羽生善治のレビュー一覧
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言わずと知れた将棋棋士、羽生さんの著書。
新書だけれども、エッセイ的な感じでさらりと読める。棋士としての考え方がいろいろとつづられているが、将棋に限らず仕事やプライベートでも同じような状況や思考になることはあるなと思いながら読んだ。
たとえば、複数の選択肢をシミュレートして、どちらもうまくいきそうにない場合、最後に思いついた別の選択肢がやけにうまくいきそうに見えることがあるが、これは「なかなか決断できず苦しんでいる状況から、一刻も早く抜け出したい」という心境が生み出している錯覚であることが多いという台詞。身に沁みます。。。
情報過多の時代に、消費ばかりの「情報メタボ」にならずに、供給サイドにも軸足を置いて需給バランスを保つ、ということもそのとおり。ただ、供給にはエネルギーがいるので、言うは易しの行動なのだが。
そしてこの本にはまだ藤井聡太は出てこない。 -
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ネタバレ本書の「はじめに」に、棋士は「直感」と「読み」と「大局観」の三つを使いこなしながら対局に臨んでいると述べ、そのうち「読み」については「計算する力といっても過言ではない」と述べている。「大局観」については、著書を読んでくれと言われている。そして、本書で「直感」について語ろうというのだ。
ただ、本書のタイトルは「直感力」であるが、それだけについて語られたものではなかった。将棋という勝負の世界全般について語られている。自身の期待としてはプロの棋士の直感というものがどういうものかを知りたかったので、それについて述べられた最初の二章くらいがとても面白かった。
第一章「直感は、磨くことができる」
「直感は決して先天的なものではない」という言葉から、「直感」は経験により得られるということだが、その得られるプロセスの説明が非常い興味深かった。
「地を這うような読みと同時に、その状況を一足飛びに天空から俯瞰して見るような大局観を備え持たなければならない。そうした多面的な視野で臨むうちに、自然と何かが湧き上がってくる瞬間がある。」
羽生さんと対談されたカーネギーメロン大学の金出先生の言葉も並べてみると面白い。
「それまでは毎回発火していた脳のニューロンが、その発火の仕方がいつも同じなので、そこに結合が生まれ、一種の学習が行われたということではないか」
「直感」といっても、それは膨大な思考の蓄積の中から生まれるものというイメージだ。昨日今日でふと直感力が身につく者でないことが分かる。
さらに、次のような言葉は、プロ棋士の「直感力」がいなかるものかを少しでも理解する手立てとなるように思う。
「つまり、直感とは、論理的思考が瞬時に行われるようなものだというのだ」
「もがき、努力したすべての経験をいわば土壌として、そこからある瞬間、生み出されるものが直感なのだ」
「湧き出たそれを信じることで、直感は初めて有効なものとなる」
「惑わされないという意志。それはまさしく直感のひとつのかたちだろう」
「将棋は、ひとつの場面で約八〇通りの可能性があると言われている。私の場合、その中から最初に直感によって、二つないし三つの可能性に絞り込んでいく」
「直感は、ほんの一瞬、一秒にも満たない短い時間の中での取捨選択だとしても、なぜそれを選んでいるのか、きちんと説明することができるものだ」
「直感を磨くには、多様な価値観を持つことだと思う」
次の第二章「無理をしない」では、冒頭に「余白がなければ直感は生まれない。リラックスした状態で集中してこそ、直感は生まれる」という言葉が紹介され、その意味について解説が加えられる。
「余白がある」ということは、「無駄がある」と同意のようだ。無駄とは「役に立たないこと」とか「間違い」とかを意味するようであるが、そういうことの経験も一定量を超えると、それが全体に対して有効になってくるという。「失敗は成功の母」の考えに近い。
リラックスした状態で集中する、その集中とはいかなるものか。
著者は、集中力を高めるトレーニングとして3つ挙げている。
①何も考えない時間をもつ(その状態からスタートして、徐々に深く潜っていくのだそうだ)。
②じっくりと一つのことについて考えをめぐらせる習慣を作ること。
③時間と手間のかかる作業に取り組む(=集中力持続のために)。
すなわち、「集中力」もまた昨日今日で簡単に身につくものでないことが分かる。
無駄と思えることも、失敗も、多くの経験の蓄積を重ね、そういう取り組みの中でじっくりと一つのことについて考えをめぐらせたり、時間や手間をかけてでも取り組んでいくという地味な作業の集積の結果として、すぐれた「直感力」が獲得できるということになる。何事も真剣さを忘れず、経験を積み重ねよということだろうか。 -
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パラパラと、印象的な言葉を。
•以前は才能は一瞬のひらめきだと思っていたが、今は十年、二十年、三十年と同じ姿勢で同じ情熱を傾けられる人のことだと思う
•どの世界でも、教える行為に対して、教えられる側の依存度が高くなってしまうと問題である
•勝つことだけを優先していると、自分の将棋が目の前の一勝を追う将棋になってしまう。今はいいが、将来を考えると「よくないな」と気づいた
•いつも自分に有利な局面ばかりということなどないし、その逆に、いつも悪い局面ばかりということもない。だから必要以上に楽観することも悲観することもないし、瞬間的な出来事に一喜一憂することもないと思う
•サルトルは「他者から見られることはものに変化してしまうことだ」と述べている。ものにならないためには、投企として、そのまなざしを向け返すのだという
•ブレイクスルーの重要性。努力によって自信と安心が得られる。 -
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将棋における「先を読む頭脳」を研究している。前半は主に「将棋脳」とでも言うべきか、将棋に長けた人達の思考方法を研究している。後半は主にコンピューター棋士の発達の仕組みの研究だ。
将棋は他の似たようなゲーム(チェスなど)に比べて「取った駒を使える」のが独特のルールで、それが指し手の複雑さになり、チェスに比べてコンピューター棋士が強くなる速度が遅れた。その性能はソフトよりもハード、計算速度の早さで決まるものらしい。
羽生氏は「コンピューター棋士は指し手の読み込みは早いが、人間味のある指し方はできない。それができるようになれば面白い」と語っている。コンピューター棋士の研究だけに留まらず、人工知能の研究などにおいても同様だろう。どんなにコンピューターが強くなってもプロ棋士という職業は無くならないことが伺える。「揺さぶりをかける」「戦法を変える」など、相手との心理戦は、人間同士の勝負の大きな魅力だ。 -
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ネタバレ
なにかを成し遂げた人の言葉は重いし響くなと思った。その辺の人が言ってたら素通りしてしまいそうなことでも!
特に印象に残ったのを2つ。
·子供の頃から小さなことでも「何かを成し遂げた」経験はすごく大事だということ。自分の中に「努力と成果のモノサシ」があることで不安な時間にも耐えて努力することもできれば、自分には向いてないと諦めもつく。
·どんなことでも前例がある。自分が置かれてる状況や悩みは既に誰かが経験してるケースがほとんど。どうやってそこから脱出するかはじっくり探せば絶対に見つかる。
特に後者については今ものすごく悩んでいてそこから脱出する術もわからず、諦めかけている皆に読んで欲しいなと思った。
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▼目的
・上司のお勧めの本。物事を対極的に捉えることで動作に余裕が生まれるのではと考えたから。
・「テンパるのは自己位置を把握していないから」という格言に近しい考え。
▼エッセンス
⭐️物事に取り組む前に、一呼吸付き、戦局の全体像を俯瞰すること。
・そして何通りもの手を考えること。
・プロ棋士は数千ものパターンの手を考えるが、どれが適切かは、直感で大体分かってしまう。瞬間で3手に絞れる。その直感は経験によってのみ磨かれるのだとか。
・リスクにきちんと向き合い、リスクに伴う恐怖や不安に打ち勝つことが永久的にリスクを取り続ける王道。
・1番手強い敵は漠然とした不安。
・最も良いパフォーマンスを発揮できる状態は、リラックスして落ち着いて楽しんでいる状態。
・「地道に、確実に、一歩っぽ歩み続けることができる」問うことが最も素晴らしい才能。
・「習うより慣れよ」。慣れてくれば疲れないもので、次にやることの負担も減る。
・コーチングのコツは、「教わる側は何が分かっていないのかを、教える側が素早く察知すること」
・記憶の仕方は、切り捨てられた枝に関して、全体から見た位置づけや意義、価値などを知っておくことが記憶を蘇られせるヒント。関連づけて記憶すること。一つ一つ紐を辿れば、思い出せるようになる。
・最終的に「こうなるのでは」という仮定を作り、そこに「理論を合わせていく」ということ。
・直感とは、数多くの選択肢から適当に選んでいるのではなく、自分自身が今までに積み上げてきた蓄積の中から経験則によって適当に選んでいる。
・将棋にハマる理由は、いくらやっても勝つためのコツがわからないこと。好奇心や探究心がさらに掻き立てられ、ますます将棋にのめり込んでいく。 -
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ネタバレ山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長と、羽生善治棋士の対談形式になっています。
科学と将棋の世界でのAIの位置づけや今後どのようになっていくのだろうかというお話が、それぞれの専門の立場で語られて非常に興味深かったです。
帯に書いてあるような「10年後、100年後の世界の予言」は出てこないのですが・・・。
本書の中で、「将棋で言えば、現状、AIは過去のデータを基にその場その場で一番いい手を指してくるのに対し、今日は攻めて行こうとか、持久戦でいこうといった「対局の流れ」から次の手を指すことはできない」というのが印象的でした。(もちろん今は流れを読むような研究も進められているようですが。)
そして、人間と機械(AI)の大きな違いの一つに、人間が必ずしも「最適解」を選んでいるわけではないという事も、言われてみればそうだなと思います。
「成功する確率は1%ですよ」と言われたからといって、チャレンジするのを諦めるのか?というと、そうではない場合も多いですからね。むしろ失敗から得られるものも数多くある。人間の可能性は「わざわざ最適解を求めない事」に残されているのかもしれませんね。
気軽に読める内容なので、頭を休めるのにもいい本だと思います。 -
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山中先生は当然として、羽生さんの知識というのか教養の深さに驚きました。AIについて、かくも深く知っているとは。
シンギュラリティは、私は来ないと思っているのですが、そういうことよりも、大切なのは、人間を特徴付ける一つである「知能」とは何なのかを考えてみること、そしてまた、人間とは何なのかを考えてみることだと、この本を通して思いました。
本書の最後の方で、山中先生の「生物って本当にすごいです、人間にしてもよくこんな精妙なものができたなと思います。例えば進化論が説明するような偶然の産物だけで本当に僕たちはできているのかなと感じる時もあります。」との言葉が一番心に響きました。 -
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羽生さんのような、いわゆる“凄い”人が何をもって判断しているか、羽生さんなりに自己分析された本です。
個人的にですが、半分は共感できますが半分は共感できない、そんな内容でした。
羽生さんはこの本を40代前半で記されているので、その年代に近い方々には、“自分を信じて判断してね”といった内容は響くと思います。
一方、現在20代の自分には、その判断材料となる経験が浅く、またその経験の積み方にも不安があり、どうにも納得できませんでした。
20代向けの自己啓発は大体、
・熱中できることを見つけろ
・熱中できることに集中できる環境に身を置け
・挑戦あるのみ
と書いてありますが、羽生さんはそれを前提とした上で、
・集中しすぎないで
・空白の時間、他のことに費やす時間も大切にして
と言ってる気がします。なので、上記を前提とした状況にある人には、今後頑張るエネルギー源になる本だと思います。
久しぶりに自己啓発系を読みましたが、抽象化すればどれも同じ内容なので、後はそのバックグラウンドとなる内容が誰に刺さるかを考える編集者の腕が問われてる気がします。そういう意味では、中高年向けの表紙に対して20代の自分が手を取ったのがちょっと違ったのかもしれません。