[1]妙に不敵で飄々とした雰囲気になったおちかはん。これが本来の姿に近いのかもしれへんなあ。
[2]チームおちかの新メンバー、お勝、青野利一郎、行念坊、いたずら三人組と新太。メンバーの増加はおちかの世界の広がりでもあり、成長でもある。青野はおちかのお相手役になるかも。清太郎には気が進まんみたいやし。
[3]今回もふくよかな一冊でした。
【逃げ水】金井屋の番頭、房五郎と丁稚の染松(平太)。平太が近寄るとあらゆる水が逃げてしまう。「お旱さん」という神様が憑いていると言う。三島屋の人たちの優しさが身にしむ。
【藪から千本】隣家の住吉屋の娘、お梅が嫁に行ったがなんだかいろいろ腑に落ちない段取りだった。おかみのお路が後に黒白の間で語ったその理由はあまりにも複雑すぎ、どこか歪んでいるところがあり、おちかは不審に思う。呪いとはなんだ!?
【暗獣】出火した「紫陽花屋敷」には後に「くろすけ」と呼ばれた妖怪が住んでいた。この話を読んだ人はくろすけを愛さずにいられようか?
【吼える仏】すでに名前が出ていた偽坊主、行然坊が語る。若い頃、怪我をした彼を救ってくれた、さびれているが豊かでもある館形(たてなり)の里で体験した奇怪なできごと。
人は、心という器に様々な話を隠し持っている。(p.151)
それでもわたくしは、奇っ怪と面妖に、少しは耳の心得がございます。(p.384)…「耳の心得」とはええ言葉やなあ。
百物語を集めることは、怪異譚を集めることではなく、人の想いを集めることのようだ(p.496)
【青野利一郎/あおの・りいちろう】直太郎が前に通っていた手習い所、深考塾(じんこうじゅく)の若先生。若い武士で元々は那須請林藩(なすじょうりんはん)に仕えていたが主家の門馬家がお取り潰しになった。直太郎のことが気になりちょいちょい様子を見に来る。剣の腕は立つらしい。
【紫陽花屋敷】鯰髭様(仮称)の屋敷の隣の空き屋敷。そこから出火して直太郎の父の与平ほか二人が亡くなったらしい。空き家になって十五、六年は経っている。すでに廃屋と呼べる状態。紫陽花が異様な数咲く。
【彩】石倉屋の美しい娘。
【安藤坂の屋敷】謎の屋敷。
【伊一郎/いいちろう】伊兵衛とお民の長男。今は他所の店で修行中。おちかにとっては従兄。
【石倉屋】市太郎とお彩がいる
【市太郎】石倉屋の美しい息子。
【伊兵衛★】三島屋の主人。おちかの叔父。変わり百物語を集めたいと言い出した。当初はたぶん、おちかのリハビリが当初の目的だった。
【梅】三島屋の隣家、針問屋・住吉屋の娘。極端な箱入り娘だった。
【越後屋】堀江町の草履問屋。三島屋とタイアップしてデザイン鼻緒を売り出しヒットした。おたかや清太郎がいる。
【お旱さん】または白子様(しろこさま)。平太の出身地、小野木の土地神。旱神で水を吸収する。『狼と香辛料』のホロ様のような状況で、いつの場合でも恩知らずの人間に困惑させられるのが善意の神。まあ、人間の寿命は短いから代替わりを繰り返すことになりそのうちに忘れられていくのは仕方ないとも言える。
【覚念坊/かくねんぼう】館形(たてなり)というさびれた山村の合心寺という寺の和尚さん。人格者であり村のすべてを取り仕切っていた。
【加登新左衛門/かど・しんざえもん】深考塾(じんこうじゅく)の主人。妻は初音。元小普請組の武士だったが長男の長一郎に家督を譲り隠居した。自分では人間嫌いだと思っているが妻に言わせると《あなたは人間嫌いなのではなくて、ただ人と交わるのに書物の仲立ちが要るだけなのではございませんか》第二巻p.392。『眉毛録/びもうろく』という身辺雑記を書いている。
【勝★/かつ】住吉屋のお梅に付き添うようにしていた、疱瘡の痕がある女。疱瘡神の霊験があるそうだ。後に三島屋の女中となる。物腰などから武家の出かもしれないとおちかは類推している。
【勝三郎】亀戸の梅屋敷の案内をしてくれた。その日は「梅勝」と呼んでくれとのこと。船頭上がりの物慣れた老人。
【かね】鉄五郎の妻。
【変わり百物語★】伊兵衛の発案で集めることになり、おちかが話を聞くことになった。おちかのリハビリ目的なのかもしれない。
【喜一】おちかの兄。
【キャラクタ】なんであれすぐストーリーにいかないのが宮部みゆきさん流。とんな人であるかが描かれ、なぜそういう人であるかの事情が描かれ、ストーリーに直接かかわらない人物でもそれも因果の一環であるというように厚みを持たせていく。だから、初登場で結局ちょい役であっても読者はけっこうその人となりを知ったりしている。他の作家なら、イヤなヤツとか包容力のある人物だくらいの描写しかしない場合でも。
【行念坊/ぎょうねんぼう】偽坊主。青野の知人らしい。サイズが大きい。
【くろすけ】暗獣というべきもの。加登新左衛門と妻の初音は「くろすけ」と名づけた。「まっくろくろすけ」ですな。ただ、大きい。十歳の子供くらいのサイズでわらじみたいな形の闇。《人を恋いながら人のそばでは生きることのできぬあの奇矯な命》あんじゅうp.502
【黒白の間★/こくびゃくのま】伊兵衛が碁を打つための部屋。おちかが怪談を聞くための部屋となった。
【小普請組】無役の御家人、旗本の集団。幕政に参加できずなんもすることはないが「小普請金」という家禄をもらい、その中から役金を上納する形となっており基本飼い殺し。部分的なベーシック・インカムみたいな感じか? それだけでは生活が苦しいので役を得ようとするか、アルバイトをするかとなる。
【三人組】深考塾に通う悪ガキ。性格はよい。金太、捨松、良介。良介の名に一瞬動揺したおちかだった。意外に役に立つので少年探偵団となるか?
【静香/しずか】新太の通う手習い処「しずかどころ」の先生。老女。元武家。滅法厳しい。
【しま★】女中頭。おちかが女中働きをしているときは「おちかさん」と呼び、来客用の着物に着替えると「お嬢さん」と呼ぶ。
【深考塾/じんこうじゅく】直太郎が前に通っていた手習い所。主は加登新左衛門という武家。中風で右手が利かなくなったので青野利一郎を雇った。三人組のいたずら者、金太、捨松、良介がいる。
【新太/しんた】三島屋の丁稚。第二巻時点で十一歳。おしまはちょっと新太に過保護ぎみ。
【住吉屋】三島屋の隣の針問屋。主人は仙右衛門、おかみはお路(おみち)。娘はお梅。本家は他所にあり長男の多右衛門が継いでいる。仙右衛門は次男。本家のおかみは、お累。
【清太郎】草履問屋、越後屋の跡取り。おちかとの縁談話が出ているようだがおちかのほうはなんとなく乗り気でない感じ。
【清六】錠前職人。
【宗助】石倉屋の奉公人。
【たか】越後屋の縁者。安藤坂の屋敷について語った。
【館形/たてなり】若い頃、怪我をした行念坊が救ってもらった山間のさびれた村。ただ、生活は意外に豊か。元は「館無/たてなし」という地名でお館様もいなかった。合心寺の和尚、覚念坊がすべてを取り仕切っていた。
【民★】伊兵衛の妻。
【ちか★】主人公。丸千の娘だが事情があって三島屋にやってきた。他者と接したくないが身体を動かさないではいられないタチなのか女中と同じ仕事をしたがる。伊兵衛の変わり百物語収集で話を持ち込んできた人物から話を聞く役目をおおせつかった。
【ちかのお相手候補は?】まず、越後屋の清太郎(人柄も良さそうだし商売も順調そうなので特に問題はない)。次は浪人の青野利一郎(苦労しそう)。その次は第二巻では未登場の三島屋の長男と次男である伊一郎と富次郎(内紛につながるかも)。
【灯庵★/とうあん】三島屋出入りの口入屋。神田明神下に店を持つ坊主頭の脂ぎった蝦蟇のような老人。
【富次郎/とみじろう】伊兵衛とお民の次男。今は他所の店で修行中。おちかにとっては従兄。
【直太郎/なおたろう】新太の通う静香先生の手習い処の新入生。父親は武家屋敷の用人だったが最近の火事で亡くなった。
【那須請林藩/なすじょうりんはん】青野利一郎が仕えていた藩。主家門馬家の最後の当主は領民たちから悪鬼とか死神とか呼ばれ暴虐の限りを尽くしそのせいで滅びたそうだ。いずれ話がきっちり出てきそう?
【謎の男】最後にメフィストのようなキャラ(おちかのライバル?)。
【初音/はつね】加登新左衛門の妻。おおらかというか豪胆と言うか、青野に言わせると《いくつになっても小娘のような人》第二巻p.404
【春吉】おたかの弟。
【半吉/はんきち】「紅半纏の半吉」と呼ばれる四十がらみの岡っ引き。鼻の脇の大きな黒子がチャームポイント。
【房五郎】質屋、金井屋の番頭。
【平太】金井屋の丁稚。旱神が憑いているらしく行く先々で水が消失する。
【まだら蝦蟇】小石川界隈でブイブイいわせてる岡っ引きの脂じみたじいさん。嫌われてるようだ。
【松太郎★】丸千に引き取られおちかと兄妹のように育ったという微妙な位置づけ。良助を殺したのち自殺。
【松田屋藤兵衛】伊兵衛の碁のライバル。曼珠沙華が怖い。変わり百物語を集める契機となった人物。
【丸千/まるせん】おちかの実家。川崎宿の旅籠。
【三島屋★】袋物屋でそこそこ大きくなってきた。ふたつの名店、越川(えちかわ)、丸角(まるかく)に次ぐくらいの位置づけ。主人は伊兵衛。
【路/みち】住吉屋のおかみ。
【諸星主税/もろぼし・ちから】加登新左衛門の知人。二本差しの軍学者だが新左衛門は怪しいと思っている。軍記語りの能力は見事で、主な生業としている。とりわけ『太平記』を得意としている。新左衛門の隠居後の住居として紫陽花屋敷を紹介した。
【八百濃/やおのう】近所の八百屋。価格も品質も高く、大きな料理屋などを得意先にしている。三島屋出入りではない。主人は、直太郎の父の従弟で父親を亡くした直太郎を養子にした。主人とおかみは、商売人としてはともかく、人格的にはあまりデキてないようだ。
【八十助】三島屋の忠義一筋の番頭。あまり風格はない。
【用人】武家屋敷の用人は《禄として賜る米を金に換え、その家の経理(やりくり)万端を仕切る》p.358。その性能差によって暮らし向きがずいぶん違ってくるのだとか。直太郎の父、与平は能力が高かったらしい。
【良介★/よしすけ】おちかの婚約者だったが死亡。