あらすじ
架空の青春の記憶を植えつけられた青年は、その夏、実在しないはずの幼馴染と出会う。これは、始まる前に終わっていた恋の物語。『三日間の幸福』や映画化作品『恋する寄生虫』の著者による最新作、待望の文庫化。電子書籍版の限定特典として、単行本版のさい書店で限定配布されたスピンオフ特別掌篇「聖地巡礼」を収録!
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Posted by ブクログ
実在しないはずの幼馴染という一文の不思議さで手に取りました。実際内容はサスペンス的であり、恋愛小説でもあり、SFでもあって、もし自分が主人公ならどうなっていたか?どうしていたか?。前半と後半の視点の変化にも惹きつけられ、切なく、とにかく自分には異彩を放つ作品でした。
Posted by ブクログ
胸が苦しくなる作品だった。
孤独な2人の愛の物語,
後半、灯花がいなくなってしまった所から、
千尋と灯花ふたりの視点での物語を読んで、胸がギューっと苦しくなった。
言葉にするのは難しいけれど、
孤独の苦しみと記憶の儚さ大切さ偉大さを感じた。
自分の身に記憶が無くなることなんてないし、
友人も彼氏も両親もいて人間関係も良い
些細な出来事を心に刻むことは特になく、
ただ、毎日を過ごしている。うーん、なんというか
この本を読んで日記をつけようと思った。
最後の灯花に記憶を話すシーンでは大号泣。
この作品の色々な方の感想を読んでいたら、
1つの映画を読み終わったようなと書いてあった
ほんとにその感じで、
読み終わった後にすごい一つの大きい作品を見たと感じた。
そして、夏の終わりに毎年読みたいと感じた。
Posted by ブクログ
夏の終わりに読み返そうと決めていた一冊です。
〈百パーセントの相手と出会えていないなら、その相手をつくってしまえばいい〉
ということで、孤独な少女と孤独な少年の、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた、恋の話。
すべてを読み終えてから冒頭の引用に戻ると、すごくしっくりくる。若き天才義憶技工士の灯花による、どこまでも切実で独りよがりで愛おしい最初で最後のたくらみに胸が苦しくなった。
最後から二つの章がそれぞれ「君の話」「僕の話」と題されているのだけど、ここで物語がひっくりかえる感じは、悲しくもあり救いでもある。
真相を明かさずに閉じてしまったとしても、それはそれでメリーバッドエンドの余韻があって良かったとは思う。それでも、灯花の闘病記でもある「君の話」と、彼女の死後を描く「僕の話」まで書かれているのは、ひと夏のボーイミーツガールを完璧に閉じ込めるための結末として完璧だったように思う。
単行本で読んだ際のレビューを読み返してみたら、あまりに感動してなんにも言語化できない、と白旗をあげていて笑った。
それがほぼぴったり七年前。現実にはヒーローもヒロインもいるわけない、と、ほぼ諦めかけているし、そもそもそんな特別な相手とぶじに出会えたとて、私はまたどこかちがう場所にいる夢幻の恋人を求めだしてしまう気がする。
でも、ほんとうにそれが運命の相手だったら、そんなことないのかな。百パーセントの誰かだったら、こうした欠乏感、渇望感を満たしてくれるのかな。わからない。
わりと青春ゾンビ側の人間ではあるけれど、当時は実らなかったものを大人になってから収穫してしまった、ということがいくつかある。あれらはぜったいにもっと早くに起こる"べき"だった。
過去に戻ってやり直したい、というありふれた願望は、義憶を手に入れられる世界になればすべて解決すると思うし、むしろそれ以外にいくつでも新たに摂取できるなんて最高のディストピアだと思う。
「ここにいてもいい」「ここが自分の居場所だ」と思えない自己肯定感の低さおよび青春エピソードの少なさは、都合よく捏造された義憶に埋もれることでしか満たされないなんて、千尋くんの両親に共感してしまうね。
Posted by ブクログ
義憶を買える世界。
与えられた義憶は幸せかもしれない。不幸な過去を変えられるかもしれない。幸せとは、不幸とは、そして記憶や運命について。
とても面白い作品でした。
Posted by ブクログ
灯花の人生と千尋人生はものすごく孤独の匂いがして少し胸が締め付けられた
でも孤独だったからこそ2人は出会い恋をしたのではないかなもしどちらが幸せだったら出会わなかったかもしれない
そう思うと運命ってあるんだなと思わせてくれた
Posted by ブクログ
記憶というのは曖昧で、自浄作用で人知れず美化されがちである。私自身、今までの人生は何だかんだ良いものだったんじゃないかと思い込んでしまっている。
そして本物語の義憶も似たようなもので、都合の良い記憶を勝手に当て嵌め、何だかんだ幸せだったという思い出に作り替える自己満足である。しかし、当然のことながら、この義憶には自己満足意外にも利用法があった。果たしてあなたの記憶はあなたが自分で都合良く整理したものか?はたまた、他人に操作されたものか?
そしてその真実を知ったとき、その記憶を信じるかどうか。どこまでも曖昧な記憶に真実と妄想を隔てるものはなく、最後は「どちらが好みか」で選ぶしかない。
ただ一番大事なことは、その選択の先にあるものであり、必ずしも選択をする必要はないのである。
曖昧な事柄に触れているからこそ本書は難解で面白かった。
Posted by ブクログ
偽りであっても本物であってもここまで想える相手がいるのは幸せなんだと思う。
二人とも救われたとても優しい嘘に心温かくさせられました。
僕はハッピーエンドだとおもっているけど三秋さんの作品は辛いのに最後には登場人物がとても幸せそうでいつも気持ちがぐちゃぐちゃにされる。「君の話」も心に刻まれた大切な作品になりました!
Posted by ブクログ
読み進める手が止まらなくて、ワクワクしてページをめくった。
B面からは最後までずっと切なくて、読後もしばらくは忘れられない切なさだった。心が温かくなるけど、痛さもあった。
儚く美しい呪い
私は読書家ではないですが、ページをめくる手が止まらず、1日で読み切ってしまいました。それほどに人生観を変えた作品です。
読み終わった後、数日間余韻が残り続け、胸が苦しみました。私はこの本を捨てることもできないまま、本棚で表紙を見る度に苦しみ続けるのでしょう。
「私ね、こういうのって、一種の呪いだと思うの。」
Posted by ブクログ
読み進め手が止まらなかった。
登場人物が少ないからこそ世界に千尋くんと灯花しか居ない感覚で読むことができる。
三秋縋の書く死は透き通っているように感じる。
読み終わった時、心が空っぽになって澄んだ気持ちになった。
Posted by ブクログ
一本の映画を観終え、観客席で吐息をもらして立ち上がるのが緩慢になるような読後感でした。
エターナルサンシャインのような雰囲気を感じて余計にそう思えてしまったのかもしれません。
今作も他の三秋さんの作品同様に落とし穴の中で安寧を見出してしまう退廃的な人間に刺さる内容でした。
最近物語ばかり読んでる自分に対して「こんなことしてて意味あるのか?」と疑問を感じていました。そんな疑問のなか本作を読んで自分の人生で欠落しているものを補うために読んでいることに気付き、さらに物語の終わりに疑問へのひとつの解答を得たように感じました。本当に三秋さんの作品は自分にとって劇薬であり、定期的に接種しないと現実をもがけないんですよね。それが毒であるとはわかってるんですけど。
Posted by ブクログ
紹介文にある通り、出会う前から続いていて始まる前に終わっていた恋の物語でコンセプトがおもしろいし、記憶の消去、補充に関する話でそう遠くない将来存在し得えそうで自分だったらこの薬を飲んであの忌々しい記憶を消してしまうのかなと想像しながら読んだ。
Posted by ブクログ
夏凪灯花とは一体、何者なのか。違和感を抱えて読み進めるうちに、次第に不器用な二人のやり取りから目が離せなくなった。
どこまでも切なく、穏やかな結末。
心に優しく灯るような、温かく愛おしい読後感だった。
Posted by ブクログ
ナノマシンにより人の記憶を自由に変える事ができるようになった近未来。
人は現実に起きた嫌な記憶を消去したり、こうであった欲しかったという疑似的な記憶を脳に取り入れたりしている。
本書の主人公も家庭でも学校にも居場所や理解者のいない環境で育ち、現実と自分への嫌悪感から自暴自棄となり、過去の記憶を消去しようと決意する。
ナノマシンを飲んで記憶が消したはずが、業者の手違いで疑似の記憶を植え付けてしまった。
それはある少女との物語だった。
そしてそれは「過去」にのみ存在するはずだったが。。
前半はよくありがちな御都合主義で、こういう話かー。
くらいでふーんと読んでいたが、
中盤から後半の展開に引き込まれていった。
ここまで緻密に世界観を創り上げるのも凄いし
心の叫びのように文を積み上げていくのも凄い。
後半は読み始めると止められなくなる。
Posted by ブクログ
義億がもし世の中にあるのなら、というかAIで出てきそうな気がするが、それで救われる人も居ると同時に寂しいという気もするし、不思議な感情。
騙されたほうがよいことも多いし、自分にはわからなくなって来たので⭐︎4つ。
難しかったのかな。
Posted by ブクログ
作られた記憶である義憶を買うという世界の話。
ある日、義憶により入り込んできた架空の少女が目の前に現れる。
お互いが、お互いを騙し合う心寂しい二人に、本物の出会いと恋が訪れる綺麗なストーリー。悪くない。
Posted by ブクログ
偽の記憶…それはこうやって物語を読んでいることに近いのかも。想像する。妄想する。
この二人はそれを現実にしていったのね~
寂しい二人が築き上げた素晴らしい虚構
せつないなぁ
7歳の時に本当に出会えてたらよかったね
Posted by ブクログ
偽りの記憶、義憶。そんなものがあるSF恋愛小説。そんな植え付けられた記憶によって巡り合う二人なんだからドラマチックなわけが無いと、思っていたんだが不思議と惹きつけられた。
運命の人を作為的に用意する、という状況から愛情が生まれるのか、そんなわけが無いと思う自分も否定された感覚に陥る。あり得た。
このまま死にたくない。
誰かに必要とされたいという思いは、やはり死ぬ間際に強くなるのだろう。それが全くの関わりのない赤の他人であっても。
もしもでも義憶を作って欲しいと思う自分はやはり寂しいのかも、もしくは現実逃避。でもそんな青い気持ちをも呼び起こしてくれた。
Posted by ブクログ
途中までは近い将来こういう世の中になるんだろうか?とかこんな仕事が出来るのか?とかワクワクと想像したり、その一方早川書房だし薄ら寒いようなちょっと怖い話なのか?と思って読み進めていったら、孤独を抱えた似た者同士の男女のくすぐったい恋物語でした。
理想の青春、家族を持ち合わせてる人はどれくらいいるんだろう?そこを埋めようと悪あがきしたり、妄想するのも自分らしさと思っていたけど、それさえも他人に委ねてお金で買える世の中になったら個性ってなんだろうなって考えてしまいました。
Posted by ブクログ
・三秋縋さんらしい悲しく優しい話だった。
・他の作品同様、物語の前半で恋愛が進みつつ、いくつか謎が深まってゆき、後半でそれの解明とともに、恋愛心情が掘り下げられていく構成で、とても面白い。
・今まで読んだ三秋さんの作品と異なったのは、他は"悲しいハッピーエンド"という印象だったが、この作品は"幸せなバットエンド"という印象を受けた。
Posted by ブクログ
ちょっと違うかも知れませんが、自分の青春時代に流行ったセカイ系作品を読み終わった後と同じ、なんとも言えない読後感を味わえました。主人公とヒロインにとっては世界以上に大切な出来事があったのに、世界は何も知らないし変わらないというこのモヤモヤ感が心地良いんですよね。SFガジェットの活かし方も素晴らしいですし、この作品大好きです。
キャラもセリフも、設定も、ストーリーもめちゃくちゃ刺さったんですが、特に好きなところは、死の恐怖に直面した際に灯花が放った「私の死後、その死を嘆き悲しみ、一生消えない傷として心に刻みつけて欲しかった」という嘆き。その後、彼女のしたことを含めてあまりにも自己中心的な想いだと思うんですが、その気持ちも痛いほどわかってしまうこの独白に非常に胸を打たれ、一番惹き込まれたかもしれません。こういうキャラクターにとても弱いんですよね。
Posted by ブクログ
三秋さんの本は(悪く言えば)どれも同じように、社会不適合な主人公とヒロインをめぐるお話で、本書も例に漏れず切なく悲しい(そしてより暗い)雰囲気をまとった物語である。ただ、何故かそこに引き込まれるのも事実で、本書のキーワードでもある「優しい嘘」が三秋さんの書く物語に共通する思想・魅力として読者の胸に訴えるのかもしれない。「義憶」という発想も面白い。(現実になったら中毒とか負の面が問題になりそうだが…)
Posted by ブクログ
青春もので現実味がある作品かな、と思い手にとったら青春SFで少しびっくりしたが、今までにない恋愛の様子がえがかれていて、綺麗でうっとりしました(*´ `)
今の現代では起こらないであろう状況なのに、登場人物たちの心情や悩みは今の私たちでも共感できるところが多いと思いました
Posted by ブクログ
記憶改変技術によって作られた架空の記憶。その中に登場する幼馴染が目の前に現れた。幼馴染との記憶は本物か疑いながらも主人公は恋に落ちていく。後半では女の子目線での恋が描かれる。
「一度も会ったことのない幼馴染がいる。」そんな一文から始まる存在しない幼馴染の話。記憶を弄る薬を服用したから何が真実で何が嘘かは分からない。複雑で切ない恋。
Posted by ブクログ
天谷千尋
十五歳になったとき、両親は離婚した。グリーングリーンを服用し、架空の青春時代の記憶が刻まれた。
夏凪灯花
千尋の記憶の中にのみ存在する。架空の人物。
千尋の父
妻の名前を呼び間違える。
千尋の母
千尋の名前を呼び間違える。
江森
千尋にとって最初の友人。空虚さとは無縁の「持てる者」。
桐本希美
千尋の中学時代の同級生。
松梛灯花
義憶技工士。新型アルツハイマー病。
Posted by ブクログ
「始まる前から終わっていて、終わる前から始まっていた」とはどういうことだろうと思いながら読んでいたが、読み進めているうちにその意味がわかっていった。
僕側の話までは感情移入しながら読めたのだが、君側の話になってからSF感が無理やりすぎてすこし引いて読んでしまった。
だがこの作品で綴られていたように、人は皆運命の人を探していて、その人に会えないで生涯を終わる人もいるが、会えた時に見逃さないようにすることが大切だということには納得できた。
僕的には自分の恋人や大切な人を運命の人だと思えるくらい好きになることができれば、外からどう思われてもその人が運命の人だと思う。