野崎歓のレビュー一覧

  • ちいさな王子

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    野崎歓による『星の王子さま』(原題『Le Petit Prince』)の新訳。『ちいさな王子』と直訳されたタイトルが示すように、原著に忠実な訳文であるよう。

    内藤訳との大きな違いは、本文が敬体(ですます調)でなく、常体(だ・である調)で訳されていること。理由として訳者が、あとがきにて「『できるならぼくは、この話を、おとぎ話みたいにはじめてみたかった』と、語り手自身が述べているではないか。つまり、実際には彼はそういう語り方を採らなかったのである」と指摘しているのは説得力がある。

    (その他はたとえば、主人公から王子への呼びかけが、「坊っちゃん」や「あんた」から、「坊や」「きみ」とされていたり、

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    2018年01月30日
  • 地図と領土

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    2012年頃、壊疽を起こしつつも自己増殖をやめない市場経済とその中での生活に倦んでウィリアム・モリス社会主義を標榜した。同時期に発行された、作中で度々モリスに触れるウエルベックの『地図と領土』。漠として抱き続けているこの気鬱さの実体が、ものすごく精緻に暴かれたような。圧倒された。
    『服従』におけるユイスマンスや、この『地図と領土』におけるモリスなど、ウエルベックが作中で重要なモチーフとして取り上げるものと、自分がそれらに興味を持つ時期が全くかぶっていることに何か不思議さと、不健康な誇りを感じる。

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    2017年11月13日
  • ちいさな王子

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    おとなになってしまった人が忘れてしまっている、こどもだった頃の気持ちを思い出せる物語でした。全体を通して、美しい、けれどもの哀しい雰囲気がありました。心に残る言葉がたくさんありました。

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    2017年08月29日
  • 地図と領土

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    架空の芸術家の一生を描いたウェルベックのゴンクール賞受賞作。架空の図録とか、架空の美術展を描いた小説はいくつかあるが、ここまで壮大に「架空の近代芸術」を描く(予言する、というべきか?)とは度肝を抜かれた。さらにウェルベックが惨殺されるという驚天動地の展開で警察小説テイストも加わり、ボリュームたっぷり。ウェルベック特有のあからさまなセックス描写は必要最小限で控えめ…かなぁ。

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    2016年12月31日
  • 地図と領土

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    これまで読んだウェルベックの作品の中で最も面白かった。芸術(あるいは表現)とは何かということが恐らく本作のテーマではないかと思うのだが、出てくる芸術というものが奇想天外で惹きこまれた。更に、作者自身が登場人物として、ある意味芸術の犠牲になってしまうというつくりも斬新だと思う。

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    2016年06月12日
  • 赤と黒(上)

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    1820年代のフランスを舞台に、立身出世を目指す貧しい木こりの子(この文庫本では、彼はそれなりに裕福な木材商の子弟とされている)・ジュリアンの野望と転落を描いた、スタンダールの小説。世界史の歴史に載るほど有名なのに、今まで読む機会がなかった。安倍政権発足以来、日ごとに高まる「反知性主義」に対抗するためには古典を読むのが一番だと思いながら書店内を散策していて、たまたま目に入ったのがこの本である。
    主人公ジュリアンは実家を出て、地元有力者・レナール家の家庭教師になる。ほどなくして主人の妻・ルイーズと恋愛関係になり一線を越えた関係になるが、主人は二人の関係に疑念を持ち、レナール家に気まずい空気が流れ

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    2016年05月14日
  • 赤と黒(下)

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    19世紀フランスの小説家・スタンダールの代表作の後半である。パリを代表する大貴族の知遇を得ることに成功し、社交界でそれなりに名前を知られるようになり、さらにはその大貴族の娘に求婚され、立身出世の会談を順調に歩んでいたジュリアン。ところがそんなある日、以前愛し合っていた夫人から届いた手紙がきっかけで、彼の運命は大きく狂い始める…。
    この巻の読みどころは、ジュリアンに執拗に求婚する大貴族の娘である。ジュリアン相手に繰り広げられる恋愛の駆け引きは、ハラハラドキドキの展開でほほえましい。だがジュリアンが事件を起こして投獄されてからの彼女の動きは、はっきり言って狂気じみている。こんな行動をとられては、ジ

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    2016年05月14日
  • うたかたの日々

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    詩的な表現を多く含んだ小説なのか、と思ったがこれは違う。
    うたかたの日々は、一文一文を真に受け、作中世界の在り方に没入していかなければならないタイプの小説で、伏線や隠喩を解き明かすといった読書をする人にはこの作品の良さが分からないだろう。

    我々が生きている世界では、肺に睡蓮は生えない。ハツカネズミは踊らない。わりとちゃんと働く。
    だからこの小説はレアリスムではない。が、その反面、圧倒的にレアリスムだ。
    世界が綿密に描かれ、作品固有の運動していく。
    それを真に受けて読んだ我々がこの本を閉じる時、今読んだものがファンタジックな世界だとは微塵も感じることはないだろう。
    そこには圧倒的なリアリティが

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    2016年03月04日
  • 赤と黒(下)

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    面白いけれども、恋愛が主題であり、ちょっと物足りなさもある。
    後半の流れが支離滅裂だとサマセットモームは指摘していたけど、言われてみればそうかも。

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    2016年01月31日
  • ちいさな王子

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    この夏、ジェラール・フィリップの朗読CDを買って、真夜中にひとりで何度も聴いた。映画「リトルプリンス 星の王子様と私」を観る前にもう一度活字で読み返したかったので、特にお気に入りの野崎歓先生の新訳を選んだ。ちいさな王子さまが広大な砂漠に立ち尽くしている光景を何度も想像してしまい、何度読んでも胸が締め付けられて涙が出る。それも大人になるにつれて益々… 日常の些末なことを大切に生きようと思う。

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    2015年12月07日
  • ちいさな王子

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    【コメント】
    子供だった大人たちにむけて描いた物語り。
    こう書くとなんだかワクワクする。

    主人公と男の子が出会い、交流を通して
    本当に大切なものは何なのかに気づいていく。
    優しくユーモアがあり、ちょっと切なくなる
    お話し。

    *** 作品の時代背景
    この本は著者が実在の友人のレオン・ヴェルト
    に向けて書いた物語り。レオンはユダヤ人で
    大戦で迫害を受けていたのだ。著者自身も
    フランスがドイツに敗れ自身はアメリカに亡命
    している。

    そういう背景を知って作品を見てみると、
    これは単にファンタジーを描いただけの
    作品ではないときづく。そこには風刺
    (王子が様々な星で出会う奇妙な大人たち
    に対する)

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    2015年11月27日
  • 赤と黒(上)

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    ネタバレ

    何度も叫んでしまった。「ジュリヤンこのやろーーー!!!」と。
    この野郎、一人の親友に恵まれ二人の女性に愛され三人の恩師に助けられ(ピラール神父、シェラン司祭、ラ・モール侯爵)多くの民をその美貌と才知と得体の知れなさで魅了し死んだ後は小説になっちゃって今でも数え切れない人間の心に語り残り続けているというのに、出世?権力?なんじゃそりゃ!人間不信にも程があるし、勘違いも甚だしい。感情に煽られっぱなし。コミュ障。KY。挙げだしたらきりがない。でも憎めないんだ。嫌いになれないんだよ。「死ぬな」って願っちゃうんだよ。愛しちゃうんだよ。君みたいな男を。君だから。だからもう一度叫ばしてもらおう。「ジュリヤン

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    2015年09月23日
  • 素粒子

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    ネタバレ

    すごい本だけど刺戟的に過ぎる部分もあり、感想としてはめちゃくちゃだったといった感じ。ラストはちょっと賛同しかねる。
    しかし、人間への根本的な愛を感じる一作である。

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    2016年12月23日
  • ちいさな王子

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    ネタバレ

    サン=テグジュペリの「星の王子様」で有名ですが、訳者が違うのでタイトルが違います。訳も違うので、雰囲気が少し違うかもしれません。
    何か少し最後に悲しくなるのは、王子と友達になった飛行士の気持ちになるからかな?
    「大切なものは目に見えないんだよ。」
    「時間をかけて世話したからこそ、きみのバラは特別なバラになったんだ」
    もう一度心に響く言葉がいっぱいありますね。

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    2014年11月28日
  • ちいさな王子

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    ネタバレ

    別のバージョンで読んでいますので、
    実質再読となります。

    大人になれば、なるほど
    心はだんだんとすさんでいったり、
    知りたくもなかったものを知ってしまうもの。

    だけれども、本には、そんな素敵な時期を
    思い出させてくれる、不思議な力があります。
    そう、ちいさな王子のような、ほんとうに
    穢れのない目で見られる瞳。

    だけれども、彼には一つだけ、
    心残りがあったのです。
    恋をしていた生き物を、見捨ててしまったこと。

    世の中には、きれいごとではすまないことがある。
    だけれども、大事なものはある。
    それは、目には見えないもの。

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    2014年07月20日
  • 赤と黒(上)

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    ネタバレ

    高校生のときは新潮文庫で読んだ。当時はよく分からなかった部分も今となっては余裕をもって楽しめる。面白くてムラムラする。

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    2014年11月26日
  • ちいさな王子

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    この訳者は『星の王子さま』の題名の反対派。タイトルの”petit”、つまり「小さい」という形容詞を重要視しているからだ。確かに、小さな星からやっていた、小さな王子の、小さな物語かもしれない。
    また、訳者は、この話の中で語り手が「おとぎ話みたいにはじめてみたかった。」とあるように、この話は、おとぎ話調、童話調ではない点を指針とした、とあとがきで書いている。とはいえ、様々な訳を読んだ中では、印象としては、おとぎ話風の印象を持った。
    もしかしたら、これが訳者のいう、第二の指針とした、この物語の「温かさ」、サン=テグジュペリという人物のぬくもりの現れなのかもしれないな。

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    2015年01月07日
  • フランス文学と愛

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    難しそうなタイトルとは裏腹に、フランス文学の有名な作品の作品名と作者名をある程度知っていれば十分楽しめる、フランス文学入門書的な内容だと感じました。
    各作品のあらすじもザッと説明されるので読んでいてストレスは感じないし、「作品名は知ってるけどコレってこういう作品だったんだ」ってのを総ざらいできる点では良い本だと思いました。また各章が時代順にもなっているので軽いフランス文学史の入門としてもオススメ。

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    2014年02月20日
  • うたかたの日々

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    不思議な話だった。儚く美しいまさしく泡沫の日々、泡沫の恋だった。二人の恋が始まった時は幸せに満ちていたのに、こんなに切なく哀しい結末になるなんて。睡蓮に肺を蝕まれていく愛するクロエを救うため、下等なものとしていた働きに出るコランや、夫を破滅に導いた小説のために人を殺してしまうアリーズ。どこかで歯車が違う風にかみ合っていれば彼らは幸せになれたのかな。あまりにも幻想的すぎて現実味がないのになんでこんなに切ないんだろう。2012/174

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    2013年11月15日
  • 赤と黒(上)

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    ネタバレ

    フランスの歴史が少し分からないとつらいけれども
    ナポレオンが主人公に多大な影響を
    与えてた、と言う事実を知れば
    問題なくは読めると思います。

    その気質ゆえに家では散々疎んじられていた
    ジュリヤン。
    一見おとなしげに見える彼は
    実は心のうちには「大きな野望」を抱いていたのです。

    そして計算高い彼は
    一人の夫人を誘惑し、
    ついぞは彼女をものにさえしてしまいます。
    そして彼はその計算高さ、狡猾さを武器に
    地位までも手に入れようとしています。

    だけれども脆さも見えるという不思議。
    それが下巻では
    どうなっていくのでしょうか。

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    2013年10月30日