフト的なゾクゾクするような幻想的な描写をするところもボクに刺さった
「一時間後、メルモーズは -
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G・プッチーニのオペラの原作。絶世の美女に一目惚れし、純愛を捧げた青年が人生を踏み外して転落していく物語。とても面白かったです。
時は18世紀前半のフランス。17歳のデ・グリューは、成績優秀で将来を有望視されていました。ある時、街で出会った修道院送りになったマノン・レスコーに一目惚れ。二人でパリに駆け落ちをします。愛に満ちた二人と思われましたが、マノンは貧乏暮らしを良しとせず、他の金持ちの男と通じていたことが発覚。一度は、父と兄によって引き離されて恋心は下火になりますが、運命のイタズラは放っておいてくれませんでした。デ・グリューが神学部の公開審査を受けるにあたり、彼の名前を見つけたマノンが神 -
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2021年ゴングール受賞作で野崎歓さんの訳なので間違いないと思って読みましたが、期待以上の名作でした。
黒人による小説ですが、作品中でもアフリカ出身の黒人作家が受ける運命について書かれていて、その入れ子構造を通して、文学を、書くこと、文学を読むこと、そして社会を生きることなどについて著者と一緒に旅するような作品です。
内容は幻の黒人作家エリマンの幻の作品「ろくでなしの迷宮」に若い黒人作家が出会い、その作品に惹かれ、またその作品がなぜまぼろしとならざるえなかったのかを探究しながら、自身も文学について深く探究していくというもの。
色々と舞台や人物が用意され、読者も主人公と共にシークアンドファイド -
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若い作家が、昔夢中になった本がある。その本は賛否両論にさらされて、盗作疑惑の中で作家は消息不明、本は回収の上絶版となって読むことができない。
が、ある晩、自分の母くらいの年齢の才能ある女性作家に遭遇し、その女性作家から問題の本を受け取る。
本とその作者には何があったのか。
アフリカをルーツとする作家がヨーロッパでさらされる偏見。エキゾチックな何かばかり期待される。それが苦痛だと書きながらも、本にまつわるエピソードはマジックリアリズムのようになる。矛盾していると思いつつ、主人公と共に作者の所在を追いかけ続けるが、行き着いたは答えは、当たり前の終わりだった。
主人公と共に幻惑されて目が覚めるまでの -
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これはすごい本。5つ星でも足りない。
人類の奥底にある物語を紡ぐ心を抉り出す小説。
文学として小説を、物語を書くことをベースにしたヨーロッパ風の教養主義的な小説という基盤を持ちながらもエンターテイメントのような側面も保ち読み出したら止まらない。
現代から第一次世界大戦までの広い時間軸を跨いで、地理的にもセネガルだけにとどまらないアフリカ、アムステルダム、パリをはじめとするヨーロッパの各地、さらにはブエノス・アイレスを中心としたラテンアメリカ世界に物語の場面は広がる。手紙や日記、記事の引用、過去の思い出の語り、曖昧になる語り手と聞き手の境界線。小説的テクニックをこれでもかと使いながら無駄に流れな -
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セネガルの作家、モアメド・ムブガル・サールの小説。
あらすじを言えば、駆け出しセネガル人の作家が、幻の本の作者の足跡を辿るというありがちな展開だが、3つの柱がある。作家と文学についてと、アフリカについてと、アフリカ人の作家と文学についてである。
人はなんのために書くのかという問い、セネガル人としての根源的ルーツ、そしてフランス領であったセネガル出身者が西欧的文化圏において創作するとき何が起こるか、ということである。
特に三番目についてはアフリカ、というだけで我々は直ぐに色眼鏡でみてしまう。現に私自身、著者名で中東かアフリカ系であることに興味を持たなければこの書を手に取ったか。
それでも創