三秋縋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「自分にとってはあまりに遠い存在、彼女に恋をする資格はない、これさえなければ心を射止めることができるかもしれないのに。」
現実においては「どうやっても変えられない事実」に絶望することはあると思います。
こと恋愛においては見た目が全てではないという風潮もある一方で、人の第一印象を決める「外見」が重要である事は否定できません。主人公は顔にある消えない大きな痣が原因で周りからは好奇の目や憐みの目に晒されており、それが足かせとなり好きな人への好意を伝えられずにいました。
実際に外見や身体的特徴が自分の望み通りになった場合に本当に相手は好きになるのか?というのは誰にも分からない話ですが、本作品ではその「もし」を命を賭けて証明しようとする主人公の葛藤が描かれている作品です
前編後編で非常に長い本ではありますが、それを加味しても非常に読みやすかったです。
途中で主要メンバーが消えていくことについて困惑していましたが、そちらも伏線として回収されるため読み終わった瞬間、心穏やかになりました。
変えたくても変えられない事実を抱えている人間にとっては良くも悪くも刺さる作品だと感じました -
Posted by ブクログ
三秋ワールドの素晴らしさを言葉で表すのは難しい。
強いていえば、「100パーの彼女」を描くのが抜群に上手く、またそれをどこまでも自覚的に書いているのが良い。 さらにそれが胸を打つ巧みな情景描写によって美しく飾られているのが素敵。
今回のヒロイン達にしても悶えてしまうほどのキラーフレーズの数々がたまらなかった。
孤独な生を送る2人が、寄生虫のはたらきによって運命的で作為的な恋に落ちる話。
思考も恋情も脳内物質の働きにすぎないのであれば、それが虫やウイルスによるものであろうと本質に変わりはないのだと思う。主観こそが世界を構成する全て。
終わり方は心残りがあるが、あえてあのエピローグを書くことにこだわりがあるのだと感じる。
作風からしてもひじりはきっといなくなってしまうのだろうが、どうにか2人街の隅で優しく生きていける可能性を願いたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあらすじを知らずに読んでみたら、お勧めする人が多いのも納得の、すごい作品だった。読み終えてもぐるぐると登場人物たちの未来や、自分だったらどうしたか、考えてしまった。まず設定に驚いた。でも監視社会がもっと進んだらこんな世界もありえないとは言えず恐ろしい。
知らない番号から主人公のもとに、過去のトラウマに関係のある女性が自殺したと告げる電話がかかってくるところからストーリーが進み始めるので、彼女に何があったのか、そもそも主人公とどんな関係にあったのか、どう展開していくのか予想がつかずどんどん読み進められる。だんだんとこの世界の仕組みが明らかになっていき、いくつも衝撃の事実が浮かびあがる。とにかく悲しい、苦しい話ではあるんだけど、だからこそ中学時代の尾上、澄香、鯨井の3人での楽しい時間が美しく輝いて見えてさらに苦しくなる。終盤、過去の出来事がすべて明らかになったあとの鯨井の最後の言葉はずっしりと心にのしかかってきた。現在が苦しいほどに、過去を思い返して「あの時ああしてなければ」とたくさんの仮定を考えてしまうよね。最後に少しの希望が見える終わり方で救われた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ胸が苦しくなる作品だった。
孤独な2人の愛の物語,
後半、灯花がいなくなってしまった所から、
千尋と灯花ふたりの視点での物語を読んで、胸がギューっと苦しくなった。
言葉にするのは難しいけれど、
孤独の苦しみと記憶の儚さ大切さ偉大さを感じた。
自分の身に記憶が無くなることなんてないし、
友人も彼氏も両親もいて人間関係も良い
些細な出来事を心に刻むことは特になく、
ただ、毎日を過ごしている。うーん、なんというか
この本を読んで日記をつけようと思った。
最後の灯花に記憶を話すシーンでは大号泣。
この作品の色々な方の感想を読んでいたら、
1つの映画を読み終わったようなと書いてあった
ほんとにその感じで、
読み終わった後にすごい一つの大きい作品を見たと感じた。
そして、夏の終わりに毎年読みたいと感じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ夏の終わりに読み返そうと決めていた一冊です。
〈百パーセントの相手と出会えていないなら、その相手をつくってしまえばいい〉
ということで、孤独な少女と孤独な少年の、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた、恋の話。
すべてを読み終えてから冒頭の引用に戻ると、すごくしっくりくる。若き天才義憶技工士の灯花による、どこまでも切実で独りよがりで愛おしい最初で最後のたくらみに胸が苦しくなった。
最後から二つの章がそれぞれ「君の話」「僕の話」と題されているのだけど、ここで物語がひっくりかえる感じは、悲しくもあり救いでもある。
真相を明かさずに閉じてしまったとしても、それはそれでメリーバッドエンドの余韻があって良かったとは思う。それでも、灯花の闘病記でもある「君の話」と、彼女の死後を描く「僕の話」まで書かれているのは、ひと夏のボーイミーツガールを完璧に閉じ込めるための結末として完璧だったように思う。
単行本で読んだ際のレビューを読み返してみたら、あまりに感動してなんにも言語化できない、と白旗をあげていて笑った。
それがほぼぴったり七年前。現実にはヒーローもヒロインもいるわけない、と、ほぼ諦めかけているし、そもそもそんな特別な相手とぶじに出会えたとて、私はまたどこかちがう場所にいる夢幻の恋人を求めだしてしまう気がする。
でも、ほんとうにそれが運命の相手だったら、そんなことないのかな。百パーセントの誰かだったら、こうした欠乏感、渇望感を満たしてくれるのかな。わからない。
わりと青春ゾンビ側の人間ではあるけれど、当時は実らなかったものを大人になってから収穫してしまった、ということがいくつかある。あれらはぜったいにもっと早くに起こる"べき"だった。
過去に戻ってやり直したい、というありふれた願望は、義憶を手に入れられる世界になればすべて解決すると思うし、むしろそれ以外にいくつでも新たに摂取できるなんて最高のディストピアだと思う。
「ここにいてもいい」「ここが自分の居場所だ」と思えない自己肯定感の低さおよび青春エピソードの少なさは、都合よく捏造された義憶に埋もれることでしか満たされないなんて、千尋くんの両親に共感してしまうね。