ピエール・ルメートルのレビュー一覧
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63歳の現役凄腕の殺し屋マティルドに少しずつ認知症の兆しが見え始める。
覚えていないことが増え、殺しも必要以上に過激になっていく。
彼女に殺しを依頼しているアンリは危機感を抱くのだが、マティルドはかつて抱いていたアンリへの恋心が甦り、暴走は加速してゆく。
最初から最後までマティルドから目が離せない。
残酷すぎる殺しも躊躇わずに成し遂げるのは、やはり凄腕だからなのか…
冷酷さと殺しの技術を兼ね備えた彼女に誰も敵わないのか…
刑事すらものともせず、この暴走を止められる者はいるのか…と。
いた…死を恐れていない人間が、死の意味がわからない人間がいた。
ラストの惨劇は衝撃的であり喜劇ですらあった。
言葉を失くすとは…このことかと実感。
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Posted by ブクログ
主人公のマティルドは63歳の未亡人で田舎で犬と悠々自適な生活を送っている。
職業は殺し屋。
若い頃はレジスタンスの美貌の闘士で、当時の司令官アンリから指示を受ける形で殺しを請け負っている。
そんな彼女に認知症の症状が現れ、殺し方が不必要に残虐になったり、ターゲットを勘違いしたり、組織との連絡方法や銃の処理を忘れたりと、任務に支障が出始めた。
マティルドを昔から密かに慕っていたアンリはそんな彼女の異常に気づき手を打とうとする…
歳をとってボケ始めた暗殺者のおばあちゃんというとコミカルな雰囲気だけど、思い込みが激しく感情も制御できず、生来の残虐さをあらわに暴走する凄腕の殺し屋ってところが怖すぎる。
マティルドが考えていた事、やろうとしていた事を次のページではころっと忘れてしまって、結果最悪の事態が繰り返されていく様は読んでいてハラハラするのに面白くて止められない。
しかもボケてしまっていても殺しに関しての技術や集中力が衰えていないのが最悪に拍車をかけてしまっている。
ラストは皮肉だったなぁ… -
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ネタバレ三部作の最初の物語ですって。
舞台は第一次大戦下のヨーロッパ。もう終戦間近で、戦況も大勢は決していて、とっとと終わりたいってな状況。それなのに、最後に一発、ダメ元で手柄を立てようとするプラデル中尉の命令で、絶望的な攻撃に駆り出されてしまうアルベールとエドゥアール。からくも生還したものの、エドゥアールはアルベールを助けるために、顔を激しく負傷してしまう。終戦後パリに戻っても、障害者となったエドゥアールを抱えて、アルベールの生活は貧困を極めます。なぜか、エドゥアールが傷痍軍人向けの年金を受けとろうとしないし、大富豪の子息なのに身分を隠そうとするからです。
どうも、エドゥアールは親と確執があるっぽいのですが、だからってアルベールに苦労をかけてよいものなのか、この辺がフランスの個人主義なのかもしれませんが、命の恩人ってことで、エドゥアールを見捨てられないアルベールが不憫でした。
上巻はこんなかんじで、2人の辛酸を極める貧乏暮らしと悪辣なプラデル中尉のサクセスストーリーですすみます。なんと、プラデルはその美貌を活かし、エドゥアールの姉を篭絡し、大富豪の娘婿におさまって、順風満帆。戦没者の墓地造営で大儲けしようとたくらむのですが、果たして。
プラデルがいいかんじに悪党です。無条件に呪えます。 -
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六十三歳にして現役の凄腕殺し屋マティルド。しかし老いは容赦なく忍び寄り、彼女は自覚しないうちに認知症の症状に侵されていた。少しずついろんなことを忘れ、忘れたことも忘れ、自分の異変に気付かないままに残酷な殺しをやり遂げるマティルド。彼女の行動に危惧を覚えた司令官のアンリは、やがて苦渋の決断をすることになる。スリリングでハードボイルド、さらにブラックなユーモアも魅力的な、これはまさに残酷な喜劇といいえて妙です。
部屋が片付かない。凶器の始末を忘れる。標的を間違える(この間違え方が酷い!)。いろいろやらかしながらも、殺しの腕自体はまったく鈍っていないがゆえに、マティルドの危険さがとんでもないです。彼女の暴走は傍目には楽しくも思えるのだけれど、まさかあの人もこの人も巻き込まれてしまうとは。そのあたりの物語は普通なら悲劇といえるのかもしれないけど、あまりに淡々として、読み口はまったくもって喜劇なんだよなあ。
マティルドとアンリの、お互いに愛情を持ちながらも決して結ばれることのない関係も絶妙。さて、彼らの対決はいったいどうなってしまうのか。どうなっても行きつく先は悲劇……になりそうなのですが。いやいや、このラストはやはり喜劇としか思えませんでした。そして認知症に陥ってしまった人の切なさが、少し尾を引く感じもします。 -
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★5 認知症の症状が出始めた凄腕の女殺し屋… 純真無垢な彼女の恐ろしい犯罪小説 #邪悪なる大蛇
■あらすじ
63歳の女殺し屋であるマティルドは、かつては冷酷非道の凄腕であったが認知症の症状が出始めていた。昔ながらの上司アンリから指示を受けながら仕事を続けるも、徐々に捜査の手が及び始める。アンリはマティルドを心配するが、肝心の本人はアンリへかつて抱いていた恋心が蘇ってしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
人間だれしも元気で健康的な生活を続けたと思ってる。しかしながら時間というのは残酷で平等、着実に老化や寿命はやってくるんです。社会の裏側で生きていた殺し屋が、認知症を患うとどうなってしまうのでしょうか。
恐ろしくもユーモラスに、全ての読み手に救われない感情を突きつけてくるという… 残虐性の中にも悲しみが果てしなく押し寄せてくる犯罪小説です。いやー凄かった。
本作一番の読みどころは、主人公の女殺し屋マティルドの魅力。そう、表紙でこちらを睨んでいる彼女です。銃をむけないでよ、こわっ
でも彼女は素直にまっすぐな性格で、ワンちゃんを愛する心根の優しいマダムなんです。(絶対に近寄りたくないけど)
しかしそんな彼女は、認知症で既に短期記憶が曖昧になり始めている。殺し屋の仕事なんて、誰がターゲットなのか、凶器は処分したのか、仲間との連絡方法はどうするのかなどなど、理解していないと、殺しの仕事なんてこなせないよね…
何が怖いって、本人は何も問題ないと思っており、女学生のように天真爛漫にロマンスすら期待している。それでも殺気の嗅覚や殺戮のテクニックは超一流で、身体が覚えてるんです。こ、こわい… 物語だから面白く読めるけど、これ現実だったらマジでイヤなんだけど。確かに殺し屋に定年制度なんてないよなぁ。
そんな彼女が恋心を抱くのが、若かりし頃からの仕事仲間のアンリ。彼女に仕事を依頼する立場なんですが管理する側としては心配なはず。それでも彼は紳士的で優しいんすよ~、これがモテる中年ですね。メモしなきゃ ...〆(。_。*)メモメモ
彼女とこのナイスミドルがどう絡んでいくのか、本書一番の痺れポイントですよ!
さて物語が進むにしたがって、それはもうハチャメチャになってきて、どんどん読んじゃうんです。怖くて悲しい、でもこんなにも面白いエンタメがあるのかってくらい。さすがはルメートル先生、読者を楽しませるプロですね。終盤の緊迫感と怒涛の展開もお見事で、読み応えも抜群でした。
■ぜっさん推しポイント
誰しも年齢を重ねていくと、次第に衰えて弱っていく。この頃私も目が見えづらくなり、メガネの度数を変えました。いつまで読書を楽しめるか心配です。みなさん身体は大事にしましょうね。
三つ子の魂百までと言いますが、人間の本質ってのは変わらないし、変えられない。自分の知識や経験、学んできたことっていうのは、体の中に沁みついているものなんですね。一日一日を大切に生きたいと思わせてくれる一冊でした。 -
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あのときこうしてたら
ああしてたらと、
正しい選択と間違った
選択があったかのよう
に、
私たちはあとから思い
返しますが、
どのように振舞おうが
けっきょく行き着く先
に大差はないのではと。
フランスの歴史が転換
する激動の時期に、
戦争という極限の状況
下で、
すべては必然であるか
のように進行する物語。
千年の時を僅か一瞬に
感じるような、
大きな大きな存在から
眺めれば、
大河に浮かぶ木の葉の
ように、
私たちは運命という名
の大きな流れに逆らえ
ない存在。
極端な喩えをするなら、
静止画とさして変わら
ない存在ではないかと。
三部に及ぶ長大な物語
の最初と最後の一文を
読んで、
そんな感慨に耽ります。 -
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ネタバレカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ。
三部作で終わりかと思っていたこのシリーズ2作目と3作目の間の時系列でもう1作品発売されていたことを知り直ぐにゲット。
作者も述べているが、三部作に比べ短い小説なので三半冊だそう。
面白くて半日とかからず読み終えてしまった。
ピエール・ルメートルの作品の良さは読みやすさと描写の細さ。
翻訳者が上手いのかもしれないが難しい言葉がなくすらすらと内容が頭に入ってくる。
また、カミーユのコミュニケーションを取る相手に対しての洞察力についての表現がかなり細かく面白い。ルイが右手を使うか左手を使うかの流れが以前からとても好き。
今回は残酷描写はないので苦手な人でもサラッと読めそう。
本作はパリで爆発事件が発生し、ジャンという青年が自首したが、別にしかけていた6つの爆弾の位置を知らせる代わりに母と自分の釈放・金・オーストラリアへ逃亡させろと要求する物語である。
登場人物が多いようでそんなことはなく、母のせいで父の死の恐怖に取りつかれる青年や公園のしがない管理人、幼稚園で働く恐らく仕事ができない女性などが物語に邪魔しない程度でさりげなく登場して花を添える。
読み進めるにつれ「あとこの残り数ページでまとまるのか?」という疑問はあったが、心に大きな爆弾を落とすかのように綺麗に終わった。
ジャンはロジーと共に爆発した。ロジーの息子に対する執着によってジャンの仕事仲間や恋人は命を落とした訳だから別の視点から見ればジャンは明らかに被害者と言ってもいいのでは無いだろうか。確かに1発目や2発目の爆弾で人を殺していた可能性も無きにしも非ずだが、彼に殺意はなかったわけで、全ては最後のためだ。
現実の出来事ではなく物語として考えなくてはいけないが、ジャンがロジーを刺すなり殴るなりして単に殺すという考えはなかったように思える。そもそもロジーが捕まっている時点で接触が難しいが、ジャンは自分が生きて母が死んでいるという状況も望んでいないように私は思えた。共依存でありながらそこには矛盾もあってそれがとても切ない。
残酷だが美しい。 -
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ヴェルーヴェン警部じゃないノンシリーズ物。章が変わるとともに様相がガラッと変わる面白さは、この作品でも顕在。
ヒロインが容赦ない試練に次々と追い込まれる展開は、『その女アレックス』を思い出す。が、こちらの方が先(2作目)ということで、この経験を踏んでアレックスが書かれたんだなと思うと興味深い。つまり、アレックスほどには驚愕度を上回らない。でも発想には恐ろしいものがあり、よくこんなこと思いつくよなぁと脱帽した。
ヒロインのソフィーは冒頭から追い込まれている。一年前に夫が亡くなったりと不幸が続いただけでなく、精神が不安定で、時折昏睡してしまい、記憶がない時間があったりする。物忘れ、しまい忘れも激しく、自分自身が信じられない日々。そんな中でもベビーシッターの仕事に就いたのだが、その子が気づけば部屋で殺されていたのだ。ソフィーの靴ひもで首を絞められた状態で。そこからソフィーの逃亡生活が始まるのだが、行く先々で人が殺される。自分が無意識のうちに殺しているのだろうか。追いつめられたソフィーは違法に他人の出生証明を手に入れ、結婚相手を探すことに……。
目次にはもう一人の名が書かれているのだが、彼の側からの回想に入るとその異様な内容に驚愕する。アレックスと一緒でこれ以上は何でもネタバレになりそうで書けない(笑)。
ただ、アレックスと同様にある種の逆転劇はあるよとだけは言っておく。ルメートルの書いた決着に、若干モヤっとしたのは私だけではないと思いたいかな(笑)。