三秋縋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
表紙の絵が全てを物語っているような気がします。
雪降る町の中で微笑む少女。後ろには踏切が見えています。あの時の踏切か‥‥。
一冊まるまる、こんな雪の降る灰色の空のような、どんよりとした雰囲気です。文章一つ一つが、開けっぴろげではなく抑えられていて、主人公達が中学生とは思えない重さ、灰色感を演出しているのです。
中学生の頃の親友と好きな人。どちらも唯一無二の存在で、出逢えたことが奇跡で、いなくなるなんてことは想像することさえ辛い。
自分にとってのそんな存在が、偽りのものだったとしたら‥‥中学生じゃなくたって、大人だって気が狂ってしまうほど苦しい。
なんて残酷な設定なんだ、と思いつつ読んでいたのですが、終盤になるともっと切ない展開に‥‥令和版『こころ』(夏目漱石)に私には思えました。
恋愛、友情、そして信じること、いつの時代も、どの年代においても普遍的なテーマなのだろうな、と思います。
-
Posted by ブクログ
ネタバレstarting over.
やり直しという意味。
書店で美麗な表紙から思わずまさにジャケ買い。
これが当たりで、一気に読み終えました。
よくある2回目の人生やりなおしものなんですが、1回目の人生が最高であったことからそれを繰り返そうとしたら失敗して、最低な人生を送ることになってしまうという話し。
1回目に付き合えた素敵な彼女ツグミとの交際にも失敗し、通っている学校でも引きこもってしまう。また、同様に順調な生活を送っていた妹も暗いインキャになってしまう。
主人公の代わりに学校で華々しい地位を手に入れたのは、トキワだった。彼がいた人気者のポジションにトキワが収まり、ツグミとも付き合っていく。主人公はトキワの殺害計画を立て、彼を尾行することでチャンスを伺っていく。その生活の中で暗い生活を送っている同級生ヒイラギに出会う。主人公がツグミを追うように、彼女はトキワを好きになっていた。
主人公はある時気づく。
彼女もまた2回目の人生を送っている存在であると。また、そもそも1回目の人生で主人公がつきあっていたのは、ツグミではなく、ヒイラギであったと。主人公がそれを忘れ交際を申し込む相手をまちがえたために、全てが変わってしまった。
1周目の人生において、主役的なポジションを務めていた主人公とヒイラギは、それを務められなった代わりに、トキワとツグミのペアがそれをこなすようになっていた。
クリスマスの夜になぜか同じサンタのバイトを選んだ主人公とヒイラギ。そのバイトの最中、主人公は思いだす。クリスマスの夜のドライブで主人公とヒイラギはstrating overの曲を聴きながらドライブをしていた。その最中事故で死んでしまう。このままではトキワとツグミが死んでしまう、と。
ヒイラギの手を取り、バイトを脱走し、雪の中に2人を助けにいく主人公。
「自分が自分らしくないことをするってのはさ、多分人生に起こることの中で1番面白いんだよ。人が自分自身からも自由になれるんだってことを証明することで、何かに対して一矢報いたような気になれて、気持ちがよかったね。」
2人を救った主人公とヒイラギは抱き合う。
もう一度ここからやり直そうと…
ブルーライト文芸にあるようなキラキラした話ではないです。人の妬みや影のある人生の辛さ、それとひたすら向き合ってきた2人が、人生を肯定するまでの過程を描く青春小説ではないかと。
ジョンレノンの『starting over』
I know time flies so quickly
月日は瞬く間に過ぎていく
But when I see you darling
だけど愛しい君を見ていると
It's like we both are falling in love again
僕らはまた恋に落ちていくようで
It'll be just like starting over - starting over
まるで最初からやり直すみたいだ
幸せって。
いま手に持っているものをなんども繰り返して味わえるか、確認できるかってことなんじゃないかなって。 -
無料版購入済み
ありです
いい。有料版購入検討します。
小説版は10数年前に読み、おもしろいと感じ、そこから三秋縋さんの作品をハマりました。
なので、「幸福な三日間」などに出会わせてくれた大切な作品です。
「原作は好きでしたが、コミカライズ版はどうなんだろう」と思いつつ読みましたが、原作の雰囲気のまま、丁寧に描かれていたと思います。とてもいい。 -
Posted by ブクログ
とても面白かったです!
入間人間さんと時雨沢恵一さんを目当てに読み始めましたが、他の筆者皆さんも大変におもしろい話を書いてくださいました。
※私は、安達としまむら、アリソンシリーズ のファンです。笑
どのお話も面白かったので、いろいろ語りたいことだらけですが、ネタバレ回避のため、抽象的にまとめさせていただきます。
皆さんは本作を読んで何を感じるでしょうか。
私は、「可能性」「未来」「ナカイマ」「命」
だと思いました。これまで長く、そうするべきだと云われてきたことや、伝統には、もちろん尊ぶだけの、それが続いてきたなりの理由はあります。一方、そうでない物は許されないと云うはずないのですから、可能性については、誰にだって分からない以上、やってみたいことはやってみればいいのです。
その「可能性」を届けるために、それぞれの作者さんが、それぞれの表現で、語り書けてくれているように思いました。
気になる作家さん、タイトルなどございましたら、ぜひ、手に取ってみて下さいませ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこんなユーザーネームを使っていると時々、「虫の息さんは虫が好きなんですか?」と聞かれることがあります。
実はそんなことは1ミリもなく、私は大の虫嫌いなのですが……そんな自分が読んでいて"こんな美しくて残酷な虫なら悪くないなあ"と思ってしまった本作品。
寄生虫に関する情報が面白すぎるのも凄いのですが、高坂さんと佐薙ちゃんのあやふやだけど確かな愛がたまらなく美しかったです。
自分の脳にももし寄生虫がいたら、考えるだけでゾッとしてしまいます。
でも作中にも描写がありましたが自分が受けた不条理や悲しみの根本的理由が自身の問題ではなく虫のせいだと分かったときの不思議な安堵感は自分にも似たような経験があり、リアリティある心理描写が更に不気味さを増長していました。
読み応え満載の面白いラブストーリーでした! -
Posted by ブクログ
なるほどね〜
なるほどそうか〜
なるほど〜
なるほどそういうことか〜
なるほどそうくるか〜
いや何回なるほど言うねん!( ゚д゚ )クワッ!!
ドナルホド・ダックか!
三秋縋さんです
ちょっと不思議な設定の恋愛小説の人なんですな
今回は寄生虫です
新種の寄生虫が脳に寄生すると宿主同士が恋に落ちるっていうトンデモ設定の中で儚い恋の物語が展開されます。゚(゚´Д`゚)゚。
いや〜ほんとよく考えられてるわ〜
凄いわ〜
そして実際に宿主の性格を変えてしまう(と考えられている)寄生虫が実在するのよ!
知ってた?
トキソプラズマっていう主に猫に寄生する原虫らしいんだけどね
凄いのよ
まぁ、まずね
こいつは猫が終宿主なんで猫を目指すんだけど、こいつに寄生されたネズミは猫を怖がらなくなるんだって、トキソプラズマがネズミの脳を操って猫に食べられやすくしてるんではないかってことなの
怖っ!
で、猫から人にも感染するんだけど、人に寄生すると「男性は教育水準が落ち、注意力に欠け、規則を破り、危険を冒し、より個人主義に、反社会的に、懐疑的に、嫉妬深く、気難しく、そして女性にモテなくなるという悲惨な変化であり、女性は外交的、親しみやすく、浮気っぽく、セクシーになるそうです。(ウェブからコピペ)」
つまり一Qさんがモテないのはトキソプラズマのせいだったんよ!
怖っ! -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルからの印象とは異なり、カバーからも予想できるように、冬の物語だ。物語の舞台は明示されていないが、たぶん東北地方のある冬の長い、桜の季節はまだ遠い先のことである場所だと思う。
「さくら」はこの小説では、植物の「桜」のほか、そのもう一つの「サクラ」の意味も重要なポイントとなっている。もし、「サクラ」が人間関係のなかで当然のように存在するものになったら、私たちの日常生活はどのような影響を与えられるのだろうか。
物語の設定は少しSF小説的な要素がある。けれども焦点を当てられるのはその技術的なものではなく、注目されるのは、人々はその技術についてどう反応するのか、そしてその技術がもたらした様々な「制度」が、人々の人生にどのように介入しているのか、ということだ。
人間の心は複雑だ。その機微を解することが難しい。それを解決するために設けられた「制度」は、サポートでありながら余計な世話とも言え、勲章でありながら消耗ともなる。ある人が助かったと同時に、ある人が苦しみのどん底に追い込まれたこともある。小説全編を貫いた澄香の謎はその制度と深く関わっている。「制度」は主人公たちに多大な影響をもたらした。
とはいうものの、取り返しのつかない事態に発展させた最も肝要なものは、私たちがよく知っている、極めて典型的な感情。これはとても印象深い。
でも、だからといってがっかりしたということもなく、真相をわかった瞬間、言いようのない悲しさが波のように覆ってきたのだ。
人の心の優しさと残酷さを繊細に描き出す、切ない、哀愁の漂う物語。読み終わった後はただ祈る。これから「ひとつひとつの記憶に貼りつけてあった〈偽物〉の印を取り外」すことができるように (299)。いつかすべてを振り返るそのときは、もう制度の呪いから解放されるように。そして、いつか桜が再び咲き誇る日がくるように。 -
Posted by ブクログ
記憶というのは曖昧で、自浄作用で人知れず美化されがちである。私自身、今までの人生は何だかんだ良いものだったんじゃないかと思い込んでしまっている。
そして本物語の義憶も似たようなもので、都合の良い記憶を勝手に当て嵌め、何だかんだ幸せだったという思い出に作り替える自己満足である。しかし、当然のことながら、この義憶には自己満足意外にも利用法があった。果たしてあなたの記憶はあなたが自分で都合良く整理したものか?はたまた、他人に操作されたものか?
そしてその真実を知ったとき、その記憶を信じるかどうか。どこまでも曖昧な記憶に真実と妄想を隔てるものはなく、最後は「どちらが好みか」で選ぶしかない。
ただ一番大事なことは、その選択の先にあるものであり、必ずしも選択をする必要はないのである。
曖昧な事柄に触れているからこそ本書は難解で面白かった。