江戸川乱歩のレビュー一覧
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「何者」
最終章の題は "Thou art the man" で、出典はサムエル記。
「他でもない、あなたがその人だ」の意で、E.A.ポオ「お前が犯人だ」の原題でもある。
陸軍少将邸で、その一人息子が盗賊に銃撃され、入院先で安楽椅子探偵となるが……。
第六章タイトル「算術の問題です」を目にして、
これはもしや――と、中井英夫『虚無への供物』を開いたら、
第二章に「算術の問題」というパートがある!
はて、ここは何の話をしている部分だったっけ?
と、久々に目を走らせたら、
奈々村久生のセリフが「またそんな〝何者〟だなんて」(講談社文庫旧版p.270)
だった -
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江戸川乱歩『芋虫』のコミカライズ
活字を読まれた方、あらすじを知っている方はわかると思いますがストーリーの決め手となる三文字の言葉、またその光景が冒頭に描かれています。これは活字でなく、絵で魅せる漫画ならではの表現で個人的にとてもよかったです(活字はさらっとした印象でしたが、漫画は冒頭からそれを持ってくることによってより印象深くなりました)
登場人物の表情が痛いほど美しく、切ないです。(特に其ノ参からラストにかけて、夫である須永中尉の表情。活字と同様、ストーリーは妻である時子がメインで描かれていますがこちらも絵で表現されているぶん活字ではわからなかった須永中尉の心情、表情がわかりやすく描か -
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江戸川乱歩の奇妙な世界へようこそ
どの短編集も独創的で面白い
卑猥、情熱、嫉妬、奇異、純粋、狂気、愛情、刺激、遊戯、疑惑
と様々な人間の心のスパイスを織り交ぜて、本が出来上がっている
印象深かった順に短編集を並べると
O踊る一寸法師…サーカス?見世物小屋の異様な熱狂と恐怖感との緊張感がゾクリとする
O人でなしの恋…愛と嫉妬とそして、狂気なほどの一途さ
O覆面のぶどうかい…緊張とゾクゾク
O一人二役…覆面とトリックがかぶるけど、こちらは可愛らしい
O百面相役者…変装系だけど、面白い悪戯
接吻、モノグラム、木馬は廻るは、愛と嫉妬だけど、軽い嫉妬だからかわいらしい。 -
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ネタバレ男女の情念を描いた江戸川乱歩のベストセレクション第4弾。『陰獣』
陰獣/蟲の二編収録。
陰獣について
乱歩お馴染みの変装トリック使った推理小説。
後半に従って謎がどんどん複雑になっていき、最後に謎が解けた時の爽快感がスカッとして気持ちよかったと思いきや、結局最後は闇の中というやりきれない作品。
主人公で、探偵役の探偵小説家、寒川を見ていると乱歩のいう『探偵』というのがどんな人物をさすのがわかる気がしました。
乱歩の書いた作品のパロが沢山あって読んでいてクスリとしました。
蟲について
陰獣とは対照的な怪奇小説。流石は江戸川乱歩といえるほどの淫靡でグロテスクな内容ですが読めば読むほど物語の中に -
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江戸川乱歩ベストセレクション『屋根裏の散歩者』
屋根裏の散歩者/暗黒星 の2編収録
今回はあの有名な明智小五郎が登場します!
何をやってみても面白くない。どんなことに挑戦してもつまらない。
そんな主人公郷田三郎は明智小五郎との出会いから、犯罪趣味に興味を持ち、偶然見つけた屋根裏の入り口を利用して「屋根裏の散歩」を始める。
自分の家族や友達、よく見かけるけど名前の知らない人たち。そんな人たちが普段、誰もいない安心して無防備でいられる一人の時間にどんなことをしているか気になる時がある。
人の生活を覗けるなら覗いてみたい。
きっと乱歩もそんな考えからこの小説書いたのだと思う。
ただ、ふと天井を -
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ネタバレ暗黒星と地獄の道化師は特に良かった
2つともどんでん返し系かな
暗黒星では、一郎くんが個人的に好きだったりします
幽鬼の塔は最初の方は良かったものの、なんだか尻すぼみ感が…
あと、乱歩本人も書いてますが、乱歩の持ち味があまり出てないような感じもします
大金塊は小林くんの冒険みたいな感じで楽に楽しく読めました
ただ、最後の洞窟でのことは、孤島の鬼にだいぶかぶってるとこがあって、ネタ切れ感がありますね
でも、孤島の鬼の諸戸たちに比べてこっちはまだまだ子供なのにあの精神力の強さは凄いな…なんて思ってみたり
あと、明智が優しかったのが印象的です
少年探偵団シリーズは未読ですが、明智は子供には優し -
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乱歩作品は地の文が紙芝居みたいに大げさなところが時代がかっていてとても好きです。「ああこれは一体どういうことであろうか!さてまた来週。」みたいに解決が焦らしまくられるのがもどかしくもあり、楽しくもあり。創元推理文庫版は連載当時の挿絵がついてるのですが、この挿絵がまた素晴らしい。
犯人は早々に検討がついたけど、唇のない男の不気味さとか、倭文子がじわじわといたぶられる様とかが鬼気迫るものがありぞくぞく来ました。風船を使った空の逃走劇も、明智小五郎の「実はこれこれこういう仕掛けがあったのだよ、ははは!」の一言であっさり解決してしまう謎も、THE・古き良き時代の探偵小説!という感じで、楽しめました。や