薬丸岳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
薬丸岳が徹底的な取材を元に構想17年を費やした渾身の法廷リーガルミステリ。
それにしても刑事弁護人とは割に合わないというか過酷な仕事だと思う。ニュースなどで残虐な殺人事件が報道された際に「何でこんな鬼畜の刑を軽くしようとするんだよ!」と弁護士に対する反感を持ったことは一度や二度ではない。まして被害者遺族にしてみれば犯人の肩を持つ共犯者と同じような人間に見えるのだろう。作中でかつて主人公・持月凜子の父親を殺害した犯人である被害者の母親が「殺されて当然」と言った言葉は背筋を凍らせる。刑事弁護人の存在意義とは何か、本作の主要なテーマの一つだ。
犯人がなぜ罪を犯さざるをえなかったのかという点を詳細に描写した加害者への寄り添いの姿勢は薬丸岳の作品ならではという感じがする。
最大のミステリ要素は、供述が二転三転し、徹底的に真実を隠そうとするのは何故か。その真実とは何か。それが最後に明らかになった時、もやもやが一気に解消されたカタルシスと共に関係者全員へのやるせない気持ちを抱いてしまった。
どんでん返しを目的としたテクニカルなリーガルサスペンスではなく、人間描写を中心としたリーガルミステリとして仕上がった持月凜子と西大輔のバディは是非シリーズ化してほしい。 -
Posted by ブクログ
岳さんも言うように、これまでで一番ダークな内容だったと思います。
手を止めて休憩を挟みたくなるほどの心地悪さの中で読み進めながら、最後は少しでも心が晴れるような結末を願っていました。
コロナによって全世界の人が苦しみ、拘束され、不自由な生活を強いられたと思います。その中には登場人物のように家族の関係を疑い、大きく変化させてしまった人もいたはずです。そう考えると、単なるフィクションと言い切るにはどこか納まりが悪く感じました。孤独や寂しさ、頼れる人もいない状況、そして劣悪な環境から逃げ出した人々のことを思うと、なんとも苦い気持ちになります。
ストーリー展開をあれこれと考えながら楽しむ一方で、それぞれの幸福を願っていました。けれど全員がそうはならない――その事実がとても悲しくもあり、最後まで手を止めずに読み切ってしまいました。 -
Posted by ブクログ
自分は何を選択するのか。
目の前の取り繕いを取るのか、贖罪を取るのか。
罪を自責し続けるのか、全てを無きことにするのか。
ことが大きくなればなるほど、人の顔が浮べば浮かぶほど間違える選択。
そのやりきれない、報われることのない状況をすべて自分の弱さ(選択)であると嘆く。
一つの作品として構成も素晴らしかった。なによりも、ここまで感情が揺れ動くほどのリアリティと取材力に感服した。
"お父さんはひとつ気づいたことがあった。
笑うことができなくなった。
そうなんだ。逃げ続けているかぎり、人は心から笑えなくなるんだと思う。
罪を犯した息子にこんなことを求めたら、被害者のご遺族に申し訳が立たないが、父親としては、いつかおまえが心から笑えることがあってほしいと願う。父より"