ピエール・ルメートルのレビュー一覧

  • その女アレックス

    購入済み

    ブラボー

    ブラボーとしか言えない素晴らしい

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    2022年11月04日
  • われらが痛みの鏡 下

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    ネタバレ

    下巻は一気に読みました。
    フランスの南に位置するベロー礼拝堂で、今まで別々の行動をしていた主要な人達がたどり着くあたりでは鳥肌が立ちました。登場人物達のプライバシーを守るために読者である我々もその場を離れるくだりは、なんとも言えない余韻を得られます。作者に感謝したくなりました。
    とても印象に残る作品でした。

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    2022年08月25日
  • 死のドレスを花婿に

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    ネタバレ

    執念の物語です。あの「悲しみのイレーヌ」のルメートルの作品。
    犯人の執拗さ、丁寧さに脱帽です。
    以下、ネタバレありで。

    自身の記憶の曖昧さと、それに拍車をかける不可解な出来事の数々。
    そして行く先々で、関わる人々が殺されて殺人の容疑をかけられてしまう。
    責任能力のない殺人鬼なのか、自分は??という疑惑にますます精神をやられる
    ヒロインのソフィー。ところが、実は………

    第2章から怒涛の展開でした。え、ソフィー関係ないよね??ってな動機で
    どこまでもどこまでもソフィーを損なう「花婿」。
    面白かったですけど、いや、コレ普通気づくだろって。
    そもそもソフィーも、なんか高等教育を受けた才媛のわりにワキが甘々だし。
    全くのとばっちりで植物状態になり、あげく殺されてしまったソフィーの
    夫が気の毒でした。

    最後はソフィーが反撃するんですが。
    フランス人の底意地の悪さを堪能できるお話です。オススメです。

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    2022年06月09日
  • 死のドレスを花婿に

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    紹介文に『その女アレックス』の原点とあるがまさしくその通りでありました

    話のシステムが『その女アレックス』の原形ですよね
    章が変わるごとに衝撃の真実が明らかとなり見えてる世界をガラっと変えられる
    大掛かりな仕掛け
    そして最後に明かされるタイトルの意味

    そしてこの作品の肝は犯人が持つ徹底的に理不尽な動機ですよね
    もう終始一貫して気持ち悪くて赦せない
    だけど最後に罰せられても特に爽快な感じにもさせられない
    これで良かったんかな〜?って気にさせるあたりも『その女アレックス』に通じるところでした

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    2022年05月17日
  • 死のドレスを花婿に

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    第一章を読むときは主人公の女性に降りかかる不幸がメインの話となるため、ページを捲る指が進まなかったが、第三章からはページを捲るのが止まらなくなった。なんとも形容し難い最後だったけど、そうなるしかない感じで終わった

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    2022年05月11日
  • 死のドレスを花婿に

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    カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズを読んでいたので、この人の作品は面白いはずと読み始めた。中盤の「胸くそ悪いことこの上ない」空気に耐えると、そこから流れが変わった時の爽快感はすごい。でも、ラストはなんとも形容しがたい気持ちになる。実際の人間は、怒りや憎悪の方向へ気持ちを全振りできないのかも。私はこのラストでそんな事をぼんやり思った。

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    2022年04月15日
  • われらが痛みの鏡 下

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     今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
     本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味わいはいささかも減じていない。
     本書は三部作の中でも、図抜けた面白さを持っているように思う。キャラクターたちの運命、すれ違い、出会い、絡み、いずれもナチに今にも占領されようとしているフランス国民の逃走を背景としたスケールの大きい群像小説として楽しめる、いわば現代の『戦争と平和』なのである。
     かつて第二次世界大戦をモチーフにした映画には事欠かなかった世代であるぼくら昭和戦後生まれ世代にとっては、懐かしくわかりやすい一時代のヨーロッパが久々に活写されており、まるでエンタメの故郷に還ってきたようなわくわく感があると同時に、ルメートルならではの酷薄な真実と遠慮のない暴力の世界が痛いほどに味わえる力作なのである。
     前作のヒロインでもあった亡きジャンヌ・ベルモンの娘ルイーズが巻き込まれるパリの事件に始まり、一方ではガブリエルとラウールという『兵隊やくざ』を思わせる前線コンビの噛み合わないロードノヴェルが展開。さらにはどこでこの大きなストーリーの流れに組み込まれてゆくのか想像すらつかない稀代のペテン師デジレによるド派手な詐欺のあれこれが語られつつ、戦争の危機感が増幅してくる総体的スリルを読者は味わうことになる。
     後半ではさらに機動憲兵隊フェルナンとその妻が加わり、前半の各キャラの世界に合流して新たな展開を見せてくれる。これら主要キャラクターたちの離合集散やその運命の翻弄そのものが、ひときわ語りに優れたルメートルというストーリーテラーによって構築されてゆく。大作であり力作であり、一見、別々の物語にしか見えなかったものが、集結して大きなうねりをもたらしてゆくダイナミズムは本書最大の読ませどころであろう。
     できれば三部作を順番に読んで頂きたいが、それぞれ独立して読んでも、何ら問題はない。ルメートルという作家の新たな地平を今後も期待したくなるエネルギッシュな本編に、是非とも翻弄され、身を委ねてて頂きたい。

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    2021年10月26日
  • われらが痛みの鏡 上

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     今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
     本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味わいはいささかも減じていない。
     本書は三部作の中でも、図抜けた面白さを持っているように思う。キャラクターたちの運命、すれ違い、出会い、絡み、いずれもナチに今にも占領されようとしているフランス国民の逃走を背景としたスケールの大きい群像小説として楽しめる、いわば現代の『戦争と平和』なのである。
     かつて第二次世界大戦をモチーフにした映画には事欠かなかった世代であるぼくら昭和戦後生まれ世代にとっては、懐かしくわかりやすい一時代のヨーロッパが久々に活写されており、まるでエンタメの故郷に還ってきたようなわくわく感があると同時に、ルメートルならではの酷薄な真実と遠慮のない暴力の世界が痛いほどに味わえる力作なのである。
     前作のヒロインでもあった亡きジャンヌ・ベルモンの娘ルイーズが巻き込まれるパリの事件に始まり、一方ではガブリエルとラウールという『兵隊やくざ』を思わせる前線コンビの噛み合わないロードノヴェルが展開。さらにはどこでこの大きなストーリーの流れに組み込まれてゆくのか想像すらつかない稀代のペテン師デジレによるド派手な詐欺のあれこれが語られつつ、戦争の危機感が増幅してくる総体的スリルを読者は味わうことになる。
     後半ではさらに機動憲兵隊フェルナンとその妻が加わり、前半の各キャラの世界に合流して新たな展開を見せてくれる。これら主要キャラクターたちの離合集散やその運命の翻弄そのものが、ひときわ語りに優れたルメートルというストーリーテラーによって構築されてゆく。大作であり力作であり、一見、別々の物語にしか見えなかったものが、集結して大きなうねりをもたらしてゆくダイナミズムは本書最大の読ませどころであろう。
     できれば三部作を順番に読んで頂きたいが、それぞれ独立して読んでも、何ら問題はない。ルメートルという作家の新たな地平を今後も期待したくなるエネルギッシュな本編に、是非とも翻弄され、身を委ねてて頂きたい。

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    2021年10月26日
  • わが母なるロージー

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    久しぶりにヴェルーヴェン警部、カミーユにお会いしました。相変わらず良いですね。ルイも変わらず良い。翻訳物は読みにくい作品に出会うことままありますが、このシリーズ、橘明美さんの翻訳版は間違いないですね。満喫。カミーユシリーズ、もう終わりだというのは悲しい。また描いて欲しい。

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    2021年08月26日
  • わが母なるロージー

    購入済み

    カミーユ大好き

    悲しみのイレーヌ、その女アレックス、傷だらけのカミーユと順番通り読んでいたつもりが
    こんな中編があったとは。。傷だらけのカミーユの前だから、アンヌの名前がちらほら。。わが母なるロージーは爆弾だけに時間軸で話が進み、ハラハラドキドキで読み進めました。最後はそうするしかなかったのかな、と思いながら切ないラストでした。

    #ドキドキハラハラ

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    2021年04月25日
  • 傷だらけのカミーユ

    購入済み

    やられたー!って感じ

    読み始めはまたカミーユの愛する人がひどい目に。。えーこの人も死んじゃったらどうしよう。。と思いながら読み進めました。が!途中から思わぬ方向に話が進んでいき、なるほどねーそうきたか!という感じでした。全くやられました。。そこからは読む速度が上がるあがる。。でもやっぱり傷だらけのカミーユなんだなぁと思いました。

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    2021年04月25日
  • 悲しみのイレーヌ

    購入済み

    ドキドキしました!

    Jディーヴァーの作品が好きで日本語訳の作品はよく読むのですが、最初は作品特有の流れに頭がなかなか慣れずにいましたが、読み進めるうちに予想外の展開が繰り広げられ、あっと言う間に読み終えてしまいました。悲しみのイレーヌも読んでいたのでカミーユの心情も理解できました。どちらも好きな作品です。

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    2021年02月07日
  • 死のドレスを花婿に

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    現代フランス・ミステリの底力を見せつけるルメートル。2009年発表の本作でも繊細且つ大胆な仕掛けを施した超絶技巧が冴え渡り、暗い情念に満ちた濃密なノワールタッチの世界と相俟って読み手を魅了する。

    ソフィー・デュゲは、悪夢から目覚め、現実の地獄へと戻る。膝の上には死んだ子ども、レオ。ベビーシッターとして世話をしていた6歳になる男の子だった。その首にはソフィーの靴紐が巻かれていた。レオの家に泊まり込んだ翌朝。まだ子どもが眠っていると信じたレオの母親が仕事に出掛けたのを見届け、自分のアパートへと戻る。身の回りの物を鞄に詰め込み、逃げ出す。行くあてなどない。銀行から有り金全部を引き出す。気を落ち着かせるためにカフェに立ち寄るが、目を離した隙に荷物を盗まれた。その場で知り合った女が好意をみせ、自宅へと招いてくれた。後刻。気付けば、その女が足元に横たわっている。刃物で滅多刺しにされた死体。またしても……。行動が思い出せない。重度の記憶障害。意識無き空白の時間。確かなことは、関わった人間が死に、ソフィーが殺人者であると告げていたことだった。連夜うなされる夢の中では、死んだ夫や義母も、その犠牲者だった。彼女は逃亡するための計画を練る。頬をひたすらに涙が零れ落ちた。

    一行目から始まる重苦しいムードは、頁をめくるごとに息苦しさを増す。記憶を失った主人公が殺人を犯していたかもしれないという設定は、格別珍しいものではない。しかしルメートルが有り触れた着想で創作するはずがなく、予測不能の展開で読み手を翻弄する。四部構成の物語は、次のパートに移ると一気に様相を変えていく。導入部での最大の謎は、追い詰められた女は〝狂った殺人者なのか〟とうことだが、極めて異常な語り手(日記)が登場する第二部において事件の背景はあっさり明白となる。だが、本作はここから猛毒を放ち始めるのである。
    絶え間なく悲劇に見舞われた一人の女の軌跡。徐々に明らかとなる真相への道程は、最大限の衝撃をもたらすよう緻密に構成されており、物語の核となるこの長いパートの中で、暗鬱な狂気に捕らわれた犯罪者の肖像が分厚く塗り固められていく。或る意味、読み手にとっては試練となるだろう。読み進めることが困難になるほど残酷非道を重ねる鬼畜に対し、フィクションであるにも関わらず心の底から憎悪を抱くであろうから。同時に、心身ともにズタボロとなりながらも、運命に抗い、常に次の一手を見極める女の屈強な精神に驚嘆するだろう。
    第三部以降は鋭利なサスペンスを基調にして加速、急転する第四部へと雪崩れ込む。先手を打ち、出し抜く。より狡猾な者が勝つ。結末で鮮やかなツイストを決め、苦いカタルシスの生じる終幕へと導く。
    本作の構成は、アイラ・レヴィンの〝あの傑作〟に通じると感じたのだが、殺人者が狂気に陥った要因を解き明かす終盤の流れは、その救いの無さにおいてはるかに凌ぐ。純粋無垢な善など幻想であり、程度の違う狂気を誰もが宿している。それが一旦解放されたならば、利己的な妄想は肥大化/暴走し、己のアイデンティティを満たすためだけに、暴力/破壊衝動を解き放つ。人間はどのように狂っていくのか。醒めた視点を崩さないルメートルの冷徹な筆致は徹底しており、撥ね返された汚辱の罪を背負い、殺人者が最終的には破滅するまでを生々しく描き切る。傑作だ。

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    2020年11月06日
  • 合本 悲しみのイレーヌ その女アレックス 傷だらけのカミーユ【文春e-Books】

    購入済み

    読み出したら止まらない

    長い話ではあるものの先が気になり、飽きずに楽しく読むことができる作品

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    2020年08月22日
  • 死のドレスを花婿に

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    ほんと私この人の本好き。まじでおもろい。
    始めは読んでるこっちもすごく気分が悪くなる。不安で、体調も悪い気がしてすごく引きずられる。
    そんであとはいつもの感じ。わあ面白い続き気になる気付いたら朝!!
    最高!

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    2020年07月02日
  • 傷だらけのカミーユ

    購入済み

    安定した良作

    アレックスほどの衝撃はないが、主人公の魅力と予想もしない展開に毎度の事ながら一気に結末まで読み進めてしまう
    今作も犠牲になるのは女性
    ルメートルはカミーユシリーズの中で、社会の中で迫害され搾取される女性達を鋭く切り取り描いている
    それに寄り添うカミーユ警部の繊細さと純粋さに心打たれる
    日本の刑事物にはないロマンティックな描写も含め、女性ファンの獲得が大いに見込まれる作品である

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    2020年05月30日
  • その女アレックス

    ネタバレ 購入済み

    映画のように引き込まれる

    暴力的でグロテスクな描写も少なくないが、展開のスピード感と脇役たちのユニークな個性に飽きる事なく最後まで読み進められる
    動機や様々なテクニックが新鮮かと問われると厳しい部分はあるが、主人公のタフさとその裏に秘めた悲しみは女性読者を勇気づけるに余りある共感を誘うのではないだろうか
    自らの受けた屈辱に対し華麗な復讐を(犯罪という形とはいえ)成し遂げるヒロインに胸のすく思いを持つ女性も少なからずいるように思われる

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    2020年05月18日
  • 死のドレスを花婿に

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    あぁ、すごかったな…一章はこういうお話なのか、なるほど…と読んでいたけど二章で衝撃で、そこからは早く先が読みたくて読みたくてそわそわうずうずしながらページをめくった。
    執念があれば(あとお金と時間と知恵も)ここまで人をコントロールできてしまうのか…(可能かどうかはさておき)怖すぎる…!とても満足で、いい意味の疲労感もある読書時間になったなぁ〜。

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    2020年03月23日
  • 炎の色 上

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     カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ)で一気に燃え上がった感のある作者ピエール・ルメートル。あちらは文春文庫。第一次大戦に纏わる物語を描いた『天国でまた会おう』は早川書房でハードカバーと文庫版の同時刊行。この作者特有の、とても奇妙な主人公の人生を描き、ゴンクール賞(フランスの芥川賞)・英国推理作家協会賞を受賞し、国内でも話題を読んだ(ルメートルはどの作品でも話題を呼んでしまうのだが)。本書は『天国でまた会おう』の続編ではあるが、一部登場人物が重なることと、時制が前作を引き継いでいることの二点だけであり、前作が未読であっても全く独立した小説として十分に楽しめる。単独でも、相応の推進力を蓄えた大変な力作である。

     本書はヴェルーヴェン警部シリーズを思わせるクライム小説ではない。あくまで前作同様、歴史的事実を脚色して描いた1927年パリに始まる一族の壮大な物語であり、ドイツに台頭するナチズムの風に曝される時代でもある。壮大な一族の物語というだけで、退屈という不安に身を引きたくなるかもしれないが、全く心配には及ばない。作者のストーリーテリングの力が、最初のページから読者を物語の渦中にぐいぐいと引っぱり込んでくれるからだ。

     スタートから騒動は始まる。一大企業帝国を築いた企業主の盛大な葬儀のなか、7歳の孫ポールが三階の窓から転落するという事故が大衆の面前で発生。落ちたポールは幌に跳ね返って、馬車に積まれた棺桶に頭部をぶつけて生死を彷徨う。この物語の主人公は、ポールの母マドレーヌ。眠り続ける状態から徐々に少しずつ機能を回復してゆく息子への介護。しかし彼は、いつしかオペラへの天才的理解力を見せ、世界や時代への感受性をも研ぎすましてゆく。オペラ歌手ソランジュ・ガリアートとの間に始まった二人の奇妙な親交は、ナチス・ドイツからの彼女への講演要請を巡って決裂してゆく。ポールの登場シーンは、ことごとく小説全体を照射する神の声のように、作品世界に超然たる異質な曲面を滑り込ませる。

     さて物語の主人公は、最初から明確なのではなく、俯瞰的に進む。多くの人物のそれぞれが回してゆく物語の中で、ある人物による壮大な仕掛けが進み、唐突に巨大で恐ろしい罠が瞬時にして閉じられる。祖父の築いた一大帝国の事業の中で準備されてきた罠の壮大さに呆れ返る。しかし、これらは実際にあった歴史上のできごとをモデルにしている。金融と報道。見えざる力を使った巨大スケールの逆転劇が、実に周到に語られてきた前半部からの折り返し点なのである。

     そしてマドレーヌの巻き返しは、そこからスタートする。全体を見ると、敗退と逆襲。二部構成と言ってよい物語で、その折り目ははっきりしており、ここを通過する頃には、読者の大半は本作の魅力にすっかり身を任せ、魔法のような展開に目くるめく状態となっているはずである。経済やマスコミや政治を材に取り、のっぴきならぬ闘いに巻き込まれてゆくマドレーヌ。その背景に迫るファシズムの嵐。動乱の時代に震えるポールの愛すべき感受性。二つの大戦に挟まれたこの時代、有象無象の人間たちの悲喜劇を見事なまでに描き、全体が大仕掛けのコンゲーム小説としても楽しめる本作。

     ルメートルという作家が並でないのは、最初の話題作『この女アレックス』で十分おわかりのこととは思うが、ここまでスケールの大きな物語作家であるとは予想もしていなかったのではないだろうか。ルメートルは奇術師的な小手先のトリッキー作家などではなく、小説の王道をゆく正真正銘の天才的語り部なのである。

     スケール感のあるこのシリーズは、三部構成だそうである。二部を終えた時点で、次作への期待感がさらに膨らんでゆくのを感じる。

     本シリーズ第一作の『天国でまた会おう』は、その映画化作品がセザール賞(フランスのアカデミー賞)5部門受賞、本年3月1日より、3/15現在公開中である。

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    2019年03月15日
  • 炎の色 下

    Posted by ブクログ

     カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ)で一気に燃え上がった感のある作者ピエール・ルメートル。あちらは文春文庫。第一次大戦に纏わる物語を描いた『天国でまた会おう』は早川書房でハードカバーと文庫版の同時刊行。この作者特有の、とても奇妙な主人公の人生を描き、ゴンクール賞(フランスの芥川賞)・英国推理作家協会賞を受賞し、国内でも話題を読んだ(ルメートルはどの作品でも話題を呼んでしまうのだが)。本書は『天国でまた会おう』の続編ではあるが、一部登場人物が重なることと、時制が前作を引き継いでいることの二点だけであり、前作が未読であっても全く独立した小説として十分に楽しめる。単独でも、相応の推進力を蓄えた大変な力作である。

     本書はヴェルーヴェン警部シリーズを思わせるクライム小説ではない。あくまで前作同様、歴史的事実を脚色して描いた1927年パリに始まる一族の壮大な物語であり、ドイツに台頭するナチズムの風に曝される時代でもある。壮大な一族の物語というだけで、退屈という不安に身を引きたくなるかもしれないが、全く心配には及ばない。作者のストーリーテリングの力が、最初のページから読者を物語の渦中にぐいぐいと引っぱり込んでくれるからだ。

     スタートから騒動は始まる。一大企業帝国を築いた企業主の盛大な葬儀のなか、7歳の孫ポールが三階の窓から転落するという事故が大衆の面前で発生。落ちたポールは幌に跳ね返って、馬車に積まれた棺桶に頭部をぶつけて生死を彷徨う。この物語の主人公は、ポールの母マドレーヌ。眠り続ける状態から徐々に少しずつ機能を回復してゆく息子への介護。しかし彼は、いつしかオペラへの天才的理解力を見せ、世界や時代への感受性をも研ぎすましてゆく。オペラ歌手ソランジュ・ガリアートとの間に始まった二人の奇妙な親交は、ナチス・ドイツからの彼女への講演要請を巡って決裂してゆく。ポールの登場シーンは、ことごとく小説全体を照射する神の声のように、作品世界に超然たる異質な曲面を滑り込ませる。

     さて物語の主人公は、最初から明確なのではなく、俯瞰的に進む。多くの人物のそれぞれが回してゆく物語の中で、ある人物による壮大な仕掛けが進み、唐突に巨大で恐ろしい罠が瞬時にして閉じられる。祖父の築いた一大帝国の事業の中で準備されてきた罠の壮大さに呆れ返る。しかし、これらは実際にあった歴史上のできごとをモデルにしている。金融と報道。見えざる力を使った巨大スケールの逆転劇が、実に周到に語られてきた前半部からの折り返し点なのである。

     そしてマドレーヌの巻き返しは、そこからスタートする。全体を見ると、敗退と逆襲。二部構成と言ってよい物語で、その折り目ははっきりしており、ここを通過する頃には、読者の大半は本作の魅力にすっかり身を任せ、魔法のような展開に目くるめく状態となっているはずである。経済やマスコミや政治を材に取り、のっぴきならぬ闘いに巻き込まれてゆくマドレーヌ。その背景に迫るファシズムの嵐。動乱の時代に震えるポールの愛すべき感受性。二つの大戦に挟まれたこの時代、有象無象の人間たちの悲喜劇を見事なまでに描き、全体が大仕掛けのコンゲーム小説としても楽しめる本作。

     ルメートルという作家が並でないのは、最初の話題作『この女アレックス』で十分おわかりのこととは思うが、ここまでスケールの大きな物語作家であるとは予想もしていなかったのではないだろうか。ルメートルは奇術師的な小手先のトリッキー作家などではなく、小説の王道をゆく正真正銘の天才的語り部なのである。

     スケール感のあるこのシリーズは、三部構成だそうである。二部を終えた時点で、次作への期待感がさらに膨らんでゆくのを感じる。

     本シリーズ第一作の『天国でまた会おう』は、その映画化作品がセザール賞(フランスのアカデミー賞)5部門受賞、本年3月1日より、3/15現在公開中である。

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    2019年03月15日