薬丸岳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
↓以下ネタバレです
どんな理由があったにせよ、相手を殺すことは決して許されることではない。その事を理解している上でも、優斗が殺されてしまった原因を作ったのは、優斗による翼への激しいイジメである。そのため、私の中ではどっちに同情するとしたら、加害者「翼」の方だった。
少年院を出たその当日から更生できるとは限らない。心の問題は、常にグラデーションで変化していく。
さらに私は、被害者優斗の父・「藤井」に常に嫌悪感を持ち読んでいた。
イジメの主犯格である優斗の指図で、翼はハムスターの餌の万引きを余儀なくされた。この事件において、優斗の父・藤井が、弁護士の知識を利用し翼をかばったことについて。これは、弁護士として、また大人としての正義感100%から来るものであったとは思えない。なぜならば、事件の概要がわかった時点で、優斗が行った卑劣なイジメを損害賠償の訴訟を起こす事をさしがねとして、公にしないでほしいと翼の父に頼んだ事である。ハムスター万引き疑惑の時点ですでに、藤井は息子優斗の悪事をうすうす勘づいていたからではないか?ここで万引きが公になれば、今までやってきた優斗のイジメが暴かれると計算したからの言動であったからだと思う。
藤井の息子優斗が殺されてしまったという理由で、優斗の行った壮絶なイジメがチャラになるとは思いたくない。
藤井にとっては辛いかもしれないけど藤井は、優斗が翼をいじめていたことについて翼に謝罪してほしかった。自分の息子がハムスターを複数回購入し、それを翼に殺させていた事、翼のペットの猫を殺させた事。この出来事に向き合ってほしい。藤井からの謝罪があれば、翼としても、「真の贖罪」また「真の更生」ができたと思う。
また、加害者の父である吉永に対して、突然、息子が殺人容疑で逮捕されたと聞かされれば動揺するのは当たり前ではあるが、それにしてもどこかしら現実から逃げているようでジレったかった。しかし苦悩に苦悩を重ねた末に、父親としての強さが徐々に備わってきていた。これから、命ある限り永遠に翼の味方でいてほしい。
印象に残った言葉がある。
「やったことの善悪よりも、子供がどうしてそれをしたのかを考えるのが親」
「殺したら、苦しまなければいけないの?」
「動物の命と人間の命はどちらが重いのか?」
「心を殺されたことと、体を殺されたことはどちらが悪いのか?」
などなど、いろいろと考えさせられた。
翼や吉永を見てて思うように、心を殺されても肉体が殺されていなければ、心が生き返る可能性はある。しかし、心が宿る肉体を殺されたのでは、生き返る可能性はゼロである。さらに肉体を殺された人の周囲の人の心が殺される。そうなると、法律以前に、肉体を殺す方が悪いのである。
優斗のしでかしたイジメは到底許すことのできないレベルだが、ここはやはり翼の方が罪は重いだろう。
藤井の家に吉永と翼が訪れた時の藤井の様子は、個人的には嫌悪感を抱きつつも、相当参っていた。加害者は生きている。自分の息子はよみがえらない。こんなことを思うのは不適切だとは思うが、藤井の悲しみによって、「復讐」は十分に果たせたのではないかな?翼とても重い十字架を背負って一生を送ることになるが、生きていさえすれば、どうにでもなる。翼にはこの先一回でも多く、心から笑えることができたらいいと願う。
追記:あくまでも報復殺人を正当化するコメントではありません。 -
Posted by ブクログ
少年犯罪小説のイメージがある薬丸さん。
今回は更に踏み込んで、教誨師である主人公と娘を殺した犯人(死刑囚)との直接対面という小説の中でしかあり得ない設定だけど、死刑の在り方や犯罪者に対しての考え方を考えさせらた。
自分の大事な人の命を奪われた時、犯人を赦すことができるのか。
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社会的に大きな犯罪を犯しても、事件報道や裁判で刑が確定後は犯人が現在どう過ごしているのか、それを指導する刑務官、教誨師が日々どんなことをしているのか知る余地がない。
刑務所と拘置所の違いについても考えたことがなかった。犯罪を犯さない限り、直接関わりを持つことがない場所だが、もっと社会の仕組みに関心を持たなければいけないと思った。
刑務所の教誨…生きる希望を持たせる
拘置所の教誨…死ぬ覚悟を持たせる
同じ教誨師でも全く内容が違うし、実際に従事している方はどういう人なんだろうと思った。
映画化、公開楽しみです。
●私の脳内配役では、
保阪宗佑(教誨師)…妻夫木聡
石原亮平(死刑囚)…若手俳優
手嶋直也(刑務官)…菅田将暉
鷲尾(教誨師)…佐藤浩市
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Posted by ブクログ
ネタバレ保阪宗祐は刑務所の教誨師をしている牧師である。
罪を犯した人に反省をさせ、社会に復帰できるよう心のケアをしている。
そして罪人は神の前で赦しをうける。
そんな仕事(ボランティア)に宗祐はやりがいを感じていた。
しかしそんな矢先、実の娘が暴漢に殺害された。
殺害の手口はかなり悪質であり耳をふさぎたくなるほどの
恐ろしいものだった…。
犯人 石原亮平
石原は娘を含め4人殺害しているにもかかわらず
まったく反省せず、死刑の判決にさえ始終 薄笑いを浮かべ、殺人に対して
あんな楽しい思いしたんだから思い残すことなくいつでも死刑になってやるよ、と
早く死刑になりたいと願っていて、生きることに希望すらもっていない。
裁判を傍聴していた娘の母親、真理は、
死刑なんてものでは、あの男に報いを与えることにはならないと。
娘の恐怖と絶望をあじあわせなければ!あの男に生きる希望を与えて
最後に地獄を味あわせてほしい。と宗祐に石原の教誨をしてくれと頼む。
宗祐も、苦痛と恐怖の中、殺されてしまった娘のため いろんな伝手により
教誨をすることになる。なかなか教誨に現れなかった石原だったが。。
いよいよ宗祐と石原と対峙することになるが。。。
宗祐がクリスチャンになったきっかけや、実の娘とのつながりなど
複雑な糸が絡み合い、今に繋がっている。
そして赦しとはなんなのか。
宗祐自身の過去の赦しも含め、
殺人犯の赦し、赦しを得た先に被害者はどんな気持ちになるのだろうか…、
とても難しい題材だった。
結末は想像とは違って、なんとなく期待外れのような気もしたけれど、
それが逆に あなたならどうする?という問いが残されたような気がしました。
宗祐もそうだったように、被害が実際に自分の身になってみると、客観的に見ることができなくなる問題である。
人を憎んでも、何も得られることはない。
その高いハードルを越えるのはかなりきつい。
それを超えたとき赦しの答えが出るのかもしれない。
映画化だと聞いて、だれがキャスティングされるのか楽しみになったし
映画の方も見てみたい。ただ結末が違うらしい。
個人的なイメージは、
保阪さん役には 鈴木亮平さん、
石原役には… 吉村界人さん(今のドラマのイメージ)
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Posted by ブクログ
薬丸岳さんの本では珍しく、終始穏やかな感情でいられた。(勿論、感情を逆撫でしてくる「極悪人」的な存在はいるけど)
フィクションだし現実にこんな形の犯罪があるとは思えない(あるのかは分からない)けど、人を想うがゆえの行動が人を苦しめたり傷つける要因になってることはままあると思う。間違いなく奴が悪いんだけど、どうすることができたのか。何がベストだったのか。
自殺も、強く言えば、自分を殺し周りを被害者にする犯罪で、苦しみに耐えきれず誰かを殺す他殺と近いと思う。殺人を手段としない早急かつ効果的な解決策はなんだろう。
贖罪も、自分が苦しむことが全てなはずはない。 -
Posted by ブクログ
ドキュメンタリーを読んでいるような気持ちになりました
なんて重くて、なんて悲しくて、なんて辛い物語でしょうか
でも決して目を逸らしてはいけないテーマだとも思いました
コロナ禍の時代が舞台です
居場所を失った者たちが「本物の家族」を求めて集い、血が繋がっていなくても「本物の家族」になれることを信じて幸せになることを目指した、そんな集団の物語でした
登場人物の視点がいくつも切り替わり、時系列も過去から未来へバラバラに進みます
それらが中盤から一気に合致していきます
残酷な結末へ向かうであろう登場人物たちが、各々の幸せを求めて必死にもがく姿は胸が締め付けられました
終盤のあのシーンでは涙がボロボロ零れました
思い出しても泣けてきます
ラストはゾクッとする終わり方で、心に爪痕を残されました…
多くの人に読んで欲しい作品です
読んで、そして考えてみて欲しいです