ピエール・ルメートルのレビュー一覧
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ネタバレ(上巻より)
とはいえ、騙されて財産を失い、
息子を傷つけられ車椅子生活になってしまったことを恨み、
復讐をすることを決意するマドレーヌ。
元夫の部下を金で雇うだけでなく、
マドレーヌ自身も危ない橋を渡り、
三人の男たちと一人の女性に
(前作と違って)見事に復讐が果せて良かった。
ナチスドイツに飛行機の情報を売ったと見せかけて、
大金を手に入れ、かつ銀行家を陥れた手口は面白かった。
息子の世話をする明るいポーランド女性や、
息子が傾倒するディーバと
印象的な女性たちも良かったので、
前作より楽しめたが、
実際の団体や事件が取り入れているらしく、
そこらへんがわかっているとさらに面白かった -
Posted by ブクログ
ネタバレ「天国でまた会おう」の続篇。
前作で登場した、顔に穴の開いてしまった兵士の家族、
銀行家の父の葬式から話が始まる。
孫息子が三階の窓から落ち、
一命をとりとめたが、歩けなくなってしまう。
銀行家の唯一の相続人である母マドレーヌは、
息子を看護するが…。
前作で、容姿にひかれて結婚した夫を、
詐欺を行ったと知り見捨てたマドレーヌ。
今回もろくでもない男を息子の家庭教師として招き入れたり、
長年勤めていた銀行の上級管理職員を手ひどく振ったり、
しかもその男に資産のことを任せっぱなしにしたりと、
ある意味、自業自得で財産を失う。
(下巻へ続く) -
Posted by ブクログ
ネタバレカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ、第四弾。
カミーユ警部はかなり酷い目に遭っている。
いや、遭い続けている。
母を亡くし、父を亡くし、
妻と子を連続殺人犯に殺され、
親友を病気で亡くし、
昔の部下から罠にはめられ、
愛する女性に裏切られた。
なので、このシリーズの最後に作品に、
救いを求めてしまうのを当然ではないか。
だが、その希望はかなわなかった。
一応、また女性とつきあってるようではあったが。
不発弾を利用した時限爆弾が爆発した後、
あと6つ仕掛けたと名乗り出た爆弾犯が、
殺人で服役中の母親を釈放するように要求する。
爆弾はどこに仕掛けられているのか、
爆弾犯の真の狙いは何なのか -
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原題 AU REVOIR LÀ-HAUT
そして、明日は存在しない
何らかの結末は必然的に訪れる
前者はエドゥアールの、後者はマルセルの、彼ら父子の邂逅そのものを端的に表してる気がします。
戦争が二人を分かたなくても既に交差する余地はなかっただろうし、それでも接点があるのであればああいう終わりしかなかったかな…と。
〝感謝〟は、誰にも渡さないで済んだ親のエゴ…?でしょうか。
さよなら、天国で
タイトルはMartyrs de Vingréの一人、Jean Blanchardが妻宛に最後に記した言葉より。
人の、底知れぬ悪意というものがどんなものか、
人の、逃れ得ぬ義務とはどんなに悲劇で喜 -
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Posted by ブクログ
スピーディーで予測のつかない展開、綿密なストーリー、さすがルメートル!とても面白かった。
失業中のおじさんが社会復帰するために必死に努力するが、やること全てが裏目に出て思いもよらぬ事態に発展してしまう。
主人公が最初から最後まで一貫していたのは、家族のために働きたいという想いだったのに…
仕事を勝ち取るために嘘に嘘を重ね、その大切な家族を傷つけ自分自身も追い詰められていく。
この人いったいどこまで堕ちてしまうのかと、ずっと心配しながら読んでしまった笑
追い詰められていたとはいえ、割とすぐに人を殴ってしまうところだけは共感できなかったけど、失業というテーマは他人事ではない。
本当に、安心し -
Posted by ブクログ
現代ミステリの最重要作家、2010年発表作。私の場合、購入した本はしばらく〝寝かせる〟のが常だが、ルメートルだけは早々に積ん読から外している。一旦、冒頭を読み始めたなら、最終頁に辿り着くまで片時も本から手を離せない。しかも、一度も期待を裏切られたことがない。本作もプロットの骨格自体に大胆且つ斬新な仕掛けを施しており、劇的変転の見事さに圧倒された。物理的/心理的トリックを偏重する旧態依然のミステリでは味わえない重量級の読み応え。先鋭的アグレッシヴさでは当代随一だろう。
アラン・デランブル、57歳。大企業で管理職にまで昇り詰めたが、会社買収であっさり解雇される辛酸を嘗めた。失業して4年目、雑多な -
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邦題がイマイチなうえに、残酷な描写は今は見たくないな…と読むのをためらっていたけど、読み始めるとやっぱり止まらない。
ルメートルお得意の残酷シーンはなかったものの、怒涛の展開はさすがだった。
コロナウィルスによって人々の価値観と世界情勢が大きく変わった今だからこそ、痛烈な批判と皮肉を盛り込んだのかと思ったら、実は『その女アレックス』より前の2010年にフランスでは出版されたというのだから驚きだ。
同時に、エンターテイメントが求められる今、Netflixでドラマ化して配信中だというから、これまたぴったりだと思った。
ところで、フランス語の原題はなんというのでしょうか?