羽生善治のレビュー一覧
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面白い対談であった。大きな仕事をし、大きな成果を上げている二人には、似たところがある。突出した偉人は、他人とは違うことをやってきている。社会の多様性の重要性を改めて認識した。
「(ゲノム編集技術)「クリスパー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)」という新しい技術が開発されて、その精度の高さと簡易さから一気に汎用性のある技術となりました。根底にあるクリスパーと呼ばれる遺伝子配列を発見したのは、九州大学の石野良純先生です」p109
「十代のころはみんな、粗削りなところがあるんですよ。でも藤井さんにはそういったところがまったく見当たりません。すごく完成されています。連勝中、対局の中ではっきり不利になって危なかったと見えた局面は数えるほどで、ほとんどは圧勝です。これはものすごいことです(羽生)」p122
「四段になろうと思ったら、最低限の定跡やセオリーを身に着ける必要があり、それを習得するにはけっこう時間がかかるんです。すべて押さえるまでに二十歳くらいになっておかしくありません。ところが藤井さんは十四歳でほとんどすべてに対応しています。これは驚くべきことで、もうセンスが抜群にいいとしか言いようがありません」p123
「先端技術の開発で、基礎研究の成果から実用化・製品化するまでに「死の谷」と呼ばれる資金的なボトルネックがあります。日本では今まで大学発の優れた研究が多かったのですが、その「死の谷」を乗り越えられず、実用化段階でアメリカに先を越されてしまったケースが少なくありません。ゲノム情報を読み取るシーケンスの技術も、もともとは日本の会社が先陣を切っていたんです」p190
「脳以外は、超大金持ちがお金にモノを言わせて臓器や細胞などの移植を続ければ、理論的には更新できます」p204 -
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タイトルが興味を引いた1冊
本当に凄い人たちが、目標を見つけたり、挫折したり
若い頃の初々しくておもしろい話しが講演と対談と言う形で描かれている。
また 登場する人たちがIPS細胞の山中伸弥さんや、将棋の羽生善治さん、
その時はまだカンヌ映画祭のパルムドールは受賞していないけれど、ドキュメンタリーのような映画で定評のある是枝監督、
京都大学の霊長研究の山極さんに関しては、名前は知らなかったがモンキーパークに何度も足を運んだ私としては、もう 興味津々のラインナップだ。
どの人の講演内容も面白くて、機会があったら生のお話を聴きたいと思った。
特に山極さんのゴリラとチンパンジーの社会、そして人間の社会における「目と目を合わせる」意味はとても興味深かった。
「白目を持つのは人間だけ」という話の中で、目の動きから言葉がなくても感じる相手の感情、目での意思疎通・・・・
メールやインターネットの世界に慣れて面と向かってのコミュニケーションが苦手になっていく人間たち。
日々 感じていた事なので興味深く読めた。
とても読みやすく、お勧めの1冊だ。 -
Posted by ブクログ
今の情報洪水の中で、情報にどう立ち向かうか
と言うことは、情報を集め、整理するより、
捨てることの方が重要だと思う。
将棋で、数々の実績を積み重ねている羽生善治が
「捨てる力」を 出版しているので、読んでみた。
何を、どのように、捨てて、捨てることで何が変わるのか?
ということを知りたいと思った。
「変化を求める攻めの攻勢と状況に合わせた思考の厚み」
いわゆる ポジションを明確化して、攻めていくこと。
知識を積み重ねて理解していくことで、知恵に変える。
どういう風につかったらいいのか?
知識では変わらない。
現実主義と理想主義が一人の人間の中に存在する。
通用してきた記憶は、保守的になり、足を引っ張る結果になる。
情報は 分類、整理しても、どこが問題かをしっかりとらえることだ。
一番大切なのは、形勢判断なのだ。
安全なところにいたい。リスクを避けたい。現状維持。
それでは、形勢を帰ることはできない。
個人の波と時流の波をどう会わせるのか?
努力と成果のモノサシが、重要で、
心で考えることが必要である。
曇りなく自信をもって、次にすすむ。
最後に必要なのは、継続する力がポイントとなる。 -
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一部になるが、「恐怖」と「美意識」と「人工知能」を紐づけていたところが面白かった。
ここに打つとまずいと人間が思うところに、ソフトは打ってくるところから、「人工知能には恐怖心がない」と言う。人間は、思考の死角や盲点など、防衛本能や「生存本能」に由来しているように思えるから、人間との共存においては、恐怖という感覚が必要であろうと。
別の観点では、「美意識」を軸に、これが、「安心」や「安定」のような感覚と近しいものであるとし、棋士が手を絞り込むとき、「美しい」と感じられるのが基本の形に近い見慣れたものだからであり、人間の長い歴史のなかで獲得して来た本能として、危険察知(恐怖)の延長線上にあるのではないかと。
ただ、人間の思考が全て正しいという立場ではなく、人間が知らない領域を人工知能が拡張してくれる可能性にも言及していたりする。
ディープマインド社のデミス・ハサビスとの対談で、人間が優れているポイントとして「柔軟性」と「汎用性」という点に触れてられていて、取り敢えず、直近の焦点はこういうの所の実現に向かうのだろうという潮流も書かれている。
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羽生さんと人工知能、なんの関係があるんだろうと思った。
将棋ソフトだった。
昔、父親が夜中に勝つまで必死にやっていたのを思い出した。
洞察の深さは将棋だけでなく、人工知能への知識にも転用されている。
技術者よりも意味合いを正確に掴み、芯を捉えているように感じる。
それでいて一般的な言葉で話してもらえたり、
また棋士としての経験や意見を交えて話してもらえることで、
人工知能というものがどういうものなのかを感覚的に掴みやすいようになっていると感じた。
さすがは羽生さんで、さすがはNHKなのかもしれない。
(以下抜粋)
○さて、そのアルファ碁はどのようにしてあれほどまでにつよくなったのでしょうか。
ハサビスさんに尋ねたところ、その直接的な要因の一つは、
アルファ碁同士でとてつもない数の対局をこなしたからだということでした。(P.19)
○将棋ソフトに面白い事例があります。
それは、ソフトの探索部分に、
「Stockfish」というチェスの公開プログラムを使っているものが多い、という事実です。
(P.33)
○彼の印象は、「努力に裏打ちされた自信家」だ。
なにしろ毎晩夜中の十二時から朝四時までを、
世界中の論文を読む時間にあてているという。(P.53)
○棋士が次に指す手を選ぶ行為は、
ほとんど「美意識」を磨く行為とイコールであるとさえ考えています。
筋の良い手に美しさを感じられるかどうかは、
将棋の才能を見抜く重要なポイントなのです。(P.75-76)
○「音楽というのは数学的な処理がしやすい分野であり、
そこがバッハ風、モーツァルト風などの作曲ソフトを作りやすい理由ではないか」(P.139)
○しかし、私は、「美意識」には、「時間が」大きくかかわっているように思うのです。
(P.142)
○実は、自然界では、むしろ生物の個体それぞれが遺伝的に多様性を持つことが、
進化のカギとなっています。
とするならば、全員が同じ選択をすることは、
むしろ全体から見ると、多様性が失われていて、
かえって進化が止まってしまう気もするのです。(P.206)
○形成判断のような勝負の感を鍛えるためにと、
目先を変えてラクビーやテニスなどスポーツの試合を観戦したりもしています。(P.209)
○羽生さんの負けが続くと、
「いよいよ衰えたか」「世代交代か」という文字があちこちで踊るが、
私は少し違った見方をしていた。
失敗してでもつかみたい何かがあるのではないかーー。(P.227) -
Posted by ブクログ
2016年5月に放送されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」の取材をもとに、羽生さん自身が、その後に重ねた思索等を織り込んだ著書。
羽生さんは、1996年に複数のプロ棋士へ行われた「コンピュータがプロ棋士を負かす日は?」というアンケートで、米長邦雄氏、加藤一二三氏、村山聖氏らが真っ向から否定する中、その日を「2015年」と答えていたのだそうだ。そして、人工知能の進化を肌身で感じ、それでいて、その進化を、人間を脅かすものと否定的に捉えるのではなく、人間の新たな可能性を切り拓くものと肯定的に考える人であるがゆえに、NHKは番組のレポーター役を依頼したのだという。
「現在、電王戦を中心としたコンピュータ将棋と人間の棋士との間で起きている様々な事象が、今後、人工知能が社会で応用されていくときに想定される事態を先取りしているように思える」と語る羽生さんは、棋士がコンピュータ将棋を相手にするときに直面する大きな違和感は、「人工知能の思考がブラックボックスになっていること」と「人工知能には恐怖心がないということ」であり、人工知能が今後さらに大きな進化を遂げ、社会的な位置付けが高まったときに、それらは大きな問題となる可能性があると指摘している。
また、目的を限定した専門人工知能の進歩は順調に進みつつある一方、何でもできる汎用人工知能の開発の道のりは緒に就いたばかりである点について、汎用人工知能とは、人間の脳はどのように知性を成立させているのか、に密接に結びついたものであり、脳の解明と汎用人工知能の実現は「タマゴが先か、ニワトリが先か」のように、いずれかが進めばもう一方も前進する関係にあるのではないかと語っている。
そして、我々の今後の人工知能との付き合い方として、人工知能の判断はプロセスがブラックボックスであり、かつ決して100%正確なものではないことを、しっかり認識する必要があること、人間と人工知能が共存していくプロセスにおいて、いかに人間らしい価値観や倫理による判断を人工知能に備え付けさせるかが大きなテーマとなること、を挙げている。
そして最後に、将来高度に発展した人工知能が登場して、人間の知性と比較されるようになってきたときには、人間の知性の特徴が浮き彫りになり、更に、人間も人工知能も包括するような「知性」とは何かが解明されていくのではないか、と結んでいる。
人工知能の専門家が、その仕組みや産業への影響などを解説したものとは趣が異なり、最強棋士・羽生さんらしい切り口での、人工知能についての考察、人工知能との付き合い方が語り尽くされた、ユニークな一冊である。
(2017年11月了)