野崎歓のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読んでいて、これがフランス革命より前の時代の小説かと疑いたくなるほど臨場感があった。
スタンダールの恋愛論といい、デュマフィスの椿姫といい、フランス文学は恋の情熱がいかに幻想的で破滅的かを克明に表現している。
主人公のシュバリエがいかにマノンを愛しているかが、主人公の視点で終始書かれているので、いかにそれが狂気と隣り合わせかということが客観的にわかるようになっている。
世界を支配できるとしても彼女の愛さえあれば他に何もいないという境地には、恋は盲目という言葉があるとおり、多くの人が共感できるように思う。
作者は、浮気をされようともここまで友人や家族を翻弄し苦しめ、詐欺を働き、人を殺しかけ -
Posted by ブクログ
ナポレオン失脚後のフランスが舞台。
製材職人の息子ジュリヤン・ソレルの野望とこじれた恋愛の物語。
ナポレオンに憧れを抱くジュリヤンは、ラテン語で聖書を暗記するほどの知性により、出世の野望を持っている。僧職につき、レナール家の家庭教師となるが…。
ジュリヤンは果たして本当にレナール夫人を愛しているのか?心の内が多く描かれるが、理解に苦しむ。金持ちを蔑む心からその女を落としたいだけなのか、レナール夫人の純粋な気持ちに対してジュリヤンはよこしまな感情のようで、こじれた恋愛に思える。この頃のフランス貴族は不倫が珍しくなかったようだ。
レナール家を追われ、神学校に入学するが、その中でも孤立するジュリヤ -
Posted by ブクログ
ネタバレジュリアン・ソレルは、製材小屋の息子だが、体が小さく役立たず扱いをされていた。ジュリアンはナポレオンを尊敬していたが、この時代はナポレオンが失脚したあとの時代。ナポレオン信仰は隠すべきことだったみたい。
ジュリアンはラテン語がとても良くできたので、地元の大物であるレナール家に子供の家庭教師として招かれる。
最初は「度胸試し」のようなつもりで、レナール家の奥様を誘惑しようとするジュリアンだが、奥様との道ならぬ愛の沼に堕ちていく。この時代、姦通は死に値する罪だったようで、奥様は自分の罪に悩み苦しむ。
近所では奥様とジュリアンの関係を怪しむ人が増え、ジュリアンはレナール家を出て神学校に入校することに -
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40年前、四人囃子やPRISMのギタリストだった森園さんの♪いつもスモールシガレット 指にはさんで ボリス・ビアンなんか読んでた♪という歌を聴いて、ボリス・ビアンの名前を知り、うたかたの日々を読んだ。
マライヤの清水靖晃さんのアルバム「北京の秋」も持っている。
他人様には何のことやら判らないことだろうけれど、兎も角、本屋で新装丁の本書を見つけ、購入。そうでもなければ読まなかった本である。
帯に「いうまでもないことだが、この作品には『中国』も『秋』も出てこない」とあり、チョッと驚く。
いつまでも通勤のバスの乗れないアマディアス・ジュジュ、殺人の後に隠者になろうとするクロード・レオン、彼に恩寵 -
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砂漠に不時着した飛行士の「ぼく」は、小さな星からやってきた王子と友達になる……。
いわゆる『星の王子様』です。原題はこちらのタイトルの方が近いそう。
児童文学というカテゴリではありますが、どちらかと言うと「かつて子供だったすべての大人へ」というメッセージが強い気がします。
小さい時も読んだことがあるのですが、その時は正直よく分からなかった。
優しく柔らかい語り口なのに、孤独を感じる不思議な話。
私は幼少期、子供同士で遊ぶというよりは大人に囲まれて育ったので、言葉は伝わっているはずなのに意図が通じない、子供だけが感じ取れるような半空想の世界を伝えられないもどかしさと常に隣り合わせにいたのです -
Posted by ブクログ
まずはスタンダールさんがフランス人であることをこの本の解説で知りました。
ナポレオン失脚後のフランスが舞台で、副題に「十九世紀年代記」とあるように時代背景を知らないと主人公のジュリアン・ソレルくんが単なる僻みやに思えてしまい、どうして上流階級の女性陣が彼にハマるのかがよくわからない。
まずは後ろにある翻訳者の野崎歓さんの読書ガイドから読まれることをおすすめします。
野崎さんのこの本は誤訳問題とか色々紛争があったらしいけれど、自分は別に気にしませんでした。
しかし、このジュリアンのどこが良いのだ?
文章だけじゃよくわからなかったので、勝手に20代前半のトム・クルーズをキャスティングし、向上心 -
Posted by ブクログ
ブリュノとミシェル、両方ミシェルウェルベックが実際に辿ってきた人生をかなり濃く反映したキャラクターなんだな。
自由が、かえって男を生きづらくさせた。西欧社会の転換が生んだ翳りを、生々しく露悪的に捉える。自らの人生において、あらゆる面で強烈なコンプレックスを抱くブリュノ、なりふり構わず性に乱れる姿は滑稽だし彼の過去を踏まえると物悲しさすら漂う。でも後半吹っ切れたか振り切れたかしてる。より彼に対する切なさが増幅しちゃう。
根底にウェルベック自身の痛烈な自己批判があるんだろう。社会を世界をシニカルに捉えているのに、その眼差しは自身の振る舞いにすら向けられている。 -
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Posted by ブクログ
『闘争領域の拡大』に次ぐウエルベックの二作目。フランスでベストセラーになったらしい。
ウエルベックは博識な作家だが、本書もごたぶんにもれず数学、分子生物学、はては哲学まで盛り込まれていた。ド文系な自分にはさっぱり理解できなかった箇所も多かった。難しすぎる小説ははっきり言って苦手だ。
性欲に囚われた国語教師の兄ブリュノと、天才分子生物学者である弟ミシェル。この異父兄弟を主人公としてその一生が描かれる。前半の幼少期の話は好きだったが、後半になるにつれわけがわからなくなり、あまり物語に入ってゆけなくなった。
ブリュノは性欲をこじらせたまま大人になり、ニューエイジ風のキャンプに参加したり、乱交専 -
Posted by ブクログ
なんとも珍妙な逸品。物語の筋は若者たちの恋愛と友情、そして悲劇の物語だが、表現がほぼナンセンスな表現で読み手の許容力を試される。
うまく物語に入り込めることができれば恋愛、仕事、お金、趣味と価値観(シックの収集)などに共感出来る。
クロエが亡くなり葬式を頼む場面以降がぶっ飛んでいる。悲しい場面のはずがかなりの可笑しみが伴う。最早悲しみに暮れるコラン目線は放棄され、貧乏人の出す葬式のパロディと化している。
物語の冒頭から時折登場するハツカネズミと猫の会話で終わるシーンがひたすらシュール。
なぜデュークエリントンが持ち上げられるのかと思えば、あとがきによると作者と知り合いだったんですね。