羽生善治のレビュー一覧
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京大名誉教授でありかつ詩人の永田和宏氏と山中伸弥氏、羽生善治氏、是枝裕和氏、山極壽一氏という超一流の人たちの講演とその後の永田さんとの対談を収録したのが本書である。
山中さんとの対談では、大学はそれまでと違い答えがある問題の正解を探すのではなく、誰も答えを知らない、もしくは答えがあるかどうかもわからないが、大切な「問い」を自分で見つけるという態度を学んでほしい、というところが心に残る。大学に入ったときにまず第一に欲しい言葉だ。自分はこれがわかっていなかった。
羽生さんとの対談では、ミスをした直後には後悔して過去に引きずられることなく「自分の将棋は次の一手からはじまる」とその場に集中する、というところが心に残る。それはすでにもう起こったことなのだ。
是枝監督が、名作『そして父になる』でのリリー・フランキーの深い演技に触れるところは印象的。ぜひ読んでほしい。
山極教授が、他の霊長類と比べて人間の一番重要な能力は「諦めない」というところという視点は面白い。
それだけの人からは、やはりとても素敵な話を聞くことができるのだと思う。
本として、軽く読める分量。対談本としては、コンセプトも理解できるし、よくできている方だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2人とも非常に難しいトピックを一つ一つ噛み砕いて、自分の言葉で語っているのが非常に印象的。
AIのトピックをお互いの専門分野である将棋やiPS細胞研究の話をアナロジーに自分の中に腹落ちさせた上で会話をしているためだと思われる。
AIに関して何か目新しい示唆があるかというとあまりないが、2人の賢さと知に対する誠実さが分かり読んでいて楽しい。
以下印象的だった箇所(抜粋)
[羽生さん]
・直感、読み、大局観
直感で2.3手に絞り込み、読みでそこから2,3手先をシミュレーションする、3番目に大局観で全体の流れを俯瞰し先の戦略に基づいて打ち手を切る。
そして上記は年齢により利用割合が変わってくる。頭の能力が高い若い内は読み中心、年齢を積むと経験に基づく直感、大局観を利用する。
要はそれぞれの年齢に応じた強みを伸ばす事が重要
[山中さん]
・新しい発見をする際のパターン
1.天才型。アインシュタインのような天才が着想する。
2.他の人も考えているアイデアを仮説検証の結果、予想外の結果が出てそこに食らいつく。
3.みんなこれが出来たら素晴らしいと思っているけど諦めていることに挑戦する。
私は2.3を追求する。 -
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お二人の対談を通して、iPS細胞・将棋・AIに関する最新の知見がわかりやすくスーッと入ってくる。読みやすくて知的好奇心を喚起される、とてもコストパフォーマンスのいい本。
羽生さんは、将棋以外の分野に関しても非常に博識であることに驚く。もともと、常日頃から勉強を怠らない方なのか、この対談のために相当準備されたのか。棋士としてだけではなく、人間としても高まろうという意識が垣間見えて感嘆。
AIに関しては、「人類はどうやって共存するか」ということが今後のテーマなんだろうが、羽生さんの話から、「暗黙知」とか「意外性」とか、その辺りにヒントがありそうだと思った。
藤井聡太さんは羽生さんから見ても驚異的な人である、ということも知った。棋士の世界はとても奥深くて大いに興味をそそられる。
iPS細胞は、治験も始まっているそうなので、とにかく早く実用化してほしい、ということに尽きる。救われる人がたくさんいる。
「情報は収集するだけではダメで、それを自分のなかでどう吸収して役立てるかが重要である」というのは、色んなデジタルデトックスの本に散々書いてあったことだが、羽生さんも全く同じことを言っていた。 -
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チェスの天才、ボビー・フィッシャーの評伝。最高にエキサイティング。
フィッシャーのろくでもない人格や冷戦時代のポリティクス(米ソのチェス対決はそのまま代理戦争だった)の多面性の描写も秀逸だが、これを読んで改めて痛感したのは、「チェスは高度な心理戦だ」というごく当たり前の事実。我々日本人はとくに「世紀の決戦」に侍精神を求めがちだ。が、世界レベルの修羅場では、冷笑的なしぐさで相手をいらだたせ、対戦に応じて戦略的に引き分けを選択して強敵との戦いのために体力を温存する。あらゆる手練手管が動員される。有利な局面で勝利を予感し、ピンチで動転し、それが思いもよらぬ一手(多くの場合は過ち)を導くことになる。
フィッシャーは、(彼の被害妄想的な断定も含めて)ソ連チームのあらゆる「妨害工作」にたった一人で立ち向かい、勝った。そして、20年を経て再度宿敵スパスキーと対決するとき、彼には賞金の額から会場の設営、チェスの駒のサイズに至るまであらゆるわがままを通させるだけの商業的価値がついていた。卑怯だ、ずるいと騒いでも既存の秩序は結局びくともしない。勝利し、自分でルールを変えさせる。ビジネスにも通じるような、過酷だが、ある意味フェアとも言えるリアルな「戦い」の描写に読んでいて鳥肌が立った。
天才にして不遇。末尾の解説で棋士の羽生善治氏が極めて的を射た言い方で触れているように、フィッシャーはモーツァルトに似ている。彼自身は幸せではなかったかもしれないが、彼の残した棋譜は語り継がれる。「音楽を深く勉強しなくてもモーツァルトの素晴らしさを理解できるように、フィッシャーのチェスもルールが解ればその力強い指しまわしに魅了されるはずです」(P.521)。 -
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ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中先生と、将棋の永世七冠の羽生善治さんによる対談。
AIが将棋や研究に与える影響から始まり、未来社会の絵姿まで、話題は多方面に及びます。
羽生さんが、藤井聡太七段のことをどう捉えているのかも披露されて、興味深くよみました。
▼羽生さんのAI観。
人間は、連続性・一貫性に美しさを感じるけれど、AIはその場の最適解を求めることしかしない。それが違和感につながっているが、AIの指した手が将棋の戦法を変えた例もある。人間の美意識が将棋の可能性を狭めているのかもしれない。一方で、AIを絶対視するのは危険。AIは人間に比べて間違える可能性が少ないというだけ。ディープラーニングで何層にもわたって検討する結果、思考プロセスがブラックボックス化している。プロセスを説明できるようにならないと、人間社会に完全に受け入れられる可能性は低いのではないか。
▼山中先生の独創を生み出す3つの方法
いいアイデアだと思っても大概は他の人がすでに考えていることが多い。人と違うことをやろうと思ったら、3つの方法しかない。
一つ目はアインシュタインのようにすごい天才。二つ目は、人がそう考えるだろうことを自分も思いついたとき、まず実験してみる。予想通りの結果がでればそれはうれしいけれど、結果が予想と違うときが問題。自然は考えているよりはるかに複雑で、実験という形で問いかけると、思いもよらない答えを返してくれる。この時がチャンス。三つ目は、他人も自分も、あったらいいけど無理だろうと考えていることに挑戦する。私は天才じゃないので、二つ目と三つ目にしぼってやってきた。特に二つ目を重視してきた。
▼羽生さんの将棋に臨む姿勢
将棋も何度かイノベーションを経てきた。棋譜のデータベース化、将棋ソフト、今回のAI。技術の流れに取り残されないためには、これまで得た知識を捨てる勇気がいる。ベテランになるとなかなか捨てられないが、若手は先入観なしに新手を考案できる。これまでの知識が思考の邪魔になりうるということを肝に銘じないといけない。
比類ない実績をあげながら、今なお最前線で走り続けるお二人のお話には説得力がありました。
羽生さんには、棋士どうしが局面検討をしているとき、たちどころに過去の同一局面の実戦例をいくつも指摘したという伝説があります。それほどの勉強量、記憶量があってなお、「捨てる」ことを強調される。学び続けること、謙虚であることの大切さを教えていただきました。 -
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直感には論理的思考の蓄積が必要。
余白がなければ、直感は生まれない。リラックスした状態で集中してこそ直感は生まれる。
好きなことには、関心を持って焦点を当てられる。一方苦手なものにも得るものはある。
直感の醸成は自分1人では成し得ない。相手の力を活かし、自分の力に変えることが、自分の創造性、やる気の継続へとつながる。
不安定な時間に対して耐性を持つこと。情報を積み重ねただけで成果が見えるような、性急な進化を目指してはいけない。
時にはいさぎよくあきらめることも必要。
目標は一気に課してはいけない。少しずつ積み重ねることによって、気が付けば着実に前進している。という自然に出来ることを続けていくという健全さが必要。
著者に興味があり、手に取った。普段著者が考えられていることが垣間見えとても面白かった。