ピエール・ルメートルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ピエール・ルメートルの壮大でかつ人間味あふれた歴史群像劇。
20世紀の二つの戦争に翻弄されたフランスの人たちの三部作、完結編。
上巻からひきつづき「ルイーズの物語」「ガブリエルとラウールの物語」「デジレ・ミゴーの物語」が進む中、新たに「フェルナンの物語」が加わって、下巻は4本同時に進行していく。
が、次第にそれらが交わり始めると、妙な期待感に浸っていき、読むのが楽しくなる。
いったいどこですべてが交わるのか……ああ、そうなんです。
そのためにこの人はいたのですね。
とても効果的です。
詐欺師と神様は、“カミヒトエ”……なんちゃって。
それと映画的でもあるけど、完結編もエピローグで登場人物の“その後”が描かれていて、すっきりした後味がとてもステキなお話でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ執念の物語です。あの「悲しみのイレーヌ」のルメートルの作品。
犯人の執拗さ、丁寧さに脱帽です。
以下、ネタバレありで。
自身の記憶の曖昧さと、それに拍車をかける不可解な出来事の数々。
そして行く先々で、関わる人々が殺されて殺人の容疑をかけられてしまう。
責任能力のない殺人鬼なのか、自分は??という疑惑にますます精神をやられる
ヒロインのソフィー。ところが、実は………
第2章から怒涛の展開でした。え、ソフィー関係ないよね??ってな動機で
どこまでもどこまでもソフィーを損なう「花婿」。
面白かったですけど、いや、コレ普通気づくだろって。
そもそもソフィーも、なんか高等教育を受けた才媛のわりにワキが甘々だし。
全くのとばっちりで植物状態になり、あげく殺されてしまったソフィーの
夫が気の毒でした。
最後はソフィーが反撃するんですが。
フランス人の底意地の悪さを堪能できるお話です。オススメです。 -
Posted by ブクログ
今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味わいはいささかも減じていない。
本書は三部作の中でも、図抜けた面白さを持っているように思う。キャラクターたちの運命、すれ違い、出会い、絡み、いずれもナチに今にも占領されようとしているフランス国民の逃走を背景としたスケールの大きい群像小説として楽しめる、いわば現代の『戦争と平和』なのである。
かつて第二次世界大戦をモチーフにした映画には事欠かなかった世代であるぼくら昭和戦後生まれ世代にとっては、懐かしくわかりやすい一時代のヨーロッパが久々に活写されており、まるでエンタメの故郷に還ってきたようなわくわく感があると同時に、ルメートルならではの酷薄な真実と遠慮のない暴力の世界が痛いほどに味わえる力作なのである。
前作のヒロインでもあった亡きジャンヌ・ベルモンの娘ルイーズが巻き込まれるパリの事件に始まり、一方ではガブリエルとラウールという『兵隊やくざ』を思わせる前線コンビの噛み合わないロードノヴェルが展開。さらにはどこでこの大きなストーリーの流れに組み込まれてゆくのか想像すらつかない稀代のペテン師デジレによるド派手な詐欺のあれこれが語られつつ、戦争の危機感が増幅してくる総体的スリルを読者は味わうことになる。
後半ではさらに機動憲兵隊フェルナンとその妻が加わり、前半の各キャラの世界に合流して新たな展開を見せてくれる。これら主要キャラクターたちの離合集散やその運命の翻弄そのものが、ひときわ語りに優れたルメートルというストーリーテラーによって構築されてゆく。大作であり力作であり、一見、別々の物語にしか見えなかったものが、集結して大きなうねりをもたらしてゆくダイナミズムは本書最大の読ませどころであろう。
できれば三部作を順番に読んで頂きたいが、それぞれ独立して読んでも、何ら問題はない。ルメートルという作家の新たな地平を今後も期待したくなるエネルギッシュな本編に、是非とも翻弄され、身を委ねてて頂きたい。 -
Posted by ブクログ
今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味わいはいささかも減じていない。
本書は三部作の中でも、図抜けた面白さを持っているように思う。キャラクターたちの運命、すれ違い、出会い、絡み、いずれもナチに今にも占領されようとしているフランス国民の逃走を背景としたスケールの大きい群像小説として楽しめる、いわば現代の『戦争と平和』なのである。
かつて第二次世界大戦をモチーフにした映画には事欠かなかった世代であるぼくら昭和戦後生まれ世代にとっては、懐かしくわかりやすい一時代のヨーロッパが久々に活写されており、まるでエンタメの故郷に還ってきたようなわくわく感があると同時に、ルメートルならではの酷薄な真実と遠慮のない暴力の世界が痛いほどに味わえる力作なのである。
前作のヒロインでもあった亡きジャンヌ・ベルモンの娘ルイーズが巻き込まれるパリの事件に始まり、一方ではガブリエルとラウールという『兵隊やくざ』を思わせる前線コンビの噛み合わないロードノヴェルが展開。さらにはどこでこの大きなストーリーの流れに組み込まれてゆくのか想像すらつかない稀代のペテン師デジレによるド派手な詐欺のあれこれが語られつつ、戦争の危機感が増幅してくる総体的スリルを読者は味わうことになる。
後半ではさらに機動憲兵隊フェルナンとその妻が加わり、前半の各キャラの世界に合流して新たな展開を見せてくれる。これら主要キャラクターたちの離合集散やその運命の翻弄そのものが、ひときわ語りに優れたルメートルというストーリーテラーによって構築されてゆく。大作であり力作であり、一見、別々の物語にしか見えなかったものが、集結して大きなうねりをもたらしてゆくダイナミズムは本書最大の読ませどころであろう。
できれば三部作を順番に読んで頂きたいが、それぞれ独立して読んでも、何ら問題はない。ルメートルという作家の新たな地平を今後も期待したくなるエネルギッシュな本編に、是非とも翻弄され、身を委ねてて頂きたい。 -
購入済み
カミーユ大好き
悲しみのイレーヌ、その女アレックス、傷だらけのカミーユと順番通り読んでいたつもりが
こんな中編があったとは。。傷だらけのカミーユの前だから、アンヌの名前がちらほら。。わが母なるロージーは爆弾だけに時間軸で話が進み、ハラハラドキドキで読み進めました。最後はそうするしかなかったのかな、と思いながら切ないラストでした。 -
購入済み
やられたー!って感じ
読み始めはまたカミーユの愛する人がひどい目に。。えーこの人も死んじゃったらどうしよう。。と思いながら読み進めました。が!途中から思わぬ方向に話が進んでいき、なるほどねーそうきたか!という感じでした。全くやられました。。そこからは読む速度が上がるあがる。。でもやっぱり傷だらけのカミーユなんだなぁと思いました。
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購入済み
ドキドキしました!
Jディーヴァーの作品が好きで日本語訳の作品はよく読むのですが、最初は作品特有の流れに頭がなかなか慣れずにいましたが、読み進めるうちに予想外の展開が繰り広げられ、あっと言う間に読み終えてしまいました。悲しみのイレーヌも読んでいたのでカミーユの心情も理解できました。どちらも好きな作品です。
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Posted by ブクログ
現代フランス・ミステリの底力を見せつけるルメートル。2009年発表の本作でも繊細且つ大胆な仕掛けを施した超絶技巧が冴え渡り、暗い情念に満ちた濃密なノワールタッチの世界と相俟って読み手を魅了する。
ソフィー・デュゲは、悪夢から目覚め、現実の地獄へと戻る。膝の上には死んだ子ども、レオ。ベビーシッターとして世話をしていた6歳になる男の子だった。その首にはソフィーの靴紐が巻かれていた。レオの家に泊まり込んだ翌朝。まだ子どもが眠っていると信じたレオの母親が仕事に出掛けたのを見届け、自分のアパートへと戻る。身の回りの物を鞄に詰め込み、逃げ出す。行くあてなどない。銀行から有り金全部を引き出す。気を落ち着かせるためにカフェに立ち寄るが、目を離した隙に荷物を盗まれた。その場で知り合った女が好意をみせ、自宅へと招いてくれた。後刻。気付けば、その女が足元に横たわっている。刃物で滅多刺しにされた死体。またしても……。行動が思い出せない。重度の記憶障害。意識無き空白の時間。確かなことは、関わった人間が死に、ソフィーが殺人者であると告げていたことだった。連夜うなされる夢の中では、死んだ夫や義母も、その犠牲者だった。彼女は逃亡するための計画を練る。頬をひたすらに涙が零れ落ちた。
一行目から始まる重苦しいムードは、頁をめくるごとに息苦しさを増す。記憶を失った主人公が殺人を犯していたかもしれないという設定は、格別珍しいものではない。しかしルメートルが有り触れた着想で創作するはずがなく、予測不能の展開で読み手を翻弄する。四部構成の物語は、次のパートに移ると一気に様相を変えていく。導入部での最大の謎は、追い詰められた女は〝狂った殺人者なのか〟とうことだが、極めて異常な語り手(日記)が登場する第二部において事件の背景はあっさり明白となる。だが、本作はここから猛毒を放ち始めるのである。
絶え間なく悲劇に見舞われた一人の女の軌跡。徐々に明らかとなる真相への道程は、最大限の衝撃をもたらすよう緻密に構成されており、物語の核となるこの長いパートの中で、暗鬱な狂気に捕らわれた犯罪者の肖像が分厚く塗り固められていく。或る意味、読み手にとっては試練となるだろう。読み進めることが困難になるほど残酷非道を重ねる鬼畜に対し、フィクションであるにも関わらず心の底から憎悪を抱くであろうから。同時に、心身ともにズタボロとなりながらも、運命に抗い、常に次の一手を見極める女の屈強な精神に驚嘆するだろう。
第三部以降は鋭利なサスペンスを基調にして加速、急転する第四部へと雪崩れ込む。先手を打ち、出し抜く。より狡猾な者が勝つ。結末で鮮やかなツイストを決め、苦いカタルシスの生じる終幕へと導く。
本作の構成は、アイラ・レヴィンの〝あの傑作〟に通じると感じたのだが、殺人者が狂気に陥った要因を解き明かす終盤の流れは、その救いの無さにおいてはるかに凌ぐ。純粋無垢な善など幻想であり、程度の違う狂気を誰もが宿している。それが一旦解放されたならば、利己的な妄想は肥大化/暴走し、己のアイデンティティを満たすためだけに、暴力/破壊衝動を解き放つ。人間はどのように狂っていくのか。醒めた視点を崩さないルメートルの冷徹な筆致は徹底しており、撥ね返された汚辱の罪を背負い、殺人者が最終的には破滅するまでを生々しく描き切る。傑作だ。 -
購入済み
安定した良作
アレックスほどの衝撃はないが、主人公の魅力と予想もしない展開に毎度の事ながら一気に結末まで読み進めてしまう
今作も犠牲になるのは女性
ルメートルはカミーユシリーズの中で、社会の中で迫害され搾取される女性達を鋭く切り取り描いている
それに寄り添うカミーユ警部の繊細さと純粋さに心打たれる
日本の刑事物にはないロマンティックな描写も含め、女性ファンの獲得が大いに見込まれる作品である -
ネタバレ 購入済み
映画のように引き込まれる
暴力的でグロテスクな描写も少なくないが、展開のスピード感と脇役たちのユニークな個性に飽きる事なく最後まで読み進められる
動機や様々なテクニックが新鮮かと問われると厳しい部分はあるが、主人公のタフさとその裏に秘めた悲しみは女性読者を勇気づけるに余りある共感を誘うのではないだろうか
自らの受けた屈辱に対し華麗な復讐を(犯罪という形とはいえ)成し遂げるヒロインに胸のすく思いを持つ女性も少なからずいるように思われる