ピエール・ルメートルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
邦題がイマイチなうえに、残酷な描写は今は見たくないな…と読むのをためらっていたけど、読み始めるとやっぱり止まらない。
ルメートルお得意の残酷シーンはなかったものの、怒涛の展開はさすがだった。
コロナウィルスによって人々の価値観と世界情勢が大きく変わった今だからこそ、痛烈な批判と皮肉を盛り込んだのかと思ったら、実は『その女アレックス』より前の2010年にフランスでは出版されたというのだから驚きだ。
同時に、エンターテイメントが求められる今、Netflixでドラマ化して配信中だというから、これまたぴったりだと思った。
ところで、フランス語の原題はなんというのでしょうか? -
Posted by ブクログ
パリ警視庁犯罪捜査部カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ、2013年発表の〝番外編〟。翻訳文庫本で約200頁の中編のため、読み応えでは物足りない面もあるが、その分、全編を覆う緊張感はより濃密になっている。比較的シャープなプロットの中に、技巧派ならではのツイストを効かせ、〝三部作〟同様に読後感は重い。
夕刻、パリ市内で爆破事件が発生した。幸いにも死者は出なかったが、テロ行為も視野に入れた大規模な捜査が始まる。間もなくして一人の青年が警察に出頭、自ら犯人だと名乗り出た。ジャン・ガルニエ。不可解にも〝交渉〟相手にカミーユを指名した。仕掛けた爆弾はあと6発。要求は3つ。現在拘留中の実母ロージーの釈放、母子二人での海外逃亡の手配、そしてカネ。条件をのまなければ、1日ごとに爆発させると脅迫した。政府上層部は色めき立ち、テロ対策班のプロによる身体的/精神的苦痛を伴う尋問をジャンに行うが、驚くべき事に男は耐え抜いた。カミーユに対し、ようやく洩らしたのは、次の場所が幼稚園であることと爆破時間のみ。男の身辺を洗い直す中で、母親に対する気持ちが読み取れない。何故ならロージーは、ジャンの恋人を轢き殺した罪で投獄されていたからだ。男の真の動機とは何か。打開策無く時間だけを浪費する中、事件は予想外の展開を辿り始めた。
短い作品ながら、捜査の流れをしっかりと描いており、シリーズの中では最も警察小説の色合いが濃い。本作の〝主役〟ジャンの掘り下げは決して深いものではないが、劇的な終幕を経て心に残るのは、孤独な青年の苦悩と悲劇性である。感情を殆ど表さない犯罪者の焦燥が、周到な犯罪計画とリンクしていく過程が秀逸だ。どういう結末を辿るかは、母親と息子の関係性が明確となる中盤辺りで予測できるのだが、警察機構を利用して本意を遂げるプロセスの見せ方が巧い。
荒涼とした怒りと哀しみ。人間の業を抉り出すルメートルの眼差しは鋭く、余韻も深い。 -
購入済み
多くの方がおっしゃる通り
先にアレックスを読んでしまうと、結末が分かった上でストーリーを追うことになるため少し残念でした
とはいえ、アレックスとは全く違う仕掛けが施されているため後半に受ける驚きは色褪せることがありません
グロテスクな描写の多さではアレックス以上でしたが、男性でありながら女性の登場人物の造形がとても巧みな作家なので女性読者を多く獲得すると思います -
Posted by ブクログ
ネタバレさすがルメトール、ストーリーテリングは秀逸。ヒトラーが台頭する混乱のフランスを舞台にした没落貴族女性の復讐劇。ルメトールは、前半はこれでもかこれでもかという悲劇(わが子が車椅子になってしまったり、周囲に騙され資産を失ったり)を描き、後半はこれら騙された相手を秀逸に復讐する物語を描く。これだけの登場人物を魅了あるキャラクターに仕立て上げ、それぞれを絡ませながら、なおかつ面白く描くルメトールに脱帽の一冊。
ただ今までの作品に比べて鈍った印象。登場人物たちが多くてそれぞれの人物の描きわけが短かったり、はじめから全て関係した一つのストーリーだったからだと思う。今までの作品は、章によって登場人物が書き分けられ、まったく関係のない話が進行していく。読者はその二つのストーリーを楽しみつつ、どう絡み合っていくのかと期待する。今作はそのような点があまり見受けられなかったのでそのように感じた。決してつまらなくはなく、新規性に欠いた故の星一つマイナス。