ピエール・ルメートルのレビュー一覧
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あのときこうしてたら
ああしてたらと、
正しい選択と間違った
選択があったかのよう
に、
私たちはあとから思い
返しますが、
どのように振舞おうが
けっきょく行き着く先
に大差はないのではと。
フランスの歴史が転換
する激動の時期に、
戦争という極限の状況
下で、
すべては必然であるか
のように進行する物語。
千年の時を僅か一瞬に
感じるような、
大きな大きな存在から
眺めれば、
大河に浮かぶ木の葉の
ように、
私たちは運命という名
の大きな流れに逆らえ
ない存在。
極端な喩えをするなら、
静止画とさして変わら
ない存在ではないかと。
三部に及ぶ長大な物語
の最初と最 -
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ネタバレカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ。
三部作で終わりかと思っていたこのシリーズ2作目と3作目の間の時系列でもう1作品発売されていたことを知り直ぐにゲット。
作者も述べているが、三部作に比べ短い小説なので三半冊だそう。
面白くて半日とかからず読み終えてしまった。
ピエール・ルメートルの作品の良さは読みやすさと描写の細さ。
翻訳者が上手いのかもしれないが難しい言葉がなくすらすらと内容が頭に入ってくる。
また、カミーユのコミュニケーションを取る相手に対しての洞察力についての表現がかなり細かく面白い。ルイが右手を使うか左手を使うかの流れが以前からとても好き。
今回は残酷描写はないので苦手な人で -
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ネタバレ三部作の三作目。
一作目は脳がざわざわし、二作目は爽快感、三作目はなんとも言えぬ複雑な感情を抱いた。
翻訳者の匙加減もあると思うが、海外の作品としてはかなり読みやすい。作者が心情や状態について本当に小説らしく紡いでるのもあると思う。
冒頭でアルマンの葬儀で死んだことに衝撃だったが、今作の犯人はマレヴァルだったことだ。
登場人物一覧にいるマレヴァルに疑問は感じたがこんなにしっかり絡んでいたとは。
タイトル通り傷だらけのカミーユで終わってしまった。
三部作全てどんでん返し的な要素満載で楽しめたので今作で簡潔なのが寂しい。
個人的にはシリーズ物としてカミーユ、ルイ、ル・グエンの物語をもっと -
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ヴェルーヴェン警部じゃないノンシリーズ物。章が変わるとともに様相がガラッと変わる面白さは、この作品でも顕在。
ヒロインが容赦ない試練に次々と追い込まれる展開は、『その女アレックス』を思い出す。が、こちらの方が先(2作目)ということで、この経験を踏んでアレックスが書かれたんだなと思うと興味深い。つまり、アレックスほどには驚愕度を上回らない。でも発想には恐ろしいものがあり、よくこんなこと思いつくよなぁと脱帽した。
ヒロインのソフィーは冒頭から追い込まれている。一年前に夫が亡くなったりと不幸が続いただけでなく、精神が不安定で、時折昏睡してしまい、記憶がない時間があったりする。物忘れ、しまい忘れも激 -
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ピエール・ルメートルの壮大でかつ人間味あふれた歴史群像劇。
20世紀の二つの戦争に翻弄されたフランスの人たちの三部作、完結編。
上巻からひきつづき「ルイーズの物語」「ガブリエルとラウールの物語」「デジレ・ミゴーの物語」が進む中、新たに「フェルナンの物語」が加わって、下巻は4本同時に進行していく。
が、次第にそれらが交わり始めると、妙な期待感に浸っていき、読むのが楽しくなる。
いったいどこですべてが交わるのか……ああ、そうなんです。
そのためにこの人はいたのですね。
とても効果的です。
詐欺師と神様は、“カミヒトエ”……なんちゃって。
それと映画的でもあるけど、完結編もエピローグで登場人物 -
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ネタバレ執念の物語です。あの「悲しみのイレーヌ」のルメートルの作品。
犯人の執拗さ、丁寧さに脱帽です。
以下、ネタバレありで。
自身の記憶の曖昧さと、それに拍車をかける不可解な出来事の数々。
そして行く先々で、関わる人々が殺されて殺人の容疑をかけられてしまう。
責任能力のない殺人鬼なのか、自分は??という疑惑にますます精神をやられる
ヒロインのソフィー。ところが、実は………
第2章から怒涛の展開でした。え、ソフィー関係ないよね??ってな動機で
どこまでもどこまでもソフィーを損なう「花婿」。
面白かったですけど、いや、コレ普通気づくだろって。
そもそもソフィーも、なんか高等教育を受けた才媛のわりにワ -
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今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味