あらすじ
「もし、『ボビー・フィッシャーはどんな人?』と聞かれたら、『チェスの世界のモーツァルト』と私は答えます」(羽生善治)。すなわち、誰もが認める天才である。その天才性を棋譜を追うことで簡単に知ることができる。そして、天才としての彼とはまったく別の人間性も有している――。それが、不世出のチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーです。
13歳にしてクイーンを捨て駒とする大胆華麗な「世紀の一局」を達成し、翌年、全米王者に。東西冷戦下、国家の威信をかけてソ連を破り世界の頂点に立つが、奇行を繰り返したあげく表舞台から失踪。ホームレス寸前の日々の末、日本で潜伏生活を送る――。アメリカの神童は、なぜ狂気の淵へと転落したのか。少年時代から親交を結んできた著者が、手紙、未発表の自伝、KGBやFBIのファイルを駆使して描いた、輝きそして壊れた男の評伝。羽生善治氏による解説付き。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
伝説的なチェスの天才、ボビーフィッシャーの生涯。グランドマスターになったりロシアのマスターたちとの戦いのあたりまでは、才能ある主人公の痛快な活躍劇として楽しめる。基礎の基も知らないのに、フィッシャーのような全能感を感じておもむろにpcでチェスゲームを立ち上げてみたりさえする。
そこからの転落人生は、それまでヒーローだった彼を応援しながら読んでいた人にとってはページをめくるのも億劫なくらいに、彼が世間から疎まれていく様が描かれ続ける。再上昇はほぼないと言ってもいい。そしてそのままのたれ死ぬのである。人の不幸が好きなある種の人たちにとっては前半のそれよりも遥かに読み応えがあるに違いない。
一粒で二度楽しめる、そんな感じ。
Posted by ブクログ
チェスの天才、ボビー・フィッシャーの評伝。最高にエキサイティング。
フィッシャーのろくでもない人格や冷戦時代のポリティクス(米ソのチェス対決はそのまま代理戦争だった)の多面性の描写も秀逸だが、これを読んで改めて痛感したのは、「チェスは高度な心理戦だ」というごく当たり前の事実。我々日本人はとくに「世紀の決戦」に侍精神を求めがちだ。が、世界レベルの修羅場では、冷笑的なしぐさで相手をいらだたせ、対戦に応じて戦略的に引き分けを選択して強敵との戦いのために体力を温存する。あらゆる手練手管が動員される。有利な局面で勝利を予感し、ピンチで動転し、それが思いもよらぬ一手(多くの場合は過ち)を導くことになる。
フィッシャーは、(彼の被害妄想的な断定も含めて)ソ連チームのあらゆる「妨害工作」にたった一人で立ち向かい、勝った。そして、20年を経て再度宿敵スパスキーと対決するとき、彼には賞金の額から会場の設営、チェスの駒のサイズに至るまであらゆるわがままを通させるだけの商業的価値がついていた。卑怯だ、ずるいと騒いでも既存の秩序は結局びくともしない。勝利し、自分でルールを変えさせる。ビジネスにも通じるような、過酷だが、ある意味フェアとも言えるリアルな「戦い」の描写に読んでいて鳥肌が立った。
天才にして不遇。末尾の解説で棋士の羽生善治氏が極めて的を射た言い方で触れているように、フィッシャーはモーツァルトに似ている。彼自身は幸せではなかったかもしれないが、彼の残した棋譜は語り継がれる。「音楽を深く勉強しなくてもモーツァルトの素晴らしさを理解できるように、フィッシャーのチェスもルールが解ればその力強い指しまわしに魅了されるはずです」(P.521)。
Posted by ブクログ
早熟の天才だが、人生はまったく幸せとは言えなかった。反ユダヤ的な宗教観をもち、さらにはアメリカやソ連に狙われているという妄想も持ってしまった。お金にも執着し、そのことでいろいろと損をしている。結局世界チャンピォンになった29歳までが絶頂で、そこからはチェスのキャリアもあまりつめなかったように思える。ただ、チェスでの圧倒的な才能、自分が最強という自信や、チェスに関する姿勢、異常なまでの勉強量、そういったもの魅了される。それ以外は全くかわいそうな人としか言いようがない。彼の忌み嫌うゲーリーカスパロフは人生もそつなくこなし、チェスでも彼より多くの業績を積むことができたと思う。
Posted by ブクログ
何かあらすじを読んで読みたくなったが、ちょっと想像していた話の展開と違った。チェスをまったくやらないので、天才なのは間違いないのだろうが、単なる狂人にしか見えない。ただ、天才を作る10万時間ルールや10年ルールで必ずといっていいほどボビー・フィッシャーが取り上げられた理由はよくわかった。
Posted by ブクログ
意外に面白かったわ。
チェスはそんなに詳しくないけど、全くチェスが判らなくても読めるのではないか。
内容に起伏はない。淡々とした文章が続いて行くが、天才の狂気と、翻弄される周囲の動きだけで読ませる。
天才とは、天才故に天才で、それのみに価値がある。
こんな人が、日本で逮捕されて、しかも牛久に収監されてたなんてのも驚いた。
Posted by ブクログ
名前は聞いた事があったけど、こんなに波瀾万丈な生き方をした人だったとは。
天才と狂人の境界線を彷徨い続けたかのようなエピソードの数々。
本当に「紙一重」なのかも知れない。
ボリュームある本だけど、不思議と読めた。
時間はかかったけど。
Posted by ブクログ
グランドマスタードロー という言葉を知った。
オリンピックのやる気ない試合した、あれみたいなの。
GFK空港が、昔、アイドルなんとか空港って名前だったとか。
読み終わって忘れるところが自分で悲しいが。
と、関係ないことが感想に。。。^^;
すごく濃く生きた人なのかな、という印象。
Bobby Fisher's Remarkable rise and fall