野崎歓のレビュー一覧
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下巻の後半は凄かった。
読んでいて思わず「えーっ!?なんで?嘘やん」って声が出る事、数回。あまりに劇的な展開の為、読む速度が加速した。エンタメ小説では?と思うぐらいだ。
ジュリヤンが、レナール夫人と別れた後、出会ったのが侯爵令嬢マチルダ。サロンの男達を従え、革新的な考えの持ち主。
ジュリヤンとマチルダ、
自尊心の高い者同士の駆け引きが、理解不能である。
うーん、恋なのか…?
ジュリヤンはレナール夫人の時と同じく、マチルダを落とす事に意義を感じていそう。マチルダも初めての恋に混乱し、言動が支離滅裂。でも、ラストに彼女が取った驚くべき行動により、ジュリヤンを本当に愛していたのでは?と感じさせられ -
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ネタバレ他の本を読むのも間に挟みながら、ようやく、ようやっと読み終わった…。読み切った自分を褒めたい笑。
子どもの時に「漫画で読む名作文学」的な本で読んだことあったが、その時は、ジュリアンの恋愛と出世の物語…というものだと思っていた。
それは物語の軸ではあるものの、小説で読んでみると、風刺画的な当時のフランスの情勢や貴族、市民の文化風俗がリアルに書かれていて、そっちが主題かなと思うほどだった。
上巻でもそうだったけど、そのせいで、ストーリーとして大事なところは簡単に書かれて、それ以外の時代の説明文やジュリアンの内心が長々と…。
この小説の価値は、表面的なストーリー(野心深く出世を目指したジュリアンが -
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幻想的な表現も助長し、
前半は兎にも角にも甘ったるい場面や描写が多く、カロリー高めであったが、
後半の落ち方に容赦がなく、ひたすら悲しい気持ちに。
とはいえ、思い返せば前半から容赦なく人が死んでゆく世界だった。
その世界に入り込むことへの準備さえできれば、
マジックリアリズムの面白さは跳ね上がる。
ハツカネズミの自殺で締めるのが印象的。
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大切なことは二つだけ。きれいな女の子相手の恋愛。そしてデュ-ク・エリントンの音楽。他のものは消えていい。なぜなら醜いから。
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あらかじめ失われた恋人たち
コランの日々には魔法がかけられます。
それは同時に、甘い罠でもあります。
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巻末の解説が充実しているので、フランス社会史的な部分もある小説を読み解く参考になった。
実際にあった事件をもとに小説を書くところは日本でいうと三島由紀夫さんのようなものか…。
自分のなかでは、赤は恋愛と血。
黒は社会的出世と死を意味しているように感じました。
前半がジュリアンが求めたもの。
後半がその結末。
ジュリアンのお相手として、前半は田舎の貴族である町長の奥さんであるレナール夫人、後半はパリの最高級貴族のマチルド嬢が登場するけれど、人間的に魅力的なのは断然キレっぷりが半端ないマチルド嬢だと思われます。
しかし、どちらも最終的にはジュリアンを通じて自分自身を愛しているように見え、若き -
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①文体★★★☆☆
②読後余韻★★★★★
この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだことがありません。実際この作品を見てみたいと思いました。
そしてそのお父さんが建築家、というか大手の設計会社の経営者というほうが近い人物なのですが、そのお父さんが彼の創作活動のひとつのキーパーソンにもなります。主人公の彼のお父さんとの会話からは、若い頃はデザイナーであるウィリアム・モリスにあこがれたはなしであったり、反 -
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フランスの「ルノードー賞」の歴史において初めての「死後受賞」作。
1942年にフランス憲兵により捕縛され、同年のうちにアウシュビッツで無残な最期を遂げたイレーヌ・ネミロフスキーの遺作が、実に60年の月日を経て陽の目を見る”歴史的事件”があり、2004年に同賞が贈られたのだという。
1942年の執筆時点で、ドイツ軍に占領されたフランスの運命は当然ながら誰も知らない。著者は、フランスの疎開地にいて戦争の行方を追いながら、5部作として構想した「フランス組曲」の執筆を進めるのだが、世界大戦の結末を見ることなく、ホロコーストの狂気に飲み込まれてしまう。(フランス組曲は2部まで書かれた未完の小説)
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「星の王子さま」を含めて、初読。
聖書と資本論に次いで多くの翻訳がなされた本、とのことで、納得の名作。
数多い印象的な場面の中で、お気に入りは、
冒頭の、ヒツジの絵を書く場面で、なかなか王子のOKが出ないので、(一休さんのように)、箱の絵を描いて、「きみのほしがっているヒツジはこのなかに入ってる」と、やったら、王子が顔を輝かせて喜ぶ場面。
あとは、(以下、抜粋)
23
「こんにちは」と小さな王子がいった。
「こんにちは」と商人がいった。
それはのどの渇きをしずめるという、あたらしい薬を売る商人だった。週に一粒、その薬を飲めば、それでもう何も飲みたくなくなるのだそうだ。
「どうしてそんな -
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なにかのTV番組で、寺島しのぶさんがパートナーのことを「アムールの国の人」と表現していたのをふと思い出して読んでみた。
「愛」という言葉は難しい。日本では仏教や儒教の影響が強い文化である。仏教では強い執着と欲望の充足を示す言葉でもあるらしい。悟りを得るために乗り越えなければならない苦しみの一つとしても語られているようだ。儒教では「仁」もまた愛と説く。いずれにしても厳しい言葉だと感じる。
まったく異なる背景、キリスト教や元々のフランスという土地ではぐくまれた「愛」はどのようなものなのか。
その言葉の変遷を文学や当時の人の書簡から解き明かしている。
以前読んで全く分からなかったので放り出し -
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ネタバレウエルベック2冊目は、芸術家(美術家)を主人公としたこの『地図と領土』。
最初写真家として個展デビューし名声を博した後しばらく沈黙し、今度は古典的な油彩に戻って有名な職業家の肖像を手がける。すると2度目の個展で大ブレークする。
やはり、芸術家小説というものは、このように成功談がいい。努力をしても最初から最後まで誰にも認められずに淋しく死んでいく芸術家のストーリーは、リアル(世界中で大多数)ではあるが、話としては退屈だし悲しすぎるのだろう。
肖像画もまた止めて、主人公は晩年は動画作品を作るようになる。
急激に変転する技法を通して、芸術家の世界観が徐々に成長していくことは読み取れるから、全編が芸術 -
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ネタバレミシェル・ウェルベック「地図と領土」
今何かと話題のミシェル・ウェルベック、ついに手に取ってみた。結論、猛烈に面白い。以下、微妙にネタバレを含む。
母親を自殺で亡くした内向的な青年が写真、さらには絵に打ち込む。その才能を見出すのは手練れの「芸術のプロフェッショナル」たち。ミシュランの広報という絵にかいたような業界エリートである美女との恋をきっかけに作品にはいつのまにかすさまじい高額がオファーされ、主人公は目もくらむような高みに導かれていく。
テーマはずばり「芸術に値段をつけられるか」。著者のビジネス視点がいかにも正確で、通俗的な「金儲け悪徳論」とは一線を画す。そしてそれ故になおさら個人の -
ネタバレ
深い
ちいさな王子
星の王子さま をファンタジーになりすぎず親しみやすく愛情をこめてあえて違う訳し方をした題名の本。とにかく深い…。最初は意味がわからなかったけど考えてみると一つ一つに意味がある。まず登場人物がみんな一人きりで過ごしていること。一人でいると自分だけのことを考えてしまいがちだけど誰かのために行動できることが巡り巡って自分のためになるんじゃないかなって思った。
だって王様やビジネスマンより王子様や点灯を繰り返している人の方が楽しそうだもの。
これが一期一会みたいなものの大切さをあらわしてるような気もした。
出会ってなつかせること、これによって人は目には見えない絆を築くことができる -
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ネタバレアーティストのジェドの一生の話。世界そのものを表現するために「工業製品の写真」→「ミシュランの地図の拡大写真」→「職業人の肖像画」と表現が変遷していくが、ジェドその人は、単なる鏡としての人なのか、空虚で、情熱のようなものがあまり伺えないように見えた。晩年の圧倒的な諦念・孤独の中で制作された作品群にようやくエモーション、想いのようなものが感じられたような気がする。とかいって、すべて芸術作品を文章で読まされているわけですが。エビローグの、寂寞さがすごいのと、ウェルベックのテーマがてんこ盛りなのが、なんだか微笑ましい気持ちにさせられた。でも、自分の人生における交友関係も先細りだし、最後はこんな状態に