下村敦史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
市役所新しくに設置された樹木に関する相談窓口「緑の窓口」に異動になった天野くんと、たまたま知り合った樹木医の柊紅葉さんによる樹木関連の日常の謎
まがりなりにも森林生態系の学問を修めた身として、樹木に関する知識が少しはあったので、よく理解できるものもあったりツッコミを入れられるものもあったり
でもまぁ、個別の品種の特性までは知らないからなぁ
収録されているエピソードは6つ
・スギを診せてください
・クヌギは嘘をつきません
・モッコクの落とし物です!
・ソメイヨシノは実は、
・チャボヒバを前に無力です…・・・
・全ては、樹木が語ってくれました
・スギを診せてください
スギを伐りたい嫁と伐りたくない姑のお話
スギの花粉症の人にとっては「スギの木なんて残らず伐ってしまえ!」と思うだろうけど
木材の生産性を考えるとスギって優秀なんだよなぁ
まぁ、だからといって納得できるものでもないだろうけどね
・クヌギは嘘をつきません
クヌギが倒れてきて壊れた車を弁償しろというトラブルのお話
針葉樹と広葉樹の幹の肥大の仕方が違うのは知ってたけど、それをこんな形で利用するなんてね
枝の特性に関しては知らなかったけど、さもありなん
・モッコクの落とし物です!
認知症の症状が出たおじいちゃんがダニをモッコクにかけたりサイレンを空襲警報と勘違いしてモッコクの下に避難しようとするお話
ハダニは大抵水に弱いので、葉っぱにまんべんなく水をかければある程度は駆除できるけど
作中でも語られているように、大きな木には難しいものね
・ソメイヨシノは実は、
父への手紙に書かれたタイムカプセル的なものを桜の木の下から掘り起こそうとするが見つからないお話
これは相談内容を聞いたときから違和感を感じた部分があったので、展開が読めた
ってか、ソメイヨシがクローンだっていうけど、それでも変異はするから全部が全部全く同じ遺伝子というわけでもないんだけどね
あと、植物の「接ぎ木」って言うのも不思議だよね
属どころか科が同じくらいの遠い種でも成り立つというね
でもまぁ、人間の臓器を他の動物で作ったりとかってのも同じようにいびつではあるんだけどね
ただ、最終的な真相は結構意外というか、重めというか
それもサクラの木の真相とダブっている構造がいいな
・チャボヒバを前に無力です…・・・
チャボヒバの木に自分を重ねた患児のお話
登場人物達の構図がよく考えられているよね
自分の姿になぞらえている対象がなぁ~
・全ては、樹木が語ってくれました
紅葉さんのお母さんの依頼でサクラの木の不調の原因を探りに田舎の村に行くお話
そして最後にぶっこんでくれる隠された関係性
まぁ、伏線があると言えばあるんだけど、ねぇ?
そして紅葉さんの妹の件
何か理由があるんだろうとは思ってたけどね
いちおうきれいな形で終わってはいるけど、もし続編が出たら嬉しいなぁ
あと、どうでもいいけど天野くんの語った木に助けられたエピソード
北条司のマンガ「桜の花 咲くころ」が元ネタか?(笑) -
Posted by ブクログ
これは怖い話だったな。
大学生の洋平は母の遺品整理の際、本当の父親が元検察官で「赤嶺事件』と呼ばれる殺人事件を犯した死刑囚であることを知る。まだ刑が執行されていないこと、事件は冤罪の可能性があることを知った洋平は、父の無実を明らかにするために事件について調べ始める…といったお話。
その調査の過程で様々な冤罪が疑われる事件にぶち当たり、その都度に”有罪を作り出していく”司法の現場の実態が明らかになっていく。
それにしても、ここに描かれる警察、検察、裁判所の在り方は、威信とか沽券とかもあるだろうが、根本的には皆忙しすぎるな。それで『起訴された以上、終着駅が「有罪」の列車』というのもゾッとしない。
物語が好意的な協力者ばかりで進むのがいささか物足りないが、少しづつ真相に近づいていく中で当たっていく事件にもひねりがあり、その都度に司法への疑心暗鬼が深まっていく作りは面白い。
主人公が頑なで甘ちゃんなところがあまり好きになれず、なかなか複雑な顛末にもあまり葛藤がないところが減点。
私も会社で痴漢で捕まった人のことを結構見聞きしたけど、酔っていてやったかどうか分からないという人もあれば、無罪を主張して裁判で戦った人もいた。
いずれにせよ真相は第三者には知りようもなく、捕まった以上認めてしまった方が早いという感じで、自分の身に降りかからないように満員電車では注意をするしかない。
基本的に警察にお世話になるようなことは絶対してはならないが、巻き込まれないようにもしないとな。 -
Posted by ブクログ
母の死がきっかけで父とは血が繋がっていないことと実の父は死刑囚として収監されていることを知ってしまった大学生の主人公。
実の父が起こした事件を調べるうちに冤罪の可能性を書いた記事を発見し、その記者に協力を求める。
彼女と調べを進めていくうちに協力者も増え、真相に迫っていくが、真相はまた主人公には受け入れがたい事実だった。
裁判官の実情や検察と警察の関係など、人を裁く人たちは本当に公正なのかということも問うている。
意外と読み応えがあった。
冤罪がテーマのように見えるが、司法の正当性や公正性が本筋のテーマだと思う。
最後の展開はなんとも言えず、全てを失ってしまったほうは自業自得とは言え、仕打ちとしてはけっこう厳しいと思った。 -
Posted by ブクログ
この間、著者ほどフィールドの広い作家は稀ではないかと書いたが、今作は何と冒険小説。
また、新しい分野を読者に提供してくれた。
しかし、解説によると、著者は80年代の冒険小説の時代に生まれたから冒険小説の申し子といえるそうだ。
舞台はサハラ砂漠、主人公は発掘調査を行う考古学者。
この考古学者、発掘した遺跡の一部を転売してしまうという、こ狡いオヨヨな男。それでも、物語の進展とともに”たくましく”?なって行く。
搭乗した飛行機が砂漠に墜落し、生き残った者たちと砂漠からの脱出を図る。しかし、同行者は皆ワケ在りな者たちばかり。
本性を現した採掘の盗人と戦い、砂漠の危険な動物に遭遇し、ゲリラに襲い掛かられ、追いつ追われつの逃走劇は、読者を捉えて離さない。
その背景にあるのは、”天然原子炉”?
それに関連した国際的な謀略も!
唐突感はあるが、冒険小説に、環境問題やエネルギー問題を絡めたところに、社会派と称される著者の面目を感じる。 -
Posted by ブクログ
下村敦史『サハラの薔薇』角川文庫。
サハラ砂漠を舞台にした冒険小説。砂漠や辺境の地を舞台にした冒険小説と言えば船戸与一を思い出すが、本作には船戸作品のような砂漠の匂いは感じられなかった。主人公の峰が発掘調査費を捻出するために発掘品を横流しするようなセコい考古学者という人物造詣が作品を台無しにしているように思う。
エジプトで発掘調査を行う考古学者の峰はついに念願の石棺を発掘するが、石棺に納められていたのは死後数ヵ月のミイラだった。発掘調査は失敗に終わり、峰が講義先のパリに向かう道中で飛行機が墜落し、サハラ砂漠に不時着する。峰は生命を懸け、生き残った仲間とオアシスを目指すのだが……
峰が何者かに狙われる理由が非常に弱く、サハラ砂漠を巡る大きな謎と陰謀も納得し難いものだった。
本体価格680円
★★★★ -
Posted by ブクログ
著者も何とフィールドの広い作家なのだろう。
全盲者を主人公に、中国残留孤児問題を扱ったデビュー作の乱歩賞受賞作を皮切りに、山岳ミステリー、リーガルミステリー、さらに医療ミステリーと続く。
今作(シリーズ第2弾とは知らなかった)は、一般にはあまり馴染みのない専門職ともいえる難民調査官が主人公。
難民申請したシリア人が、突如申請を撤回する。その豹変に不自然さを感じた主人公は、認定するか不認定とするか、自分の決断が直接人命を左右すると思い知り、逡巡する。さらに、誘拐事件も勃発し、殺人事件も絡み、混迷の度合いは増すばかり。
一方、主人公の先輩のジャーナリストは、シリアで内戦に遭遇し、テロリストの人質になる危機(シリアでの活劇は、冒険小説の趣き)。
日本とシリア、交互に描かれた展開が、認定問題とともにこの小説の謎解きの根幹だったとは。
パズルのピースが鮮やかに決まるかのような著者の巧みな技に、脱帽するばかり。
大半の読者にとって、テレビや新聞報道でしか知りえないシリアの問題を、安易に正義対悪の構図で考えたら、大事な何かを見落としそうだと、著者は登場人物の一人に言わせる。お涙頂戴の報道ほど、余り鵜呑みにしない方がいいとも。
事件が解明し、最終決断をした主人公が語る言葉は、読者も留め置く心構えだろう。
「正しいか正しくないか、を行動の指針にしたら、たぶん、色々と過ちを犯すと思う。正しさって、自分で決められるものじゃないし、自分が信じる正しさは誰かにとっての間違いだったりするし、自分だけは常に正しいことを選択できている、なんて思い込みは危険思想に繋がっていく。自分の選択を疑いながら、行動していくしかない。苦々しい結末だったとしても」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ山岳ミステリー。10年前に滑落して失踪した相棒の遺体を回収しに行くと、明らかに年を取っていた。なぜか?相棒の足取りを追うと、別名で8000m峰を登りまくる謎の日本人にたどり着く。しかし相棒は5年前に死んでいた、では今の謎の登山家は誰なのか?
登山の描写はまあまあのリアリティ。ストーリーの展開も早く読みやすい。
主人公のがっかりを払うために8000m峰に登って強さを証明し、最後は病気で死ぬ前に、クレパスに自ら戻って死ぬという、主人公と相棒の友情が、というか樋口の主人公ラブ度がすごすぎ。あと、宮崎というキャラの性格がくそ過ぎて逆にすがすがしいほど。 -
Posted by ブクログ
双子の弟英二が自殺した兄の不思議な遺言の謎に迫るべく京都で謎を解いていく。
こんなストーリーですが、果たして今まで高知で農業を営んできた弟が各地を放浪してきた兄になり変われるのかという疑問さえ克服できれば、真実は何かを探る楽しいミステリの世界に浸れます。
「京都」の色々な風習や考えが伏線であったり、謎であったりして楽しめました。
京都の人がここで描かれているような人でないとは思いますが、いかにもありそうと思えるところが怖いです。
作者はまさしくここに描かれた高知出身の父と京都出身の母の子で、編集者が京都出身というのも、物語を読み終わって納得感がありました。 -
Posted by ブクログ
自殺した兄の遺書の真相を確かめるため、京都に赴いた双子の弟。
訪ね当てた恋人に兄と間違われ、そのまま成り済ます。
京都人の本音を見せない躱し方やはぐらかし方に惑わされる弟、謎めいた手紙の意図は、そして成り済ましはいつばれるのか、ハラハラしながら頁をめくる。
しかし、終盤にきての意外や意外・・・・
著者の巧みなミスリード(漢字ではなく、かなを使うなど)に、主人公ともども惑わされてしまった。
京都祇園や舞妓の裏話的な詳述は、花街探訪を体験したかの如くであり、また、直接的な物言いをしないという京都の土地柄及び京都人の人柄についても、読後少し参考になったかな。 -
Posted by ブクログ
10年前転落事故で死亡した友の遺体を収容しに、主人公は南アンデスのシラウ・グランデ峰に向かう。しかし、その事故現場で見つけたのは、数年分歳を取っていた友の遺体だった。
その理由(わけ)は?
さらに死んだはずの友と同じ登攀スタイルの人物が現れ、オカルト的な謎がさらに深まる。
そして小説は、2016年の現代と事故当時の06年、大学時代の1991年や92年、さらには99年、03年、04年と、目まぐるしく過去と現代を行き来する。
著者の巧みな手法に翻弄されながら、読者は頁を捲らざるを得なくなる。
随所に記される登山シーンは、その場に臨場しなければ描けないほど見事な迫力がある。
しかし、著者に本格的な登山経験は無いという。
作家の想像力、畏るべし。。 -
購入済み
悔しい!ヤラレタ
真相が分かったとき、何故その可能性にもっと早く気づかなかったのか、悔しさがこみあげた。
ミステリーにおいては、この悔しさは満足度と同義語だ。
少しだけ残念なのは、せっかくタイムリミット付きの誘拐事件まで発展させたにも関わらず、えらくあっさりした解決。
もう少しハラハラドキドキさせてもらっても良かったかも、
なので⭐️一つすくなめ。
ミステリーとしては⭐️5つ間違いない。