野崎歓のレビュー一覧

  • 滅ぼす 下

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    ネタバレ

    滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。

    プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。

    所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。

    政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えの

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    2024年06月09日
  • 滅ぼす 下

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    テロや政治の大きな物語を背景としつつ、フォーカスされるのは、一人の人間がどのように己の死に向き合うかということ。
    文明の滅びのイメージと人間の滅び、自然の巡りなどを相互に響かせながら物語は進んでいく。

    伏線では?と勘ぐりたくなるような匂わせが頻発するが、それらの記述は解決されず、物語の背景で滞留し続ける。
    その解決されない問題に取り巻かれながら、もやっと曖昧に、でも確実に死に向かって歩んでいく流れが、私達の現実の肌触りに似ているような気がして震える。

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    2024年05月26日
  • 滅ぼす 上

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    同年代の自分と重なる部分があり、導入の巧みさ、
    ウェルベックの過去作で一番面白かった ある島の可能性 より引き込まれてしまった

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    2024年04月03日
  • 赤と黒(下)

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    ミュージカルを見たので、原作を。
    ソレルの内面が複雑かつ、揺れ動く様は、原作が圧巻。
    どうしても単純な印象になってしまう舞台。
    これを原作の魅力を活かして舞台化するのは、かなり難しいと思った。

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    2024年02月29日
  • 素粒子

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    人に薦められて手に取る。恐らく自分では選ばない内容。
    最初は性的なものも含む衝撃的な描写と、物理学や哲学の難解な文章に頭が混乱しながら、また辟易しながら、何度も挫折し、少しずつ読み進めた。だが次第に登場人物たちの絶望的な哀しみに寄り添うようになり、最後にはページを捲る手がとまらなくなった。なんとも不思議な、ジェットコースターみたいな小説。面白かった。
    でもどうかな、やっぱり好き嫌いがはっきりとわかれる小説なんだろうな。

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    2024年02月14日
  • 人類の深奥に秘められた記憶

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    1冊の小説というのが人生を変える、というのは極めてドラマティックなストーリーであるが、作品に魅せられるが如くその作品から逃れられないのだとしたら、それはドラマティックであるにしても一種の呪縛となる。本書は1冊の小説に魅入られた人間のストーリーである。

    セネガル生まれの作家が書いた1冊の小説がパリで話題になるも、剽窃の疑いを受けて作品は絶版となり、当の作家自体も行方をくらます。数十年後にその作品と出会って魅せられてしまった同じセネガル生まれの若手作家は、当の作家の行方を追って世界各地を移動し、最後にはセネガルの村へと辿り着いていく。

    その過程で小説を書くこと・小説を読むことについての思弁がそ

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    2024年01月28日
  • 人類の深奥に秘められた記憶

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    セネガル出身の若い作家で、ゴンクール賞受賞ということで読んでみた。
    とにかく饒舌。はじめはアフリカの作家がいかに白人世界で型に嵌め込まれて扱われているかという文学論もあり、物語は進むのかと不安になったが、シガ・Dの父の語りから面白くなった。
    セネガルの伝統・文化・宗教、現在の政治運動、ヨーロッパに住むアフリカ人文学者は何を書くべきかといった思想的な要素だけでなく、場所もパリ、セネガル、アムステルダム、南米と移動するし、時代は第一次世界大戦前から現在までで、複雑で広範である。語りも、語り手(現代のセネガル人若手作家ジェガーヌ)、ジェガーヌが尊敬する女性作家シガ・D、シガ・Dの口を通した父ウセイヌ

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    2024年01月20日
  • 滅ぼす 下

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    上巻はのろのろ読みだったけど、下巻はあっという間に読めた。
    上巻始めの感じはハッキングなどの技術による社会崩壊の話かと思ったら全然違った。もちろん世の中の在り方の事も含まれているけど、もっと大きな生死についての話だった。
    意外な展開で、帯に書かれているように「読み出したら止まらない」
    フランスらしさがふんだんに出ていて良い。
    ベストセラーに納得。

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    2023年10月01日
  • 滅ぼす 下

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    もはや一種の黙示録とも呼べる文学作品を作り続けているフランスの鬼才、ミシェル・ウエルベックによる新著であり、過去の作品と比べても単行本上下巻という大著。

    個人的に新著が出たら、迷わずに買うことを決めている現代作家の一人がウエルベックなのだが、迷わずに買ったことを全く後悔しないほど完成度高く魅惑的な作品であった。

    ウエルベックの作品は登場するテーマや意匠に強い共通性がある。デビュー当初は、カルト宗教やセックス/性の問題に始まり、ここ10年ほどは極めてアクチュアルな移民問題やテロリズム、資本主義の限界など政治・経済学的な側面が強まっている。本書はまさにウエルベックを構成するであろう様々なテーマ

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    2023年09月09日
  • 滅ぼす 上

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    もはや一種の黙示録とも呼べる文学作品を作り続けているフランスの鬼才、ミシェル・ウエルベックによる新著であり、過去の作品と比べても単行本上下巻という大著。

    個人的に新著が出たら、迷わずに買うことを決めている現代作家の一人がウエルベックなのだが、迷わずに買ったことを全く後悔しないほど完成度高く魅惑的な作品であった。

    ウエルベックの作品は登場するテーマや意匠に強い共通性がある。デビュー当初は、カルト宗教やセックス/性の問題に始まり、ここ10年ほどは極めてアクチュアルな移民問題やテロリズム、資本主義の限界など政治・経済学的な側面が強まっている。本書はまさにウエルベックを構成するであろう様々なテーマ

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    2023年09月09日
  • 赤と黒(下)

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    下巻の後半は凄かった。
    読んでいて思わず「えーっ!?なんで?嘘やん」って声が出る事、数回。あまりに劇的な展開の為、読む速度が加速した。エンタメ小説では?と思うぐらいだ。

    ジュリヤンが、レナール夫人と別れた後、出会ったのが侯爵令嬢マチルダ。サロンの男達を従え、革新的な考えの持ち主。
    ジュリヤンとマチルダ、
    自尊心の高い者同士の駆け引きが、理解不能である。
    うーん、恋なのか…?
    ジュリヤンはレナール夫人の時と同じく、マチルダを落とす事に意義を感じていそう。マチルダも初めての恋に混乱し、言動が支離滅裂。でも、ラストに彼女が取った驚くべき行動により、ジュリヤンを本当に愛していたのでは?と感じさせられ

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    2023年05月19日
  • 赤と黒(下)

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    ネタバレ

    他の本を読むのも間に挟みながら、ようやく、ようやっと読み終わった…。読み切った自分を褒めたい笑。

    子どもの時に「漫画で読む名作文学」的な本で読んだことあったが、その時は、ジュリアンの恋愛と出世の物語…というものだと思っていた。
    それは物語の軸ではあるものの、小説で読んでみると、風刺画的な当時のフランスの情勢や貴族、市民の文化風俗がリアルに書かれていて、そっちが主題かなと思うほどだった。
    上巻でもそうだったけど、そのせいで、ストーリーとして大事なところは簡単に書かれて、それ以外の時代の説明文やジュリアンの内心が長々と…。
    この小説の価値は、表面的なストーリー(野心深く出世を目指したジュリアンが

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    2023年04月30日
  • 赤と黒(下)

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    家族には恵まれなかったけど、神学校の先生や侯爵、友人関係ではかなり幸運な人だったと思える。現代フランスでも40代の女性が1番魅力的と言われるだけあって年上のレナール夫人(ただし当時30歳前後)の方が侯爵令嬢より大分魅力的に描かれている。

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    2023年04月22日
  • ちいさな王子

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    SL 2023.2.24
    何年振りに読んだだろう。
    野崎歓先生の新訳。
    作者自身のことや時代の背景を知って読むと、ほとんど何も知らないで読んだ時とは全く違う景色が見える。
    ハッとさせられる言葉がそこかしこに。
    子どものためのファンタジーでありながらこの孤独感はすごいな。

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    2023年02月24日
  • 素粒子

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    この小説は天才的な科学者と典型的な文系人間の兄弟を両輪として展開する。1960年代より文化面で進行した個人主義と性の解放によって訪れたのは、人間の分離と欲望の無制限な増大だった。その社会を間近で観察し続けたミシェルは個人性を排除した新人類を生み出した。それは人類の緩やかな絶滅をも意味していた。

    行きすぎた個人主義の他から逸脱したいという欲求から生まれたセックス至上主義、エロチック=広告社会に対するアンチテーゼであり、現代社会への諦めを感じる。そこでは歴史上類を見ない規模で不均衡がばら撒かれる。エヴァの人類補完計画にも通ずる部分がある。みんな一個になっちゃえばいいじゃん。
    ミシェルとブリュノの

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    2022年12月30日
  • うたかたの日々

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    幻想的な表現も助長し、
    前半は兎にも角にも甘ったるい場面や描写が多く、カロリー高めであったが、
    後半の落ち方に容赦がなく、ひたすら悲しい気持ちに。

    とはいえ、思い返せば前半から容赦なく人が死んでゆく世界だった。
    その世界に入り込むことへの準備さえできれば、
    マジックリアリズムの面白さは跳ね上がる。

    ハツカネズミの自殺で締めるのが印象的。

    ーーーー

    大切なことは二つだけ。きれいな女の子相手の恋愛。そしてデュ-ク・エリントンの音楽。他のものは消えていい。なぜなら醜いから。

    ーーーー

    あらかじめ失われた恋人たち

    コランの日々には魔法がかけられます。
    それは同時に、甘い罠でもあります。

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    2022年12月21日
  • 赤と黒(下)

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    ネタバレ

    とにかくめんどくさいやつらばっかり。本来だったら数十ページかけてやるだろうめんどくさい恋愛のあれこれが2ページくらいにぎゅぎゅっと濃縮されてどのページを見てもめんどくさい。名誉や義務のために人を好きになろうとする主人公のクズっぷり。義務のはずだったのに本気で好きになってたり、相手が自分を愛してないんじゃないかと不安になったかと思うと相手のことを軽蔑したりと登場人物全員が非常にめんどくさい。世の中の人はみんなこんな山の天気みたいな恋愛してんのか?でも悔しいことに愛の文句はまたこれ以上 なく熱烈。

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    2022年12月20日
  • 赤と黒(下)

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    巻末の解説が充実しているので、フランス社会史的な部分もある小説を読み解く参考になった。
    実際にあった事件をもとに小説を書くところは日本でいうと三島由紀夫さんのようなものか…。

    自分のなかでは、赤は恋愛と血。
    黒は社会的出世と死を意味しているように感じました。
    前半がジュリアンが求めたもの。
    後半がその結末。

    ジュリアンのお相手として、前半は田舎の貴族である町長の奥さんであるレナール夫人、後半はパリの最高級貴族のマチルド嬢が登場するけれど、人間的に魅力的なのは断然キレっぷりが半端ないマチルド嬢だと思われます。

    しかし、どちらも最終的にはジュリアンを通じて自分自身を愛しているように見え、若き

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    2022年11月19日
  • 素粒子

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    "「唯物主義と近代的科学を生み出した形而上学的変動は、二つの大きな結果をもたらした。合理主義と個人主義だ。ハックスレ―の過ちは、それら二つの結果のあいだの力関係を測りそこねたことにある。とりわけ、死の意識が強まることによって個人主義が高まることを過小評価したのは彼の過ちだった。個人主義からは自由や自己意識、そして他人に差をつけ、他人に対し優位に立つ必要性が生じる。『最良の世界』に描かれたような合理的社会においては、闘いは緩和されるかもしれない。空間支配のメタファーである経済的競争は、経済の流れがコントロールされる豊かな社会ではもはや存在理由を持たない。生殖という面からの、時間支配のメ

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    2022年11月04日
  • 地図と領土

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    ①文体★★★☆☆
    ②読後余韻★★★★★

     この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだことがありません。実際この作品を見てみたいと思いました。
     そしてそのお父さんが建築家、というか大手の設計会社の経営者というほうが近い人物なのですが、そのお父さんが彼の創作活動のひとつのキーパーソンにもなります。主人公の彼のお父さんとの会話からは、若い頃はデザイナーであるウィリアム・モリスにあこがれたはなしであったり、反

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    2022年10月29日