野崎歓のレビュー一覧
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モーム選の世界十大小説のひとつ。(読むのは、カラマーゾフの兄弟、戦争と平和、ゴリオ爺さん、に続いて四作品目)
発表は、1830年七月革命直後、執筆は七月革命前の王政復古(シャルル十世)の時代。
製材屋の息子(19歳)ジュリヤンが、町長宅の住み込み家庭教師からキャリアをスタートし、神学校勤務を経て、侯爵の秘書に内定するまで、が上巻。
叙述の多くを占めるのが、ジュリヤンとレナール町長夫人(30歳くらい)との間の禁断の恋愛関係。
巻末の「読書ガイド」によれば、史上初のサラリーマンを主人公とする小説、という説もあるらしく、すごろくものを読んでいるような独特の面白さだ。あらすじを全く知らずに読み始めたので下巻が楽しみだ。
思わせぶりなタイトルの意味は、軍服(赤)と僧服(黒)のことだそうで、当時の社会でのしあがるにはこの二つしかない、ということのよう。
貧しい青年が恋愛をも駆使しながらのしあがる、という設定から、往年の青年漫画、柳沢きみおの「青き炎」(1988-1991)をふと思い出した。結末は覚えてないが、自滅だったような。。
それにしても、200年近く前の作品とは思えないくらい読みやすい。
「いま、息をしている言葉で、もういちど古典を」という光文社古典新訳文庫のタグラインの面目躍如といってよいのではないだろうか。
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「大切なものは、目には見えないんだよ」
いや、わいには見える(やめとけ)
はい、世界的名作『星の王子さま』じゃなくて『小さな王子』を光文社古典新訳文庫で読みました
あー、こんな話だったっけ?
いやしかし翻訳超良かったんじゃね?
この訳でなんか色々気付いたことがあったな
そもそもさ、このお話ってサンテグジュペリは大人向けに書いてるのよ
だからこれまでのおとぎ話調の訳って作者の意図と離れたところにあるんよな
子どものこころを忘れてしまった大人たちの、だけどこころの奥の方に眠っている純真さに向けて書かれている本なのよ
なので訳者の野崎歓さんのあとがきに納得
そして、なぜ『星の王子さま』ではなく『小さな王子』という題名なのか?というのもしっかりあとがきに書かれていました
わいはめんどくさいから書かないw
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物語後半で展開されるのは人生の不条理劇。解明しようとしてたサイバーテロ攻撃も父が残した謎も大統領選もこれ以上進展がのぞめない。なぜならポールは口腔癌によって「滅ぼされる」から。
自分はまだ重い病気に罹ったことがないから、癌の告知、治療の選択、家族へ知らせる過程等をポールと共に追体験した。嘘つくまではいかないが言うべきことを妻に言わなかったりセカンドオピニオン受けて治療法を天秤にかけたりと、細部にリアリティがあってこんな感じなのかーとしみじみ思った。
やっぱり、妻であるプリュダンスとパートナー関係が修復できてるのが今までのウエルベック作品と異質だと思う。
知人とも話したけど、ウエルベック年々作風丸くなっていってるよね????昔はもっと露悪的だったよ -
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いつものウエルベック節を求めている人にとって期待以上に楽しめる本だと思う。
序盤から断頭台の図解が出てきて笑ってしまう。まだ上巻しか読んでないけど、ポールとプリュダンス夫妻の歩み寄り・関係の修復が見られそうなのがこれまでのウエルベック作品とは違う点かな。
ポールが人間嫌悪とテロリストへのシンパシィを独白するシーンは正直ドキッとさせられた。
一番印象的だったのはポールの妹セシルが得意の料理を武器に働きに出て、ブルジョワの家で作業をする中で社会的階層の違いを痛感するところ。「こんなの知りたくなかった」けど夫と合流する頃には「楽しかったわ」と表面上取り繕う。うーんしんどいな -
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ネタバレ悪女の話だというくらいの知識しかない状態で読み始めました。
もっと高尚な感じなのかなと思いきや、語り手のデ・グリュが正しく恋に狂っていてまったく落ち着いていないので(笑)そりゃ恋に堕ちたら冷静ではいられないよね……と勝手に納得。
マノンはもっと計算高い感じなのかと思っていましたが奔放で天真爛漫で自由でなんだか憎めない魅力があります。
弄んでやろうと思ってやっているのではなくてその時の自分の気持ちに正直なだけというか。
若さもあるんでしょうね。
計算高いという点ではデ・グリュの方が悪に染まっているような……
あなたが悪いんですよとか言いながら門番を撃ち殺したり。それに良心の呵責を感じるどころかさっさと次の計画を練っていたり、人心掌握に長けていたり。全部マノンのためなんですけどね。
流刑先で平和な生活が手に入ったかと思いきや、マノンの美貌のせいでまたいざこざが起こり最終的にマノンは衰弱死。
デ・グリュは嘆き悲しみ熱も出しますがラストでは特にマノンの話も出ず、兄のところに戻ってなんだかんだ元々描いていた人生に戻るんだろうな、と思わせるどこか虚しい終わり方でした。 -
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おとななので、長い夏休みもないけど、夏に何かしっかりした物語を読みたいと思って選んだ1冊。けっこう読み終わるまで時間がかかった。なんとか夏が終わる前に読み終われてよかった。
はじめ現実離れした表現が目立ち、ヴィアンの本がはじめましてだから、そういうものかとなんとか受け入れることができた。そして、読み進めるほど、ファンタジー感は薄れて、気づけばけっこう暗い結末に向かっていくという。。
でも不思議なことに、読後に重さや悲しみのような負の感情はそこまで残らないさっぱり感?。ある意味、物語として最後まで楽しめたので、傑作なんだと思う。
本編終了後に丁寧に、解説と作者の年表と訳者のあとがき付きでありがたかったです。
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ネタバレ"第一の書"と銘打たれた冒頭ブロックのみ取り出しても既に一つの物語として充分に完成しており、もしかしてオムニバス様の構成なのか? と勘違いしかけたほど。
以降、構築されてゆく世界は非常に重厚かつダイナミックであり、その舞台がアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカに渡っていることを含め、生半可な読者の覚悟では抱えきるのが困難と思われるぐらいのスケールを感じさせる。
地の語りの他に、ロードムーヴィー然とした描写や作中作に回想録、重要人物へのインタヴューに加え、そのインタヴュアーに対するインタヴュー等々、様々な形態のパーツが見事に組み上げられている全体はまるで大伽藍のようであり、作品の文学性と娯楽性を高いレヴェルで両立させているという点において、精緻さを極めたその複層的な構造が大きな役割を果たしているようにも思う。
個人的に、古川日出男氏を少し想起させられた。
一人の若き悩めるセネガル人作家が、かつてセンセーショナルな小説を著した謎多きセネガル人作家の足跡を追う…と言ってしまえばシンプルに過ぎるが、そこには確かにアフリカ文学の魂が全方位に向けて発する剥き出しの叫びが込められているのを、月並みな表現ながらしかと感じた。
主人公に宛てたメールの形を取って終盤に登場するムジンブワの手記が、すべてを象徴し物語っている。
作品の閉じ方もまた、完璧だ。
巻末の訳者解説がとても秀逸。
私自身、セネガルの内戦などを始めとする歴史やアフリカ及びフランス文学に造詣が深ければ、もっと作品の理解は進んだだろうと考えると、無知を悔やむばかり。
最後に、大手出版社ながら、"押しも押されぬ"という誤用がスルーされてしまっているのはちょっとお粗末。
「偉大な本は主題をもたず、何についても語りはしない。それはただ何かを言おう、発見しようとしているだけなんだが、でもそこには、すでにすべてがある。その何かが、すでにすべてでもあるんだ。」
「作品の中で自分を消滅させようとするのは、必ずしも謙虚さのしるしというわけじゃない。虚無への欲望にさえ、おそらくは虚栄心が含まれている……。」
「過去の人々に取りつき、決して安息を与えまいとするのはぼくらのほうなのだ。ぼくらこそがぼくらの物語の幽霊であり、幽霊のそのまた幽霊なのだ。」 -
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ネタバレ滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。
プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。
所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。
政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えのある好みの本だった。 -
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1冊の小説というのが人生を変える、というのは極めてドラマティックなストーリーであるが、作品に魅せられるが如くその作品から逃れられないのだとしたら、それはドラマティックであるにしても一種の呪縛となる。本書は1冊の小説に魅入られた人間のストーリーである。
セネガル生まれの作家が書いた1冊の小説がパリで話題になるも、剽窃の疑いを受けて作品は絶版となり、当の作家自体も行方をくらます。数十年後にその作品と出会って魅せられてしまった同じセネガル生まれの若手作家は、当の作家の行方を追って世界各地を移動し、最後にはセネガルの村へと辿り着いていく。
その過程で小説を書くこと・小説を読むことについての思弁がそしてフランスとその旧植民地であるセネガルという2国の関係性を織り交ぜつつ描かれていくことで、次にどう展開するか予想がつかないストーリーと作家の思弁性のバランスが取れた作品として非常に面白く読み進めた。 -
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セネガル出身の若い作家で、ゴンクール賞受賞ということで読んでみた。
とにかく饒舌。はじめはアフリカの作家がいかに白人世界で型に嵌め込まれて扱われているかという文学論もあり、物語は進むのかと不安になったが、シガ・Dの父の語りから面白くなった。
セネガルの伝統・文化・宗教、現在の政治運動、ヨーロッパに住むアフリカ人文学者は何を書くべきかといった思想的な要素だけでなく、場所もパリ、セネガル、アムステルダム、南米と移動するし、時代は第一次世界大戦前から現在までで、複雑で広範である。語りも、語り手(現代のセネガル人若手作家ジェガーヌ)、ジェガーヌが尊敬する女性作家シガ・D、シガ・Dの口を通した父ウセイヌ、フランス人の文学研究者、ハイチの詩人の語り、と二重三重の構造もある。それをよくまとめあげたなと、その力量に関心する。
物語としても面白かった。(映画になったら文章自体の饒舌さが押さえられて、構造が視覚化されてすっきりした話になりそう。)
饒舌な語り口は好き嫌いがあるかもしれないが、一読に値する作品だと思う。
ただ、南米のマジックリアリズムに出会った時ほどの衝撃はなかった。あれは本当に度肝を抜かれたし、その語り口に夢中になったが、これは、ある意味ヨーロッパ的な理性をもって語られていた印象。アフリカとヨーロッパのハイブリッドという感じ。